
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
こんにちは、発達障害や不登校・中退などのお子さんを勉強・メンタルの両面から完全個別指導で応援するキズキ共育塾です。
そんなとき、通信制高校を選択肢として考える方も多いのではないでしょうか。
通信制高校は通学の負担を減らして学びやすい環境を整えており、編入や転入の手続きも比較的スムーズに行うことができます。
そこで今回の記事では、通信制高校への編入・転入で後悔しないためのポイントについて徹底解説します。
また、高1・高2・高3と、学年別に注意したいポイントについてもまとめました。
この記事はこんな方におすすめ!
結論から言うと、通信制高校へは、「学年の切り替わり」で「転入」することがオススメです。(参考:文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)」とその解説』、リセマム『公立高9割以上が最低履修単位数を超えて設定…文科省調べ』)
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目次
まずは、この「転入」と「編入」の違いから見ていきましょう。
もしかしたらご存知の方も多いかもしれませんが、念のため通信制高校への「編入」と「転入」の違いについて、ここでは簡単に触れておきます。
編入とは、今までの高校を一旦退学し、新しい高校(通信制など)に入り直すことをいいます。
*「編入」の特徴と注意点*
編入は、一旦退学という形をとるのが最大の特徴です。
そのため、今までの高校については「中退」したことになります。
そして、どこの高校にも在籍しない空白期間ができるため、高校卒業のために必要な「在籍3年以上」という条件を満たすために、結果として卒業時期が延びます。
編入後は、それまでに修得ずみの単位を差し引いて、新たにカリキュラムを編成し、卒業までに必要な単位の修得をめざして再スタートを切ります。
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転入は比較的シンプルで、退学せずに学校を変えることをいいます。
小中学校で、家庭の事情などで転校するお子さんもいますが、それと同じイメージです。
*「転入」の特徴と注意点*
転入は在籍期間に切れ目がないため、スムーズにいけば通算・最短3年間で卒業できます。
転入後の単位の扱いについては、編入の場合とほぼ同じで、それまでに修得ずみの単位を差し引いて、新たにカリキュラムを編成します。
図で見ると分かるとおり、転入の方が流れとしてはシンプルでメリットも大きいです。
もし転入を検討される場合は、ちょうど学年の切れ目となる4月で転入する、という形が理想かもしれません。
早速ですが、通信制高校への編入・転入をする前に、検討しておきたいポイントがあります。
「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないためのポイントは次の3つです。
退学届よりも、できれば次の新しい学校選びを先に進めましょう。
次の新しい学校の目処が立っていると、その学校から今後の高校卒業までの道のりについて具体的なアドバイスが得られます(スクーリングは週○日、卒業は3月で間に合うかなど)。
通信制高校という大枠の仕組みは一緒ですが、学校ごとに細かい点はそれぞれ異なります。
早めにいくつかの学校に目星をつけ、編入・転入に向けて動き出すのがよいでしょう。
また、学校によっては出願できる地域(住まい)が限定されることがありますので、合わせて確認しておくことが必要です。
次に入学時期のチェックです。
よって、編入を考えている場合は、学校選びの際に入学時期もしっかりと確認しておきましょう。
編入時期がかなり先になる場合は、それだけ空白期間も長くなります。
*編入学時期の例*
学校名 | 入学時期 |
---|---|
NHK学園高等学校 | 前期出願1月〜4月頃 後期出願8月~9月頃 |
ヒューマンキャンパス高等学校 | 随時(主には4月/10月) |
ルネサンス高等学校 | 4月、7月、10月、1月(年に4回) |
このように、学校によって編入時期は異なります。
傾向として、おおむね春と秋には編入できることが多いようですが、この入学時期を見据えて早めに学校選びを進めるとよいでしょう。
続いては、学費を抑えるためのポイントについてお話ししておきます。
通信制高校の学費は、基本的に単位数を元にして計算されます。 (例)「授業料」:単位数×1万円
学費は「授業料」のほか、施設設備費・スクーリング費・諸経費などもかかりますが、こちらは単位に応じてではなく、固定で必要な費用になります。
よって、学費を抑えるには、「授業料」を決める元となる「単位数」がカギ、ということになります。
少し極端ではありますが、以下のようにシミュレーションしてみましょう。
【高校2年生の1月頃、欠席が多くなり転向を検討】
↓↓↓
A. そのまま2月で通信制高校に転入
⇒引き継ぎできる単位:高1の分だけ(約30単位目安)
⇒通信制高校では:全74単位-30単位=残り44単位分の授業料が必要
B. 3月末まで何とか出席日数を確保し、年度の切り替わりで通信制高校に転入
⇒引き継ぎできる単位:高1の分と高2で何とか確保できた分(例えば50単位)
⇒通信制高校では:全74単位-50単位=残り24単位分の授業料でOK!
