いじめによる不登校の子どもに親ができる対応 ケアするときのポイントを解説
こんにちは。生徒さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする完全個別指導塾・キズキ共育塾です。
このコラムをご覧のあなたは、いじめによって不登校になったお子さんのことで、お悩みなのではないでしょうか?
- いじめが原因で子どもが不登校になったけど、親としてどう対応すればいい?
- ハッキリといじめられているとわかっているわけではないけど…
- 学校に行きたがらないけど、不登校とまで言っていいのか…
このコラムでは、いじめによる不登校の実態やいじめの認知数が増加した背景、不登校の子どもをケアするときのポイント、親ができる対応、親のメンタルケア、今の学校以外の選択肢について解説します。あわせて、いじめによる不登校を経験した人の体験談を紹介します。
このコラムは、公的ないじめ・不登校の定義に当てはまるかどうかにかかわらず、いじめと不登校に関心があれば役に立つ内容です。まずはリラックスしてお読みください。
いじめの定義や原因については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
共同監修・不登校新聞社 代表理事 石井志昂氏からの
アドバイス
大切なのは、「学校だけが全てではない」と思えること
いじめは暴力であり、ときとして人の命を奪います。絶対に許されるものではありません。
しかし、実際に子どもの世界で起きていることです。「いじめの予防」や「大人による介入」が簡単にできるほど甘くないのが現状です。
犯罪にあうことや、上司のハラスメントと同様に、避けようがないかもしれません。大人でも、「ハラスメントにあっている」と周囲には言いづらいものです。
大切なのは、子どもが「被害にあっていること」を周囲に伝えられることです。親御さんは、子どもと信頼関係が築けていると思っているかもしれません。ですが、子どもの方に合わせるようにしてほしいと思います。
いじめを受けた子どもを、孤立させないでください。「学校だけが全てではない」と思えるかどうかが大切です。
私たちキズキ共育塾は、いじめで不登校状態にある人のための、完全1対1の個別指導塾です。
生徒さんひとりひとりに合わせた学習面・生活面・メンタル面のサポートを行なっています。進路/勉強/受験/生活などについての無料相談もできますので、お気軽にご連絡ください。
目次
いじめによる不登校の実態
この章では、文部科学省の調査結果に基づいて、いじめによる不登校の実態について解説します。
いじめの件数
文部科学省の調査結果によると、2022年度における全国の小学校、中学校、高等学校および特別支援学校が把握したいじめの認知件数は68万1948件でした。
前年度の認知件数が61万5351件だったのに対し、約10%増加しています。(参考:文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」)
いじめの内容
具体的ないじめの内容は、以下のとおりです。
- 冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる:約57.4%
- 仲間はずれ、集団による無視をされる:約11.7%
- 軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする:約23.4%
- ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする:約6.5%
- 金品をたかられる:約0.9%
- 金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする:約5.4%
- 嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする:約10.0%
- パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる:約3.5%
- その他:約4.5%
いじめが原因で不登校になった生徒数
いじめが要因で不登校になったと回答している人数は、以下のとおりです。(参考:文部科学省「令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について(P108)」)
小・中学校
- 全体的な不登校生徒数:29万9048人
- 主たるもの以外でいじめが要因で不登校になった生徒数:1万2037人
