発達障害でも行ける大学はあるの?大学までの進路を紹介!

こんにちは。発達障害や不登校・中退などのお子さんを勉強・メンタルの両面から完全個別指導で応援するキズキ共育塾です。
お子さんの発達障害について悩んでいる親御さんは、今後の学校進学がどうなるのか、不安も大きいと思います。
学校だけでなく、成長するにつれて「学校か就職か」という選択もしていかなければなりません。
親御さんとしては、我が子にとって最適な選択ができるよう情報収集しておきたいとお考えのこと多いでしょう。
そこで今回は、発達障害の子どもが進むことができる進路について完全解説します。
この記事をお読みいただくことで、発達障害のお子さんが歩んでいくであろう将来のことが、きっとイメージしやすくなるはずです。
できるだけ詳しく解説しているため、かなりのボリューム記事となります。
目次を拠点にして、興味のあるところへスキップしてご覧いただくことをオススメします。
(参考:鈴木慶太『親子で理解する発達障害 進学・就労準備の進め方』)
目次
発達障害とは?主な3つの種類を紹介
まず、発達障害の概要について説明します。
少し長いので、既にご存じであれば、次章「発達障害の子の学校や就職選択のポイント5点」までお進みください。
発達障害とは、先天的な脳の機能の偏りによって、社会生活やコミュニケーションに困難が生じている状態のことです。
2013年に刊行されたアメリカ精神医学会の定める診断基準「DSM-V」によると、主な発達障害として以下の3つを挙げることができます。
- ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- ASD(自閉症スペクトラム障害)
- LD(学習障害)
発達障害の特性の中には、程度は異なりますが、発達障害ではない人にも見られるものがあります。そのため、「ある人が発達障害かどうか」は、専門医だけが判断できます。
中には、診断基準を満たすほど特性が強くないことから、確定診断は下りないものの、社会生活で困りごとを抱えている「グレーゾーン」と呼ばれる人もいます。
(参考:村上由香『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本』)
①ADHD(注意欠陥・多動性障害)

ADHDは、正式名称を注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)という、発達障害の一種です。
ADHDには大きく分けて「不注意」と「多動・衝動性」の2つの特性が見られます(特性の程度や現れ方には個人差があります)。
・忘れ物や記入漏れなどのミスが多い
・確認作業がうまくいかない
・整理整頓が苦手で物を失くすことが多い
・気が散りやすく、貧乏ゆすりなど常に身体を動かしていないと落ちつかない
・他人の意見に耳を傾ける前に発言したり行動したりする
・優先順位をつけることが苦手で、場当たり的になりやすく締切を守りづらい
ただし、後に紹介するASD・LDともに、発達障害は病気とは異なり、あくまでその特性が目立ちやすいというだけです。
日常生活などにおける「困難」は、過ごし方の工夫などで対策できますので、ご安心ください。
②ASD(自閉症スペクトラム障害)

ASD(Autism Spectrum Disorder、自閉症スペクトラム障害)とは、社会性・コミュニケーション・想像力の3つにおいて特性が目立つ発達障害です。
具体的には、以下のような特性が目立ちやすいと言われています。
・場の状況や上下関係に気が回りづらく、TPOに合わせた行動が難しい
・話を聞いていないと誤解されやすい
・質問の意図、身振り、比喩、冗談などを理解しづらい
・報告、連絡、相談がうまくできない
・決まった順序に強いこだわりを見せる
・予定が変わるとパニックになりやすい
・暗黙のルールなど明示されてない決まりに疎い
その他にも、ASDには聴覚過敏などの「感覚過敏」が併存する子が少なくありません。
③LD(学習障害)

