発達障害で不登校のお子さんの「生きやすさ」のために親ができること

発達障害のあるお子さんが不登校になる、または不登校のお子さんが発達障害と診断されると、親御さんは次のような不安を抱えがちです。
- 私たちの育て方が悪かったのでしょうか…
- 私たちは、これから娘とどう接すればいいのでしょうか…
- 高校に通えない息子が大学進学を希望していて、どう学習支援をすべきか迷います…
あなたも、そうお悩みではありませんか。
親御さんも、発達障害のあるお子さんも、「悪い」ということはもちろんありません。
それぞれのお子さんやご家庭に合う対応も必ずあります。
この記事を読むことで、お子さんも親御さんも、「次の一歩」が見つかると思います。(ご紹介する事例は、個人の特定ができないように一部事実を変更しています)

共同監修・不登校新聞社 代表理事 石井志昂氏からの
アドバイス
周囲の大人の理解こそが大切です
発達障害で恐れるべき点は、「お子さんが発達障害か否か」ではありません。
「周囲が発達障害への知識や理解が薄いために、お子さん本人が傷つくこと」です。これを、「二次障害」と呼びます。
その二次障害こそ、気をつけなければならない点です。
残念ながら、社会に発達障害の知識が浸透するまでは時間がかかります。
だからこそ、まずは親御さんや周囲の大人が理解を深めることが大切です。
私も発達障害ですが、周囲の理解さえあれば恐れることはありません。
目次
発達障害が関連する不登校は少なくありません

一般的に学校は、「音や人の刺激」が家庭よりも強い環境です。
定型発達のお子さんには問題ない学校環境が、発達障害のお子さんにとっては過ごしやすい環境ではないことで、不登校になることがあるのです。
近年では、発達障害のお子さんが学校環境で「生きづらさ」を感じて不登校になるケースが、病院等でも多く報告されています。
例えば、2010年に発表された研究では、不登校の要因の1つとして、「子どもに発達障害がある可能性」が示されました。
不登校児童のおよそ20%が、知的障害をともなわない発達障害を抱えている
また、学習遅滞によって学校に行きづらくなるお子さんも、その学習遅滞の背景に発達障害が関係している場合があります。
より詳細な内容は、次章でご紹介します。
私たちキズキ共育塾では、不登校や発達障害のお子さんの勉強・メンタルについて、無料相談を行っています。親御さんだけでのご相談も可能です。お気軽にご連絡ください。
キズキ共育塾を詳しく知る発達障害の各特性と、学校で感じる「生きづらさ」