- いじめが主たる要因の不登校生徒数:674人
高等学校
- 全体的な不登校生徒数:6万575人
- 主たるもの以外でいじめが要因で不登校になった生徒数:1295人
- いじめが主たる要因の不登校生徒数:124人
いじめの認知件数は、2012年度の約19万8109件に対し、2022年度は68万1948件と、10年で約4.73倍以上となっています。
「これまでいじめとして取り上げられなかったものが明るみに出るようになった」と解釈すれば、喜ばしいことでしょう。
ただし、近頃はSNSによるいじめなども新たに発生しており、実際の数は把握しにくいのが現状です。
いじめの認知件数が増加した3つの背景
この章では、いじめの認知件数が増加した背景について解説します。
なお、いじめは複合的な要因から発生するものです。
ここで紹介するものはあくまで一例です。また、必ずしも紹介した背景があるといじめが発生するというわけではありません。
あくまで参考としてご覧ください。
背景①「時代」によるいじめの内容の変化
いじめの認知件数が上がった背景の一つが、インターネットやSNSの発達です。(参考:日本財団「深刻化する「SNSいじめ」から子どもたちを守るには?」)
インターネットが発達する以前のいじめは、物理的な暴力や学校内での嫌がらせなどが主だったのに対し、現代では、スマートフォンやSNSなどを利用したいじめが散見されます。
文部科学省の調査によると、「パソコンや携帯電話等で、ひぼう・中傷や嫌なことをされる」という項目は平均約3.5%と少数です。ただし、高校生に対象を絞ると約16.5%と激増します。(参考:文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」))
認知件数も2万3920件と、前年の2万1900件から約2000件近く増加しています。
インターネットを利用したいじめの大きな特徴は、以下の2つです。
- 学校以外の場所でもいじめが発生する可能性がある
- 発信者が匿名である
24時間365日、不特定の人物からいじめを受ける可能性がある状態は、精神的に大きな負荷がかかるのでしょう。
背景②「社会の変質」による子どもの変化
社会の変質が子どもの攻撃性およびいじめの増加につながっていることが考えられます。
以下に、社会の変質の具体的な例を2つ挙げましょう。
- 生活様式の変化による親子のコミュニケーションの減少
- テレビゲームを始めとしたバーチャルメディアの進歩
コミュニケーション不足によって親から受け入れられていないと感じる子どもは、攻撃性が高まるという研究結果があります。(参考:永森悠紀、西村昭徳「両親との情緒的関係が青年期の攻撃性に与える影響-自己愛・自尊心を仲介に-」)
社会心理学の理論の1つに、欲求不満が募るとその人の攻撃性も高まるとする欲求不満攻撃理論というものがあります。この理論のとおり、自身の欲求不満から攻撃性が高まり、いじめにつながっているのかもしれません。(参考:池田謙一、唐沢穣、工藤恵理子、村本由紀子『社会心理学 補訂版』)
また、インターネットやゲームなどを始めとしたメディアの暴力・残虐表現は子どもたちの人格形成においてマイナスの効果を与える可能性があると指摘されています。なぜなら、暴力や残虐な表現は攻撃性を高め、共感や社会行動の欠如などの要因になるためです。(参考:文部科学省委託調査「青少年を取り巻くメディアと意識・行動に関する調査研究―メディアによって表現された暴力的有害情報が青少年に与える影響に関する文献調査―」)
ただし、「コミュニケーションの少ない家庭の子どもは絶対にいじめをする」「テレビゲームが絶対にいじめにつながる」と考えるのは早計です。
あくまで一つの可能性として提示していることをご理解ください。
背景③「いじめへの意識」の変化
いじめに対する意識の変化によって、いじめられている側が相談しやすくなったため、いじめの認知件数が増加したと考えられます。
なぜなら、一昔前までは「いじめはいじめられる方に原因がある。いじめられる方が悪い」という価値観を持つ人が少なくなかったためです。
「自分はいじめられた経験がない=正常」「いじめられた経験がある人=異常」という偏見が、いじめを相談できない雰囲気を作っていたのでしょう。
ですが、近頃は、「いじめ=絶対悪」と考えられるようになりつつあります。
一方で、文部科学省の調査結果によると、本人が訴えて発覚したケースは約17.4%と低く、いじめについて他人に相談できない問題には依然として根深いものがあります。(参考:文部科学省「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」))
