
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
お子さんが1学期は元気に学校に通っていたのに夏休み明けに突然行けなくなり、どうすればよいかわからない方とお悩みではありませんか?
夏休みやゴールデンウィークなど、長期休み明けには、不登校になりやすいと言われています。
親御さんとしては、「休み前までは普通に通っていたのにどうして?」と戸惑うことでしょう。
実は私も中学1年生の夏休み明けに学校に行けなくなり、不登校になりました。
今回は、「夏休み明けからの不登校経験者」である私が、夏休み明けに不登校が増える理由と対応法について、この記事の運営元であるキズキ共育塾の知見や、筆者自身の経験も交えてお話します。
お悩みを抱えるお子さんと、そして親であるあなたの「次の一歩」に役立てば幸いです。
目次
夏休み明けの不登校について、よくある原因や例を6つご紹介します。
お子さんに当てはまるものがあるか、ご検討ください。
ただ、子どもが不登校になる理由は様々です。
この記事では、特に夏休みに関係する理由をご紹介しますが、それ以外が原因である可能性についてもご留意ください(夏休みが関連しない不登校の原因については、コラム「不登校の原因と対処法まとめ~体験談を交えて徹底解説します~」をご覧ください)。
理由の1つに、息切れ・エネルギー切れがあります。
学校では、授業・部活・生徒会・その他行事などで、「がんばる場面」や「緊張する場面」などがよくあります。
1学期中はそういう場面になんとか対応できていたものの、夏休みに入るくらいのときに息切れ・エネルギー切れになるというものです。
その後再び気力などが充実しないことで、「がんばりが必要な学校」へ再び通う気力がわかなくなります。
休み前まではすごく一生懸命がんばっていたのに、休みに入ると急に無気力になり、何もできなくなった…といった場合には、息切れ・エネルギー切れの可能性があります。
2つ目の理由は、夏休みをきっかけに学校での負担を自覚することです。
学校があるうちは本人も気づかなかった負担について、夏休みで学校を離れて過ごすことで気づくのです。
例えば、夏休みに部活や勉強から離れることで、部活や勉強の負担に気づいたりするなど、距離を置くことでその苦しさに初めて気づく、といったようなことです。
「特定の大きな負担」だけではなく、「一つひとつは小さな負担の積み重ね」の場合もあります。
前項との違いは、こちらの場合は「1学期中は、がんばり・緊張・苦しみなどについて、自分でも気づいていなかった」という点でしょう。
3点目は、生活リズムの乱れです。
夏休みは学校に合わせた生活の制約がなくなるので、生活リズムが乱れやすくなります。
朝起きなければいけないという理由がなければ、ついつい夜更かしをするなど夜型の生活になりがちです。
たまに夜更かしするだけで、数日後にはいつものような生活リズムに戻せるのならば問題ないでしょう。
ですが、夏休みの間中そういった生活が続くと、いざ学校が始まったときにも簡単には朝型のリズムに戻せないでしょう。
朝が起きられず学校に行けなかったり、無理やり朝起きてもなかなか体調が優れなかったりすることで、学校に行きづらくなります。
夏休みの宿題や課題ができていないことも、学校に行きにくい原因となります。
「やるべきことをやっていない」という状態で、先生からの叱責や友達からのからかいが想定されたり、学力などに自信がなくなったりするため、学校に行きにくくなるのです。
「夏休み明けに実施されるテストの勉強ができていない」というパターンもあります。
この記事をご覧になっているのが「夏休み後に不登校にならないか不安」という段階で、かつ子どもに仲のよい友達がいるようであれば、子どもに「宿題やテスト勉強について、友達と話してみたら?」と提案してみることが「不登校の予防」につながることもあります。
「これから先の学校生活」を心配するあまり学校に行けなくなることもあります。
夏休み明けの2学期は、一般的には他の学期よりも長く、また行事なども多い時期です(地域や学校にもよりますが)。
勉強や部活も、1学期よりも難しくなったり本格化したりします。