LD(学習障害)とは、「読む・聞く・話す・書く・計算する・推論する」といった6つの能力の1つ以上に、習得や使用の困難がある発達障害です。
ただし、文部科学省の定義によると、「学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない」という条件が付きます。
「読む・聞く・話す・書く・計算する・推論する」のうち、どれに困難を覚えるのかは、各々の特性により異なるため一概には言えません。
しかし、「特定の情報処理が難しい」という困難に共通点があります。
例えば、読字障害の場合は「教科書の文章がうまく読めない」、書字障害の場合は「文字を書いたり覚えたりすることが苦手」です。
このようなLDは、その他の発達障害に比べると、初等教育が始まる段階で特性を自覚しているケースが少なくありません。
発達障害の子の学校や就職選択のポイント5点
ここからは、前の章で説明した発達障害の子が進路選択のときに気をつけたいポイントを紹介します。
- 担任の先生
- スクールカウンセラー etc.
まず身近なところで、お子さんが在籍している学校に相談するようにしましょう。
お子さんの学校生活や勉強の興味といった進路選択に関わる情報だけでなく、支援機関や公的な補助制度に関する情報も得られるはずです。
進路を考える際は、上記の点を特に意識しながら、以下のポイントを押さえるとよいでしょう。
ポイント①医師や専門機関に相談する

1点目は「医師や専門機関に相談する」です。
学発達障害の子どもを多く見てきた専門医や臨床心理士からは、学校の先生などとは別の視点からのアドバイスを得られます。
特に、「まだ発達障害であるかどうかわからない」という親御さんは、まずは病院を受診するようにしましょう。
発達障害者支援センターは、各地に設置されている公的な専門機関。
発達障害の診断がなくても、進路の話題に関わらず、無料で相談することができます。
発達障害のある子に特化し、数多くの指導実績がある塾なら、進路選択についてより具体的な助言を得られるでしょう。
このように、まずは在籍する学校の先生やスクールカウンセラーに相談してみましょう。
それに加えて、外部の専門家の助力を得られないかを検討してみてください。
(これから紹介する他のポイントについても、適宜助力が得られると思います)
ポイント②特性を考慮して進路を選ぶ

2点目は「特性を考慮して進路を選ぶ」です。
発達障害の子どもは、得意・不得意や向き・不向きが比較的はっきり出やすいと言われています。
ASDやADHDのように、特定分野への強い「こだわり」がある場合には、専門性を磨いたり、専門職に就いたりすることで、強みをいっそう伸ばすことができるかもしれません。
特性に合った進路を選ぶことは、お子さんのストレスを軽減するだけでなく、自己肯定感を養うことにもつながります。
お子さんについて、「何ができて、何ができない・やりづらいか」「何をするのが好きで、何が苦手か」といった特性を理解し、進路選びに活かしましょう。
ポイント③準備は早めに進める

3点目は「準備は早めに進める」です。
発達障害の子どもが受けられる福祉サービスを調べたり、申請に必要な書類などを準備したりするのには、ある程度のまとまった時間が必要です。情報収集や申請の手続きなどは、余裕をもって準備を進めましょう。
例えば、本コラムの6章で解説する「高校の特例申請」のように、受験の願書提出よりも前に申請が必要となることもあります。
周囲の子どもと、同じスケジュール感で動いていると、支援を得られにくい場合があるのです。
ただし、今後「○○の申請締め切りを過ぎていた!」なんてことが発覚しても慌てないでください。
そこは落ち着いて「代替手段はないか」などを詳しい人に相談するようにしましょう。
実際に進学や就職が決まった場合においても、早めに受け入れ先と相談・調整しておくとよいでしょう。
その方が発達障害の子が馴染みやすく、先方も慌てることなく修学や就労がスムーズに進みます。
ポイント④本人の意思を尊重する

4点目は「本人の意思を尊重する」です。
- 本人が無理なく通い続けられる学校
- 本人が働きやすいと感じる就職先
このように、進路を決めるときには、本人の意思を尊重するようにしましょう。
発達障害は、「脳の機能の偏り」という本人ではどうしようもない部分が原因です。
「合わない環境(による困難・苦労)」などについても、本人の努力ですべてをカバーすることは難しいためです。
「発達障害の苦労は、本人の努力で全てカバーできるはず」
と、合わない環境で無理や我慢が続くと、意欲の減退や精神的なストレスに繋がることがあります。
さらには、うつ病や適応障害といった二次障害・精神疾患を引き起こすおそれもあります。
もちろん、発達障害に由来する苦労は、ある程度は工夫でカバーできますし、支援する人たちもたくさんいます。
ですから、大きな無理や負担にならないような、「ちょうど良い」環境を見つけ出すことが何よりも大切です。
そのときにカギとなるのは、お子さんの「自分に合っていそうだな」という感覚です。
「親として、発達障害の子どもの進路を決めてあげなくては」と、親御さんだけで背追い込むことがないようにしましょう。
ポイント⑤各進路の特徴を理解して判断する