NPO法人共育の杜が実施した、教職員を対象とするアンケート調査によると、子どもたちの様子で懸念していることとして、「今後いじめが増える可能性が高い」と回答した割合が約88.77%でした。(参考:共育の杜「NPO法人「共育の杜」が教職員勤務実態調査を文部科学省で記者会見」)
いじめに限らず悩みや不安は、自分一人で考え込むよりも誰かに相談したほうが解決しやすくなり、安心感を得やすくなります。
そのため、子どもには信頼できる人に相談することの大切さを伝えましょう。相談する相手は親、先生、友だちなどが挙げられます。また、親は日頃から子どもと話しやすい関係性・環境をつくりましょう。
いじめによる不登校への政府の対応
いじめによる不登校への対応として、政府は「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」を公表しました。(参考:文部科学省「「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」及び文部科学大臣メッセージ」)
不登校・いじめ緊急対策パッケージの目的は、不登校の児童生徒さんが安心して学べる場所を提供し、心のSOSを早期発見することです。
緊急対策には以下の2つの項目があります。
- 不登校の児童生徒への緊急対策
- いじめへの緊急対策
不登校の児童生徒さんへの主な支援は、以下のとおりです。
対策方法①学習できる場所を提供する
- 落ち着いた空間で生活、学習できるスペースを学校内に設置するよう促進する
- 教育支援センターのICT環境を整備して自宅からオンラインで学習できるように進める
- 自治体の体制を強化して孤立している児童生徒を支援につなげる
対策方法②心のSOSを早期発見する
- より課題を抱える学校にはスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを配置する
- 子ども向けのSNS相談窓口を集約して周知する
- アプリや専門家の支援で心身の負担に気づきやすくしてサポートする
なお、心のSOSを早期発見することは、いじめへの緊急対策にもつながっています。
いじめへの緊急対策に盛り込まれているのは、主に国や自治体の取り組みです。
国や自治体の取り組み
- 重大事態に至るケースを把握・分析してガイドラインの改訂等を実施する
- 重大事態を未然に防ぐため国の個別サポートチームを派遣する
- 首長部局のアプローチによっていじめ解消の仕組み作りに取り組む
子どもの不登校が親の責任ではない2つの理由
お子さんが不登校になっても、保護者さんの責任ではありません。
この章では、子どもの不登校が親の責任ではない理由について解説します。
理由①お子さんと学校が合わない可能性があるため
お子さんと学校が合わないため、お子さんが自ら不登校を選択するケースがあります。なぜなら、お子さんの性格や個性が学校とかみ合わないことがあるためです。
ただし、性格や個性には個人差があるため、全てのお子さんが当てはまるわけではありません。
お子さんと学校が合わない可能性については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
理由②不登校の要因が複雑に絡み合っているため
不登校は要因が複雑に絡み合っているため、お子さん自身が言葉で説明しにくいケースがあります。
例えば、お子さんがいじめを受けているとしましょう。学校生活に不安があるため勉強に集中しにくくなり、生活リズムや心身のコンディションを崩しました。
不登校になったお子さんに理由を尋ねたとき「朝起きられないから」「勉強に集中できないから」と、断片的な答えが返ってくるときがあります。
なぜなら、言葉で説明しにくいほかに、いじめを受けていることを知られたくない可能性があるためです。
また、クラスメイトとの関係に悩んで不登校になっているお子さんがいたとしましょう。クラスメイトと付き合いにくい要因には、発達の特性や家庭環境が影響している可能性があります。
不登校の要因は単一ではないケースが多く、保護者さんの責任と言ってしまうのは、単純化しすぎでしょう。
いじめによる不登校の子どもに親ができる6つの対応
この章では、いじめによる不登校の子どもに親ができる対応について解説します。
対応①家庭を安心できる場所にする
まず、家庭を、お子さんにとって安心できる居場所にしましょう。
いじめられている子どもに多くみられるのは、心に悩みを抱えて自信を失い、自分の存在価値を見失っていることです。
