不登校は甘えではありません〜家庭を「安心の場所」にしましょう〜

不登校は甘えではありません〜家庭を「安心の場所」にしましょう〜

こんにちは。不登校のお子さんのための個別指導塾・キズキ共育塾の講師、青柳翔太と申します。今回は、「不登校は甘えなのか」について記事を執筆いたしました。

「不登校は甘えではない」という立場から

私の見聞きする範囲では、不登校は、ある日いきなり「今日から学校に行かない!!」という宣言とともに始まるわけではありません。

ほとんどの場合は、朝起きられなかったり、腹痛を訴えたりして登校を拒否することが徐々に増え、最終的に完全に不登校になることが多いようです。

この「徐々に学校に行けなくなっている時期の状態」は、しばしば仮病、すなわちずる休みをしたがっているように見えてしまいます。

そのため、「不登校になる子どもは甘えている」と思う人がいるのだと思います。

また、世間には「そもそも、どんな理由があっても不登校は甘えだ」という声もあります。

「誰しも悩みがあるのは当然で、みんなそれを我慢したり乗り越えたりしている。悩みを理由に学校に行かないという言い訳は成り立たない」というのが彼らの主張です。

これに対して私は「不登校は甘えではない」という立場で、その理由と、甘えだと考えることのデメリットを論じてみようと思います

なお、この記事は私の経験にのみ基づいて書いており、反論の余地があることは認めます。真理は中庸にあるのが常です。

あえて一方的な意見をそのまま提示することで、これを読んでいるあなたが不登校問題を多面的に見るための材料を提供したいと考えております。

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甘えではない不登校の例〜体調や精神状態の悪化〜

私が不登校を甘えだと思わない理由の一つは、実際に「(生活習慣の悪化などによって)学校に行きたくても行けない体調や精神状態になっている」ことがよくあるからです。

冒頭で、「不登校の子が仮病とも思える理由を訴えてずる休みをしているように見える」というお話をしました。

よく聞くのは、「朝起きられない」というお子さんに対して「甘えだ」と決めつけて対応するケースです。

これまで健康に過ごしてきた保護者さまにご理解いただけないのも無理もないのですが、実際に「朝起きられない」という人は多数存在します。

キズキ共育塾で不登校の生徒さんに睡眠習慣について尋ねると、「不登校になった当初は、布団に入っても朝まで眠れませんでした」という答えがよく返ってきます。

お子さんは、学校での過度なストレスによって睡眠が阻害されている可能性があります。
また、生活習慣の悪化などによって睡眠が阻害され、朝から昼まで眠かったり、鬱病になったりするという可能性もあります。

そうなると、朝は起きたくても起きられないのです。

これを甘えだと決めつけて怒ったりすると、お子さんは、「自分は甘えている。起きたくても起きられない自分はダメ人間だ」と自分を責め、ますます心身の状態が悪化することもあります。

逆に、「起きたくても起きられないのに、なんでわかってくれないんだ!」と反発することもあるでしょう。

次に、朝起きられないことの原因の一つである「ブルーライト」について説明します。

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ブルーライト(スマホ)と不眠〜医学的な見地から〜

ブルーライト(スマホ)と不眠〜医学的な見地から〜

先日キズキ共育塾で、精神保健指定医・日本医師会認定産業医の志村哲祥先生に睡眠についてのお話を伺いました。

志村先生は2015年から、ある通信制高校にて睡眠改善指導を行われています。

志村先生の調査の結果、その高校では「睡眠リズムが狂ってしまったために通学できない生徒さんが多い」ということがわかりました。

そして、その生徒さんたちに睡眠改善指導を行ったところ、登校率及び授業出席率が30%向上しました。

志村先生によると、今の子どもたちは、かつての学生よりも睡眠を狂わせる要因が多いそうです。

以下、志村先生のお話の一部分です。

人間の体は、青い光(ブルーライト)を浴びると昼だと感じます。このブルーライトは、スマホからも出ています。

つまり、夜遅くまでスマホをいじっていると、体は「いまは昼だ」と認識するのです。

そしていざ寝ようとスマホを手放してから、体は「いまは夜だ」と感じるホルモンを分泌します。

スマホ以外にもブルーライトを多く含む蛍光灯の光を夜浴びることで体内時計が狂うと言います。

そのため、睡眠改善指導としては、
これらの要因が科学的に睡眠を阻害することを生徒さんに淡々と伝え、
室内光をブルーライトを含まない暖色系の白熱電球に変える、
ブルーライトカット眼鏡を着用する、
スマホ画面の光を弱めるなど、
生活習慣を変えられるところから無理なく変えていくことが大事です。