最後のポイントは、「各進路の特徴を理解して判断する」です。
例えば、高校へ進学することに決めたとします。
後で詳しく解説するように、全日制高校と通信制高校では「通学と自宅学習のどちらを基本にするか」といった大きな違いがあります。
全日制高校ではクラスメイトとの交流が多いため、人と接することが好きな子どもには向いているかもしれません。
しかし、ASDのように、コミュニケーションにおいて特性が目立ちやすい場合には、「通信制の方が勉強しやすい」といったケースも考えられます。
このように、各進路の特徴を理解した上で、お子さんの特性と照らし合わせて判断することが大切です。
◆ ◆ ◆
次章からはいよいよ「小学校・中学校」「高校」「大学」の各発達段階で選べる進路を紹介していきます。
お子さんの年齢に応じて、必要な情報を優先してご覧ください。
小学校・中学校編:発達障害の子の3つの進路
それでは、具体的に選ぶことのできる進路を見ていきましょう。
特に、小中学校の時期は、子どもの発達や変化が著しいです。
この時期は、お子さんの悩みが深刻になっていないか、細やかに気を配ったり、さりげなく相談に乗ったり、進路を一緒に考えたりすることが特に大切です。
これらの点に注意しながら、進路の候補を確認していきましょう。
(参考:文部科学省『特別支援教育』、文部科学省『特別支援学級及び通級指導に関する規定』)
*小学校・中学校の進路早わかり表*
進路 | 特徴 |
---|---|
通常学級 | 大人数でクラスが編成される、 スタンダードな学級 |
特別支援学級 | 障害のある子ひとりひとりに応じて 適切な教育を行うために編成された、 少人数(上限定員8人)の学級 |
特別支援学校 | 「幼稚部・小学部・中学部・高等部」があり、 心身に障害のある児童・生徒専門に 教育指導を行っている学校 |
進路①通常学級

1つ目は「通常学級」です。
通常学級とは、基本的には教師1名に対して、生徒40名(小1は35名)などの大人数でクラスが編成される、スタンダードな学級です。
通常学級は、定型発達の(いわゆる一般の)子どもと一緒に学べるのがメリットです。
一方で、場合によってはクラスメイトとうまくコミュニケーションを取れなかったり、勉強についていくのが困難になったりするケースも見られます。
あくまでも発達障害の程度によりますが、可能性として考えられるデメリットを上に挙げてみました。
このように、何らかの困難が生じたときは、先生と相談の上で「合理的配慮」を受けられる可能性も。
例えば、書字障害の子なら「特別にタブレットのような電子端末の使用許可を得る」といったことが、この「合理的配慮」にあたります。
また勉強とは別に、障害に応じた特別指導を受けられる「通級指導教室」(通称:通級)や「特別支援教室」などを組み合わせることで、大きな困難を感じることなく進級・卒業できる場合もあるでしょう。
通級指導教室は、障害のある本人が在籍校から拠点校に通って指導を受けるものです。
一方、特別支援教室は在籍校に教員が巡回に来るため、移動・送迎の負担が軽減されます。
いずれのサポートを受ける場合も、担任やカウンセラーの先生との相談が基本になります。
お子さんが発達障害に伴う悩みを抱えているときは、まずは相談してみましょう。
進路②特別支援学級

2つ目は「特別支援学級」です。
特別支援学級とは、障害のある子どもそれぞれに応じて、適切な教育を行うために編成された、少人数(上限定員8人)の学級のことです。
したがって、特別支援学級には、知的障害や肢体不自由など、発達障害に限らない障害のある子どもが在籍しています。
指導は教員と保護者が一緒に作成した「個別の指導計画・教育支援計画」に基づいて行われる。
⇒お子さんの障害に合わせた指導を受けられる点が大きなメリットです。
先生・保護者・専門機関を中継したり、相談もできたりする「特別支援教育コーディネーター」が配置されており、安心感が高い。
基本は、学校に設置された特別支援学級内で指導を受けます。その上で、給食・体育・音楽の時間は通常学級で行動するなど、その子の状況によって柔軟な対応が取られています。
ちなみに、学校によっては特別支援学級を設置していないところもあります。
進学の際には、あらかじめ確認するようにしましょう。
進路③特別支援学校

