
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
そうした親御さんからは、次のような声をよくお聞きします。
そこで今回は、発達障害グレーゾーンの中学生の子どもに対して、親御さんができることを徹底解説いたします。
この記事を読んでわかること
この記事を最後までご覧いただくことで、グレーゾーンのお子さんと、そして親であるあなたの「よりよい、次の一歩」が見つかるはずです。
目次
※すでに発達障害やグレーゾーンについてご存知の方は、次章「発達障害グレーゾーンの中学生が感じやすい困りごと」までお進みいただいて大丈夫です。
アメリカ精神医学会の定める『DSM 精神疾患の診断・統計マニュアル』の第5版において、発達障害の一種であるアスペルガー症候群と自閉症が「自閉スペクトラム症」という言葉にまとめられて以来、発達障害の特性には「ムラがある」という考えが浸透するようになりました。そうした中で、特性はあるものの発達障害の確定診断が下りないことで悩んでいる「グレーゾーン」の人の存在が知られるようになったのです。
グレーゾーンの人たちは、発達障害の診断が下りている人とはまた異なる、悩みや生活上の困難を抱えています。
この章ではまず発達障害の種類と特性を簡単に確認してから、グレーゾーンの「問題点」を見ていきましょう。(参考:姫野桂『発達障害グレーゾーン』、アメリカ精神医学会『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』)
発達障害とは、先天的な脳の機能の偏りによって、社会生活やコミュニケーションに困難が生じている状態のことです。
発達障害には、主に次の3つの種類があります。(参考:厚生労働省『発達障害|病名から知る|こころの病気を知る』、村上由香『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本』)
この3種類の発達障害には、それぞれ以下のような特性が見られます。
①ADHDの特性
②ASDの特性
③LDの特性
発達障害は病気ではなく、あくまで「目立ちやすい特性がある」というだけです。グレーゾーンのお子さんも、日常生活などにおける「困難」は、過ごし方の工夫などで対策できますので、ご安心ください。
発達障害の中で、「診断が難しく、グレーゾーンになりやすい」と言われているのは、ASDの傾向です。
医師がASDを診断する際には、こだわりの強さや興味関心の狭さといった特性を考慮にいれます。
しかし、特にASDの傾向がある人は、特性に多少柔軟性があるケースが多く、確定診断に至らないことが多いと考えられています。
お子さんは、学校生活や学業に困難を抱えているから(=支援や配慮が必要だから)こそ、検査を受けています。
しかし、「グレーゾーン」と判定されることで(=発達障害と明確に診断されないことで)、サポートの対象外となることがある、ということです。
公的な機関であっても、福祉サービスの条件として「専門医による診断書」や「障害者手帳」の提示を求めるところは多くあります。
また、診断書がないことで、先生や同級生といった周囲から理解や配慮を得られず、「甘え・なまけではないか」と見られることもあるようです。
お子さんの発達障害について、医師の診断をまだ受けていないなら、専門医の受診をオススメします。軽微な特性であっても、確定診断が下りなくても(グレーゾーンと診断されても)、「ASDの傾向がある(ない)」などといった事実の認識・理解につながります。
ASD傾向が強い場合
ADHD傾向が強い場合
さらに、グレーゾーンのお子さんには、発達障害の直接的な傾向・特性とは別の面でも困りごとが生じます。
先ほども言ったとおり、グレーゾーンのお子さんには、発達障害の確定診断がありません。
そのため、先生から「不真面目だ」と受け止められて、内申点を下げられるなどという困難に直面する可能性もあります。