もちろんお子さんの希望や心身の状況を考えることは第一ですが、少しの違いで学費が大きく変わることも知っておきましょう。
こちらのシミュレーションでは、数ヶ月ずれただけでも、修得単位に20単位の開きが出ました。
これは、全日制高校では、通常「学年の最後に単位を認定」するしくみになっているからです。
このような高校の単位のしくみについては、次章で解説します。
まず高校の単位の大原則として、「高校卒業までに74単位を取ることが必要」です。
それぞれの学校は、これを大原則として、卒業までに必要な単位を決めることができます。
単位の計算については、高等学校学習指導要領に、標準的な計算が定められています。
単位については、1単位時間を50分とし、35単位時間の授業を1単位として計算することを標準とする。ただし、通信制の課程においては,5に定めるところによるものとする。
つまり1回50分の授業を35回受けて1単位が取得できる、ということです。
もう少し詳しく見てみましょう。
全日制の課程における各教科・科目及びホームルーム活動の授業は、年間35週行うことを標準とし、(以下省略)
全日制の課程における週当たりの授業時数は、30単位時間を標準とする。
全てまとめると以下の通りです。
これが、全日制高校の標準的な計算方法です。
これに成績が加味されて、通常学年の最後に単位の認定が行われます。
通信制高校は、毎日の授業を基にして単位を計算することができません。
そのため授業の代わりに、以下を基にして単位を計算していきます。
*通信制高校のレポートやスクーリングの標準【1単位あたり】*
教科・科目 | レポート(添削指導) | スクーリング(面接指導) |
---|---|---|
国語,地理歴史,公民及び 数学に属する科目 | 3回 | 1コマ |
理科に属する科目 | 3回 | 4コマ |
保健体育のうち「体育」 | 1回 | 5コマ |
引用:文部科学省『高等学校学習指導要領(平成30年告示)』
通信制高校は、単位の認定時期についても年度末の1回だけでなく、複数回設けられていることが多いです。
補足として、高校の在籍期間は3年以上と決まっています。
高等学校の修業年限は、全日制の課程については、三年とし、定時制の課程及び通信制の課程については、三年以上とする。
ですから、通信制高校で猛勉強して単位を早く取ったからといって、「早めに卒業する」という訳にはいきません。
全日制・通信制など合わせて3年以上在籍し、なおかつ決められた単位を修得して、はじめて卒業することができるのです。高1は、いわゆる「再スタート」の年です。
高1の途中で全日制高校を中退した場合、実はまだ1年間の学習を終えていないため単位を修得できていません。
新しい学校で引き継ぐ単位はまだ無いため、「編入」ではなく「再入学」として1から再スタートすることになります。
厳密にいうと、高等学校学習指導要領(平成30年告示)によれば、「学年の途中でも学期ごとに単位を認定することもできる」とされています。
ですが、それは1つの学期である科目の授業を集中的に行った、といったような例外的な場合のみに適用されます。
それに、学期ごとの単位認定は学校としての義務ではありませんので、対応してくれるかどうかは学校により異なります。
そのため、高校1年の途中で退学に至った場合は基本取得単位はない、と思っておいた方がよいでしょう。
一方、転入する場合はどうでしょうか。
高1の途中での転入は、まだ単位を持っていないという点では再入学と同じです。
しかし、通信制高校では「転入は随時受け付けている」ことが多く、比較的柔軟に転入まで進めることができます。
そして、高校に在籍していない「空白期間」がないため、順調にいけば全日制の高校生達と同じく3年間で卒業することができるでしょう。
補足として、高1の学年末に編入・転入する場合は、単位が認定されますので、次の学校に引き継ぐことができます。
高2は、「単位引き継ぎの年」と言えます。
高2の途中で全日制高校から通信制へ編入・転入する場合、高1で頑張った分の単位を引き継ぐことができます。
ただし高2になってから受けていた授業の分の単位を引き継ぐことはできません。
高1のところでお伝えしたとおり、通常単位は学年の最後に認定されます。
そのため、高2で学んでいた分は、単位認定されていないことが多いです。