3つ目は「特別支援学校」です。
特別支援学校とは、心身に障害のある児童・生徒に対し、障害特性に配慮しながら自立に必要な教育指導を行っている学校のことです。「幼稚部・小学部・中学部・高等部」があり、それぞれ幼稚園・小学校・中学校・高等学校に準じた教育を施しています。
前の項目で述べた「特別支援学級」同様に、発達障害以外にも、知的障害や視聴覚障害など、様々な障害のある子が在籍しています。
それぞれが、「個別の指導計画・教育支援計画」に基づく指導を受けています。
1クラス平均3人で構成される少人数教育が基本。
教員は通常の教員免許に加えて特別支援学校の教員免許を持っており、障害への知識・理解が深い。
「教科書についての配慮」があり、視覚や聴覚に障害のある子どもや、計算能力に困難を抱える子ども向けに作成された教科書を使用
⇒学習障害のある子でも勉強しやすい。
また、他の学校の行事に参加したり、地域の人と催事やボランティア活動を通じて交流したりといった機会もあります。
なお、入学条件は学校によって異なり、障害者手帳が必須ではない学校もあります。
特別支援学校を検討される際は、市区町村の教育委員会に問い合わせる、地域の特別支援学校のホームページから問い合わせるなどして、早めに準備を進めましょう。
私たちキズキ共育塾は、発達に特性のあるお子さんのための完全個別指導塾です。進路/勉強/受験/生活などについて、無料相談ができます。大学合格実績多数。お気軽にご連絡ください。
LINEで問い合わせ中学校卒業編:発達障害の子の8つの進路
また、受験の際には、本コラムの6章にあるような特別措置を受けられる場合もあります。
進学の手続きは、担任の先生や専門機関に相談しながら早めに準備を進めることが大切です。
*中学校卒業後の進路早わかり表*
進路 | 特徴 |
---|---|
全日制高校 | 平日の朝から夕方に授業を行う、 通常修了年限が3年間の一般的な高校 |
定時制高校 | 昼、または夕方からの時間帯などで 授業を受ける高校 |
通信制高校 | 自宅学習がメインの高校。 「レポート提出」や「スクーリング」などで 卒業単位を修得する |
高等専修学校・ 高等専門学校 | 「職業」に直結した専門的な知識や 技能を学べる学校 |
特別支援学校の高等部 | 個別の指導計画に基づき、 障害に合わせて通常の高等学校相当の 教育を実施 |
高等特別支援学校 | 特別支援学校の「小学部」「中学部」などがなく 「高等部」のみを単独で設けている学校 |
チャレンジスクール、 クリエイティブスクールなど | 発達障害や知的障害、 不登校になった生徒などに支援教育を行っている、 都道府県独自の学校 |
進学せずに就職する | 就職先が見つからないときは、 「障害者職業能力開発校」などで職業訓練を 受ける道もある |
進路①全日制高校

1つ目は「全日制高校」への進学です。
全日制高校とは、「高校」と聞いて一般的にイメージされる、平日の朝から夕方に授業を行う、通常修了年限が3年間の課程の高校です。
基本的には小中学校における「通常学級」に相当するものです。
定型発達の(いわゆる一般の)子と一緒に学んだりと同じ経験をすることができるのがメリットです。
一方で、進級・卒業に必要な「出席して授業を受ける」「定期考査で合格点(赤点以上の点)を取る」ことが負担になることもあります。
全日制高校は、発達障害の「程度」が軽い場合には、(多少の苦労があることや工夫が必要なことは否定しませんが、)進路として有力な選択肢になり得ます。
その上、小・中学校同様に発達障害の特性に対して、「合理的配慮」(例:電子端末の使用など)を受けられる可能性もあります。
「程度」が軽くない場合でも、最初から「入学・通学・卒業は無理だ」と決めつけずに、支援体制について学校に確認・相談してみましょう。
合わせて「校風・体制・進路指導」といった基本事項の確認も忘れずにしてください。
進路②定時制高校

