発達障害グレーゾーンの中学生を持つ親御さんができること5選
そうした親御さんからは、次のような疑問や不安をよくお聞きします。
- 発達障害のグレーゾーンってそもそも何?
- グレーゾーンの中学生の子どもには、どんな困りごとがある?
- グレーゾーンの子どもとどう接してよいかわからない
そこで今回は、発達障害グレーゾーンの中学生の子どもに対して、親御さんができることをお伝えします。
この記事を読んでわかること
- 発達障害のグレーゾーンとは何か
- グレーゾーンの中学生によくある困り事
- 傾向別・グレーゾーンの中学生に親御さんができること
この記事を最後まで読んでいただくことで、グレーゾーンのお子さんと、そして親であるあなたの「よりよい、次の一歩」につながるはずです。
目次
発達障害の「グレーゾーン」とは?
※すでに発達障害やグレーゾーンについてご存知の方は、次章「発達障害グレーゾーンの中学生が感じやすい困りごと」までお進みください。
アメリカ精神医学会の定める『DSM 精神疾患の診断・統計マニュアル』の第5版において、発達障害の一種であるアスペルガー症候群と自閉症が「自閉スペクトラム症」という言葉にまとめられて以来、発達障害の特性には「ムラがある」という考えが浸透するようになりました。
そうした中で、特性はあるものの発達障害の確定診断が下りないことで悩んでいる「グレーゾーン」の人の存在が知られるようになったのです。
グレーゾーンの人たちは、発達障害の診断が下りている人とはまた違った、悩みや生活上の困難を抱えています。
この章ではまず発達障害の種類と特性を簡単に確認してから、グレーゾーンの「問題点」を見ていきましょう。(参考:姫野桂『発達障害グレーゾーン』、アメリカ精神医学会『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』)
①発達障害の主な3種類と特性
発達障害とは、先天的な脳の機能の偏りによって、社会生活やコミュニケーションに困難が生じている状態のことです。
発達障害には、主に次の3つの種類があります。(参考:厚生労働省『発達障害|病名から知る|こころの病気を知る』、村上由香『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本』)
- ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- ASD(自閉スペクトラム症)
- LD(学習障害)
この3種類の発達障害には、それぞれ以下のような特性が見られます。
①ADHDの特性
- 忘れ物や記入漏れなどのミスが多い
- 確認作業がうまくいかない
- 整理整頓が苦手で、物を失くすことが多い
- 気が散りやすく、貧乏ゆすりなど常に身体を動かしていないと落ちつかない
- 他人の意見に耳を傾ける前に発言したり行動したりする
- 優先順位をつけることが苦手で、場当たり的になりやすく、締切を守りづらい
②ASDの特性
- 場の状況や上下関係に気が回りづらく、TPOに合わせた行動が難しい
- 話を聞いていないと誤解されやすい
- 質問の意図、身振り、比喩、冗談などを理解しづらい
- 報告、連絡、相談がうまくできない
- 決まった順序に強いこだわりを見せる
- 予定が変わるとパニックになりやすい
- 聴覚過敏などの過敏症を伴う場合が多い
③LDの特性
- 単語や言葉の聞き誤りが多い
- 筋道立てて話すことが苦手
- 文字の発音が難しい
- 誤った文字を書く
- 数字の位取りが理解しづらい
- 応用問題、証明問題、図形問題が苦手
発達障害についての補足
発達障害は病気ではなく、あくまで「目立ちやすい特性がある」ということです。
グレーゾーンのお子さんも、日常生活などにおける「困難」は、過ごし方を工夫することで対策できますので、ご安心ください。
②特にASD傾向の方がグレーゾーンになりやすい
発達障害の中で、「診断が難しく、グレーゾーンになりやすい」と言われているのは、ASDの傾向です。
医師がASDを診断する際には、こだわりの強さや興味関心の狭さといった特性を考慮にいれます。
しかし、特にASDの傾向がある人は、特性に多少柔軟性があるケースが少なくないため、確定診断に至らないことが多いと考えられています。