――以上が、志村先生のおっしゃったこと(の一部)です。

このように、現代では当たり前とされているライフスタイルの中でも体内時間が狂う要因が多くあります

こうした事実を知らずに、夜にスマホを見ていたために朝起きられない体になってしまった不登校の子を甘えだというのは酷というものでしょう。

上記は「ずる休みに見える」人のうち、「朝起きられない人」で、さらに「夜にスマホ類を見ている人」に限っての話です。

つまりこれ以外にも、様々な原因による心身の不調で学校に行けない人は大勢いるということがお分かりいただけると思います。

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不登校の原因は断定できないことも多い

心身の不調以外にも不登校を「甘えだ」と言えないのは、不登校の理由ははっきりと断定できないのが普通だからです。

お子さんが不登校になったら、まずは「どうして学校に行かないの?」と聞いてみると思います。

しかしお子さんの答えが不登校のすべての根源であるとは限りません

お子さんが単一の理由で学校に行きたがらないとは限りません。本当のことを言うとも限りません。お子さん自身が理由を明確にわかっているとも限りません。

私は、キズキ共育塾以外の塾で講師を務めていたときにも、不登校の生徒さん(以下、A君)を受け持ったことがあります。

A君は中学1年生のころから不登校で、自分では「勉強が嫌いだから学校に行きたくない」と言っていました。

当時の私も含め、A君の周りの人はみんな、「A君はただ甘えている、嫌なことからただ逃げている」のだと思っていました

A君はその塾には親に無理やり連れてこられて通い始めたのですが、幸運にも他の生徒さんと楽しそうに談笑し、成績も徐々に上がり、だんだん勉強を好きになっていきました。

そこで「学力もついたことだし、そろそろ登校を再開してみてはどうか?」と勧めてみました。

登校を再開したA君は、何日かした後に、また登校できなくなりました。

「勉強嫌いが原因だ」としか聞いていなかったので、これは意外でした。

そこで同じ学校の生徒さんに事情を尋ねると、こう言いました。

「Aくんは学校に来ていたけど相変わらず一人だったね」

A君が勉強嫌いだったのは確かですが、不登校の原因はそれだけではなかったのです。

「学校に行っても話せる友達がおらず、孤独な時間が長いため、行きたくなかった」のです。

このように、お子さんの口から発せられる情報が不登校の原因(のすべて)ではないこともあります。

もしお子さんが「甘えだ」と思うような不登校の理由を口にしても、それ(だけ)が真実とは限らないということです。

(ちなみにA君は、進級に伴うクラス替えで塾でできた友達と同じクラスになったことで、登校を再開しました。)

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不登校のお子さんを「甘えだ」と叱ることによる親子関係の悪化

不登校のお子さんを「甘えだ」と叱ることによる親子関係の悪化

不登校を「甘えだ」と考えると、説教という対応につながることもままあります。

しかしお子さんの現状を理解しないままに叱ると、親子関係の悪化を招きます。

親子関係の悪化は、お子さんをさらに学校や社会に復帰できない状況に追い込むことがあります。

ある生徒さんは、進んで昼夜逆転生活をするようになりました。昼に起きていると親と顔を合わせなければならないのが苦痛だったそうです。

夜だけが彼にとって心地よい時間だったと語っていました。

またある生徒さんは、学校に行けないだけでなく部屋からも出られない引きこもりになりました。

その生徒は外出するときリビングにいる親と目を合わせるのが怖くて外出できなかったのです。

このように、親子関係が悪いと、お子さんの行動を制限し、無気力にすることがあります。

一般的に、子どもの生活というものは学校と家庭しか関わる場所がない閉鎖的なものです。

そのため、学校に行けない場合は家庭に逃げざるを得ないのです。

家庭にしか居場所がないお子さんに「甘えだ」と決めつけて接すると、親子関係が悪化し、事態をより複雑にし、お子さんをより追い詰めることになります。

これを理解している保護者さまも多いのですが、やはり「不登校は甘えだ」という結論を手放せない方も多いのです。

私は、甘えとは「自分の問題を自らは放棄し、問題が起きたことを人のせいにする状態」だと考えております。

キズキ共育塾で見る不登校の生徒さんたちは、いろいろな事情を抱えながら、必死で前に進もうとしています。

そんな彼らが「甘えている」とは、私には思えません

あなたがお子さんのことを「甘えている」と思っているようであれば、一度立ち止まって冷静になっていただきたいと思います。

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不登校の我が子との接し方〜談笑できる間柄を目指す〜

さて、「不登校は甘えではない」のならば、どう対応すればよいのでしょうか。いくつかご紹介します。

「不登校は甘えでない」と認め、まずは家庭をお子さんが安心できる場にして、良好な親子関係を築きましょう

冗談を言い合ったり談笑できたりするかどうかが、「良好な親子関係」の一つの指標となります。

家では叱らず、かといって腫れ物に触れるように接することもしないで接しましょう。

良好な親子関係、適切な距離感を保てていれば、いずれ将来のことを冷静に話せるときが来ます

不必要に親子関係を悪化させると、お子さんは「自分が苦しんでいるときに親は何もしてくれない。むしろ立ち直りを邪魔している」となどと思い、より孤独を抱えることにも繋がります。