ただし、学校や教室に居場所がなくても家だけは自分の居場所だと思えると、子どもは安心できるでしょう。
また、家族に受け入れられると、「自分は一人じゃない」「自分を必要としてくれる人がいる」ことに気づけます。
自分が1人ではないこと、周囲から必要とされていることに気づくと、自分の存在価値を再確認できます。、そのため、自己肯定感や自尊感情を回復するきっかけになるでしょう。
また、家庭という安心できる居場所を足がかりに、次の一歩に進めます。
対応②「学校に行かなくていい」と子どもに伝える
子どもが学校に行きたくないと言っている場合は、「休んでもいい、行かなくていい」と伝えましょう。
なぜなら、学校に通うことは義務ではないためです。小中学校は義務教育ではあるものの、その義務を担うのは保護者さんや教員などの大人です。
子どもが「学校に行かない」と言い出したときにはすでに、様々な葛藤に苦しんでがんばりきった後の状態です。
がんばり続けたお子さんには、安心して過ごす時間を取るようにはっきりと伝えましょう。
ただし、保護者さんからみて、お子さんががんばり続けていたようには感じられないことがあります。また、お子さん自身ががんばっていることに気づいていない可能性があるでしょう。
お子さんががんばって悩み抜いた結果、「学校に行かない」という結論に達したと考えてください。
そのため保護者さんは「がんばったね」「学校に行かなくていいよ」と、直接言葉にして伝えましょう。休んで回復した後、子どもは必ず前に向かって歩き出せます。
対応③子どもが興味を示すものを体験させる
学校に行かない時間に、趣味や遊びなどで子どもが興味を示すものがあれば、健康や家計の範囲内で体験させてみましょう。
なぜなら、趣味をきっかけに自信を取り戻したり、自己肯定感が高まったりするケースがあるためです。
また、この期間に身につけたことが、将来につながる可能性があります。
ただし、保護者さんとしては「いつまでも遊ばせておけばいいの…?」と不安になるでしょう。そうした不安は子育ての支援機関などに相談しましょう。
対応④学校に連絡する
実際に「いじめがある」と判断した場合は、学校に連絡しましょう。
学校は、いじめ防止対策基本法に基づき、いじめに対応する義務があります。(参考:文部科学省「いじめ防止対策推進法:文部科学省」)
ただし、学校によるいじめ隠蔽のニュースを見て相談をためらう人がいます。それでも、学校に相談してください。
学校に相談したときの対応が不誠実だったり解決法を提示してもらえなかったりしたときのために、並行して以下に示す対応を取りましょう。
対応⑤いじめや不登校の支援機関を頼る
子育ての支援機関と同様に、いじめや不登校の支援機関に相談してください。一部、子育ての相談機関が兼ねていることもあります。(参考:政府広報オンライン「ここにもあります!相談できる窓口が。「いじめ」しない・させない・見逃さない」)
支援機関を利用することで、お子さんのための具体的な対応が分かるうえ、有益な情報を得られます。
家庭内で悩みを抱え込んでいるとストレスによって状況がより深刻になる可能性があるため、カウンセラーに話を聞いてもらいましょう。
また、支援機関は様々なケースを通じて知識やノウハウを蓄積しているため、類似ケースから解決策を見出してくれることがあります。
主な相談窓口は、以下のとおりです。
子どもの人権110番
- TEL:0120-007-110
- いじめ、虐待など、子どもの人権問題に関する専用相談電話です。保護者などの大人が利用することもできます。
みんなの人権110番
- TEL:0570-003-110
- 差別や虐待、パワーハラスメントなど、様々な人権問題に関する専用相談電話です。全国の法務局・地方法務局、及びその支局で開設しています。
24時間子どもSOSダイヤル
- TEL:0120-0-78310
- 文部科学省が設置している、子ども本人のための相談窓口です。
チャイルドライン
- TEL:0120-99-7777
- 18歳までの子どもの相談窓口です。
また、いじめや不登校に悩むお子さんのための支援機関は、多数の民間企業が運営しています。例えば、フリースクールや我々キズキ共育塾のような学習塾などが挙げられます。
支援機関を探すときは、インターネットで「子育て 相談」「不登校 いじめ 相談」などと検索しましょう。気になるところやお子さんに合いそうなところがあれば、ぜひ相談してみてください。
繰り返しにはなりますが、自分一人だけ、家庭内だけで悩みやストレスを抱え込まないようにしましょう。
対応⑥転校を検討する