種類によって、お子さんの特性、学校での「生きづらさ」、不登校になる原因などは変わります。
この章では、次のようなことをお伝えします。
- 不登校と関係する発達障害の種類や特性
- 特性による不登校の要因
すでに病院などでお聞きになった方もいるかもしれませんが、改めてご覧ください。(各特徴や要因は「傾向」の一部であり、全ての方に当てはまるとは限りません)
①LD(学習障害)
LDとは
- 全体的な発達や知的の遅れは認められないが、『読む・書く・聞く・話す・計算する・推論する』などの使用及び習得に著しい困難を示す状態
カンタンに言えば、LDのお子さんは、学習スキルを獲得する際に困り感が生まれる可能性があります。
LDの原因は、親の養育や環境、本人の性質は関係なく、脳の中枢神経の機能障害だと考えられています。
○学業等の成績が下がり、学校にいると周りと比べて「自分はできない」と劣等感を持ち、自尊心を持てなくなること
○一生懸命がんばっても報われない経験をたくさんしたことによって、無気力になること
②ADHD(注意欠陥多動性障害)
ADHDとは
- 不注意、および衝動性・多動性を特徴とする行動の障害で、社会的な活動や学力に支障をきたすもの
学校生活でよくある困り事の例には、次のようなことがあります。
- 授業中に落ち着いて座っていられない
- 忘れ物が多い
- 聞いたことをすぐ忘れる
○不注意や落ち着きがないことを周囲からからかわれたり、馬鹿にされたりして、学校で生活する中で次第に自己否定が進むこと
○「できない」体験をたくさんすることで、否定的な自己像を形成し、二次障害として不登校になること
③ASD(自閉症スペクトラム)
ASDとは
- 発達に偏りのある障害のいくつかの集合体
- 自閉症、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害などを含む
ASDの具体的な特徴には、次のようなことがあります。
社会的コミュニケーションが苦手
- 相手の言葉の裏を読むことが苦手
- 相手に対して一方的に話す
限定された興味
- 特定の分野にだけ興味を持ち、それ以外には興味を示さない
- ずっと手をひらひらさせたりなど、「同じ行動を続ける」ことも含む
感覚過敏
- 音、光、匂いなどの感覚刺激に対して、過剰・過少に反応をする
学校場面における感覚刺激の例には、運動会のピストルの音、家よりも広く多い窓から入ってくる日光などがあります。
○感覚過敏によって、学校にいると過剰に疲れること
○相手の視点に立って考えることが苦手なので、周囲の人とコミュニケーションが上手にとれず孤立したり、いじめにあったり過剰な叱責を受けたりして、学校が嫌いになること
お子さんに「特性」があることをまずご理解ください
発達障害の種類と、各発達障害が不登校に至る要因を簡単にお伝えしました。
いずれにしても、まず親御さんには次のことをご理解いただきたいです。
発達障害のお子さんには、何らかの『特性』(による生きづらさ)がある
では、「特性」があることを理解した次には何ができるでしょうか。
次の章で、私が出会った発達障害の子どもの話を例に、不登校と発達障害、そして「特性」による生きづらさを減らす方法について考えてみます。
事例:発達障害で不登校になった中学生が前に進むまで
私は、訪問支援のボランティアである男の子(Aくん)と出会いました。Aくんは、小学6年生のときにADHDとASDの診断を受けています。
私とAくんとの出会いは、夏休みの過ぎた10月頃、彼が中2のときでした。
Aくんは、その年の春頃に、部活動の顧問とのコミュニケーションのすれ違いがありました。
それをきっかけに、それまでも抱えていた学校生活でのストレスが爆発し、不登校になり、家に引きこもっていました。

Aくんは剣道部に所属しており、その部では活動中は「はだし」になることがルールでした。
Aくんは、感覚過敏の一種である触覚過敏の特性がありました。
そのため、学校の体育館の床のザラザラした表面が「まるで針のように尖って感じた」ため、靴下をはいて部活動をしていたそうです。
そしてある日、靴下をはいて部活動をしていたことを部活の顧問に大きな声で叱責されたそうです。
Aくんはルールが絶対と考える顧問の口ぶりに納得がいきませんでした。また、Aくんは、大きな音も苦手でした。
Aくんは衝動的に、部活の道具を窓に投げつけ、窓ガラスを割りました。
こうした一連の行動について、部活の顧問やほかの先生にも叱責されたことをきっかけに、不登校になったのです。
Aくんの不登校の背景には、発達障害の特性である感覚過敏や衝動性、そして周囲がそうした特性を理解できないという環境がありました。
これらは、Aくんの学校での「生きづらさ」につながっていました。
私はそんなAくんと出会い、最初は一緒に彼の好きなゲームをしたり、アニメを一緒に見たり、ご飯を一緒に食べたりしました。
毎週家に訪問する中で、少しずつ関係性を作っていきました。