2つ目は「定時制高校」への進学です。
定時制高校とは、全日制高校と異なり、昼、または夕方からの時間帯などで授業を受ける高校のことです。
定時制高校の授業のコマ数は、1日4コマが目安。
⇒全日制高校よりも自由な時間が多く、調子を見ながら通いやすい。
⇒その代わり、高校によっては卒業にかかる年数が4年になるところもある。
発達障害があるかどうかにかかわらず、高校中退者や学び直しの方など、様々な背景のある人が在籍している。
⇒年齢を越えた幅広い交流を持つことができる。
そのため、全日制高校の同質性・均質性に息苦しさを感じやすいという子は、定時制高校を候補に入れるのもよいかもしれません。
なお、定時制高校では、後述する通信制高校と同様に、「技能連携校」へ並行して通うことができます。
技能連携校とは、就職に役立つような技能教育を行う高等専修学校のことで、条件次第ではそこで学んだ単位を高校の卒業単位に充てることができます。
進路③通信制高校

3つ目は「通信制高校」への進学です。
通信制高校とは、学校から送られてくる教科書や動画といった教材を使う、自宅学習がメインの高校です。基本的に「授業への出席」ではなく、「レポート提出」や「スクーリング」などで卒業単位を修得していきます。
学校に行く必要があるのは、基本的に「スクーリング」と呼ばれる特定の日のみです。
毎日ではないので対人関係の負担がかなり軽減されます。
進級の際の「留年」がなく、子どものペースで単位を取って行くことができる。
⇒全日制高校の授業のペースに不安がある場合にオススメ。
登校日数が少ないので、人とのコミュニケーションが苦手な子にもオススメ。
全日制・定時制高校と同様に、卒業すれば「高卒」となり大学受験できるのもメリット。
日常的に登校するのは困難でも、学校行事を楽しみたい、集団行動を通じて社会性を養いたいという場合は、文化祭やスポーツ大会などを多く催している通信制高校を選択することもできます。
また、お子さんだけでは通信制高校での勉強が難しい場合は、発達障害のある子どもの指導実績がある塾で補うという方法も。
通信制高校と連携する「サポート校」という制度もありますので、合わせて検討してみるとよいでしょう。
進路④高等専修学校・高等専門学校

4つ目の進路は、「高等専修学校」「高等専門学校」への進学です。
高等専修学校と高等専門学校(高専)の2つは、いずれも「職業」に直結した専門的な知識や技能を学べる学校です。
特に、ASDに見られる強い「こだわり」を、専門職への就労に結び付けたい人などが視野に入ると思われます。
一方、発達障害に伴う「こだわり」を学究的な方面に活かしたい人、現時点で「大学進学」を視野に入れている人には、あまりオススメできないかもしれません。
(大学や専門学校からも当然ながら各関連分野に就職する道があります。)
職業もしくは実生活において必要な知識・技能を習得できる「専修学校の一課程」である。
「工業/農業/医療/衛生/教育・社会福祉/商業実務/服飾・家政/文化・教養」の8つの専門分野を学ぶことができる。
修業年数3年以上かつ特定の条件を満たす課程を修了すると、大学受験資格が得られる(全ての高等専修学校ではない)。
⇒高等専修学校卒業とは、学歴上「高卒」とは少し異なります。
発達障害のある生徒は全体の約9%在籍しており、発達障害へのサポート体制を整えた学校も多い。
技術者になるために、いわゆる五教科などの一般科目と、工学・技術・商船などの専門科目の両方を学べる学校のこと。
より高度な技術者・専門職を目指すための学校なので難易度が高め。
お子さんが興味がありそうなら、具体的に向いていそうか・発達障害に関する支援体制はあるかなどを、学校に個別で確認するようにしましょう。
(参考:文部科学省『中学卒業後のもう一つの進路 高等専修学校』)
(参考:全国高等専修学校協会『高等専修学校とは?』)
進路⑤特別支援学校の高等部

