高校不登校、その原因と対応〜学年別・「環境の変化」を軸に〜
学校が苦手な高校生のための完全個別指導塾・キズキ共育塾スタッフの宮野唯です。高校を不登校になる原因はたくさんありますが、不登校から立ち直るきっかけもたくさんあります。
高校不登校のお子さんがいる保護者さまで、こんな不安を感じていらっしゃる方はいませんか。
- 中学まで学校に通えていたのに、なぜ高校は通えないのだろか
- せっかく高校受験をして入学したのにどうして
- このまま不登校が続いたら、この子の将来はどうなってしまうんだろう
高校は、「中学までの義務教育の環境とは違う」と感じる保護者さまも多いと思います。
親子で受験を乗り切った、お子さんがその後の人生を選択する段階に差し掛かった、そのようなことから、高校に対して「特別」な感慨を覚える保護者さまもいらっしゃいます。
もちろん、保護者さま以上に、当人であるお子さん自身が環境の変化を感じています。
そして、環境の変化は、ときに不登校の原因になります。また、高校生は、学年によって何度も環境が変化します。
今回は、学年別に、高校でお子さんが直面する「環境の変化」を軸に、高校不登校の原因と心理をお伝えします。
また、私がキズキ共育塾でお会いしてきた生徒さんの事例を交えて、不登校から立ち直るきっかけとなる環境の変化についても、合わせてご紹介していきます。
高校不登校の原因と対応の例として、不登校のお子さんのいらっしゃる保護者さまのご参考になれば幸いです。
共同監修・不登校新聞社 代表理事 石井志昂氏からの
アドバイス
小中学生よりも注目度は低いのですが、高校生の不登校は、年間5万人程度いると言われています。
ある程度年齢を重ねた高校生であっても、不登校になると、本人の落胆や周囲の焦りは強いものです。
不登校は、本人にとって「苦しいこと」が重なるものです。
本人があまり話したがらないことも多いので、周囲の人がよくある原因や正しい対応をよく知っておくことで、本人の回復も早くなっていきます。
目次
高校1年生の不登校と環境の変化:行動範囲の広がり
高校に入学したての1年生の時期は、変化の最も多い時期です。
まず、中学までのときよりも通学時間が長くなった人が多いのではないでしょうか。
中学までは徒歩や自転車で通学していた人も、高校では電車やバスを使っての通学になることがあると思います。
私が通っていた高校も自宅とは別の市にあり、中学校までとは通学環境が大きく変わりました。通学時間は、電車とバスを乗り継いで1時間ほどです。
中学校を卒業するときには、中学校の先生や近所の人からは、「遠くの高校に行くんだね」とよく言われました(私の地元の感覚では、この通学距離は「遠い」のです)。
通学のための移動時間が長くなり、移動距離が増えることは、大きな変化です。
それに伴ってプライベートの行動範囲も広がります。中学校までの顔なじみとは違う、さまざまな地域のクラスメイトとの出会いもあります。
高校入学当初にこの変化に最初についていけないことや、最初は平気でも徐々に疲れがたまっていくことが、高校不登校の原因の1つとなります。
行動範囲の広がりに伴って、お子さんが疲れているなと思ったら、保護者さまはさりげなく学校の様子を聞いたり、食事などで健康面のサポートを通したりしてみましょう。そのような「高校生活が軌道に乗るようなサポート」をすることで、心身ともに回復し、不登校になりにくくなります。
高校2年生の不登校と環境の変化:将来の選択肢の広がり①「文理選択」
高校2年生は、部活動や授業、通学などの要領を得て高校の環境に慣れてきたころです。
そして、特に普通科や進学校の場合、将来について最初に考える「文理選択」が待っています。
ほとんどの中学生は、中学卒業後の進路について、「高校に進学するならどの高校にするか、就職するならどんな仕事にするか、ほかの選択をするか」と、広く悩んだことはないと思います。
なぜなら、中学生は、「中学を卒業したら高校に進学する」場合が大多数だからです。
中学生の進路の悩みは、「どの高校に進学するか」という限られた選択肢の中での悩みであることがほとんどです。
もちろん、これは「中学生の進路の悩みは大したものではない」という意味ではありません。
また、例外もあるでしょう。
ここでお伝えしたいのは、一般的に「中学生よりも高校生の方が進路選択に悩むことが多い」ということです。
その悩みの1つが、この文理選択です。
「文理選択」のタイミングで、将来やりたいことが見つからない場合は、「自分は何のために勉強しているのか、勉強しても意味がないのではないか」という思いが浮かび、これを節目として高校不登校につながることがあります。
この時期のお子さんは、「文理選択」という、進路を考えなければいけない状況を理解しつつも、まだ先のことでイメージがつかない、という曖昧な状況にあります。
それに加えて、学校生活が慣れてきたということは、充実もしていますが、勉強や部活で多忙でもあるということです。
