
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
キズキ共育塾の岡田和哉です。
今回は、通信制高校について、
そもそも通信制高校とは何か、
通信制高校の特徴は何か、
通信制高校のメリット・デメリット、
主な学校の紹介と選び方のポイントなどを、まとめて紹介します。
通信制高校への入学・編入・転入を検討しているあなたの参考になれば幸いです。
目次
通信制高校とは、
毎日登校する必要がなく、
テキストや動画を通じて自宅などで勉強し、
「レポートの提出」「スクーリング(対面での授業)」「試験」などで単位を修得する高校のことです。
登校する必要がないために、全日制高校(毎日通う高校)の生徒と比べると自由な時間が多くなります。
もちろん「高校」ですので、卒業すれば学歴は「高校卒業」になります。
全日制高校に比べて、いろいろな人たちが通っていることが、通信制高校の特徴の一つです。
「いわゆる普通の高校生」も大勢いますが、
働きながら通う人、
中学まで不登校だった人、
毎日通学したくない人、
集団生活が苦手な人、
自分のペースで生活したい人、
芸能活動をしている人、
などなど、様々な人が在籍しています。
また、全日制高校に比べて、他の高校から転入・編入してきた人が多いのも特徴です。
例えば平成29年度では、一度高校を中退して「別の高校」または「同じ学校の別の学科」に編入した6,107人のうち、76.7%(4,682人)が通信制高校を選択しています(文部科学省「平成29年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」)。
通信制高校を卒業するには、
①74単位(以上)の取得
②3年間(以上)の在籍期間
③30時間(以上)の特別活動
の3つの条件が必要になります(文部科学省「高等学校学習指導要領」)。
①単位は、各科目で、授業(添削・指導)を受け、課題を提出し、試験に合格することで取得できます。
②在籍期間は、文字どおり「高校に在籍している期間」のことです。
単位と在籍期間の卒業条件は、通信制高校以外の高校も同じです。
また、編入の場合は、以前在籍していた高校で取得した単位や在籍期間を引き継ぐことができます。
③特別活動とは、ホームルーム、体育祭、修学旅行などの、「授業以外の、学校行事など」のことです。
①〜③以外にも、学校が独自に定めた要件をクリアする必要がある場合もあります。
通信制高校生は、「通学して授業を受ける」のではなく、自宅などで教科書や動画を見て勉強します。
学校によって教材が異なるので、どのような自宅学習を行うのかを確認しましょう。
レポートとは問題集のような内容のもので、郵送やインターネットで学校に提出します。
教科書などを見ながら回答することもできるため、比較的難易度は高くありません。
科目や学校によっても違いますが、基本的に1単位当たり2~4枚程度のレポート提出が必要になります。
スクーリング(対面での授業)とは、学校などに登校して先生から直接授業を受けることです。
基本的には一般的な学校の授業を想像してもらって構いませんが、私立の通信制高校を中心に、少人数制の授業や個別指導のスクーリングを行う学校もあります。
内容は、いわゆる五教科に加えて、実技科目の保健体育・芸術・家庭・情報のほか、学校ごとに様々な選択科目の授業があります。
スクーリングの回数・形態は学校によって違い、週5日、月に数回、年に数日の合宿などがあります。
各科目の単位は、レポートとスクーリングを行った後、試験に合格することで取得できます。
通信制高校の試験は年に1~2回行われることが多く、各学校の指定する試験会場で行われます。
基本的に、レポートとスクーリングの内容の中から出題されるため、しっかり復習を行っていれば難しくありません。
試験に落ちた場合は単位が認められず、次回行われる試験をもう一度受けることになります。
通信制高校の学費は、全日制高校同様、学校によって大きく違います。
公立など年間3万~5万円程度で通える学校から、私立を中心に10万~100万円程度かかる学校まで様々です。
学費の違いは、主にはスクーリングの内容の違いによります。
一般的に、スクーリングの回数が多いほど学費が高くなる傾向があります。
なお、通信制高校も「就学支援金」などの各種支援金・奨学金などが利用できます。
学費が気になる場合は、学校や役所に問い合わせるなどして、利用できそうな制度があるか調べてみましょう。
前述のとおり、通信制高校には、別の高校からの転入生・編入生が多いことも特徴です。