残念ながら学校に相談しても、解決に向けて真剣に取り組んでもらえないことやいじめる側の態度が変わらないことがあります。
このようなときは転校も視野に入れましょう。(参考:文部科学相「就学校の指定変更[いじめ、不登校等に関連した指定校変更]」)
転校を「逃げ」と考えたり、被害者側が転校しなければならないことに理不尽さや憤りを感じたりするかもしれません。
ですが、劣悪な環境で我慢するよりも、新しい環境で再スタートを切るほうが、長期的に見れば有益です。
不登校からの転校に関する考え方や手続きなどは、以下のコラムをご覧ください。
参考記事:キズキ家学「「我が子の不登校、転校した方がいいの?」〜親御さんへのアドバイス〜」
いじめによる不登校の子どもをケアするときのポイント4選
この章では、いじめによる不登校の子どもを親がケアするときのポイントについて解説します。
ポイント①良好な親子関係を築く
お子さんとは、普段から良好な関係を築きましょう。(参考:一般社団法人 不登校支援センター「不登校のお子さんと良好な信頼関係を築くための方法②」)
なぜなら、良好な親子関係を築くことによって、お子さんがいじめを受けていることを相談しやすくなるためです。
「我が家ではとてもよい関係を築けているのに、そんなことはあり得るのだろうか?」と感じる保護者さんもいるでしょう。
お子さんと保護者さんとで、認識の不一致が起こっている可能性があります。
お子さんがいじめを受けていることを相談しにくい主な理由は、以下のとおりです。
子どもがいじめを受けていることを相談しにくい理由
- いじめられていることを親に言うのが恥ずかしいため
- 親が忙しそうだから、自分のことを相談するのは申しわけないと思うため
- 親は自分のことなんて気にしていないと感じるため
保護者さんがお子さんの様子の変化に気づきにくい主な理由は、以下のとおりです。
保護者が子どもの変化に気づきにくい理由
- 子どもが何も言ってこないから、学校生活は大丈夫なんだろうと感じるため
- うちの子はしっかりしているから、学校で何かあっても対応できるはずと思うため
- 困ったことがあるなら、きっと相談してくれるだろうと考えるため
お子さんと保護者さんのすれ違いを避けるために、日頃から良好な親子関係を築けるよう心掛けてみてください。
ポイント②味方であることを伝えて相談に乗る
普段のお子さんとの会話の中で、「私はいつでもあなたの味方だよ」と言葉にして伝えてください。
日常的にこのような声掛けを行うことで、お子さんがいじめにあったときに保護者さんに相談しやすくなります。
いじめ以外のことで相談されたときも話をさえぎらず、お子さんが満足するまで耳を傾けてください。
どんな場面でも、話を聞くときは、お子さんが話し終わるまで待ちましょう。その後、話し終えてから、事情を正確に把握するために質問します。
大人の目から事態を軽く見積もったり、安易な言葉で言い換えて終わらせたりせず、子どもの言うことを真正面から受け止め、実態を正確に把握できるよう努めましょう。
ただし、無理に話を聞き出そうとするのは控えてください。なぜなら、心に傷を負った子どもをさらに傷つけ、より話しにくくなる可能性があるためです。それらに注意して相談に乗るようにしてください。
ポイント③子育てに関する支援機関を利用する
3つ目のポイントは、子育てに関する支援機関の利用です。(参考:厚生労働省「不登校やいじめ、ひきこもりなどの相談窓口」)
子育ての支援機関として主に挙げられるのは、以下の4つです。
- お住まいの自治体の子育て・教育を担当する部署・窓口
- スクールカウンセラー
- 民間の相談機関
- 親同士の互助会
インターネットで「子育て 相談」「親子のコミュニケーション 相談」などと検索し、気になるところに問い合わせてみましょう。
また、不登校のお子さんが利用できる今の学校以外の選択肢については、こちらで解説しています。
なお、現時点でいじめを受けていないとしても、「いじめが発生したときのために、普段のコミュニケーションをどうすればいいかなどを教えてほしい」と相談できます。
ポイント④普段から子どもの様子をチェックする
どんなに良好な関係を築いても、いじめられていることを伝えにくいお子さんがいます。
いじめを受けていることを伝えにくいお子さんに対しては、普段の様子をよくチェックしてください。
ただし、チェックする部分はいじめに関する部分のみです。お子さんのことを全て把握しようとするのは控えましょう。
チェックする内容の一例として、以下に挙げました。(参考:沖縄県教育庁義務教育課「沖縄県いじめ対応マニュアル」、島根県教育委員会「いじめ発見のための家庭用チェックシート」、茨城県教育委員会「家庭用いじめ発見チェックリスト」)
