
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
こんにちは。学校が苦手なお子さんを完全個別指導でサポートする、キズキ共育塾の内田青子です。
今日のお話は、「保健室登校」です。
そんなふうに、お子さんの保健室登校に不安を抱えている保護者の方もいらっしゃるかと思います。
今日は、保健室登校について、その仕組みや特徴、メリット・デメリット、不登校との関係、保健室登校から教室へ復帰する方法などをお話ししていきたいと思います。
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目次
「保健室登校」とはどういった状況を指すのでしょうか。
保健室登校とは、「常時保健室にいるか、特定の授業には出席できても、学校にいる間は主として保健室にいる状態」を言います。
つまり、「ほとんどの時間を保健室で過ごす」「午前中だけ保健室に登校し、給食を食べて帰る」などの状況を、「保健室登校」と言います。
なお、保健室登校児・生徒のいる学校の割合は、下記のとおりです(出典:公益財団法人日本学校保健会『平成28年度 保健室利用状況に関する調査報告書』)。
上の報告書を見ると、保健室登校児・生徒は、小学校から高校まで一定数いることがわかります。
保健室登校を勧められたり、実際に保健室登校をしていたりする児童生徒は、あなたのお子さんだけではありません。
決して珍しいことではないのです。
「保健室登校」を認めると、その後「不登校」になるのではないか。
そのような不安を抱えている親御さんもいらっしゃるかもしれません。
「保健室登校」と「不登校」はどう関係するのでしょうか。
まず、保健室登校には2種類の場合があります。
【①長期欠席・不登校から保健室登校ができるようになる場合】
保健室は長期欠席・不登校から「学校復帰へのステップ」として機能します。
【②通常の教室に通えていたのに、あるときから保健室にしか行けなくなる場合】
保健室は長期欠席・不登校にならないための「一時避難場所」として機能します。
(参考:岡山県教育委員会『長期欠席・不登校対策スタンダード』)
不登校にはさまざまなきっかけがあります。
一度学校に行けない状態になると、「学校に行けないことに対する悩みや罪悪感」が、子どもの自信や気力を奪います。そのことが新たな「学校に行けない理由」になることもあります。
上記①②に共通して、保健室登校は、その罪悪感や自責の気持ちを和らげる役割も果たせるのです。
したがって、保健室登校には、①不登校から教室復帰へのステップ、②不登校の予防の意味・効果があると考えます。
関連コラムとして、「なぜ学校に行けないの?元不登校の僕が伝える、親御さんへのアドバイス」があります。ご興味のある人はお読みください。
このような機能をする登校方法には、保健室登校の他に「別室登校」「放課後登校」があります。
それらの違いを、小学校スクールカウンセラーに伺ってまとめてみました。(岡山県の例であり、都道府県や学校によって呼称や機能が異なる部分もあります)
「保健室登校」「別室登校」「放課後登校」それぞれに特色があり、また、学校によっても対応が異なってきます。
また、「保健室登校」が出席日数に含まれるかどうかについては、以下のようなことが言えます。
お子さんが登校したがらない・登校できない場合、まずはお子さんの学校に連絡し、どのような形の登校があるか、どれがお子さんの現状に合っているのかを相談されることをお勧めします。
保健室登校には、「①不登校から教室復帰へのステップ」、「②不登校の予防」の意味・効果があるとお伝えしました。それ以外にも、4つの大きなメリットがあります。
私の知人で実際に保健室登校をしていた人、そしてその保護者の人から聞いた話をもとに、以下にまとめてみました。
保健室登校は、子どもの孤立を防ぎます。
保健室には、保健室登校をする子ども以外にも、他の子どもや先生も訪れます。
そういった人たちと顔を合わせたり、言葉を交わす機会を持ったりすることで、学校の人たちとのコミュニケーションに慣れる・継続することが可能です。
コミュニケーションには、「信頼関係の構築」の役割があります。
お互いの理解を深め、気持ちのすれ違いが生じるのを防ぐことで、周囲の人間関係から孤立することを防止するのです。
短時間だけでも保健室に登校することは、子どもが他の人との関係を保つ役割を果たすということです。