*高2で「編入」した場合の流れ*
*高2で「転入」した場合の流れ*
補足ですが、高2の学年末に編入・転入する場合は、高2までの単位をすべて引き継ぐことができます。
高3は、「ラストスパートの年」です。
全日制高校で高校3年生まで進学できたならば、卒業まであと少しとなります。
できれば編入・転入に踏み切る前に、不登校対応施設で学ぶなどの方法がないかなど、一度検討しておきましょう。
ですが、既に出席日数が足りないなどで編入・転入を考えるケースもあると思います。
高3の途中で全日制高校から通信制へ編入・転入する場合、高2までに頑張った分の単位を引き継ぐことができます。
ただし、高3になってからの授業の分の単位は、特別な場合を除いて原則引き継ぐことはできません。
この単位引き継ぎの考え方については、高1・高2のところでお伝えした内容と同じです。
加えて、高3となると卒業までのラストスパート期であることから、特に以下の点には注意しましょう。
「転入」とは、基本的に通算3年間で卒業できるのが特徴でした。
ですが、高3後期で転入すると、卒業が後ろにずれ込む可能性が高くなります。
なぜなら、通信制高校で単位を修得するためには、「添削○回・面接指導○回」などをこなす必要があり、ある程度の期間が必要だからです。
もし、ラスト4ヶ月で猛勉強したとしても、なかなか難しいということになります。
高校3年生は、就職や大学への進学を控えた大切な時期です。
スムーズに希望する道を進めるように、できるだけお子さんをサポートするように心がけましょう。
この章では、通信制高校への編入・転入を迷っているご家庭のために、どのようなメリットがあるのかをご紹介します。
*通信制高校への編入・転入のメリット*
「どうしても朝起きれない」
「毎朝お腹が痛くなる」
このように、体調を崩すことが多く、高校への通学が難しいというお子さんもいるでしょう。
しかし、それは通信制高校に転校することで解決する可能性もあります。
通信制高校では、毎日通学する必要がないため、体の負担がかなり軽減されます。
ですので、学習の方は体調を見ながら、自宅中心でマイペースに進めてみましょう。
これまで体調を崩しやすく、勉強に集中できなかったお子さんでも、比較的安心できるようになるのではないでしょうか。
ここまでご紹介してきましたように、転入や編入をすると前の学校で修得した単位を活かすことができるのも大きなメリットです。
全日制高校で取得した単位も合算して、効率的に高校卒業を目指すことができます。
●単位は1コマ50分授業×35回で1単位として計算するのが標準。
●そして全日制の授業活動は、週30コマ×年間35週が標準。
↓↓↓
●単純計算すると、全日制では年間におおよそ30単位修得できることになります。
↓↓↓
●例えば高1で30単位修得できれば、全74単位-30単位=残り44単位
上記のような場合、あと44単位で卒業が見えてきますので、単位の引き継ぎができるのは大きいと言えるでしょう。
高校の学習内容が難しく、学業面での理由で、高校が通いづらい場所になった人も多いでしょう。
通信制高校も同じ高等学校ですから、学習の量や質は全日制・定時制と同じであるべき、という考えが根幹にあります。
ですが、通信制は現役の高校生だけでなく、社会人・高齢の方など、様々な背景を持つ人たちの学びの場にもなっています。
このことをふまえ、通信制の学習内容は、より基礎的な内容となっているのが特徴です。
そのため、一度勉強にブランクがあったとしても、学習が進められるように工夫がされています。
ちなみに、入学時の選考については、それほど対策は必要ありません。
このように、通信制高校の入学選考は「落とすためのテスト」ではありません。
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学校での先生や友達、先輩・後輩との人間関係で、学校生活で疲れやすい人もいると思います。
クラス替えなどのタイミングで、今まで慣れた環境が一新されて、気を遣う機会が増えて疲れることもあるでしょう。
しかし、通信制高校なら自宅学習がメインになるため、周囲に気を使う機会も減ります。
さらには、学校にもよりますが、スクーリングの日程を「月○日・週1日〜3日」などといったように、選択することが可能です。