- 「転校したい」や「学校をやめたい」と言い出す
- 一人で登校したり、遠回りして帰って来たりしている
- お風呂に入りたがらなかったり、裸になるのを嫌がったりする
- テレビゲームなどに熱中し、現実逃避しようとする
- 親の学校への出入りを嫌う
- 成績が下がり、書く文字の筆圧が弱くなる
- 友達の話をしなくなったり、いつも遊んでいた友達と遊ばなくなったりする
- 友達から頻繁に電話がかかってきて外出が増える
- メールやブログ、SNSなどを気にする
- いじめの話をすると強く否定する
なお、文部科学省による、保護者向けのいじめのサイン発見シートがあります。子どもの様子を確認する際の参考としてご覧ください。
参考:文部科学省「いじめのサイン発見シート」
いじめによる不登校の子どもに悩む親のメンタルケア2選
いじめによってお子さんが不登校になったとき、保護者さんとしては非常に気掛かりな状態が続きます。
そのため、この章では、いじめによる不登校の子どもに悩む親のメンタルケアについて解説します。
不登校状態にある子どもがいる親が感じるストレスについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
ケア①長期的な目線でみる
長期的な目線とは、ご本人の状態に一喜一憂しないということです。
なぜなら、不登校を解決するために保護者さんや学校が手を尽くしても、解決しにくいケースがあるためです。
本人のエネルギーが回復するまでに少し時間がかかるケースがあることを前提として、じっくり取り組みましょう。
ケア②悩みや不安を打ち明ける人や場所をみつける
悩みや不安を打ち明ける人や場所をみつけるのは、保護者さんがストレスを溜め込みすぎないようにするためです。
不登校のお子さんを持つ保護者さんは、以下の4点でストレスを感じやすくなります。
- お子さんとの関係
- お子さんとの関係に対する自責の念
- お子さんの将来への不安
- 近隣の人や親戚の目
4つの要因からくるストレスを軽減できる方法は、主に以下の3つです。
- 経験者の話を聞く
- 支援機関やカウンセラーに相談する
- 学校への復帰以外の道を検討する
経験者の話を聞くと、「我が家だけの問題ではないんだ」と感じられるでしょう。また、経験者がどのように不登校から復帰したのかが分かるため、参考にできます。
支援機関やカウンセラーに相談するのは、保護者さんが気負いすぎないようにするためです。なぜなら、家族の力のみでは不登校を解決しにくいケースがあるためです。外部に相談して、保護者さんの心身にかかる負担を軽減しましょう。
学校への復帰以外の道を検討するのは、お子さんにとって、学校に通うことが不登校の解決にならないケースがあるためです。お子さんが小中学生ならフリースクール、高校生の場合は通信制高校や定時制高校に切り替えることを視野に入れましょう。
いじめによる不登校の子どもに伝えたい今の学校以外の6つの選択肢
この章では、今の学校以外の選択肢について解説します。
気になるところがあれば、インターネットで調べたり見学に行ったりしましょう。
選択肢①フリースクール
フリースクールとは、さまざまな理由で、学校に行かない選択をした子どもたちが通える学校以外の学びの場のことです。
主に学習活動、教育相談、体験活動を行い、同年代の友達との交流ができます。
2015年度の文部科学省の調査では、全国に474のフリースクールが確認されています。(参考:文部科学省「フリースクール・不登校に対する取組」)
なお、多くのフリースクールは、NPO法人や民間企業、個人が運営しています。
フリースクールの概要やタイプ、探し方、選び方については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
選択肢②教育支援センター(適応指導教室)
教育支援センター(適応指導教室)とは、主に不登校状態にある児童生徒の学校復帰を支援し、社会的自立をサポートする施設のことです。集団生活への適応や情緒の安定、基礎学力の補充などのサポートを行っています。(参考:文部科学省「適応指導教室(学校支援センター)の取り組みについて」)
教育支援センター(適応指導教室)の具体的な支援内容については、こちらで解説します。
なお、適応支援教室とは、教育支援センターの旧名称で、同じ施設を指します。不登校状態にある児童生徒の増加や文部科学省の通知などを受けて、2003年に正式名称が適応支援教室から教育支援センターに変更されています。(参考:立川市教育委員会「適応指導教室から教育支援センターへの名称変更について」)
