不登校の10タイプと、タイプ別・タイプ共通で親御さんにできる対応法
学校が苦手なお子さんのための完全個別指導塾・キズキ共育塾・講師の深山修二です。
お子さんが不登校になって、次のようにお悩みではありませんか?
- 「何が原因でうちの子が不登校に…」
- 「子どもに何があったのか、親から見てもわからない…」
不登校のタイプは、お子さんによって様々です。そして、不登校はあなたのお子さんだけではなく、どんなお子さんでもなりうるものなのです。
まず親御さんは、お子さんのことはもちろん、ご自分のことも責めないでください。
この記事では、不登校の生徒さんを大勢指導してきた経験から、不登校の主な原因10タイプと、タイプ別の対応法、不登校から次の一歩へ進んだ事例をお話しします。
なお、ご紹介するタイプ及び対応は、小学校・中学校・高校の区別はあまりありません。
お子さんの今後についてはもちろん、親御さんの今後についても、少しでも「解決」のお役に立てれば幸いです。
共同監修・不登校ジャーナリスト 石井志昂氏からの
アドバイス
不登校の理由は、本人や家族にこそ見えづらいものです。
ゲームをしたいだけ、怠けているだけだと周囲が思うことも、本人自身がそう言うこともあるでしょう。
しかし、学校で傷つかずに不登校をする人はほとんどいません。何かしら心の傷を負ったり、学校と会わないだけの理由があるわけです。
今、気になっている人がどんなタイプに当てはまるのか。一度、心をまっさらにしてコラムを読んでみてください。
目次
不登校の主な原因10タイプと対応法
では早速、不登校の主な原因10タイプと対応法をご紹介します。
なお、「主な」タイプですので、必ずしもご紹介するタイプに当てはまらないケースもありますし、タイプが複合することもあります。
親御さんとして「タイプと対応を知って安心したい」というお気持ちはよく理解できます。しかし当てはまらなくてもお気を落とさず、後述の「共通する2つの対応」をご覧ください。
タイプ①環境の変化
進学や進級に伴う環境の変化は、不登校の原因となります。
例えば、次のようなことです。
- 通学距離が長くなる
- 学ぶ内容が難しくなる
- 進路について具体的に考える必要が出てくる
新しい環境に慣れるために、お子さんは一生懸命です。
小学生は、保育園・幼稚園と違い、勉強が始まったり、机に座る時間が格段に多くなったり、朝の時間も早くなったりと1日の過ごし方(生活リズム)が大きく変わります。
新中学生・高校生にとっても共通の悩みです。特に4月前後の時期や進路選択の時期に、これまでとの環境の違いに悩みを抱えるお子さんは少なくありません。
4月当初はなんとか通えていても、5月以降に疲れから調子を崩すことがあります。
朝起きることができなくなったり、授業に出るのが苦痛になったりすることから、学校へ行きにくくなるのです。
生活リズムに関しては、お子さんの年齢が低い場合は、親御さんがよいリズムをつくることで、乱れを改善したり予防したりできます。
中学生・高校生の場合、親御さんに生活リズムの面倒を見られるのを嫌がるお子さんもいるかもしれません。
そんなときは、完全に面倒を見るのではなく、どんな方法なら生活リズムが乱れないかお子さんと話し合ったり、お子さんが考えた方法に協力したり、という形が考えられます。
学校の環境に馴染めない場合は、学校に、保健室登校・遅刻・早退などが認められないか相談しましょう。
ゆっくりできる環境で過ごすうちに、気持ちが落ち着いてクラスへの登校を再開できたり、今後どうするかを考えたりできるようになります。
進路に関しては、お子さんが何か悩んでないか様子を見ながら相談にのるとよいかと思います。
将来のことは親御さんも気にかけていらっしゃると思いますので、話し合うよい機会になるでしょう。
高校不登校と環境の変化については、コラム「高校不登校、その原因と対応〜学年別・『環境の変化』を軸に〜」で詳しく紹介しています。
環境の変化で不登校になった生徒さんの体験談は、「長期の不登校を経験した私の大学受験記。人と目を合わせられなかった私でも学び直せた」をご覧ください。
タイプ②がんばりすぎ
日々の勉強、部活、文化祭の準備などにがんばり続けることも、不登校の原因になります。
例えば、次のようなことです。
