
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
こんにちは。キズキ共育塾の土井です。
不登校の方や、不登校のお子さんを持つ親御さんは、「不登校になったら就職できないのではないか」と心配されているのではないでしょうか。
不登校経験者が就職したという実例を聞く機会がなく、将来が不安になる人も多いと思います。
結論としましては、不登校を経験していても就職できます。
私は中学時代に1年半の不登校の時期がありました。
また、高校には進学したものの約半年で退学しています。そんな私も就職することができました。
しかし、不登校経験者の就職には、難しい点や苦労する点があることも事実です。
そこで今回のコラムでは、不登校経験者の就職を考える上で知っておきたい大切なことを、経験者の視点からお伝えします。
↑動画では、このコラムの内容に関連して、不登校経験のある大学生の就活の際、「高校までのことはほとんど聞かれない」「不登校経験を強みに変えることができる」ことについて、経験も踏まえてお話します。
ご興味がありましたら、ぜひご覧ください。
目次
冒頭でもお伝えしましたが、不登校を経験しても、就職することは可能です。
そもそも就職活動において、「不登校だった」という事実が不利になりそうなら、別に自分から話す必要はありません。
不登校に関連して留年や中退を経験している場合や、高校で不登校を経験して在学中に就職活動をする場合などは、話す(聞かれる)こともあるでしょうが、そうでない場合は、不利になりそうなら黙っていても問題ないのです。
しかしむしろ、不登校経験が活かせる場合もあります。
実際に、私自身の就職活動では、不登校経験がプラスに働いたと感じています。
私が新卒の就職活動を行っていたのは、大学生のときです。
私の場合は高校中退も経験していましたので、関連して中学時代の不登校についても触れざるを得ませんでした。
そうした経験が理由で、履歴書の時点で落とされたり、面接でつっこまれたりするのではないかと不安に感じていました。
蓋を開けてみるとそんな心配はなく、むしろ「不登校を乗り越えた経験」として高く評価していただきました。
また、第一志望の会社については、志望理由が不登校の経験に由来していたので、原体験に基づく説得力のある内容を伝えることができ、採用に至りました。
もちろん、企業や担当者によって不登校・中退への捉え方や評価はさまざまですが、私が恐れていたほどには不登校が影響することはなかったように感じました。
また、私以外にも、キズキ共育塾で話を見聞きする限り、「かつて不登校だったこと」と「就職活動の成否」は、必ず関連するものではないといっていいでしょう。
先ほどお伝えしたとおり、就職活動では、「過去の不登校」については、有利になりそうなら話せばいいし、不利になりそうなら言う必要はありません。
しかし、「不登校からのその後」の状態によっては、ちょっと注意が必要なこともあります。
以下、説明します。
「不登校を経て、高校を中退した」という方は、学歴が中卒です。
義務教育は中学校までなので、学歴が中卒であっても本来的には「問題」はないはずです。中卒で働いている人ももちろんいます。
ですが、現在の日本では、残念ながら中卒に対する求人は少ないというのが正直なところです。
高卒以上や大卒以上など条件を満たさないことによって、そもそも応募すらできない求人があることは知っておいたほうがよいでしょう。
また、何かしらの資格を取得したいと思ったときにも、高卒(以上)の学歴が必要な場合も少なくありません(例:美容師、保育士など)。
中卒状態から新たに「学歴」を身につける方法については、後で紹介します。
中卒からの就職については、コラム「中卒からの就職、行きやすい5つの業界をご紹介」をご覧ください。
高校で不登校からの留年を経験した場合や、高校不登校から高校生としての新卒で就職活動を行う場合には、面接の際に留年や不登校について聞かれることがあります。
毎日出勤してくれるか不安になる気持ちから質問されたり、単にパーソナリティーを知るために聞かれたり、ということです。
面接で突然質問されて動揺しないように、あらかじめ聞かれることは想定しておいた方がよいでしょう。
不登校の経験の有無に関わらずどんな面接でも言えることですが、相手を納得させられるような受け答えを練習したり、経験を積んでおいたりすることが大切です。
ただ、あなた一人だけで考えても「よい答え」は思いつかないこともあります。ですので、学校の就職支援係や就職エージェントなどにも相談しながら考えることをオススメします。
また、「事実に基づいた話をすると、どうしてもネガティブになるなあ…」と思う場合には、「その経験をこれからどう活かしたいか」という未来の話につなげたり、事実を多少「盛って」話したりすることくらいは、問題ありませんよ(全くのウソは見抜かれますが)。
就職活動では、「思わぬ質問」をされることがあります。
例えば、「中学校時代の生活について教えてください」などです。
あなたから「昔の不登校」について積極的に話さなくても、質問によっては答えざるを得ない場面が出てくる、ということです。
…と言うと不安に思うかもしれませんが、一般的に就職活動では、「今所属している学校(・職場)より以前のこと」はあまり聞かれません。
しかし、「いつか質問されるかも…」と心配していると、他の質問にも身が入らなかったりします。