また、中学生は、小学生時代と比べて、部活動が活発になったり勉強が難しくなったりと、発達障害傾向のある子どもが、学校生活や学業でつまずく機会が増えると考えられています。
そうしたつまずきに直面したとき、グレーゾーンのお子さんは、次のように思い詰めることがあります。
そうした過度の自信喪失や気分の落ち込みは、次のような二次障害につながることもあるのです(一例です)。
私たちキズキ共育塾は、発達に特性のあるお子さんのための完全個別指導塾です。進路/勉強/受験/生活などについて、無料相談ができます。中学合格実績多数。お気軽にご連絡ください。
フォームで問い合わせまずは、お子さんの学校での様子に詳しい担任先生や、スクールカウンセラーの先生に相談してみてください。
また、まだ診察を受けていない方は、専門医による検査を受けてみることをオススメします。
上記の点に留意して、これから解説することを実践してみてください。(参考:鈴木慶太『親子で理解する発達障害 進学・就労準備の進め方』)
1つ目は「支援機関を利用する」です。
発達障害に関連する特性でお悩みの子どもが頼れる支援機関はたくさんあります。
支援者・支援機関の例
発達障害者支援センターは、発達障害に特化した公的な支援機関です。確定診断がなくても、発達障害と思しき特性が見られる場合は、無料相談ができます。臨床心理士・言語聴覚士・精神保健福祉士といった専門資格を持つ支援員が相談に乗ってくれるところもあります。
発達障害(グレーゾーン)の中学生への指導実績があり、また特に、個別指導を行っている塾であれば、発達障害に理解のある講師が、お子さんの特性や中学校での進度を考慮した、きめ細やかな指導を行います(私たち、キズキ共育塾もその一つです)。
親御さんやお子さんが通いやすい、または相談しやすいと思える支援機関を利用しましょう。
2点目は「特性を受け入れ、理解を深める」です。
親御さんの中には、「発達障害の特性は、本人の努力次第でカバーできる」という考えをお持ちの方がいます。
グレーゾーンは発達障害の程度が軽い場合がほとんどですので、「努力でカバーできること」は、ないわけではないでしょう。
しかし、発達障害(グレーゾーン)は先天的な脳の機能の偏りに起因するため、本人の努力だけではどうにもならない面も多くあります。
ポイント
ぜひ、お子さんの特性を受け入れ、「どんな困りごとを抱えているのか」「何が得意で、何が苦手なのか」といった理解を深めてください。
3つ目は「『親の会』で情報収集や意見交換をする」です。
発達障害には、その特性に応じた保護者の組織が存在します。
親の会に参加することで、同じグレーゾーンの中学生の子どもを持つ保護者と意見交換をしたり、悩みを共有したりできるでしょう。
インターネットで「発達障害 親の会」と検索すれば、多くの団体の活動が出てきますので、興味を持ったところに参加してみてはいかがでしょうか。
なお、親の会はそれぞれに目的や性質が異なりますので、一つの会が合わなかった場合にも、別の会を探してみることをオススメします。
「JPALD(特定非営利活動法人 全国LD親の会)」では、東北や関東など、各地を6ブロックに分けて、保護者による情報交換会、勉強会、LDの子の友達づくり、イベントなどを催しています。
4つ目は「ペアレントトレーニングを受ける」です。
ペアレントトレーニングとは
ペアレントトレーニングの内容には、以下のようなものがあります。
医療機関や教育機関などで講師を招き、上記のようなトレーニングを実施します。
もちろん、グレーゾーンの方も参加対象に含んでいる機関も存在します。
また、同じ悩みを抱えた保護者と情報を共有する機会も得られるかもしれません。
グレーゾーンのお子さんへの対応について、わからない部分があるという方は、お近くの機関で実施されているペアレントトレーニングを探して、受けてみてはいかがでしょうか?