転入とは、前の学校を中退しないうちに次の学校への転校手続きを行うことを言います。
編入とは、前の学校を中退した後に、次の学校に入ることを言います。
転入も編入も、前の学校で単位や在籍日数がある場合には、次の学校に引き継ぐことができます。
特に通信制高校では、「転入は随時受けつけるが、編入は時期が固定されている(例えば4月・9月のみ)」という学校もよくあります。
通信制高校への転入・編入を考えているのであれば、自分の状況と、転入・編入を考えている高校の受け入れ制度を確認することをお勧めします。
通信制高校の勉強は自宅学習が中心となるため、自分のペースで行えることがメリットです。
自分のペースで勉強できるということは、生活時間も比較的自由になるということです。
そのため、「働きながら」、「自分のやりたいことをやりながら」学ぶことが可能です。
自由な時間をうまく活用できれば、全日制高校に通うよりも将来の選択肢を広げることができます。
通信制高校は学校によってサービスの内容が大きく違うため、自分の要望に合った高校を探すことができます。
・スクーリングの回数・内容
・学費
・「プログラミング」や「美容」など学びたい分野
・イベント(課外活動)
・サポート体制
など、様々な観点から選ぶことができます(後で詳しく説明します)。
通信制高校の卒業率は、全日制高校より低い傾向にあります(言い換えると、中退率が高いということです)。
平成29年度では、
全日制高校の中退率は0.9%(29,588名)、
通信制高校の中退率は4.9%(8,814名)です(下図参照/文部科学省「平成29年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」)。
これは、自宅で自力で学習する仕組みが関係しているようです。
つまり、ひとりでは勉強が進まない人が単位を取得できずに中退する傾向にあるということです。
「自分ひとりでは勉強できない」
「勉強の仕方がよくわからない」
と思う方は、勉強のサポートをする塾などに通いながら卒業を目指すことをおすすめします。
卒業率(中退率)は学校によって大きく異なるため、気になる学校があれば、卒業率も調べてみましょう。
通信制高校には、「生徒の高校卒業」を事実上の目的としている学校も多く、卒業後に向けたサポートが少ない学校が多いです。
通信制高校を卒業した人の進路を見ると、
「大学等進学者」は約18%、
大学以外の専門学校などを合わせた進学率も約40%です(文部科学省「平成29年度『学校基本調査』)。
18歳全体の80%以上が大学や専門学校などに進学している現状から考えて、通信制高校からの進学率は低いと言っていいでしょう(文部科学省:「18歳人口と高等教育機関への進学率等の推移」)。
また、平成28年度の通信制高校卒業生は52,266名いるのですが、そのうち、
明確に進学も就職もしていない人は20,714名と、約40%です(不詳・死亡も含む/下図参照/文部科学省「平成29年度『学校基本調査』)。
「高校卒業後の進路」についても、相談できる学校かを確認し、学校で相談できないなら他に相談できる場所がありそうかを探しましょう。
ここからは、どのような観点で通信制高校を選ぶことができるか、ポイントを6点ご紹介します。
それぞれのポイントをよく考えた上で、各学校のウェブサイトを見たり、相談・見学を行ったりして、よく検討しましょう。
公立か私立かという軸は、現実的には「学費」が主な意味になると思います。
先述のとおり、公立の学費は、一般的には私立よりも安いです。
ただ、これも先述のとおり、入学金や授業料(学費)には、各種支援金・奨学金が利用できます。
入学金などが高額な学校であっても、最初から「無理だ」と思い込まず、各種制度を調べることをお勧めします。
一つ、意外な観点かもしれませんが、公立の通信制高校は、私立と比べて卒業率が低い(=中退率が高い)のです。
公立の通信制高校の中退率は6.3%(3,739人)で、
私立の通信制高校の中退率は4.2%(5,075人)です(文部科学省「平成29年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」)。
中退率は、公立か私立かというよりも各学校の特徴による部分もあると思いますし、中退自体は「悪いこと」ではありません。
ただ、学費以外にも、卒業率(中退率)がどうなっているか、その理由は何かなども、可能な範囲で調べることをお勧めします。
通信制高校には、「広域通信制高校」と「狭域通信制高校」があります。