「自分の不登校についてのまとめ」は、学校や就職エージェントにも相談しながら、簡単に話せるようにしておくと、不安はなくなると思います。
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不登校かどうかに関わらず、就職する上で高卒・大卒の資格は職業の幅を広げます。
とは言え、不登校だと進学について不安があるかもしれません。
この章では、中学不登校からの高校進学と、高校不登校からの高校卒業(大学受験資格)についてお伝えします。
なお、大学進学については、面接がある場合やAO入試の場合は「不登校であること」について聞かれるかもしれませんが、学力試験だけで判断される場合は、「不登校であったこと」は全く関係ありません。
全日制高校とは、一般的に「高校」と聞いてイメージする、「平日の朝から夕方まで授業がある高校」です。
中学時代に不登校だと全日制の高校には進学できないと思う人もいらっしゃるかもしれませんが、決してそういうわけではありません。
出席日数が少ない(内申点が低い)と進学できない高校があるのは事実です。
しかし、内申点を考慮しない高校もあります。また、1・2年生で不登校でも3年生で通学を再開すれば内申点に影響しない場合もありますし、不登校を積極的に受け入れている学校もあります。
中学で不登校だからといって、全日制高校への進学ができないわけではないのです。
自分の(お子さんの)出席日数・成績・性格などから、進学できそうな高校を探してみましょう。
一方で、高校不登校からの転校や、高校中退からの再入学を目指す場合、全日制高校は現実的には受け入れのハードルがかなり高いです。後述する通信制・定時制をオススメします。
高校は、全日制高校だけではありません。
中学不登校で自分に(お子さんに)合う全日制高校が見つからなくても、一度進学した全日制高校が合わなくて中退しても、別の形の高校があります。
その1つが、通信制高校です。
通信制高校は、基本的には学校から送られてくる教材に基づいて勉強を進めるスタイルの高校のことです。
スクーリングと呼ばれる月に数回~年に数回の学校への登校とレポートの提出によって単位を取得していきます。
自宅での学習が中心になるので、1人で進めていくのが難しい場合は塾や家庭教師を利用するとよいでしょう。
入学も、全日制からの編入や転入もしやすく、前の学校で取得した単位や出席日数を引き継ぐことが可能です。
通信制高校については、コラム「通信制高校とは?特徴・メリット・選び方・オススメの高校などをご紹介」をご覧ください。
私たちキズキではキズキ家学という不登校専門の家庭教師サービスを運営しています。ご本人だけ・親御さんだけでのご相談もOKですので、お気軽にご連絡ください。
キズキ家学を詳しく知る定時制高校も選択肢の一つです。
定時制高校は、全日制高校と同じく学校へは毎日通いますが、その時間帯が違います。
定時制高校の授業は、昼から、夕方から、夜からと全日制に比べて遅い時間に授業が行われます。
学校やコースによっては、卒業までに4年かかる場合もあります。
定時制高校も、入学・編入・転入がしやすく、編入・転入の場合は前の高校で取得した単位と出席日数を引き継ぐことが可能です。
次に当てはまるような人が合っているでしょう。
定時制高校については、コラム「定時制高校ってどんなところ?定時制出身の私が紹介する、定時制のリアル」をご覧ください。
大学や専門学校には行きたいけど、高校に通うのが難しい、高校は合わないという人には「高等学校卒業程度認定試験」(高認)を取るという方法もあります。
高認試験に合格すると、「高卒」が必要な大学・短大・専門学校などの受験・入学が可能になります。私も、高校中退から高認を経て大学に進学しました。
また、同じく、一部の資格試験・公務員試験・民間の就職活動も受けられるようになります。
高認試験は年に2回実施されており、6教科14科目のうち8科目の試験に合格すれば高認の資格を得ることができます。
高校で既に一定以上の単位を取得している場合は試験科目が免除されます。
また、8科目の試験は一度に合格する必要はなく、数回に分けて8科目の合格を目指すことも可能です。
学校によっては、高認試験の科目の合格を単位と認めてくれる場合もあるので、高校に通いながら高認試験を受ける選択肢もあります。
試験そのものは割と簡単なのですが、科目数は多いので、独学が難しい場合や勉強に慣れていない場合には、塾や家庭教師を利用するのがオススメです。
高卒認定についての詳細は、コラム「【すぐ読める】高卒認定試験とは?意外と簡単!取得のメリット・合格のポイントをご紹介」をご覧ください。
私たちキズキではキズキ家学という不登校専門の家庭教師サービスを運営しています。ご本人だけ・親御さんだけでのご相談もOKですので、お気軽にご連絡ください。
キズキ家学を詳しく知る高卒資格を取得することで就職の幅が広がるとお話ししてきましたが、手に職をつけることでも就職しやすくなります。
また、学校や会社に通うこと自体に難しさを感じている人には、就職だけにとらわれず、自分で仕事をつくっていけることや在宅でも仕事ができることも大切になってきます。
私は、現在キズキの講師の仕事も含め、在宅でできる仕事など複数の仕事を持っています。
仕事を探す際は求人サイト仕事のマッチングサイトをよく利用していますが、その中でこういったスキルがあれば、採用されやすい・仕事を受けやすい、と感じるスキルがいくつかあります。