最後は、「進路選びや高校受験の準備を早めに進める」です。
以下のように、準備を早めに進めることで、「お子さんに合った進学」ができる可能性が高まります。
(1)発達障害への特別措置について
発達障害であることが確定すれば、高校に発達障害であることを開示・相談した上で、受験の際に「試験時間の延長」や「別室受験」といった特別措置を受けられるようになります。
特別措置の申請締め切りは受験の願書提出よりも早いことが多いため、まだ検査を受けていないなら、早めに受けることをオススメします。
(2)内申点について
他の子どもたちと同じ条件で高校受験をする場合は、お子さんの内申点(調査書点)の状況を、学校に確認しましょう。
グレーゾーンの特性に関連して、内申点が低いようであれば、内申点があまり合否に関わらない高校や受験方式を探しましょう。
(3)高校の種類について
高校には、一般的にイメージされる全日制高校(平日に学校に通って、朝から夕方まで授業を受ける高校)以外に、通信制高校・定時制高校があります。
通信制高校とは
定時制高校とは
ASD傾向の強い子どもの場合は、時間の融通が効き、マイペースに勉強を進められる通信制や定時制が向いていることもあります。
(1)〜(3)のいずれにせよ、高校を選ぶ際は、お子さんの意思や希望を尊重することが大切です。
早めに準備を始めることで、情報収集、学校見学、受験校や受験方式の選択などがしやすくなり、お子さんの意志も固まりやすくなります。
ご家族の心がけでできることがほとんどですが、前提として大切なのは、ご家族だけで抱え込まずに、学校の先生や支援機関などを頼ることです。
特に、学業面での悩みが大きい場合、発達障害に悩む子どもの指導実績がある塾などであれば、詳細なアドバイスを得られるかもしれません。
以下、その前提をご理解の上でご覧ください。(参考:本田秀夫『自閉症スペクトラム』、小池敏英・奥住秀之『これでわかる学習障がい』)
ASD傾向の強いお子さんには、以下の3つのサポートが有効です。
ASDの人の多くは、耳からの情報よりも、視覚的な情報の方が理解しやすいと言われています。そのため、文章や図を用いたコミュニケーションを取ると、理解が比較的容易になるでしょう。具体的には、「日程を組むときにはタイムスケジュールを表にする」「やるべき課題などをリスト化する」といった工夫が効果的です。
ASDのお子さんには「聴覚過敏」などの過敏症が併存する場合があります。そのため、特に受験勉強をする時期などは、できるだけ静かな環境を整えるといった配慮が重要です。
ASDに見られる「過集中」への対策です。過集中とは、ASDの人が興味やこだわりの強い特定分野に取り組むときに過度な集中力を発揮して、休み知らずに活動を続ける状態のことを言います。過集中状態にあると、体力が保たなくなるほどぶっ続けで勉強をすることがあるため、親御さんの方で「休憩するように促す」などの対処が必要です。
ADHD傾向の強いお子さんには、以下の2つのサポートが有効です。
ADHDの「整理整頓が苦手」という傾向への対策です。机の上を整理する(必要な物のみを置く)ようにすれば、物を散らかすことを防げるだけでなく、勉強に集中しやすい環境を整えることもできるでしょう。
ADHD傾向が強い場合には、課題を漠然と捉えてはいるものの、「するべきことを細分化したゴールまでの道筋」を立てられないことがあります。例えば、夏休みの課題で問題集1冊、参考書1冊という単位で渡されると、「どうやって終わらせたらよいかわからない」と混乱した結果、やることを先送りにする可能性があるのです。そのため、課題を小分けにして、その日に取り組む分を決める手助けが有効です。その日にやる分だけを決めると、継続して取り組みやすくなるでしょう。
LD傾向のあるお子さんには、以下の2つのサポートが有効です。
LD傾向のある子どもは、例えば読字障害によって「教科書の文章がうまく読みづらいために理解が滞る」ことがあります。しかし、「音声情報であれば、発達障害のない子どもと同じくらいスムーズに理解できる」場合もあります。特性に合わせて、教科書を読みあげたり、音声データを利用したりと、苦手な方法以外の方法で理解するような工夫をするとよいでしょう。
例えば書字障害の傾向がある子どもの場合、先生の板書をノートに書き写すのに時間がかかります。しかし、書き写しではなくタブレット入力に切り替えるだけで、学習の困難が大幅に緩和される可能性があります。ご家庭だけでなく、学校でも、先生と相談の上で「電子機器を利用する」といった手段も有効です。
私たちキズキ共育塾は、発達に特性のあるお子さんのための完全個別指導塾です。進路/勉強/受験/生活などについて、無料相談ができます。中学合格実績多数。お気軽にご連絡ください。
LINEで問い合わせグレーゾーンのお子さんは、発達障害の確定診断が下りていない分、「自分の努力不足ではないか」といった悩みを抱えやすいため、困りごとがないかを注視し、できるだけ話を聞くことが大切です。
特に、中学生になると困りごとを抱える機会は増えますので、一層の注意が必要です。
その上で、親子の間だけで解決しようとするのではなく、医師や専門機関、塾などの専門家を頼るようにしましょう。
適切な情報やアドバイスを得ながら、親御さんの方でもサポートを行えば、お子さんの困りごとを充分減らすことができますので、ご安心ください。
このコラムが、発達障害の中学生本人と親御さんの助けになったなら幸いです。
私たちキズキ共育塾には、発達障害(グレーゾーン)の生徒さんが多く在籍しています。
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