そうすると、進路について「考えなければならない」「でも毎日を送ることで精いっぱい」という板挟みの状況になりがちです。
保護者さまにできる対応としては、下に具体的な事例をご紹介していますが、お子さんの好きなこと・やりたいことを禁止しない(応援する)ことが挙げられます。
好きなこと・やりたいことは、頭を切り替えるきっかけとなります。そして、「次」について考えるための「充電」となります。
これを禁止してしまうと、多忙な中で鬱々となり、「次」のことを考える余裕がなくなったりすることがあります。
高校3年生の不登校と環境の変化:将来の選択肢の広がり②進路の最終決定
いよいよ進路に向けて本格的に取り組む時期になりました。
高校では、入学してしばらくは、将来ではなく定期テストだけを意識していればよいかもしれません。
ですが、3年生にもなると、近い将来の現実として、進学・就職選択などについて広く考える機会が頻繁にあります。
このとき考える将来には、中学卒業のときや、そして2年生のときの文理選択とは比べ物にならないくらい、無限に選択肢が存在します。
自分の将来について幅広い選択肢を真剣に考えるという、これまでにない環境が登場するのです。
大学進学、専門学校進学、就職、資格取得などなど、それぞれ、大枠の選択肢の中にさらに具体的な選択肢があります。
文理選択時と同様、やりたいことが見つからなくて悩むこともあれば、逆に、やりたいことが見つかった場合も、例えば「目標の大学に合格できるだろうか」のような不安が生じることもあるでしょう。
そうした、自分の将来について考えなくてはいけない、もう後がない、という状況から逃避するため不登校になることがあります。
また、目標を定めた場合でも、そのための過程で追い詰められると、他のこともうまくいかなくなることもあります。
例えば、受験勉強がうまく進まないときに、「こんなんじゃ自分はダメだ」と思い込み、人と自分を比べることで、人間関係に悪影響を及ぼすことです。
そうすると、自己否定感や劣等感から不登校になることもあります。
保護者さまにできる対応としては、お子さんが自信を失っていないかどうか様子を見つつ、進路について一緒に話しあったり、選択肢を提示したりする、ということがあります。
自分のことについて一緒に考えてくれる人がいると、不安が和らぎます。そして、一歩一歩前に進むことができるようになります。
環境の変化は、高校不登校から立ち直るきっかけにもなります
ここまでは、学年別に、環境の変化による高校不登校とその対応を見てきました。
「環境の変化」についてネガティブなことをお伝えしてきましたが、逆に「環境の変化」が(原因とは直接結びつかなくても)高校不登校から立ち直るきっかけになることがあります。
このあと、高校生になって行動の幅が広がったことによってできる「立ち直りのきっかけ」をご紹介します。
キズキ共育塾に通っていた生徒さんの事例もご紹介していますので、よろしければ合わせてご覧ください。
アルバイトの開始〜社会参加の実感と、相談できる人が増える
高校生の年齢でできるようになることとして、アルバイトがあります。
不登校になると、勉強が手につかず、家族以外との関わりが減り、孤独の中で特に何をするわけでもない生活になりがちです。
そうすると、「自分には存在価値があるのだろうか」という不安が芽生えてきます。
アルバイトをすること自体が、「社会に参加している」実感から、何もせずに葛藤していたときよりも気持ちが楽になったり明るくなったりして、立ち直るきっかけになることがあるのです。
また、職種にもよりますが、アルバイト先では、それまで学校でも家庭でも地域でも出会うことのなかった、さまざまな年齢や経歴の人が働いています。
初めて出会うタイプの人たちと接すると気持ちには変化が出ます。そして、そこでの会話をきっかけに立ち直ることもあります。
アルバイトをきっかけに高校不登校から立ち直ったA君
以前キズキ共育塾に通っていたある生徒さん(以下、A君)は、高校での不登校経験から自己否定状態に陥り、自分の将来についてかなり悲観的な思いを抱いていました。
そんな状況だったこともあり、A君は、キズキ共育塾に通いつつも、勉強にはあまり手がついていませんでした。
ですがA君は、「何もしないでただ時間が過ぎていくだけの毎日に戻りたくない」という理由から、アルバイトは熱心に続けていました。
そんな日々が続く中、A君は、アルバイト先で尊敬できる人(Bさん)と出会いました。
A君は、Bさんに現状や悩みを相談し、「社会に出ればいろいろな人がいるんだから、数年遅れているくらいなら大した問題ではない」とアドバイスをもらいました。
それがきっかけで、A君は「自分は狭い世界にいたんだ。自分にもやれることがまだたくさんある」と思いを改め、将来に前向きになることができました。