③グレーゾーンの問題点〜診断はなくても特性・困難はある〜
お子さんは、学校生活や学業に困難を抱えているから(=支援や配慮が必要だから)こそ、検査を受けています。
しかし、「グレーゾーン」と判定されることで(=発達障害と明確に診断されないことで)、サポートの対象外となることがある、のです。
公的な機関であっても、福祉サービスの条件として「専門医による診断書」や「障害者手帳」の提示を求めるところは多くあります。
また、診断書がないことで、先生や同級生など周囲からの理解や配慮を得られず、「甘え・なまけではないか」と見られることもあるようです。
診断についての補足
お子さんの発達障害について、医師の診断をまだ受けていない場合は、専門医の受診をオススメします。
軽微な特性であっても、確定診断が下りなくても(グレーゾーンと診断されても)、「ASDの傾向がある(ない)」などといった事実の認識・理解につながります。
発達障害グレーゾーンの中学生が感じやすい困りごと
ASD傾向が強い場合
- 「暗黙の了解やルールを理解しづらい
- 雰囲気を読まずに思ったことを口に出す
- 上記の結果、先生や同級生との意思疎通が難しく感じる
ADHD傾向が強い場合
- 「注意散漫で授業に集中できない」「配布物などを忘れたり紛失したりする」といった、学校生活全般における困りごとを感じる
さらに、グレーゾーンのお子さんには、発達障害の直接的な傾向・特性とは別の面でも困りごとが生じます。
先ほども言ったとおり、グレーゾーンのお子さんには、発達障害の確定診断がありません。
そのため、先生から「不真面目だ」と受け止められて、内申点を下げられるといったことが起こる可能性もあるのです。
また、中学生は、小学生時代と比べて、部活動が活発になったり勉強が難しくなったりと、発達障害傾向のある子どもが、学校生活や学業でつまずく機会が増えると考えられています。
そうしたつまずきに直面したとき、グレーゾーンのお子さんは、次のように思い詰めることがあります。
このような過度な自信喪失や気分の落ち込みは、次のような二次障害につながることもあります(一例です)。
- うつ病・ノイローゼ
- 不登校
- 引きこもり
発達障害グレーゾーンの中学生の子どもを持つ親ができること5選
まずは、お子さんの学校での様子に詳しい担任先生や、スクールカウンセラーの先生に相談してみましょう。
まだ診察を受けていない方は、専門医による検査を受けてみることをオススメします。
上記の点に留意して、これから解説することを実践してみてください。(参考:鈴木慶太『親子で理解する発達障害 進学・就労準備の進め方』)
①支援機関を利用する
1つ目は「支援機関を利用する」です。
発達障害に関連する特性でお悩みの子どもが頼れる支援機関はたくさんあります。
支援者・支援機関の例
- 担任の先生
- スクールカウンセラー
- 専門医
- 発達障害者支援センター
- 発達障害(グレーゾーン)に理解のある学習塾
- 発達障害(グレーゾーン)の「親の会」(後述します)
発達障害者支援センターの補足
発達障害者支援センターは、発達障害に特化した公的な支援機関です。確定診断がなくても、発達障害と思しき特性が見られる場合は、無料相談ができます。
臨床心理士・言語聴覚士・精神保健福祉士といった専門資格を持つ支援員が相談に乗ってくれるところもあります。
学習塾の補足
発達障害(グレーゾーン)の中学生への指導実績があり、また特に、個別指導を行っている塾であれば、発達障害に理解のある講師が、お子さんの特性や中学校での進度を考慮した、きめ細やかな指導を行います(私たち、キズキ共育塾もその一つです)。
親御さんやお子さんが通いやすい、または相談しやすいと思える支援機関を探しましょう。
②特性を受け入れ、理解を深める
2点目は「特性を受け入れ、理解を深める」です。
親御さんの中には、「発達障害の特性は、本人の努力次第でカバーできる」とお考えの方がいます。
グレーゾーンは発達障害の程度が軽い場合がほとんどですので、「努力でカバーできること」がないわけではないでしょう。
しかし、発達障害(グレーゾーン)は先天的な脳の機能の偏りに起因するため、本人の努力だけではどうにもならない面も多くあるのです。