なお、教育支援センター(適応指導教室)の主な役割は、不登校状態にある児童生徒の学校復帰を支援することです。
お子さんが「学校に戻るのは嫌」「しばらくは自分のペースで過ごしたい」と考えている場合は適していない可能性があります。
選択肢③通信制高校
高校生の場合は、転校先の候補として通信制高校があります。
通信制高校とは、通信教育で学習する高等学校課程のことです。 基本的に毎日通学する必要がないため、場所を選ばずに勉強できる点が特徴です。(参考:文部科学省「高等学校通信教育の質の確保・向上」)
学校から送られてくる教科書や動画などの教材を利用して、自宅で学習します。成績は、レポートの提出やテストの点数で決まります。卒業の要件を満たせば、高校卒業資格が得られ、最終学歴は高校卒業(高卒)になります。
学習以外の時間を確保したい人や、自分のペースで学習したい人にオススメです。
通信制高校については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
選択肢④定時制高校
定時制高校とは、夜間、もしくは昼間の決められた時間に通学して学習する高等学校課程のことです。基本的に全日制高校より1日の授業時間が少ない場合が多く、通学する時間帯も選べるのが特徴です。(参考:文部科学省「三 新制高等学校の発足:文部科学省」)
定時制高校は、1948年に勤労青少年、つまり就業などのために全日制高校に進学できない青少年のために発足しました。
全日制高校とは異なる時間帯にも授業を受けられるため、働きながら高等学校教育を受けたい人や、自分のペースで学びたい人にオススメです。
定時制高校については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
選択肢⑤学習塾
学習塾のなかには、学校が苦手な人、不登校の人などのサポートに実績のあるところがあります。
私たちキズキ共育塾もその一つです。
学校が苦手な人や不登校の人のサポートに実績のある学習塾の特徴は、「学校が苦手なこと」に配慮した授業を受けられることです。
高校生の場合、出席日数が少ないと留年・退学になる可能性もあります。その場合でも、通信制高校か定時制高校へ転校して大学受験をすることもできますし、高卒認定試験を取得した後で大学受験をすることも可能です。
高卒認定試験(正式名称:高等学校卒業程度認定試験)とは、「高校を卒業した人と同等以上の学力があるかどうか」を認定するための試験のことです。文部科学省が実施しており、「高認」とも呼ばれています。
高卒認定試験については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
選択肢⑥習い事やサークル活動
習い事やサークル活動はお子さんが自分に自信を持てるほか、将来性を育むことができます。また、習い事やサークル活動に自分の居場所を見出して安心感を得られるでしょう。
不登校のお子さんにおすすめできる主な習い事は、以下のとおりです。
- スポーツ系
- 音楽系
- IT系
- アート系
スポーツ系は体を動かすことでストレスを発散でき、心身を鍛えられるでしょう。親子で参加できる教室であれば、家族間でのコミュニケーションが弾みます。
音楽系に含まれるのは楽器演奏のほか、作詞や作曲、ダンスなどです。自己表現力を高められるほか、心を癒やすことにもつながります。
IT系にはプログラミングや動画編集、ゲーム制作などが挙げられます。作品の発表を通じて世代や国籍を超えた人との交流が生まれるほか、将来の可能性を広げられるでしょう。
アート系に含まれるのはイラストやデザインなどです。お子さんの感性やセンスを磨き、想像力を育みます。
習い事をさせるうえで最も重要なのは、お子さんに無理をさせないことです。
また、苦手分野を克服させようとすると、お子さんにとって大きな負担になることがあります。習い事をさせる前に、お子さんの得手不得手を把握しておきましょう。
習い始めてから、お子さんが教室を休みたがったり行きたがらなくなったりしたら、休ませることを検討してください。
選択肢⑦学校の保健室や図書室
学校の保健室や図書室は、不登校のお子さんが落ち着いて過ごせる空間の1つです。
保健室では、養護教諭と話したり自習したりして過ごします。また、手が空いている教員に勉強を教えてもらったり、簡単な作業を任されたりすることがあります。
保健室登校については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