1学期の時点では「まだ先だ」と思っていても、夏休みを挟んで2学期が近づいていくことで、「嫌な行事が近づいてきた」「勉強がもっと難しくなったらついていけない」「部活の練習がもっと大変になる」などと心理的な負担が先回りして、学校に行きにくくなる、ということです。
夏休み中に人間関係がリセットされるような気がして、「同級生との関係が、自分の知らないところで1学期と変わっているかも」と不安になって不登校になることもあります。
夏休み中には、仲のよい友達以外と会う機会は限られます。
学校の人間関係を気にしなくてよい気楽な日々…と言えるかもしれませんが、交流がなければ不安も生じうるのです。
例えば、「クラスメイトたちは、夏休み中も部活仲間と過ごしている(塾で親交が続いている)。部活(塾)に入っていない自分だけ、周りとの距離が開いたのではないか。そんな自分が登校しても、きっと仲よくできない…」などといった不安です。
特に1学期中から人間関係に不安を覚えていた人ならなおさらでしょう。
この記事をご覧になっているのが「夏休み後に不登校にならないか不安」という段階で、かつ子どもに仲のよい友達がいるようであれば、夏休み中の「子どもと友達の交流」を後押ししてみることが「不登校の予防」につながることもあります。
夏休み明けに不登校になる理由について説明しましたが、そんなお子さんにどう対応すればよいかわからないという方もいるでしょう。
この章では、夏休み明けの不登校への対応を説明します。
ただ、これからお話する対応は夏休み明けの不登校に限った話ではありません。
基本的な対応は、夏休み明けの不登校でも、別のタイミングの不登校でも変わりません。
また、必ずしも「学校に行かせるための対応」というわけではなく、「学校への復帰も含め、お子さんにとってよりよい生活、よりよい将来のための対応」としてご覧ください。
まず悩まれるのが、学校へ行くよう促すかべきかということかと思いますが、「無理には行かせない」ことをお願いしたいと思います。
1週間、2週間と休みが続くと、不安になることはわかります。
「無理にでも学校に行かせればそのまま行けるようになるのではないか」と悩まれることもあるかと思います。
しかし、基本的にはお子さんが「休みたい」「行きたくない(行けない)」と言っていたり、態度からそう読み取れたりする場合は、無理に学校に行かせないことが大切です。
本人が望まないタイミングで無理やり行かせてもよい結果が出ることは少なく、むしろ余計に行きにくくなるなど逆効果になることが多いためです。
休むことは容認したとしても、「じゃあいつまで休ませればよいのだろう?」と次の疑問が湧いてくるかと思います。
しかし焦らず、お子さんのエネルギーが回復を待ちましょう(お子さんのエネルギーを回復させていきましょう)。
休みが続くと焦る気持ちも募るかと思いますが、お子さんのエネルギーが回復するまでゆっくり休ませてください。
原因が何であれ、一度不登校になったお子さんは、多くの場合エネルギーが不足しており、学校や勉強にすぐに立ち向かうのは難しい状況です。
家の手伝いや家での勉強についても同じです。
まずは何かに挑戦するためのエネルギーの回復を優先させましょう。
エネルギーを回復させるためには、学校や勉強など、本人にとって負担になることを取り除くことがまず大切です。
学校を休んでいても気がかりなことがあると心も体も休まりません。
何も考えずゆっくりさせる、少し余裕があれば好きなことをさせるなど、できるだけエネルギーの回復に集中できるような環境をつくりましょう。
私の場合は、夏休み明けに不登校になってから、長い間、学校に毎日欠席連絡をしていました。
明日も行けなさそうだと自分の中でわかっていても、翌朝に連絡しなければいけない…という状況はプレッシャーでした。
前日の夜に「明日は行けるだろうか」、「明日も欠席連絡しないといけないのか…」と毎日憂鬱になり、その結果あまり眠れなかったこともあります。
こういう状況では、エネルギーの回復に時間がかかります。
できるだけ不安のない状況でゆっくりさせてください。
心身ともにゆっくり休みがとれると、少しずつエネルギーも回復し、それに伴い気力も出てきて、活動的になってきます。