5つ目は「特別支援学校の高等部」への進学です。
特別支援学校の高等部では、個別の指導計画に基づき、障害に合わせて通常の高等学校相当の教育を施しています。
幼稚部~中等部との違いは、就労を目指した職業教育にも力を入れている点です。
具体的には、以下のような職業訓練が行われています。
- 企業への職業実習
- 農作業
- 工芸品の製作体験など
学歴は「高卒」ではなく、「特別支援学校高等部卒」となる。
⇒卒業すれば大学受験の資格を得ることができる。
⇒厳密にいうと、「特別支援学校高等部卒」では「高卒」の求人に応募できない(対応は企業により異なる)。
これは学校教育法において、高等学校と特別支援学校が別々に定義されているためです。
法律上は異なる種類の学校として扱われているので、「高等学校卒」にはならないということですね。
進路⑥高等特別支援学校

6つ目は「高等特別支援学校」への進学です。
高等特別支援学校とは、特別支援学校の「小学部」「中学部」などがなく「高等部」のみを単独で設けている学校のことです。障害のある人の中でも、一般企業への就職ができる可能性が高い生徒に対して、就労に向けた教育に力を入れています。
特別高等支援学校は、職業訓練を念頭に置いたカリキュラムになっているため、卒業後に大学へ進学して勉強したいという人を想定していません。
そのため、「特別支援学校の高等部」と同様に、大学受験資格は得られるものの、学歴上は「特別支援学校高等部卒」という形で、通常の「高卒」とは区別される点には注意が必要です。
進路⑦チャレンジスクール、クリエイティブスクールなど

7つ目は「チャレンジスクール、クリエイティブスクールなど」への進学です。
チャレンジスクールとは、特別支援学校とは別に、発達障害や知的障害、不登校になった生徒などに対して支援教育を行っている、東京都の学校です。他の地域でも似たような趣旨の学校があり、それぞれ独自のネーミングがついています。
チャレンジスクールの形態は、定時制の単位制高校です。
幅広い選択可能科目を設置したり、カウンセリング体制を充実させたりと、様々な事情を抱えた生徒のニーズにあわせた新しい試みを行っています。
東京都の例をご紹介しました。他の道府県でも似たような趣旨の学校が設けられている場合があります。
■東京都
・エンカレッジスクール
・トライネットスクール
■神奈川県
・クリエイティブスクール
■埼玉県
・パレットスクール
それぞれの学校によって、特色があります。例えば、エンカレッジスクールでは授業時間を30分に短縮したり、トライネットスクールではインターネットなどの情報通信技術を取り入れた教育を行ったりしています。
進路⑧進学せずに就職する

最後は「進学せずに就職する」という進路です。
学歴が中卒であることが「悪い」という意味では決してありません。ですが、残念ながら現代日本の現実では、「中卒」と「その後の学校の卒業」では、選択肢や待遇が大きく変わるためです。
例えば、厚生労働省の統計によれば、以下の通りです。
・中卒→「35.4%」これに対し、
・高卒→「56.3%」
・大卒→「80.9%」
このように最終学歴によって大きな開きがあります。
(参考:厚生労働省『平成30年若年者雇用実態調査の概況』)
正社員の割合が少ないということは、つまり働き先や待遇の選択肢が少ないということです(「一般的に非正規雇用はよくない」という意味ではもちろんありません)。
そして、特に発達障害の特性がある場合、選択肢が少ないという状況は、それ以上に「苦労」につながる可能性が高いのです。
ただし、もちろんお子さんの「個性」は人それぞれです。
発達障害者の就労に詳しい人の協力を得るなどすれば、ぴったりの職種・就職先に巡り合える可能性も、もちろんあります。
中卒で働きたいにもかかわらず、なかなか職種・就職先が見つからないときは、自治体の設置している「障害者職業能力開発校」などに入校する、といった方法もあります。
障害者職業能力開発校では、就労に必要な自己管理から、アプリ開発、総合事務といったビジネススキルの訓練まで、1日8時限まで訓練を受けることができます。
ただし、入校するためには診断書が必要なことに加えて、開発校が実施する選考に合格する必要があります。
募集は入学する前の年の12月頃から始まるため、前もって窓口となるハローワークに必要な書類や準備を問い合わせるようにしましょう。
補足として、「一旦は中卒で働いてみたけれど、やっぱり大学や専門学校で学びたい」といった場合、日本では再チャレンジできる制度が整っています。
下記の参考コラムでは、中卒からの大学受験について解説していますので、参考にしてみて下さい。
高校卒業編:発達障害の子の3つの進路
*高校卒業(程度)からの進路早わかり表*
進路 | 特徴 |
---|---|
各種大学(通信制含む) | 複数学科を兼ね備える総合大学のほか 美術大学や商業大学などもあり |
専門学校 | 医療・介護・デザイン・服飾・アニメなど、 専門分野ごとに就職に結びつくような 実践的な知識や技能の習得を目指す学校 |
進学せずに就職する | 一般就労のほか、 福祉的就労(就労継続支援A型・B型事業)、 公的な職業訓練機関や就労支援サービスもあり |
進路①各種大学(通信制含む)