- 「周囲の期待に応えなければ」と思ってがんばり続ける
- 「自分はもっとがんばれる」と思ってがんばり続ける
- 「もっとがんばれば成績がよくなる」と思って、自分でがんばりに歯止めをかけられない
「問題ない子」「よくがんばるいい子」として評価されがちなので、親御さんも学校も「過剰ながんばり」に気がつかず、徐々にストレスをため込むのです。
気力や体力に限界がきて「がんばり続ける」ことができなくなったとき、糸が切れたように無気力になったり反抗的になったりします。
がんばりすぎで不登校になったお子さんは、「もうがんばれない」という状況で、気合でどうこうなるものではありません。
親御さんには、まず「よくがんばったね」と、それまでのがんばりを認めてほしいと思います。
その上で、お子さんにはゆっくり休むことが必要です。
必要に応じて、医療機関も利用しましょう。
心身ともに回復してきた様子が見られたら、無理なくできることから始めていくことをオススメします。
例えば、登校を再開するときも、いきなり毎日全ての授業に出席するのではなく、保健室登校なども利用しながら徐々に生活リズムを整えていく、というようなことです。
「また無理をしていないか」「これまで休んだ分をいきなり取り戻そうとしていないか」などを見守っていただけると、スムーズでしょう。
がんばりすぎが不登校の原因になった生徒さんの体験談は、「引きこもり・高校中退から大学受験。慶應義塾大学に合格できた」をご覧ください。
タイプ③学校の友人関係(いじめも含む)
主に同級生・友人との関係が不登校の原因となるケースです。
「学校に行きたい理由」には、「友達に会えるから」という面も大きいでしょう。
逆に言うと、例えば次のような場合には、学校に行きたくなくなるのです。
- クラスに馴染めない
- 友達とちょっとケンカした
- 仲のよい友達がいなくて居心地が悪い
そして、いじめの可能性も考えられます。
からかわれたことを気にしたり、ずっといじめに耐えていたけれどつらくなったり、ということで学校に足が向かなくなります。
まず、お子さんに変わった様子がなかったか思い出してください。
次のように、気になることは何でもいいです。
- 最近元気がなくなった
- 朝すんなり起きてこなくなった
- 学校の話をすることが減った
- 学校に行く準備はできているのに、なかなか家を出ようとしなかった
思い当たる節があるなら、お子さんに確認してみましょう。
お子さんは、次のような思いから、学校のことを話したがらないかもしれません。
- 「仲のいい友達がいないくらいで学校に行けないなんて、親には言えない」
- 「いじめられてるなんて、親に言いたくない」
- 「嫌なことから逃げた自分が悪い」
そんな様子なら、無理に聞き出そうとせず、「自分たちは、あなたの味方だよ」と明確に伝え、お子さんを安心させてください。
安心できたお子さんは、人間関係の悩みを話すかもしれません。また、「家庭という安心できる足場があるから、ちょっとくらい気まずい学校にも通ってみるか」と思うかもしれません。
いじめも含めて、実際に人間関係に「問題」があるようでしたら、学校ともしっかり相談することで、具体的な「次の一歩」が見えてきます。
担任の先生などと連絡を取って状況を確認したり、学校へ戻るか、授業はどうしていくかなどについて、親御さんが選択肢などを確認しておくのもいいでしょう。
しばらく休んだことで学校へ戻ることができればそれで「解決」です。保健室登校や転校を検討するのもひとつの手です。
いじめであれば、学校以外に、外部の支援団体に相談することもオススメです。
友人関係が不登校の原因になった生徒さんの体験談は、「中学でいじめられて不登校に。高3で基礎から学び直して大学受験合格」をご覧ください。
不登校といじめの関係については、コラム「コラム:いじめが原因の不登校への対応法-『お子さまの味方』になりましょう」で詳述しています。
タイプ④学校の上下関係
教師や部活動の先輩などとの上下関係が原因で不登校になるタイプです。
「上の立場」の相手との関係で、理不尽なことでも我慢してため込み続けたりすると、我慢が限界を超えて不登校になります。
例えば、次のようなことです。
- クラス全員の前で教師に否定的な言葉をかけられる
- 教師からの体罰がある