大学進学コースなどによっては、週3日などと限定されていることもありますので、この点は資料請求などを通じてあらかじめ調べておきましょう。
メリットの一方で、通信制高校へ編入・転入する上では、デメリットもあります。
そこで、ここからは通信制高校への編入・転入のデメリットについて解説します。
ここまで紹介してきたポイントと同じ部分もありますが、改めてまとめましたので参考にしてみて下さい。
*通信制高校への編入・転入のデメリット*
まずは、編入のデメリットからご紹介します。
編入とは、前の全日制高校を一旦退学して、新しい高校に入り直すことです。
つまり、編入はいったん高校を「中退」したという扱いになります。
これがデメリットが表面化するのは、次のような場合が考えられます。
履歴書を書くのは、主に就職のときです。
また、社会人になってから、プロフィールを公開する機会があるかもしれません(もちろん、全て公開する必要はありません)。
あるいは、仕事や資格の関係で、官公庁などに「経歴書」といった書類を出すことも多いです。
もしこの点が気になる方は、編入ではなく転入を選択すれば、「中退」ではなくなります。
ちなみに、筆者は人事採用を間近で見て、実際の採用も経験してきました。
これは個人的な意見ですが、途中で高校を転校していれば、編入・転入に関わらず履歴書には2つの高校名が並ぶことになります。それを見て、まず採用担当としては、「高校に入り直したんだな」という事実を認識します。
その際、1つ目の高校に「中退」と書いてあるかどうかは重要視しません。中退かどうかは制度上のことであって、「入り直した」という本質は同じだからです。
注目ポイントはむしろそこではなく、「その後ちゃんと卒業できたかどうか」。
「色々あったけど卒業した」「未来に向けてこんな意欲がある」
このあたりが重要ポイントになるかと思われます。
次も編入のデメリットです。
編入はどこの高校にも在籍していない「空白期間」があります。
その分、卒業時期が本来の3月より延びることになります。
高校は3年以上在籍しないといけない決まりになっているためです。
実は通信制高校は、卒業時期が3月・9月などと、決まっているところが多いです。
全日制高校のように3月だけ、というところもあります。
ですので、3月を見送った場合は、最低でもその半年後の9月となるのが一般的です。
単位の取得状況や学校の卒業制度によっては、さらに1年後の3月になることもあるでしょう。
3つ目のデメリットは、通信制高校全般に対して言えることです。
通信制高校は世間に知られていない側面があるため、周りの人とのやりとりでわずらわしさを感じることがあるようです。
このように色々聞かれるたび、うまく答えるのに苦労することもあるかもしれません。
特に、これまで通ってきた全日制高校が進学校や名門校であった場合、周囲の視線は少なからず変わってくるでしょう。
もちろん、相手も悪気があって聞いてくる人ばかりではないでしょう。
しかし、残念ながら、人を肩書きで見る人が多いのも事実です。
ですが、通信制高校は、国が認めた制度なのですから、ネガティブに考える必要はありません。
自分なりにきちんと学んで、生活が充実しているのであれば、堂々と答えるようにしましょう。
通信制高校は学習内容が比較的易しいため、お子さんによっては「簡単すぎる」と逆に大学進学が不安になることもあります。
そんなときは、通信制高校の他に、塾などを利用するとよいかもしれません。
特に、「不登校や高校中退などからの大学受験対策」に力を入れているところなら、より安心です。
集団授業を行う塾が苦手な場合は、オンライン対応の個別指導塾がオススメです。
マンツーマンで自分のレベルに合わせた指導が受けられるので、大学受験に向けて効率的に勉強を進められるでしょう。
通信制高校生の勉強や通信制高校からの大学受験に、完全個別指導で対策できます
キズキ共育塾を詳しく知る『キズキ共育塾』は、通信制高校での勉強をサポートする個別指導塾です。
不登校・中退など、様々な事情を持つ方が目標に向かって勉強をしています。
通信制高校では自宅学習がメインとなるため、どうしても孤立しやすいと思います。
もし、勉強に不安がある場合は、お気軽に私たちキズキ共育塾までお問い合わせください。