ポイント
- お子さんの特性を理解して受け入れることで、親子ともに、周囲の人への配慮や理解を求めやすくなります
- 発達障害に伴う特性を受け入れることは、お子さんの「特性」を「個性」として尊重することにつながり、お子さんの自己肯定感を高めます
ぜひ、お子さんの特性を受け入れ、「どんな困りごとを抱えているのか」「何が得意で、何が苦手なのか」といった理解を深めてください。
③親の会で情報収集や意見交換をする
3つ目は「『親の会』で情報収集や意見交換をする」です。
発達障害には、その特性に応じた保護者の組織が存在します。
親の会に参加することで、同じグレーゾーンの中学生の子どもを持つ保護者と意見交換をしたり、悩みを共有したりできます。
インターネットで「発達障害 親の会」と検索すれば、多くの団体の活動が出てきますので、興味を持ったところに参加してみてはいかがでしょうか。
なお、親の会はそれぞれに目的や性質が異なりますので、一つの会が合わなかったとしても、別の会を探してみることをオススメします。
親の会の例
「JPALD(特定非営利活動法人 全国LD親の会)」では、東北や関東など、各地を6ブロックに分けて、保護者による情報交換会、勉強会、LDの子の友達づくり、イベントなどを催しています。
④ペアレントトレーニングを受ける
4つ目は「ペアレントトレーニングを受ける」です。
ペアレントトレーニングとは
- 発達障害の子どもを持つ親に、「効果的な親としてのスキル」を教えるもので、子どもへの接し方を見直す上でも非常に有効だと言われています
ペアレントトレーニングの内容には、以下のようなものがあります。
- 各発達障害の特性への理解を深める講習
- 各発達障害に見られる行動を分類して理解
- 子どもの良いところへ目を向ける練習
- 効果的な指示の仕方や好ましくない行動を取ったときの対応の勉強
医療機関や教育機関などで講師を招き、上記のようなトレーニングを実施します。
もちろん、グレーゾーンの方も参加対象に含んでいる機関もあります。
また、同じ悩みを抱えた保護者と情報共有できる機会になるかもしれません。
グレーゾーンのお子さんへの対応がわからない方は、お近くの機関で実施されているペアレントトレーニングを探して、受けてみてください。
⑤進路選びや高校受験の準備を早めに進める
最後は、「進路選びや高校受験の準備を早めに進める」です。
次のような準備を早めに進めておくと、「お子さんに合った進学」ができる可能性が高まります。
(1)発達障害への特別措置について
発達障害であることが確定すれば、高校に発達障害であることを開示・相談した上で、受験の際に「試験時間の延長」や「別室受験」といった特別措置を受けられるようになります。
特別措置の申請締め切りは受験の願書提出よりも早いことが多いため、まだ検査を受けていない場合は、早めに受けることをオススメします。
(2)内申点について
他の子どもたちと同じ条件で高校受験をする場合は、お子さんの内申点(調査書点)の状況を、学校に確認しましょう。
グレーゾーンの特性に関連して、内申点が低いようであれば、内申点があまり合否に関わらない高校や受験方式を探すことがオススメです。
(3)高校の種類について
高校には、一般的にイメージされる全日制高校(平日に学校に通って、朝から夕方まで授業を受ける高校)以外に、通信制高校・定時制高校があります。
通信制高校とは
- 毎日の通学が必要なく、学校から送られてくる教材を利用して自宅で勉強を進める高校のこと
定時制高校とは
- 毎日の通学は必要だが、全日制高校よりも授業の時間帯が遅い高校のこと
ASD傾向の強い子どもの場合は、時間の融通が効き、マイペースに勉強を進められる通信制や定時制が向いている可能性があります。
(1)〜(3)のいずれにせよ、高校を選ぶ際は、お子さんの意思や希望を尊重することが大切です。
また、早めに準備を始めることで、情報収集、学校見学、受験校や受験方式の選択などがしやすくなり、お子さんの意志も固まりやすくなります。
発達障害グレーゾーンの中学生の勉強のためにできるサポート〜傾向別にご紹介〜