- 部活動などで、先輩から過度な要求がある
また、理不尽な命令などがなく、一般的には問題のない関係性に見えても、「どうしても合わない」と悩んで不登校になることもあります。
「上下関係」を学ぶことは社会において必要な面もあります。しかし、本人が学校へ行けなくなるほどのことであれば問題ですよね。
この場合の対応は、「③友人関係(いじめも含む)」と共通しています。
不登校になったことを責めず、お子さんを安心させて、それからお子さんから話を聞きましょう。
学校への相談も必要です。しかし状況はすぐには変わらないかもしれません。
「問題」が解決しそうにない場合、相手が部活の先輩・顧問であれば退部、担任教師であればしばらくの間の保健室登校などを検討してみてもよいでしょう。
現在の学校に残ることが難しい場合は、転校も考えられます。
お子さんが「悪い」わけではないのに転校となると、悔しい思いをされることでしょう。
いじめの場合も同じなのですが、例えば「体罰(いじめ)について、どうして相手を訴えずに我が子が転校するんだ」というようなお気持ちはよくわかります。お子さんの状況も知らない私が「訴訟すべきではない」とは言いません。
ですが、それはそれとして、「いまのお子さんのための行動」として何をするべきか、ということはお考えいただければと思います。
学校関係が不登校の原因になった生徒さんの体験談は、「居場所をなくし二度のひきこもりを経験した僕が、熱心な先生に支えられ大学に合格」をご覧ください。
タイプ⑤学業の不振
勉強についていけないことも、不登校の原因になります。
学校では勉強をする時間がほとんどです。授業についていけないと、苦痛な時間ばかりを過ごすことになるのです。
私が見てきたケースでは、「ある日の授業が理解できず、それですぐに不登校になった」という人はあまりいません。
授業にだんだんとついていけなくなり、定期試験の成績が下がり、なかなか学習が追いつかない…という悪循環に陥った後で、いよいよ不登校になった、という人がほとんどでした。
つまり、不登校になった段階では、すでに学習面で大幅に遅れているケースがほとんどだということです。
成績が落ちてきていれば発見しやすいかと思います。
また、効果的な学習(学び直し)ができれば、比較的短期に解決可能です。
学習塾や家庭教師を利用したり、学校で補習を受けられないか相談したりすることをオススメします。
ただ、お子さんは、一度勉強ができなくなったことで自信をなくしている可能性があります。
自信がないままでは、勉強も、それ以外のことも、モチベーションが上がらないでしょう。
その場合、親御さんは成績が悪いことを叱らず、励ましてほしいと思います。
また、「勉強をする意味がわからない」「将来何をしたいのかわからないので勉強する気が起きない」などと悩んでいる場合もあります。
そんなお子さんに対しては、進路のことについて一緒に考えてみてください。
勉強以外についても、お子さんが何かに悩んでいるかを知るきっかけになることがあります。
学業の不振が不登校の原因になった生徒さんの体験談は、「高校の雰囲気についていけず不登校になった僕が、通い続けられた温かい場所」をご覧ください。
タイプ⑥不安感
不安感も、不登校の原因になります。
子どもの心理は、繊細で揺れ動きやすいものです。
特に思春期なら、心身ともに急激に変化し、戸惑いがあるでしょう。
例えば、次のように、些細なことでも不安が大きくなったことがきっかけで学校へ足が向かなくなることがあります。
- 学校でうまくやっていけないのでは
- 友達ともめた。もう仲直りできないのでは
- 友達は志望校を決めた。自分はこれからどうなるんだろう…
- 母親と離れるのが不安…
「何かの明確な対象に、明確な不安がある」というよりも、「何かのきっかけで、いろいろなことに漠然とした不安感を持つ」というイメージです。
母親と離れることを不安に思う傾向は小学校低学年に多く、「母子分離不安」と言われることがあります。文字どおり、母親と離れていると不安になるのです。
明確な理由がわからない不登校には、親御さんとしても戸惑われるでしょう。
しかし、お子さん自身も、抱えている不安をどうしたらいいのか悩んでいます。
まずは、お子さんの「不安」に耳を傾けましょう。