お子さんは、学校へ行ってみようと思ったり、勉強を始めてみよう思ったりするようになるということです。
この段階を示すサインの例には、直接的には「そろそろ勉強しようかな(学校に行ってみようかな)」と言ったり、間接的には「暇だな…」と言ったりする、ということがあります。
しかし、親も本人も焦りすぎないということが大切です。
本人が望むのであれば様々なことに挑戦することは問題ありません。
その上で、「焦らずに、できるところから」という心構えが重要です。
なぜならば、いきなり「生活を全て元に戻す!」と意気込んでも、思った以上に疲れたり、勉強を再開するのが大変だったりすることもあるからです。
親御さんを不安にさせるつもりはありませんが、そうすると、「やっぱり自分はもうダメだ…」などと思い、再び気力を失う可能性もあります。
例えば、いきなり学校に行くではなく、まずは学校に行くのと同じ時間に起きてみる、休日に学校まで登校してみるなど、少しずつできるところから始めてみましょう。
学校や学校に関することに気持ちが向かわないのであれば、まずは好きなことから始めてみるのもオススメです。
不登校の子どもは「学校に行けない自分」に自信を失っていることがよくあります。
そんな子どもは、好きなことをきっかけに、自信を少しずつ回復して、以前のように活動できるようになることがあるのです。
いろんなことが少しずつできるようになってきたら、やはり気になるのが「今在籍している学校への復帰」でしょう。
お子さんがだんだん元気で活動的になってくると、次は学校と思う方も多いと思います。
しかし、「今所属している学校への復帰」についても、本人の意思を優先させましょう。
本人の意に沿わず登校を再開「させた」場合は、気力・体力・諸々の不安などの関係で、再び不登校になるケースもあるのです。
さらに、自分の意思で登校を再開しても、再び不登校になることもあります。
これについては、親御さんを心配させるためにお伝えするのではなく、「再び不登校になることは珍しくないので、そうなっても思い詰めないでほしい」という意図からお伝えしています。
不登校の繰り返しについては、コラム「子どもが不登校を繰り返すのはなぜ?原因と解決策をご紹介します」をご覧ください。
その上で、お子さんが「今所属している学校に、もう一回通ってみたいな」などと言ったときには、前項まで同様、焦らないことが大切です。
最初から「毎日、全ての授業を受ける」ことを目標とせずに、例えば「まずは午後だけ行く」「保健室登校から始める」「つらいときには遅刻・早退もOKと考える」などから始めてみてもよいでしょう。
では、お子さんが「(気力・体力はあるけれど)今所属している学校には、もう行きたくない」という意思を示したらどうするべきでしょうか。
まずは、「今所属している学校には行かなくていいけれど、現在と将来のために、どこかで勉強や社会性を身につけた方がよいし、身につける場所はある」と理解していただければ幸いです。
そして、「今所属している学校は嫌だけれど、学校自体には行きたい」という場合には、転校が考えられます。
不登校からの転校については、コラム「『我が子の不登校、転校した方がいいの?』〜親御さんへのアドバイス〜」をご覧ください。
学校自体に行きたくない場合にも、勉強する方法や社会性を身につける方法はあります。
例えば、塾、フリースクール、習い事教室などが該当するでしょう。
「学校」より手間がかかるかもしれませんが、「学校に行かないと将来がないわけではない」ということは、安心につながるのではないでしょうか。
今所属している学校への復帰にこだわらず、お子さんの希望やお子さんにあったやり方を一緒に探してみてください。
上記の対応は、主にはお子さんに向けたものでした。
この章では、親御さんご自身のためとなり、ひいてはお子さんのためとなる3つのスタンスをご紹介します。
最初の方に軽くお伝えしましたが、(夏休み明けに)学校に行けなくなった原因を追究しても、不登校の解決にはつながらないことがあります。
逆に、不登校になった原因は解決しないままでも、「次の一歩」に進めることは珍しくないのです。