1つ目は「各種大学(通信制含む)」への進学です。
専門ごとに多様な大学があります(複数学科を兼ね備える総合大学のほか美術大学や商業大学など)。修学年数も4年生の大学から、2年生の短期大学など様々です。
基本的には、発達障害のあるご本人の興味・関心や、将来就きたい職業などを考慮して選ぶことになるかと思います。
大学の形態は、各キャンパスに通って講義・演習を行うスタイルのほか自宅学習が基本となる「通信制大学」も。
通信制ならレポートや課題をこなすことで単位を取得し、卒業することができる。
⇒集団で講義を受けるのが苦手な発達障害の子どもも、自分のペースで勉強できるのでオススメです。
大学によっては、発達障害のある学生向けに、受験時の特別措置を実施している場合があります(受験時の特別措置については、高校を例に後で紹介します)。
そして、入学後も「障害学生支援室」で、様々なサポートを受けることができます。
(例)専門の支援員による修学相談、講義やレポート提出のスケジュール管理などのアドバイス
大学進学を検討しているなら、早めに学校の先生や受験校に問い合わせるようにしましょう。
進路②専門学校

2つ目は、「専門学校」への進学です。
専門学校は、専門分野ごとに就職に結びつくような実践的な知識や技能の習得を目指す学校です(医療・介護・デザイン・服飾・アニメなど、)。
基本的に、卒業にかかる年数は2年ですが、学校によっては3年や4年のところもあります。
特定の職能を身につけて、就職に活かしたい人にオススメです。
また、大学同様に、専門学校でも相談次第では発達障害の特性に応じた「合理的配慮」を受けることが可能です(学習障害で文字の読み書きに時間がかかる場合には、写真撮影や電子端末の使用許可が得られるなど)。
具体的な配慮の内容・程度は学校ごとに異なりますので、発達障害の特性を伝えた上で問い合わせてみるとよいでしょう。
進路③進学せずに就職する