Bさんのアドバイスと同じようなことは、それまでにBさん以外からも言われていたことでしょう。
これは、「家庭でも学校でも地域でも出会えなかった、尊敬できるBさんから言われた」ということが、大きな意味を持ったのです。
その後、A君はキズキ共育塾で勉強に励むようになり、無事に東京都内の私立大学に合格し、現在は国際文化を学んでいます。
アルバイトという環境の変化が高校不登校からの立ち直りにつながった好例です。
好きなことをしてリフレッシュ〜甘えではありません
「アルバイトまでは気持ちが向かない」「高校がアルバイトを禁止している」という場合は、「定期的に好きなことをして、気持ちをリフレッシュする」という方法もあります。
一般的には、年齢とともに新たな趣味や興味との出合いも積み重なります。
私の見てきた生徒さんの中では、中学生よりも高校生の方が、リフレッシュになる「好きなこと」の選択肢が多いように感じます。
「不登校なのに好きなことをするなんて、甘えているだけ、現実から逃げているだけ」と思う人もいるかもしれません。
ですが、1日のうち何分、一週間のうち何日、などとスケジュールを決めて好きなことをする時間は、疲れた心を休めてくれます。そして次の行動を行うためのエネルギーにもなります。
これは、不登校の人に限らないのではないでしょうか。
定期的に好きなことを行うと、ストレス解消になったり、生活のハリになったりしますよね。
好きなことをきっかけに高校不登校から前に進んだCさん
キズキ共育塾に通っていたある生徒さん(以下、Cさん)は、大学受験を目指して勉強をしつつ、さまざまな悩みによって高校不登校が続いていました。
そんなCさんは、ある楽器が大好きでした。その楽器の話になると、生き生きとして、「この楽器があるからがんばれる!」と語っていました。
定期的に楽器を演奏する楽しみがあるから、悩みを抱え、立ち止まりながらも、前に進もうとすることができたのです。
Cさんは、キズキ共育塾で勉強を続けて、その後短期大学に進学しました。
定期的に好きなことをしていたために、高校不登校から立ち直れた(前に進めた)好例だと思います。
参考:学校休んだほうがいいよチェックリストのご紹介
2023年8月23日、不登校支援を行う3つの団体(キズキ、不登校新聞、Branch)と、精神科医の松本俊彦氏が、共同で「学校休んだほうがいいよチェックリスト」を作成・公開しました。LINEにて無料で利用可能です。
このリストを利用する対象は、「学校に行きたがらない子ども、学校が苦手な子ども、不登校子ども、その他気になる様子がある子どもがいる、保護者または教員(子ども本人以外の人)」です。
このリストを利用することで、お子さんが学校を休んだほうがよいのか(休ませるべきなのか)どうかの目安がわかります。その結果、お子さんを追い詰めず、うつ病や自殺のリスクを減らすこともできます。
公開から約1か月の時点で、約5万人からご利用いただいています。お子さんのためにも、保護者さまや教員のためにも、ぜひこのリストを活用していただければと思います。
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」はこちら(LINEアプリが開きます)
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」作成の趣旨・作成者インタビューなどはこちら
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」のメディア掲載・放送一覧はこちら
私たちキズキでは、上記チェックリスト以外にも、「学校に行きたがらないお子さん」「学校が苦手なお子さん」「不登校のお子さん」について、勉強・進路・生活・親子関係・発達特性などの無料相談を行っています。チェックリストと合わせて、無料相談もぜひお気軽にご利用ください。
環境の変化は、悪い方にもよい方にも作用します
環境の変化があると、多かれ少なかれ、みんな戸惑いや悩みを感じます。その結果、高校を不登校になってしまうこともあるでしょう。
ですが、環境の変化は、悪い面だけではなく、もちろんよい面もあるのです。
ある環境の変化が原因で高校不登校になったのなら、逆に、別の環境の変化をきっかけに立ち直ることもできるということです。
ご紹介した内容は、あくまで一例です。
高校不登校の原因や、何をきっかけに立ち直れるかは、人それぞれです。
高校不登校を経験して、いろんな悩みを経て、「今から勉強をしてみたい」、という気持ちになったときはキズキ共育塾に一度ご相談ください。あなたご自身の状況に応じたお話ができると思います。
また、保護者さまだけのご相談もお受けしています。ぜひお気軽にご相談ください。
<※紹介した生徒さんの事例は、記事の趣旨を損なわない範囲で、個人の特定ができないように一部事実を変更しています。>
<※文中の写真は、全てイメージです。>
/Q&Aよくある質問