親御さんに話を聞いてもらえるだけで安心して解決するかもしれません。具体的な解決方法が見つかるかもしれません。
お子さん自身、自分の「不安」をどう言葉にしてよいかわからないこともあるかもしれません。ですが、「親として、子どもの不安に寄り添う姿勢」を明確に見せることが重要です。
「いまよりもさらに、お子さんとの信頼関係を築くチャンス」ととらえてコミュニケーションをとってみるのはいかがでしょうか。
一緒にどこか出かけたり、家事を手伝ってもらったりするのもいいですね。
学校と同じような生活リズムで過ごせるようであれば維持できると、不安が解消されたときに学校へ戻りやすくなります。
それでも学校を休むことが続くようであれば、ご家族以外の人と会うきっかけを作ったり、まずは親御さんからでも相談機関に頼ることを検討してもいいでしょう。
なお、「心の揺れ動き」は悪い方にばかり働くとも限りません。学年や学期が変わるタイミングなどで何事もなかったように登校を再開することもあります。
不安感が原因で不登校になった生徒さんの体験談は、「ひきこもり状態からの受験勉強。勉強を通して自分に自信が持てるようになった」をご覧ください。
タイプ⑦無気力・甘え
無気力や甘えも、不登校の原因になります。
例えば、次のように、深く考えずに学校を休み続けるようなケースです。
- 学校が面白くないから
- ゲームをしている方が楽しいから
- やる気が出ないから
- 通学がめんどくさいから
- なんとなく
「最初は1日だけ休もうと思っていたけれど、休むうちに休むことへの抵抗感がどんどん薄れ、いずれ本格的な不登校になる」というような場合もあります。
ゲームやインターネットに熱中していると、昼夜逆転になって朝起きれない、という悪循環にも陥りがちです。
親御さんとしても、何度も声がけや注意をしても状況が変わらない…となれば、もどかしい思いをされていることもあるでしょう。
お子さんに、少しずつ生活を改善したり、少しずつ将来のことを考えられるよう働きかけをしていただければと思います。
昼夜逆転している場合は「午前中に起きる」など、できそうなことからで大丈夫です。
ただ、親御さんが無理やりやる気を出させようとしても、なかなかうまくいかないことは珍しくありません。
また、何が無気力なのか、何が甘えなのかというのは、客観的には判断が難しいものです。
不登校に関する相談団体などに、最初は親御さんだけで相談に行くということもご検討ください。
お子さんが先のことを考えて「状況を変えたいけど、何をしたらいいのかわからない」と思ったタイミングが来たときに、すぐ対応できるよう準備しておけることが大切です。
無気力・甘えが原因で不登校になった生徒さんの体験談は、「体験談:中学不登校からの高校進学―勉強する中で目標を見つけられた」をご覧ください。
タイプ⑧コンプレックス
思春期の多感な時期は、コンプレックスが芽生えやすいものです。
コンプレックスも、不登校の原因になります。
小学校高学年くらいから、自分の容姿や性格のことが気になりはじめます。
例えば、次のようなことです。
- ○○くんはスポーツができるけど、自分は運動音痴だ
- ○○ちゃんはスタイルがよくて服もおしゃれだけど、自分は太っている
- 自分は性格が暗くて人気者になれない
- クラスで成績がビリで恥ずかしい
誰しもがとおる道かもしれません。しかし、とても気にするお子さんもいるのです。
他人と自分を比べて過剰に気にすることで、学校に足が向かなくなります。
いじめが原因でコンプレックスを持つことも考えられます。
お子さんがコンプレックスで悩んでいる姿を見るのは、親御さんもご心配なことでしょう。
ですが、親といえどもコンプレックスそのものをどうにかすることはできないものです。
長い時間をかけて、お子さん自身が向き合っていくものではないかと思います。
ただ、親御さんから「完璧でなくてもあなたが大事」というメッセージが伝わることで、「このままでも認めてくれる人がいる」という安心感をお子さんは得ることができます。
特にいじめが原因でコンプレックスを持った場合は、存在そのものを認めてもらうことがお子さんにとって大切です。
容姿や勉強のことを否定されたことが、自分そのものを否定されたことに感じるためです。