子どもが短時間だけでも学校に行けているという事実は、親御さんが学校との接点を維持することにもつながります。
「学校での子どもの様子はどうか」といった些細な会話を先生と交わしたり、または今後のことを相談できたりと、親御さんの不安を安心に変えることができます。
問題を家庭内だけで抱えるのではなく、共有・相談ができる相手がいるということは、非常に大きな意味があるのです。
「保健室登校であっても学校には登校しているため、欠席者ではない」というのが基本的な考え方のため、義務教育の多くの小中学校では、保健室登校は出席日数として認められています。
特に中学生の場合、出席日数は内申点に関係し、内申点は高校受験に関係します。
出席日数にカウントされることで、高校受験の選択肢が変わってくるということです。
高校では各学校によって対応が異なります。
教室に行かなくても登校にカウントしたり、定期試験を保健室で受けたりできる高校もあるため、学校への確認が必要です。
保健室登校を行うと、学校生活のリズムに慣れる、またはそれを維持することができるのもメリットです。
「遅刻や早退はあるかもしれないが、ある程度決まった時間に学校に登校する」、「授業が終わるとチャイムがなる」、「決まった時間に下校する」など、学校生活のリズムに合わせて生活をするため、教室復帰や今後の受験などへの負担も軽減されていきます。
保健室登校にメリットがあれば、その反面デメリットも存在します。
しかし、デメリットについては親御さんの少しの気遣いと先生方への相談で解決することも多いです。
以下、メリットと同様に、私の知人からの話をまとめてみました。
保健室登校をすると、他の先生や生徒の目が気になって、それがストレスになることがあります。
ですので、保健室登校を始めたら、子どもがそういったストレスを感じていないかどうか、常に確認しましょう。
学校側がそういった問題に配慮することもあります。人目を気にする傾向が際立つようであれば、先生に相談することも大切です。
保健室登校をしていると、他の子どもが授業を受けたり教室で過ごしたりしていることを強く実感します。
「他の人と違う生活をしている」「自分だけ教室に行けていない」などということから、子どもがうしろめたい気持ちを感じてしまうことがあるのです。
こちらも①と同様、後ろめたさを大きなストレスと感じているようであれば、まずは聞き入れた上で、先生にご相談することをオススメします。
ここまで保健室登校に関する説明をしてきました。
では子どもが保健室登校から教室へ復帰するためには、何が必要なのでしょうか。
その一番の近道は、「子どもに自信を持たせること」です。
今回はその一例として、筆者の知り合いである小学校スクールカウンセラーの話をご紹介します。
保健室登校をしている子どもを、先生やクラスメイトが「教室に行こう」と迎えに行くという場面がよく見られます。
それで「解決」となることは、もちろんあります。
ですが中には、迎えに来られることがプレッシャーになってしまう子どももいます。
逆に、先生から迎えに行くようにとお願いされる「面倒見のいい子」が、ストレスを抱えてしまう場合も考えられます。
保健室に迎えに行くことが、全てのお子さんにプラスに働くとは言い切れないのです。
保健室登校をする子どもは、「何か明確な原因があるから教室に行けない」ケースだけではありません。
「集団」というものに漠然と不安や恐怖を持っているから行けない場合もあるのです。
集団への不安や恐怖の根底にあるのは、「僕(私)はみんなと対等じゃない」という意識です。
その不安や恐怖を乗り越えるためには、その子が「自信」を持つことが必要です。
それは「自分が誰かより優れている」という自信ではなく、「自分もみんなと対等にしていいんだ」という自信です。
「自分は、活発な子や何でもできる子と対等なんだ」と子ども本人が思えることです。
そうすれば、子どもはいろいろな子がいる教室という集団に帰って行くことができます。
自信を持つということは、大人でもなかなか難しいのですが、一つ方法があります。
その子が「得意なこと」をさせて、自信がつくように持っていくことです。
勉強でも絵でもスポーツでも、折り紙やなわとびといった小さなことでも。
賞状をもらうレベルでなくても、「〇〇ちゃんはなわとびが上手なんだね」という一言の積み重ねでその子に自信をつけるのです。