例えば、「夏休みで、部活の練習内容がキツいと自覚したこと」が原因で、夏休み明けに不登校になったとします。
この場合、原因の直接的な解決とは、「部活の練習内容が変わる」でしょう。
ですが、仮に部活の練習内容が変わっても、不登校期間によって部活のメンバーと気まずくなった、不登校中に生活リズムが乱れたなどの場合は、不登校が続くことがあります。
そしてそもそも、生徒一人の都合で部活の練習内容が変わるということは、現実的にはあまり考えられません。
しかし、「部活の練習内容」が変わらなくても、「自分のできる範囲で練習すること」を顧問に認めてもらう、部活を辞める、転校するなどで、「次の一歩」に進めることがあるのです。
不登校の原因を追究・解決したいお気持ちはわかりますが、不登校の次の一歩に進むためには、「絶対に必要なこと」ではありません。
「なぜ不登校になったのか」よりも、現状の把握と今後の対策に目を向けてください。
ただし、次のように、「原因」を無視してはいけないケースがあります。
このような場合は、未来に向けての対策を考えると同時に、「原因」への対応につとめることも大切です(とは言えこれも、「対応」は直接的な「解決」とは限りません)」。
特に精神疾患や発達障害の可能性があるときは、すぐに精神科や心療内科を受診してください。
その他の問題も、「その分野の専門家」の力を借りましょう。
不登校解決のためには、親子が社会や学校から孤立し、家庭の中にひきこもることは避けた方がよいでしょう。
不安にさせるつもりはありませんが、そうなると、不登校の長期化を招き、長期の引きこもりにつながることもあります。
逆に言うと、第三者の援助があると、お子さんも親御さんも、「次の一歩」に進みやすくなります。
第三者とは、不登校に詳しい人や、不登校支援を行う団体などの専門家のことです。
学校に在籍しているのであれば、担任、学年主任、スクールカウンセラーなどに相談してみましょう。
次のような、お住まいの市区町村の相談窓口に相談する方法もあります。
名称などは自治体によって異なることもありますので、お住まいの自治体のウェブサイトや代表電話で確認してみましょう。
民間にも、不登校の支援団体として、全国の「不登校の親の会」や、私たちキズキ共育塾などがあります。
親だけ、または子どもだけで相談できる場所もありますので、「まずは自分だけで(子どもだけで)」と思う場合はそういうところを探してみましょう。
また、最近はインターネットや電話で不登校の相談を受け付けているところも多いので、家の近くに相談機関がなくても頼ることができます。
相談先についてもっと詳しく知りたい方は、コラム「我が子の不登校を解決するために親御さんができること〜原因・解決策について解説〜」をご覧ください。
専門家には守秘義務があるので、相談に行ったからといってそれが周囲に知られることはありません。
ご本人だけ、親子だけ、ご家族だけで悩まずに、必ず専門家の助けを借りましょう。
親は親で、自分の生活を充実させましょう。
「子どもが不登校なのに、私だけが仕事に行ったり、趣味のサークルを楽しんだりしていいのだろうか?」などと思われるかもしれませんが、親は親で自分の人生を楽しむことが、不登校の解決に繋がります。
そうはいっても、子どもが苦しんでいるときに、楽しむことができないのは親の感情として当然だと思います。
ですが、親が自分の生活を充実させることには、次のような効果があるのです。
「親が生活を楽しむ」ことで、視野も適切に広くなり、社会からの孤立を防ぐことができます。
先述のとおり、親子とも外との繋がりがなくなって、家庭ごと地域から(世間・社会から)孤立する、というケースがあります。
親が働きに出ている場合でも、子どものことで心にずっと不安を抱えていると、社会との心理的な距離が開いていくのです。
地域や社会から孤立すると、家族という密閉した空間の中で、親の心・視点は子どもに向かう一方で、親子の不安はますます増幅してしまいます。
親の過度な不安や心配が子どもの心を圧迫していく…といった悪循環にも陥りかねません。
ぜひ、積極的に「社会」と関わってください。
親の充実した生活は、大人のロールモデルを子どもに与えることになります。