いい親子関係を保つことは、お子さんが前に進む気持ちを持てるようになる有用な手段の一つです。

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不登校の我が子との接し方〜お子さんが自立できるように〜

不登校の我が子との接し方〜お子さんが自立できるように〜

お子さんの不登校を「甘え」とみなさない一方で、お子さんを甘やかす(と言っては言い過ぎかもしれませんが、過保護気味になる)保護者さんもいます。

不登校のお子さんには、家庭でストレスを与えないことが大切ですが、と言って(心身に不調がある場合を除き)お客さん扱い、何もできない子ども扱いする必要もありません

そうした対応は、お子さんに自尊心が身につきませんし、将来の自立を妨げます。

生活のすべてを親に任せると、不登校のお子さんは何も身につけることができません。また「学校に行っていない自分が、家でも何もしていない…」という罪悪感に悩むこともあります。

保護者として、悩みを抱えるお子さんの面倒はできる限り見たいと思うこともあるでしょうが、徐々に身の回りの世話を減らしてみましょう

例えば家事の一部を任せたりすると、お子さんは「親は自分のことを信頼してくれている」「自分でも家事ができるようになってきた」と良好な親子関係を築け、自己肯定感も高まり、不登校からの立ち直りの一助となります。

また、「せっかく」不登校になったのなら、家事などの技術を経験から学ばせてみようとポジティブに考えると、保護者としても気が楽になるのではないでしょうか。

ご飯の用意に限っても、最初は米を研ぐのを任せる、次に野菜を切るのを学ばせる、一緒に買い物に行く、献立から考える…と、できることは段階的にどんどん増えていきます。

そして(これも段階的に)お金や家計の話もできるようになると、お子さんが将来について考え、不登校からの復帰を考えるきっかけにもなります。

不登校のお子さんの「不登校状態」にだけ目を向けるのではなく、心身に不調があるときはそのケアをする、そうでないときは家庭でできることをさせるなど、状況に合わせて、将来のために現在できることを行うことが重要です。

私たちキズキ共育塾は、不登校のお子さんのための完全個別指導塾です。進路/勉強/受験/生活などについて、無料相談ができます。各種受験の合格実績多数。お気軽にご連絡ください。

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まとめ

いかがだったでしょうか?

お子さんは、学校と家庭を自分の意志で自由に変えることはできません。

学校については、保護者さまの協力があっても「お子さんに合わせた変化」を求めるのは難しいものです。

ですが家庭は、家族の意思で変えられます

まずはお子さんの不登校を甘えと決めつけず、「不登校である」という現状をありのまま受け止めましょう。

そして不登校の原因は複合的で複雑だと腹をくくり、一つ一つ問題を改善するのがいいと思います。

とは言え、お一人だけ、家庭だけで抱え込む必要はありません。困ったときには、外部の力を借りましょう。

キズキ共育塾も無料相談を受け付けていますので、お気軽にご連絡ください(保護者様だけでのご相談も可能です)。

いまから学び直せる

小学校レベルから大学受験対策まで。 目的・学力に合わせた完全個別指導。

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監修 / キズキ代表 安田祐輔

やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。

【新著紹介】

『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
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【略歴】

2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【メディア出演(一部)】

2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

共同監修 / キズキ相談担当 半村進

はんむら・すすむ。1982年、茨城県生まれ。東京大学文学部卒。
小学校時代から転校を繰り返し、運動ができないこと、アトピー性皮膚炎、独特の体形などから、いじめの対象になったり、学校に行きづらくなっていたことも。大学に入学してようやく安心できるかと思ったが、病気やメンタルの不調もあり、5年半ほど引きこもり生活を送る。30歳で「初めてのアルバイト」としてキズキ共育塾の講師となり、英語・世界史・国語などを担当。現在はキズキの社員として、不登校・引きこもり・中退・発達障害・社会人などの学び直し・進路・生活改善などについて、総計1,000名以上からの相談を実施。

【執筆記事・インタビューなど(一部)】

日本経済新聞 / 朝日新聞EduA / テレビ東京 / 不登校新聞 / 通信制高校ナビ

サイト運営 / キズキ

「もう一度学び直したい方」の勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする学習塾。多様な生徒さんに対応(不登校・中退・引きこもりの当事者・経験者、通信制高校生・定時制高校生、勉強にブランクがある方、社会人、主婦・主夫、発達特性がある方など)。授業内容は、小学生レベルから難関大学受験レベルまで、希望や学力などに応じて柔軟に設定可能。トップページはこちら。2023年7月現在、全国に10校とオンライン校(全国対応)がある。

※紹介した生徒さんの事例は、記事の趣旨を損なわない範囲で、個人の特定ができないように一部事実を変更しています。
※文中の写真は、全てイメージです。

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