保健室登校のお子さんに親御さんができることは、その子の得意なことを見つけて自信を持たせることです。
ぜひ、お子さんに自信がつく言葉をかけてください。
「保健室登校の場合、学校では何をするの?」と疑問に思う人もいらっしゃるかもしれません。
学校によって、お子さんによって一概には言えないのですが、保健室登校での過ごし方の例は以下のようなものです。
同じ子どもでも、その日の体調や気分によって1日のスケジュールが変わることがあります。
適宜、ご家庭での様子を交えて、学校の先生方へご相談されることをオススメします。
では、保健室登校から教室復帰に向けた「次のステップ」には、どのように踏み出せばよいのでしょうか。
お子さんによってその進み方は異なりますが、一例として下記のようなステップがあります。
こちらに記載した内容の他にも、「休み時間のみ友達と過ごすようにする」、「まずは得意科目の授業のみ出席する」など、お子さんの状況に合わせたステップが考えられます。
非常に細かなステップになるため、強い焦りを感じる親御さんもいらっしゃるかもしれません。
しかし、お子さんが不登校の状況に戻ることがないように、慎重にゆっくりと次に歩んでいくことが、教室復帰への一番の近道です。
焦らず、お子さんに寄り添って一歩ずつ、次へのステップを踏み出せるように見守りましょう。
保健室登校では、基本的には養護教諭や支援員が、お子さんに対応をします。
では、担任を含むその他の先生方は、保健室登校をしたお子さんにどのように接するのでしょうか。
こちらも、学校やお子さんの現状に合わせて変わるため、一概に「これ」ということはできません。
知り合いのカウンセラーから聞いた話だと、「一日一回は顔を合わせて会話する」ということを心掛けている先生方が多いそうです。
「○○先生と一緒なら教室に行ける」、「友達となら給食を食べられる」、「支援員の先生と会えるなら相談室に行ける」など、お子さんの状況を把握した上で柔軟に接することが、一般的な対応と言えそうです。
さて、これまで、「不登校を防ぐ」「不登校から教室に復帰する」という観点で保健室登校について紹介してきました。
しかし、不登校や保健室登校の「解決」や「次の一歩」は、必ずしも教室復帰とは限りません。
どうしてもその学校や教室が合わない場合もあれば、休憩が必要な場合もあるでしょう。
そんな子どもには、「教室や学校に行かない」というルートもあります。
義務教育の場合は、「保健室登校」のまま卒業する。
保健室にも行かず、学習塾などで勉強し、自分に合った高校などに進学する。
高学の場合は、通信制・定時制高校へ転入する。
中退して、高校卒業認定試験を経て大学進学や就職などを目指す。
など、その後の道はいくらでもあります。
「今の学校」「今の教室」以外にもルートがあることを覚えておくと、選択肢が広がります。
保健室登校とは、児童生徒が「常時保健室にいるか、特定の授業には出席できても、学校にいる間は主として保健室にいる状態」を言います。
保健室登校には、「不登校の予防」と「教室復帰へのステップ」としての意味があります。
このような機能をする場所は、保健室の他に「別室登校(相談室登校)」「放課後登校」があります。
それぞれに特徴があるので、お子さんの学校にどのような仕組みがあるか、どれがお子さんに合うかなどを、学校に相談してみましょう。
保健室登校の大きなメリットは、学校・社会との接点を失い、お子さんと親御さん両方が孤立してしまうのを防げることです。
不登校や保健室登校をしているお子さんを、焦って教室に戻す必要はありません。
まずは、お子さんが集団に戻って行けるように、自信をつけることからはじめてください。
また、不登校や保健室登校の次の一歩は、「教室登校の再開」だけではありません。
「今の学校・教室に行かない別のルート」もあります。
どんなルートであれ、あなたのお子さんに合ったものが見つかるよう祈っています。
さて、私たちキズキ共育塾は、お悩みを抱える人のための個別指導塾です。
生徒さんにも講師にも、不登校や保健室登校の経験者が大勢います。
授業では、勉強だけでなく、お悩み相談や趣味の話なども可能です。
ご相談は無料です。少しでも気になるようでしたら、お気軽にお問い合わせください。保護者さまだけでのご相談も可能です。
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