充実している親の姿を見ることで、子どもは「今は不登校で苦しいけど、大人になったらこんなふうに生活したいな」と考えるようになります。
子どもに「外の世界は楽しいよ」「大人になるっていいものだよ」と示すことが、不登校の「次の一歩」につながるのです。
夏休み明けに不登校が多くなるという話を紹介しましたが、最初にお伝えしたとおり、実は私もその1人です。
中学1年生の夏休み明けに学校に行けなくなり、結果的に中3の一学期まで、約1年半の間不登校でした。
私が夏休みに不登校になった理由や「次の一歩」に進んだ経緯を紹介します。
夏休み明けに行けなくなった原因を今になって考えると、1学期に溜まっていた心身の疲れだったように思います。
小学生の頃から体が弱く、休みが多かった私は、中学に入り、そんな自分を克服したいと思っていました。
そんな気持ちから、いつも気を張り、勉強に部活とがんばっていました。
がんばった結果が出たのか、中1の一学期は学校の休みも少なく、勉強や部活もよい結果が出るなど充実感のある日々でした。
そして夏休みを迎えます。
夏休み中も、部活は毎日のようにありました。
炎天下の中何時間も部活を行うことは、体力的に苦しく感じることも多かったです。
「今日は部活を休みたい」と思うこともありました。
ですが、「休んだら試合に出してもらえなくなるかもしれない」「周りもがんばっているのに自分だけ休むわけにはいかない」などの思いがあり、休むことができませんでした。
体力的にも精神的にもつらさを感じながらも、お盆休みまではなんとかがんばって部活に行くことができました。
しかし、あと10日程で夏休みが終わるというタイミングで、私は突然部活に行けなくなりました。
疲労がピークに達して、部活をがんばろうという気持ちが持てなくなってしまったのです。
部活の時間になると気持ちが憂鬱になり、部活を休む日々が続きました。
初めは、1〜2日休めば部活にまた行けるようになると思っていました。
しかし、数日休んでも体はキツく、部活に行く気持ちにはなれませんでした。
そして、部活に行けないまま夏休みが明けました。
少しずつ体力は回復してきており、学校には行こうと思っていたのですが、「部活はずっと休んでいるのに、学校に行ったらどう思われるのだろう?」と心配になり、学校も行きにくくなってしまいました。
そして、休みが続くと学校に行くハードルもどんどん高くなっていき、気づくと不登校になっていました。
結果として、私は中1の夏休み明けから1年半の不登校生活を送りました。
そんな私は、中3になると、それまでのことがなかったことのように学校に行けるようになりました。
不登校を脱したきっかけと心の変化を紹介します。
学校を休み始めてからしばらくは、何もする気になりませんでした。
何かをがんばるということができなかったのです。ボーッとテレビを見たり、ベッドに横になったりして一日の大半を過ごしました。
そんな日々をしばらく過ごしていると、少しずつですがエネルギーが回復してきたようで、何かやってみようかなという気持ちになってきました。
学校に行くことはハードルが高かったので、家にいながら本を読んでみたり、少しだけ机に向かって勉強したりするようになりました。
少しずつやる気も回復していき、できることも増えてきました。
ですが、学校には行ける気がしませんでした。
自信を喪失していたからだと思います。
学校に行けないことにより、私は自信が全くなくなっていたのです。
「学校に行けない=中学生として最低限のことができていない」と思っていたので、自分が恥ずかしい存在のように思っていました。
そんな恥ずかしい自分は学校に行っても認められず、つらい思いをするだけだと勝手に思い込んでいました。
体調的には学校に行けるような状態だったとは思うのですが、自信のなさが学校への恐怖や不安を生んでいました。
学校に行けないということが、自信の全てを奪っていたように感じます。
私の不登校について、親も初めてのことで不安や戸惑いがあり、どう対応すればよいかわからなかったと思います。
親には「学校に行かせないといけない」という気持ちが強く、それが学校に行けていない自分を間接的に否定することにもつながっていました。