無条件に親御さんから認められた経験が、少しずつ自分と向き合う力になっていきます。
コンプレックスが原因で不登校になった生徒さんの体験談は、「「新しい環境」にトラウマがあった私でも話ができるような温かい雰囲気の塾でした」をご覧ください。
タイプ⑨心身の病気
睡眠障害や抑うつなど、心身の病気が不登校の原因となるケースもあります。
梅雨の時期や冬にかけて調子を崩すということもあります。
本人の意志の問題ではなく、やむを得ず学校に行けない・行きづらい状態であるのが特徴です。
また、近年では「ゲーム障害(ゲーム依存症)」や「インターネット依存症」など「ゲームやインターネットを自分の意志でやめられずのめりこむ精神疾患」も精神疾患であり、不登校の原因の一つだと言われています。
実際に、インターネット依存症やゲーム依存症と不登校が関連しているという報告もあります。(平成30年度アルコール・薬物依存関連学会合同学術総会「インターネットゲーム使用障害〜多角的な視点から〜」など)
お子さんの様子をご覧になって気になることがありましたら、医療機関を利用しましょう。
睡眠障害やうつの可能性がある場合は、「朝起きれない」「やる気が出ない」などのお子さんの様子が初期に見られます。
他にも例えば、次のような、これまでとちがう様子が見られたら、心身に不調をきたしている可能性を考えてみてもいいでしょう。
- 朝何度起こしても眠る
- 午後にならないと起きてこない
- 深夜まで起きているようだ
- 食欲がなくなった
- 話しかけても、返事がほとんどない
こうした様子だけ見ると、「怠けて学校へ行かないのではないか」と感じるかもしれません。
しかし、お子さんとしても、「自分は甘えているだけなのではないか」「朝起きられないなんておかしい」「どうしてこんなに心が苦しいんだろう」などと悩んでいます。
不調が続くと、「ずっとこのままなのだろうか」と不安を覚えているはずです。
病気かもしれないと言われると、親御さんも戸惑われるかと思います。
ですが、思春期のお子さんは生活リズムの乱れや何かのきっかけで調子を崩すことは十分あります。
病気は治療ができますので、必要以上に深刻に考えず、適切に医療機関を利用しましょう。
心身の病気が原因で不登校になった生徒さんの体験談は、「高校不登校からうつ病に。苦しみながらも勉強し続け、難関大学合格」をご覧ください。
タイプ⑩発達障害
最後に、発達障害が原因のケースです。
発達障害のある人には、コミュニケーションや対人関係の構築が苦手などの特性があります。
お子さんの努力が足りないから苦手というわけではありません。
もちろん、親御さんの育て方とは関係ありませんので、ご自身を責めないでくださいね。
発達障害には、主に「自閉症スペクトラム障害(ASD」「注意欠陥多動性障害(ADHD」)「学習障害(LD)」などがあります。
発達障害のあるお子さんの場合、例えば、次のようなことが不登校に結びつくことがあります。
- コミュニケーションが苦手なためにいじめにあう
- 特定の科目や分野が苦手なために学校に苦手意識を持つ
- 不適切な対応(過度な叱責、できない部分を指摘するなど)のために自己否定に陥った二次障害
発達障害のお子さんのために親御さんができることは、まず「発達障害」の知識を持つことです。
わがままや怠けなどに見える子どもの行動の背景に、発達障害の特性が隠れている可能性があります。
お子さんを育ててきた中で、ご苦労が多かったのではないかとお察しします。
他のお子さんができることができなかったりと、不安に思われたこともあると思います。
発達障害の知識を持つことで、不安はなくなり、不登校に加えて日常生活でのお子さんへの接し方もわかっていきます。
お子さんも、生きづらさを感じながら過ごしてきたのかもしれません。
私が見てきた限り、発達障害のあるお子さんは、自分に自信がない傾向があります。
周囲とうまくやれない経験が積み重なり、自分を肯定的にとらえられなくなっていくのです。
「褒められる」経験が不足しているとも言えます。
そのため、親御さんから「認められている」と実感することは、大きな安心感につながります。
発達障害は「治らない病気」のようにとらえると苦しくなると思います。そうではなくて、「付き合っていく特性(個性)」のように考えると気持ちが楽になるかもしれません。