訪問支援で触れ合う中でも、彼の「生きづらさ」は垣間見えました。
例えば、一緒に話しているときに、外からサイレンの大きな音がするだけでイライラしてものを壊す、などです。
車のサイレンが「ASDの特性である過敏な聴覚」を刺激したことで、「ADHDの特性である衝動性」が行動に表れているのです。
私は、Aくんは過敏な感覚が緩和されれば「生きづらさ」も少し緩和されると考えました。
そこで、例えば音については、次のように、「刺激」に過剰に反応しなくていいような対策を一緒に考えました。
音への対策
- 周りの音を聞かなくてもよいときはイヤーマフをする
- うるさい場所に行くときはあらかじめ音楽プレーヤーやイヤホン等をして、周囲の音を緩和する
衝動的な行動を減らすためには、次のように働きかけました。
衝動性への対策
- 「衝動的な行動をしかけたけど、しなかった」ときにその場面で彼を誉める

そしてAくんは、「対策」を試行錯誤すると同時に、次のような方法で、様々な角度から自身の発達障害(による特性)と向き合うようになっていきました。
- 病院に通いはじめる
- 放課後等デイサービスでSST(ソーシャルスキルトレーニング)の訓練を受けはじめる
- スクールカウンセラーのカウンセリングを受けはじめる
対策や通院などを行っても、特性は完全にはなくなりません。ですが、それらによってAくんは、少しずつ、確実に、「生きやすく」なっていきました。
そんな生活が続き、Aくんは中学に復学することはありませんでした。しかし、中学卒業後には、自分の特性や将来なども考えた上で、ある通信制高校に進学することができました。
通信制高校を選んだのは、自分のペースで勉強したい、趣味などにも多くの時間を費やしたいという思いからです。
現在のAくんは、大学進学を検討しています。
自分の特性と向き合える・付き合えるようになったからこそ、将来に向かって前向きに行動できるようになったのだと思います。
「特性」とうまく向き合う「対策」を見つけてください
Aくんの例からは、以下のことが言えると思います。
- 発達障害のお子さんは、「特性」による生きづらさを抱えている
- その「特性」も生きづらさも、現代の科学では、完全になくせるものではないものもある
- しかしAくんのように、日常的な対策であれ、医学的な方法であれ、その特性と向き合うことで「生きづらさ」を少しずつ減らしていくことはできる
前章でお伝えしたとおり、まずはお子さんの「特性」を(親御さんにもお子さん自身にも)ご理解いただき、次に「対策」を考えていただきたいと思います。
親御さんだけで悩まず、専門機関を利用してください

これまでの話をカンタンにまとめます。
- 発達障害のお子さんは、何がしかの「特性」と、「特性」による生きづらさを抱えていることが多いです
- 学校で生きづらさを感じた結果、不登校になることも珍しくありません
- 親御さんは、まず、「お子さんには『特性』(による生きづらさ)がある」とご理解ください
- 次に、「特性」とうまく付き合う・向き合う方法・対策をお探しください
- そうすると、お子さんの「生きづらさ」は減少し、前に進めるようになります
最後に、「発達障害で不登校のお子さん」の親御さんに伝えたいことがあります。
それは、苦しい状況の中にいるあなた方のために手を差し伸べる人は必ずいる、ということです。
発達障害や不登校に対する社会の理解は、少しずつかもしれませんが、確かに深まっています。
次のような各種専門機関を利用することで、親子ともに、様々な人からの様々な方法による支援を受けることができます。
専門機関の例
- 病院
- 自治体の子育て・発達障害相談窓口
- 発達障害や不登校の親子を支援するボランティア
- 発達障害や不登校の「親の会」
- 発達障害や不登校の子どもを支援する学習塾など
お子さんは、そうした支援を受けながら自分自身と向き合い、将来の道をきっと見つけます。
「特性」についても、「対策」についても、そして将来についても、どうか親御さんだけ、ご家族だけで悩まず、ぜひ積極的に支援を求めてください。
支援者から、それぞれのお子さん、ご家庭に応じた具体的なアドバイスがもらえると思います。
お子さんと親御さんが少しでも生きやすくなり、将来に進めるよう、心から祈っています。
私たちキズキ共育塾には、不登校や発達障害の生徒さんが多く在籍しています。
ご相談は無料ですので、少しでも気になるようでしたら、お気軽にご相談ください。
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