今の私には、「親は、私のためを思って、学校に行かせたがっていた」と理解できます。
ですが当時の私は、「学校が全てではない」「学校に行けなくても人の価値は変わらない」といったメッセージを欲していました。
それだけで、ずいぶん気持ちも楽になったと思います。
学校に行けないなら勉強をがんばろうと思い、テストでいい成績(テストの日だけ登校していました)をとっても、学校に行けないために、親からはなかなか褒められることがありませんでした。
しかし一方で、親が私に「協力」してくれることももちろんありました。
私の失った自信を回復したきっかけは、自分の好きなことでした。
趣味である囲碁をきっかけに出会った同級生や大人の人たちとの関係の中で自信が回復してきたのです。
勉強では、いくらがんばっても学校に行かないと認められませんでした。
ですが、趣味の世界では、学校に行っている・行っていないに関わらず、努力や成果を認めてもらうことができたのです。
もっと言うと、「同好の士である」というだけでも、認めてもらうことができました。
親には、学校に行かずに囲碁をすることに対して、心配や不安もあったと思います。
ですが、私が囲碁を続けられるようにサポートしてくれました。
好きなことを続けることを認めてくれて、サポートし続けてくれたことは、今でもとても感謝しています。
囲碁を通じて、自分自身を認めてもらえる場に出会ったことで、少しずつ自信が回復していきました。
不登校になってから一年程で、少しずつ自信も回復していき、体調も回復していきました。
学校に行っていないという事実はありましたが、心身は以前のような状態に戻っていました。
そんな状態の中、中3になりました。
中3になると、担任の先生が他の学校からきた新しい先生に変わりました。
新しい先生に変わったことで、私はなんとなく「その先生の前では新しい自分で入れるのではないか」という気持ちになり、学校にもう一度挑戦してみようという思いになりました。
そして、中3の初日から登校し、たまに休む日はあったものの中1の一学期のように学校に通えるようになりました。
心身の調子を整えつつ、親のサポートの元で好きなことを通じて自信を回復し、自分の中で「いまなら行ける!」と思うきっかけがあったことが、不登校の次の一歩に進めた大きな要因だったように思います。
私の体験談が、あなたと、あなたのお子さんのお役に立ったなら幸いです。
夏休み明けは、これまでの無理や我慢が心身の不調として出やすいタイミングです。
そのため、夏休み明けの不登校は、子どもからのSOSとも言えます。
まずはエネルギーの回復を優先させて、しっかり心身の体調を整えてから今後については考えていきましょう。
さて、私たちキズキ共育塾は、お悩みを抱える方々のための個別指導塾です。
生徒さんには、夏休み明けに不登校になった方も大勢いらっしゃいます。
無料相談も承っており、ご相談いただければ、「あなたのお子さん」のための具体的なお話ができると思います。
キズキ共育塾の概要をご覧の上、少しでも気になるようでしたらお気軽にご相談ください(ご相談は無料です。また、親御さんだけ・お子さんだけでのご相談も承っています)。
共同監修・石井志昂氏からのアドバイス
子どもによって、不登校が必要な時期があります
夏休み明けは、不登校になる人がもっとも多い時期の一つです。前提として、不登校になるのは、親の育て方が悪かったり、子どもがなまけていたりするためではありません。文部科学省も、「不登校にはどの子どももなりうる。『問題行動』と見てはならない」と訴えています。
子どもによって、不登校が必要な時期があるのです。不安にさせるつもりはありませんが、無理に登校させる・させようとすると、過剰適応(環境に合わせるために、度を超えて自分を変えている状態)になり、自傷行為やOD(オーバードーズ:薬の大量摂取)に発展する危険性もあります。
「学校に戻す」というよりも、「学校を離れても大丈夫という安心できる環境をそろえる」ことを意識していただければと思います。そして、親御さんとお子さんをサポートする不登校の支援団体はたくさんあります。
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