広域通信制高校は、3つ以上の都道府県で生徒を募集できます(つまり、学校の所在する都道府県に住んでいなくても、その学校の生徒になることができます)。
近年は広域通信制高校が増加傾向で、株式会社が運営している学校は多くが広域通信制高校です。
狭域通信制高校は、基本的には学校が所在する都道府県に在住している人のみが生徒になることができます。
通信制高校を探す際には、「自分が住んでいる地域で、その学校の生徒になれるか(、なれない場合は引っ越すか)」も確認・検討しましょう。
日々の勉強方法は、学校によって、紙の教科書で勉強するのか、(ネット経由で)動画などを使って勉強するのかなどの特徴があります。
タブレットやスマートフォンで学べる環境を用意していて、ほとんどの学習をネット上で完結できる学校もあります。
紙の教材とデジタル教材のどちらが優れているかは一概には言えませんが、もし自分が紙とネット(動画など)のどちらに向いているか(向いていないか)がわかっているようなら、教材も選択のポイントとなります。
また、スクーリングについても、
・回数はどれくらいか、
・会場はどこか、
・少人数指導や個別指導があるか、
などもポイントです。
スクーリングの頻度や内容は、勉強はもちろん、「他の生徒との交流」「制服の有無(≒制服を着る機会の大小)」などにも関係するので、しっかり調べましょう。
通信制高校は、学校によって様々なコースがあるのも特徴です。
「IT」「アニメ・ゲーム」「ファッション」などが学べるコースや、
「簿記」「PC関連」の資格を取れる高校など、様々なものがあります。
また、サポート校・技能連携校・高卒認定コースなどの、「学校の勉強」にプラスして学べる環境が(どれくらい)あるかも確認しましょう(後で詳しく述べます)。
「いわゆる五教科」以外を高校で学ぶかどうかも、高校選択の重要なポイントです。
学校によっては、「修学旅行」や「文化祭」などの課外活動(イベント)を行っているところもあります。
そうした課外活動が好きか苦手かも、選ぶポイントの一つになるでしょう。
部活動については、通学回数の少なさや場所の確保の難しさから活動頻度が少なくなりがちではありますが、実施している学校もあります。
課外活動も、スクーリング同様、「他の生徒との交流」や「制服の有無(≒制服を着る機会の大小)」などにも関係します。
通信制高校は自習が中心となるため、学習のサポート体制が大切になります。
個々の生徒に合った勉強方法の指導や、生活指導・勉強習慣をつけるためのサポートを行う学校もあります。
電話や対面で相談に乗ってくれる体制があるか、
学習が遅れがちな生徒にどのようにアプローチするのか、
など、サポート体制も学校によって違うので、確認することが大切です。
また、デメリットに書いたように卒業後の進路に課題がある高校も多いため、キャリア教育や進路指導などの体制についても、必ず確認しましょう。
「今の時点では卒業後の進路なんて考えられない」という方も多いでしょうが、だからこそ相談に乗ってもらえる体制があるかは重要です(サポート体制が充実した通信制高校は、後で紹介します)。
通信制高校生には、「通信制高校の勉強」と並行して、高校以外で勉強できる施設があります。
また、高校通学と高卒認定試験の合格を同時に行うことで、より早く大学などの受験が可能になる場合もあります。
以下、説明していきます。
サポート校とは、通信制高校に通う生徒の学習を支援する施設で、学習塾や予備校のような存在です。
普通の塾との違いは、
・通信制高校生ならではの、学習方法指導や進路相談
・特定の通信制高校と提携した、その学校に合わせたカリキュラムやスケジュール
などに対応していることです。
サポート校は、名前のとおり「サポート」が目的であり、サポート校で授業を受けただけでは単位にはなりません。
サポート校にも特色があり、日常の勉強に加えて大学受験のサポートをしているところもあれば、ITやデザインなどの専門知識を学べる学校もあります。
特に勉強が不安な方は、進学を考えている通信制高校にサポート校があるかということもポイントになるでしょう。
サポート校の詳細は、コラム「通信制高校の『サポート校』って何?〜サポート校の概要・メリット・注意点など〜」をご覧ください。
技能連携制度とは、通信制高校と同時に、連携している「技能教育施設(専門学校など)」に通い、両方で学ぶことができる制度です。
工業系や社会福祉系など様々なコースがあり、高校の勉強に加えて専門技術を身につけることができるのが特徴です。