理解を深めるためにも、具体的な行動に活かすためにも、精神科やクリニックなどの専門家を受診(お子さんと一緒に受診できない場合は親御さんだけでも)する、発達障害の親の会などで同じような経験をした人からアドバイスをもらう、などがオススメです。
発達障害と不登校については、コラム「発達障害で不登校のお子さんの『生きやすさ』のために親ができること」に詳述しています。
タイプに関わらず必要な、不登校のお子さんへの2つの対応
これまで、不登校のタイプと、タイプ別対応法を述べてきました。
不登校のタイプに関わらず、共通して親御さんにできる「不登校のお子さんへの対応」があります。
それは、次の2つです。
- 家族だけで、不登校に関することを抱え込まない
- 親は親で、自分の生活を楽しむ
以下、解説していきます。
対応法①家族だけで、不登校に関することを抱え込まない
お子さんの不登校について、親御さんはとても心配されていると思います。
ですが、親は不登校の専門家ではありません。
お子さんの不登校に関することを、親御さんだけ、ご家族だけで抱え込まないようにしましょう。
言い換えると、お子さんの不登校に関するお悩みは、適切に専門家を利用するようにしましょう。
すでにタイプ別対応で述べたものもありますが、次のように、不登校に関連する専門家は、次のようにたくさんいます(これも一部に過ぎません)。
- 学校(担任、学年主任、部活の顧問、保健室、スクールカウンセラーなど)
- 学校外の教育機関(塾・家庭教師・フリースクールなど)
- 相談機関(公的な相談窓口、NPO団体など)
- 医療機関・カウンセラー
- 警察
- 弁護士
もしかしたら、「子どものことは家庭で解決するべき」「不登校のことなんて、恥ずかしくて相談できない」などとお思いかもしれません。
しかし、専門家は、これまでに多くの不登校を見てきています。
家庭だけで思い悩むよりも、きっとよい方法が見つかります。
そして、一つの専門家の助言がお子さんに合わなくても、落ち込まないでください。
いろいろな専門家に相談して、お子さんに合う方法で「次の一歩」を見つけていきましょう。
インターネットで「不登校 塾」「フリースクール ○○市」のような検索を行うと、専門家がいくつも出てくると思います。お子さんに合いそうなところに問い合わせてみることをオススメします。
対応法②親は親で、自分の生活を楽しむ
不登校のお子さんを心配して、お子さんにかかりっきりになっていませんか?
親は親で、自身の生活を楽しむことが重要です。
「子どもが不登校で苦しんでいるのに、自分は楽しいことをするなんてできない」と思うかもしれません。
ですが、親がお子さんにかかりっきりだと、お子さんが次のように思い、余計に苦しみを抱えることがあるのです。
- 「自分のために親が苦しんでいる」
- 「自分にかかりっきりだなんて、自分は信用されていないんだな」
専門家を利用し、適切に対応をして、寄り添う姿勢を明確にするなどしていれば、親は親で生活を楽しんでもよいのです。
そして、親が楽しい生活を送る姿は、お子さんにとって「楽しい大人」のロールモデルになり、「不登校の次の一歩」にも進みやすくなります。
不登校の原因(タイプ)が本人にも「わからない」理由
さて、不登校のタイプと対応をご紹介しました。しかし、不登校のタイプを1つに限定できるケースは、実はあまりありません。
私が見てきた多くのケースで、「主な原因、直接のきっかけ」はあるものの、複数のタイプが複雑に絡み合っている不登校がほとんどでした。
例えば、次のような場合です。
- 最初は「学校での友人関係」が原因で不登校になった
- 不登校中に「不安感」を持つようになった
- 誰にどう相談したらいいのか分からない
- 孤独になり、部屋からも出てこなくなった…
一つの原因が様々な悩みに発展し、どんどん負の連鎖にはまっていくケースは珍しくありません。
「いま不登校であること」の原因が何なのか、周囲はもちろん本人さえもわからなくなることが多いのです。
きっかけとなった最初の原因なのか、途中に発生した原因なのか、最後に複合した原因なのか、その全てなのか…。
原因がわからない、特定できないため、対応も難しくなります。
①複合タイプ不登校への対応は…?