ご家族の心がけでできることがほとんどですが、前提として大切なのは、ご家族だけで抱え込まずに、学校の先生や支援機関などを頼ることです。
特に、学業面での悩みが大きい場合、発達障害に悩む子どもの指導実績がある塾などであれば、具体的なアドバイスを得られることがあります。
以下、その前提をご理解の上でご覧ください。(参考:本田秀夫『自閉症スペクトラム』、小池敏英・奥住秀之『これでわかる学習障がい』)
①ASD傾向の強いお子さんにできる3つのサポート
ASD傾向の強いお子さんには、次の3つのサポートが有効です。
(1)文字や図を利用する
ASDの人の多くは、耳からの情報よりも、視覚的な情報の方が理解しやすいと言われています。そのため、文章や図を用いたコミュニケーションを取ると、理解がしやすくなるでしょう。
具体的には、「日程を組むときにはタイムスケジュールを表にする」「やるべき課題などをリスト化する」などの工夫が効果的です。
(2)静かな環境を整える
ASDのお子さんには「聴覚過敏」などの過敏症が併存する場合があります。
そのため、特に受験勉強をする時期などは、できるだけ静かな環境を整えるといった配慮が重要です。
(3)休憩時間を意識する
ASDに見られる「過集中」への対策です。過集中とは、ASDの人が興味やこだわりの強い特定分野に取り組むときに過度な集中力を発揮して、休み知らずに活動を続ける状態のことを言います。
過集中状態にあると、体力が保たなくなるほどぶっ続けで勉強をすることがあるため、親御さんから「休憩するように促す」などの対処が必要です。
②ADHD傾向の強いお子さんにできる2つのサポート
ADHD傾向の強いお子さんには、次の2つのサポートが有効です。
(1)机の上を整理する
ADHDの「整理整頓が苦手」という傾向への対策です。机の上を整理する(必要な物のみを置く)ようにすれば、物を散らかすことを防げるだけでなく、勉強に集中しやすい環境を整えることもできるでしょう。
(2)課題を小分けにする
ADHDの「整理整頓が苦手」という傾向への対策です。机の上を整理する(必要な物のみを置く)ようにすれば、物を散らかすことを防げるだけでなく、勉強に集中しやすい環境を整えることもできるでしょう。
③LD傾向の強いお子さんにできる2つのサポート
LD傾向のあるお子さんには、次の2つのサポートが有効です。
(1)勉強の方法を変える
LD傾向のある子どもは、例えば読字障害によって「教科書の文章がうまく読みづらいために理解が滞る」ことがあります。
しかし、「音声情報であれば、発達障害のない子どもと同じくらいスムーズに理解できる」場合もあります。特性に合わせて、教科書を読みあげたり、音声データを利用したりするなど、得意な方法で勉強できるように工夫しましょう。
(2)電子機器を利用する
例えば書字障害の傾向がある子どもの場合、先生の板書をノートに書き写すのに時間がかかります。
しかし、書き写しではなくタブレット入力に切り替えるだけで、学習の困難が大幅に緩和される可能性があります。
ご家庭だけでなく、学校でも、先生と相談の上で「電子機器を利用する」方法も検討してみてください。
まとめ~サポートでお子さんの困りごとは減らせます~
グレーゾーンのお子さんは、発達障害の確定診断が下りていない分、「自分の努力不足ではないか」といった悩みを抱えやすいため、困りごとがないかを注視し、できるだけ話を聞くことが大切です。
特に、中学生になると困りごとを抱える機会は増えますので、一層の注意が必要になります。
その上で、親子の間だけで解決しようとするのではなく、医師や専門機関、塾などの専門家を頼るようにしましょう。
適切な情報やアドバイスを得ながら、親御さんの方でもサポートを行えば、お子さんの困りごとを充分減らすことができますので、ご安心ください。
このコラムが、発達障害の中学生本人と親御さんの助けになったなら幸いです。
私たちキズキ共育塾には、発達障害(グレーゾーン)の生徒さんが多く在籍しています。
ご相談は無料ですので、少しでも気になるようでしたら、お気軽にご相談ください。
経験豊富な講師とスタッフが、お子さん個人の事情に応じて、勉強とメンタルをサポートします。
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