図書室での主な過ごし方は、自習や読書などです。さまざま分野の本に触れることで、語彙力が向上したり将来の夢をみつけたりできるでしょう。また、問題解決力の向上が見込めます。(参考:公立大学法人 熊本県立大学「別室登校の児童生徒にとって学校図書館とは どのような居場所か」)
お子さんに登校の意思がみられても教室に入ることが困難な場合は、保健室や図書室で過ごすことを提案してみましょう。
いじめによる不登校を経験した人の体験談
この章では、いじめによる不登校を経験した人の体験談を紹介します。
体験談①いじめ・不登校・ひきこもりからの志望校合格
中村崇浩さん(仮名)は、小学校・中学校までは順風満帆な生活を送り、高校受験にも無事成功して進学校に合格しました。
ですが、高校の指導方針が合わず、成績はどんどん下降。クラスメイトたちに目をつけられ、悪口を言われるようになりました。
「学校に居場所がない」と感じ、半年間の不登校・引きこもり生活を送ります。
そこから志望校である東京電機大学に合格するまでの経緯は、以下の体験談で詳しく紹介しています。
体験談②いじめ・不登校を経験。高3で基礎から学び直し大学合格
加納真紀さん(仮名)は、中学1年生のときにいじめにあい、別の学校に転校しました。
ですが、転校先の学校でもうまく人間関係を築けず、中学校2年生の初めに不登校になりました。
その後、定時制の工芸高校に進学します。理由は成績が足りなかったことと、絵を描くことが好きだったためです。
その状態から東京農業大学を志望校にして合格した経緯は、以下の体験談で紹介しています。
体験談③不登校・10年以上の引きこもりを経て20代後半で社会復帰を果たす
浅田ゆきさん(仮名)は、小学校3年生ごろから学校を休みがちになりました。友達同士で悪口を言い合ったり、からかったりする関係を不快に思いながら止められなかったことへの罪悪感や不安が理由です。
その後、中学2年生のときに完全に不登校になりました。以降10年以上、人との関わりを避けて過ごしてきたそうです。
その後「このままではいけない」と気付き、生活リズムを整えながら自分自身の考え方や行動面での課題をクリアして、対人関係への不安を解消しました。
結果、20代後半で社会復帰を果たし、リラクゼーションセラピストとして働いています。
参考:学校休んだほうがいいよチェックリストのご紹介
2023年8月23日、不登校支援を行う3つの団体(キズキ、不登校新聞、Branch)と、精神科医の松本俊彦氏が、共同で「学校休んだほうがいいよチェックリスト」を作成・公開しました。LINEにて無料で利用可能です。
このリストを利用する対象は、「学校に行きたがらない子ども、学校が苦手な子ども、不登校子ども、その他気になる様子がある子どもがいる、保護者または教員(子ども本人以外の人)」です。
このリストを利用することで、お子さんが学校を休んだほうがよいのか(休ませるべきなのか)どうかの目安がわかります。その結果、お子さんを追い詰めず、うつ病や自殺のリスクを減らすこともできます。
公開から約1か月の時点で、約5万人からご利用いただいています。お子さんのためにも、保護者さまや教員のためにも、ぜひこのリストを活用していただければと思います。
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」はこちら(LINEアプリが開きます)
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」作成の趣旨・作成者インタビューなどはこちら
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」のメディア掲載・放送一覧はこちら
私たちキズキでは、上記チェックリスト以外にも、「学校に行きたがらないお子さん」「学校が苦手なお子さん」「不登校のお子さん」について、勉強・進路・生活・親子関係・発達特性などの無料相談を行っています。チェックリストと合わせて、無料相談もぜひお気軽にご利用ください。
まとめ〜いじめによる不登校について相談してみましょう〜
いじめや不登校は、少しのきっかけで誰にでも起こる可能性があります。そのため、解決法や対処法は数多く存在します。いじめによる不登校のお子さんがいるときは、ためらわずに支援機関を積極的に利用してください。
また、保護者さんは日頃から子どもと良好な関係を築けるよう心掛けましょう。
このコラムが、あなたとお子さんのお役に立ったなら幸いです。
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