今回は、そんな私の経験から就職や自分で仕事を進めていく上で役立つと考えられるスキルをご紹介します。
「このスキルがないと就職できない」というわけではありませんので、まずは気楽に参考としてご覧ください。
パソコンスキルを身につけることは、就職や自分で仕事を持つ上でも役立ちます。
今やほとんどの職業で、日常的にパソコンを使用しています。
しかし、スマートフォンが当たり前にある時代に育った今の学生は、パソコンを使用する機会が少なく、基本的なパソコンスキルが身についていない人も多くいます。
2018年の神戸新聞の記事では、スマートフォンの普及によりパソコン操作に苦戦する大学生が増えていることを報じています。
企業の新卒採用担当も全体の約6割が新入社員のパソコンスキルの不足を感じていると紹介されています。
WordやExcelなど仕事でよく使われるソフトを使いこなせるようにしておくと、同世代と差別化ができ、就職にも有利になるでしょう。
プログラミングのスキルは、就職でも自分で仕事をする上でも役立ちます。
プログラミングを学び、学んだ成果をWebサイトやアプリといった成果物としてまとめておくと就職試験の時に有利に働いたり、自分で仕事を獲得する上でも役立ちます。
プログラミングは書籍やインターネットで学ぶこともできますし、最近ではプログラミングスクールも増えています。
プログラミングは2020年に小学校、2021年には中学校でも必修化されるなどこれから必要なスキルです。
将来的に在宅でも仕事をしやすい職種なので、自宅で仕事をしたいという人は身につけておくと良いでしょう。
プログラミングを学んでみたいがどうすれば良いかわからないという方にオススメのサイトを1つご紹介します。
「Progate」というプログラミング学習サイトです。
Progateは基本無料で利用できます。ハイレベルな内容を学習したい方は有料プランの利用も検討してみると良いでしょう。
パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット端末での利用も可能です。気軽に取り組んでみましょう。
デザインのスキルもプログラミング同様に就職や自分の仕事で役立ちます。
デザインはプログラミング同様に成果として就職や仕事を獲得する上でアピールしやすいスキルです。
また、2018年に経済産業省・特許庁は「デザイン経営宣言」を行っています。
「デザイン経営宣言」の中で、デザインは、発明とイノベーションをつなぐものであると説明されており、これからの時代に必要なものであると考えられています。
こちらも経験を積めば在宅ワークなども可能なスキルです。自由に働きたいという方は身につけておくと良いスキルでしょう。
デザインを学ぶためのスクールだけでなく、書籍やインターネット上の講座などデザインを学ぶ方法はさまざまあります。
デザインについても無料で学べるサイトを1つご紹介します。
「Schoo(スクー)」という動画学習サイトです。
デザインについてのさまざまな講義があり、講義を視聴したり、実際に制作も行ったりすることでデザインを学ぶことができます。
また、「Schoo(スクー)」はデザイン以外にもプログラミングやマーケティングなど仕事に活かせる内容の授業もあります。合わせて学習すると良いでしょう。
ライティングのスキルはライターや編集者としての就職や仕事に役立ちます。
ライティングのスキルはライターや編集者などの職業を目指す人はもちろんですが、仕事で文章を扱うことは多いので、他の職種を目指す場合でもプラスになります。
ライティングの仕事は会社員として勤める形だけでなく、在宅ですることも可能です。
ライティングを学ぶための講座や書籍もあるので、興味のある人はチャレンジしてみると良いでしょう。
ライティングに関しても私のオススメを紹介いたします。
「伝わる・揺さぶる!文章を書く」(PHP新書・山田ズーニー著)という書籍です。
長年高校生の小論文の添削指導に関わってこられた著者の作品です。これまで当たり前に書いてきた文章について振り返り、新しく学ぶきっかけになる一冊です。
キズキ共育塾の卒業生には、不登校からの大学進学、そして就職活動を成功させた人もたくさんいます。
次の動画は、実際にそういう人のインタビューですので、ぜひご覧ください。
これまで見てきたように不登校だからといって就職できないわけではありません。自分が(お子さんが)不登校になっても、将来をあきらめる必要はありません。
大事なのは、不登校の後どのように歩んでいくかということです。
どんな部分で苦労や困難があり、どうすれば就職につながりやすいか知っておくことで将来に対しての不安を少しでも減らすことができます。
自分にあったやり方やペースで進路や就職を考えてみましょう。
さて、私たちキズキ共育塾は、不登校などでお悩みを抱える人のための個別指導塾です。
「不登校からの就職」については、直接的な支援は行っておりませんが、「就職の下準備となる、高校転校(卒業)、高卒認定取得」「そのための学び直し」については、進路相談も含めて全面的に協力が可能です。
相談は無料で行っておりますので、少しでも気になるようでしたら、お気軽にご連絡ください。
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