進学を考えている通信制高校がどのような施設と連携しているか、自分に向いていそうな施設があるか、確認してみましょう。
「高卒認定試験」とは、
「『高卒者と同等かそれ以上の学力がある』と認定されるための文部科学省の資格」
であり、合格すると大学や専門学校の受験資格などを得ることができます。
また、「高卒」が受験資格である一部の公的資格や一部の公務員試験の受験も可能になります。
通信制高校には、この「高卒認定試験」の合格を目指すコースを設けている学校もあります。
高卒認定試験は科目ごとに合否判定されるものであり、高校で一定の単位を取得した科目については受験が免除されます。
つまり、高卒認定の取得を目指すコースでは、
・高校で単位を取得して、高認受験の免除を狙う
・高認の勉強をして、高認の合格を狙う
の2つのルートから、高校を卒業せずに、大学などの受験資格取得、一部の資格・就職試験を目指せるということです。
すでに大学受験などの目標が定まっている場合は、高認合格によって受験勉強に早く取りかかれるようになることもあります。
また、「ある高校を中退して、空白期間があって通信制高校に編入した場合」は、高校卒業に必要な「3年間の在籍期間」を考えると、元々の同級生と同じタイミングでの卒業・大学受験はできません。
高認を取得すると、高校を卒業しなくても大学などの受験が可能になりますので、元々の同級生と同じタイミングで大学受験ができるようになる場合もあります。
なお、「高認合格」は、学歴としては「高卒」にならないことに注意が必要です(例えば、高校を卒業せずに「高認合格」を経て進学した大学を中退したりすると、学歴としては「中卒」になります)。
さてここからは、キズキ共育塾の知見から、
・サポート体制が充実している通信制高校5校
・大学受験に向けた勉強指導が従事した通信制高校3校
をご紹介します(並び順に意味はありません)。
それぞれ特色あるカリキュラムなどが用意されており、スクーリング会場も多く存在します。
ウェブサイトを見たり、問い合わせや見学などを行ったりして、これまでにご紹介したポイントを検討しつつ、どの高校を選ぶか決めましょう。
①代々木高等学校(私立・広域)
通信制高校の中では比較的老舗で、面倒見のよい学校です。
②さくら国際高等学校(私立・広域)
こちらも不登校支援を長く行っており、面倒見がよい学校です。
③クラーク記念国際高等学校(私立・広域)
日本最大の通信制高校で、「普通の学校」に近いイメージです。
行事や部活にも力を入れているので、学校生活を楽しみたい生徒さんには好まれます。
また、「国際」の名のとおり、留学プログラムなどもあります。
④NHK学園高等学校(私立・広域)
名前のとおり、NHK(日本放送協会)の外郭団体が運営する学校です。
NHK高校講座の視聴により、スクーリングが少なくて済みます。
⑤ルネサンス高等学校(私立・広域)
サポートも厚く、オンラインの学習が充実しています。登校日は、最短だと年4日間です。
①屋久島おおぞら高等学校(私立・広域)
通信制高校の中でも、学力の高い生徒が多いようです。
②駿台甲府高等学校 通信制課程(私立・広域)
駿台予備学校グループの高校です。
大学受験に向けた学習は、駿台予備学校グループの良質な授業・個別指導・映像学習など全面的な学習支援をフル活用できます。
③つくば開成高等学校(私立・広域)
運営方針として、大学受験対策にも力を入れています。
以上の高校は、最終的には「あなたに合いそうかどうか」ということがポイントになります。
それぞれの特徴を押さえた上で、問い合わせを行ったり、説明会や相談会などで実際に雰囲気を確かめていただいた方がよいでしょう。
すべての高校をチェックするのは難しい面もあるかと思いますので、ご自宅からの距離などで対象を絞っていただくのがよいかもしれません。
どうやって選べばいいのかわからない…と思う場合は、キズキ共育塾にご相談ください。
通信制高校についての基本的な情報、メリット・デメリット、選び方のポイントなどを紹介してきました。
通信制高校は、「学費」「コース」「サポート体制」「学校の雰囲気」など、学校によって様々です。
「どのように学校を選ぼう」とお悩みになることも多いと思います。
キズキ共育塾には、通信制高校に通う生徒さんや、通信制高校から大学などに進学した卒業生が大勢います。
「どのような高校がいいか」も含め相談は無料で行っておりますので、お気軽にご連絡ください。
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