最後の進路は「進学せずに就職する」です。
2020年現在、高卒で就職した人は約18万人います。
(参考:文部科学相『令和2年3月高等学校卒業予定者の就職内定状況(令和2年3月末現在)に関する調査について』)
中卒での就職の項でご紹介した「正社員の割合」データも改めて見てみましょう。
・中卒→「35.4%」
・高卒→「56.3%」
・大卒→「80.9%」
(参考:厚生労働省『平成30年若年者雇用実態調査の概況』)
大卒に比べると、正規雇用での就労はやや難しい傾向にあります。
そのため給与や待遇・キャリア面を総合的に考えると、大卒で就職した方が希望の就職先を見つけやすいかもしれません。
とはいえ、「これ以上進学するよりも早く働きたい」という人には就職が大きな選択肢となるでしょう。
もし高卒でそのまま就職するのが難しい場合には、中学の項目で述べた「職業能力訓練開発校」や「ハローワーク」など、発達障害者向けの公的な職業訓練機関を頼るのも有効です。
特に通信制や定時制の高校生は時間の融通が利きやすいため、学業と並行して職業訓練を受けることも可能かもしれません。
ところで、就職にあたって「一般就労」が難しい場合は、「福祉的就労」という選択肢もあります。
その名のとおり、一般的にイメージするような「就職」です。
民間企業のほか公的機関などに就職し、他の従業員と同様「労働者」として働くことになります。
国のルールとして「障害者を一定の割合で雇用しなければならない」と定められているため、「障害者雇用枠」が設けられているところも多いです。
主に上の一般就労が難しい人を対象とした就労形態です。
こちらは、国の施策として障害者に対して就労支援する「福祉サービス」であり、専門的なサポートを受けながら働いたり訓練を受けたりすることができます。
福祉的就労には次の2種類があります。
・就労継続支援A型事業:雇用契約に基づく就労が可能な人が対象
・就労継続支援B型事業:雇用契約に基づく就労も困難な人が対象
さらには、「就労移行支援事業所」という就労支援サービスもあります。
こちらでは、プログラミングや会計などの専門スキルの習得の他に、就職先の紹介や企業へのインターンなど、就職に直結する可能性の高い就労支援サービスを、最低0円から受けることが可能です。
発達障害であることを証明する診断書があればサービスを受けられますので、興味があれば気になる事業所に問い合わせたり、「障害者就業・生活支援センター」に相談してみるとよいでしょう。
なお、「やっぱり大卒での求人に応募したい」「学び直しをしたい」という人は、働きながらでも大学受験を目指すことはできますので、就職をした後にも状況に合わせて進路を変更することは充分可能です。
私たちキズキ共育塾は、発達に特性のあるお子さんのための完全個別指導塾です。進路/勉強/受験/生活などについて、無料相談ができます。大学合格実績多数。お気軽にご連絡ください。
資料を無料ダウンロード発達障害の子が進路を選択するときの特別措置について~高校入試の特例申請を例に~

発達障害の子が進路選択をするときには、特別な措置を得られる場合があります。
具体的には、入学試験の際に、以下のような合理的配慮を受けられます。
- 別室受験
- 試験時間の延長
- 問題用紙の読み上げ
- 介助者の同席
- 監督者による口述筆記
- 面接の際の回答を急かさない
こうした特例申請は、基本的には在籍校で申請を行い、教育委員会を介して手続きが進められます。
ここでは、高校入試の特例申請の手続きの流れを挙げておきます。
- 在籍する中学校に申請の相談をする
- 中学を通して教育委員会へ連絡がいく
- 教育委員会から中学校経由で申請用紙をもらう
- 必要事項を記入して中学校に提出する
申請用紙が受理されたら、在籍校・受験校・教育委員会で受験者の障害特性や中学校での指導状況を考慮し、前に述べたような措置が取られることになります。
特例措置を希望する場合は、在籍する学校にできるだけ早い段階で相談するようにしましょう。
申請の締め切りが受験の願書提出よりも早いことが多いため、注意が必要です。(参考:文部科学省『高等学校の入学試験における発達障害のある生徒への配慮の事例』)
私たちキズキ共育塾は、発達に特性のあるお子さんのための完全個別指導塾です。進路/勉強/受験/生活などについて、無料相談ができます。大学合格実績多数。お気軽にご連絡ください。
校舎一覧を見る(オンライン校は全国対応)まとめ〜発達障害でも進路の選択肢はたくさんあります〜

ここまで、発達障害のある子の進路選択のポイントから、発達段階ごとの進路、得られる特別措置について解説してきました。
お子さんに合いそうな進路は見つかりましたか?
周囲の人たちと意見を交えながら、お子さんが伸び伸びとした生活を送ることができるようにサポートをしましょう。
このコラムが、発達障害の本人と親御さんが少しでも楽になる手助けとなれば幸いです。
さて、この記事の運営元である株式会社キズキは、様々なお悩みを抱える人たちのための支援事業を行っています。
「キズキ共育塾」は、一人ひとりに合わせた授業を行う個別指導塾であり、発達障害の人たちの支援・勉強指導にも実績があります。
「キズキビジネスカレッジ」では、発達障害のある人たちの就労を支援しています。
ともに、少しでも気になるようでしたら、お気軽にお問い合わせください。
お子さんのための進路を、一緒に考えていけると思います。