複合的に悩みを抱えている(タイプが複合する)不登校のお子さんに対して、どのように対応するべきなのでしょうか。
第一に言えることは、「心身の病気」がある(と思われる)場合は医療機関の、「発達障害」がある(と思われる)場合は支援機関の力を借りることが最優先だということです。
では、他の原因ではどれ優先的に対応すべきでしょうか。
一番大きな悩みなのか、最初の悩みなのか、最後に出てきた悩みなのか―—。
私が見てきた限りでは、優先して対応すべきなのは「一番大きな悩み」で、かつ「本人の内面的な原因(不安感、コンプレックスなど)」です。
「外因的な原因(環境の変化、友人関係など)」は、本人の気持ちが整わないうちには、一度対処できても不登校が再発しやすく、場当たり的な処置になることが多々あります。
例えば「学校の先生と合わない」という外因的な理由による不登校ならば、「転校する」というのは解決に向けた選択肢の一つでしょう。
ですが、他に「容姿コンプレックス」という内面的な原因を抱えていたら、転校しても、「容姿コンプレックス」によって再度不登校になる可能性があるということです。
また、内面的に悩み、視野が狭くなっているときに対応の選択肢を示されても、合理的な判断は難しくなりがちです。
ゆえに、内面的な原因を先に解決することが重要なのです。
内面的な問題を先に解決することで、自然と外因的な問題に向き合えるようになり、事態が好転するケースはいくつも見られます。
複合した原因で不登校になった生徒さんの体験談は、下記をご覧ください。
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②自尊心を尊重し、気長に待つ
文部科学省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」によると、不登校の本人は、その原因を「学校や家庭に係る状況(=外因)」と考える人よりも、「本人に係る状況(=内面)」と考える人の方が多くいます。
つまり、不登校のお子さんは「自分が不登校なのは、自分に『問題』がある」と感じている場合が多いということです。
私がこれまで接してきた不登校の生徒さんたちを見ても、この調査結果と同様の傾向があると感じています。
そして、自分に問題があると思っている人は、自信や自尊心を失っていて、自分の現在の状況を「恥ずかしいもの」「許せないもの」とみなしています。
不登校になって一番苦しんでいるのはお子さん本人です。
不登校から「次の一歩」に進むためには、2年、3年以上かかることも珍しくありません。
親御さんにできる「気持ちの問題」の解決の基本は、「お子さんに寄り添い、気長に待つ」ことによって、お子さんがあせらずに自信を回復できる環境を整えること、ではないでしょうか。
もちろん、前述のとおり、専門家を適切に利用し、親は親で生活を楽しむことも大切です。
不登校・タイプ別の解決事例
この章では、不登校のタイプ別に「解決」の事例を紹介します。
事例①:「学歴コンプレックス」があったAさん
キズキ共育塾のある生徒さん(以下、Aさん)は、高校に入学して半年も経たないうちに不登校になりました。
第一志望ではない高校に入学したことで、「学歴コンプレックス」を持つようになり、「高校の人間関係への不満」などがつのり、不登校になったのです。
しかし、それ以外にも、「学業の不振」や「不安」も抱えていました。
そしてAさんは、Aさん自身が問題視していた「学力不振」を解決することを目的にキズキ共育塾に入塾しました。
ですが私は、授業でAさんと接するうちに、Aさんが不登校不登校の次の一歩に進んでいくためには、一番大きな気持ちの原因である「学歴コンプレックス」の解消が必要だと思いました。
そこで私は、Aさんに、「前に進むためには、学歴コンプレックスの解消が必要ではないか」といった内容の話をしました。
Aさんの場合、「学歴コンプレックスの解消」のためには、次のような方法があることをお伝えしました。
- 別の高校に入り直す
- 第一志望の高校に行けなかった事実は受け入れ、大学受験で第一志望を目指す
- 学歴コンプレックスも含めて自分を肯定的に受け入れるようにする
- 学歴以外の部分で自尊心を構築する
Aさんは、いろんな人と相談し、自分でもよく考えた結果、「②第一志望の高校に行けなかった事実は受け入れ、大学受験で第一志望を目指す」を選び、受験のための勉強を始めました。
いまこの文章を書いている時点で、Aさんは大学受験を目指して、地道に、前向きに努力を重ねています。
1年間通塾を続けられたことで、自尊心も回復してきました。
受験がうまくいくよう、私も全力でサポートしています。
このAさんの事例のように、将来への不安、学歴に対するコンプレックス、自分への無力感に起因する無気力と学業の不振などが複雑にからまっていることは決して珍しくありません。
前に進んでいくためには、本人が、「ひとつひとつ、できることからやる」ことが、自信を回復し、気持ちの原因解決に向けて正面から向き合うことが必要です。
本人以外がすべきことは、あせらず気長に、様々な判断材料を提供するなどのバックアップなのです。
事例②:「環境の変化」が原因で不登校になったBさん
キズキ共育塾で私が入塾面談を担当したBさんのお話です。
Bさんがお母さまと一緒に相談に来てくれたのは、19歳のときでした。
Bさんは、小学校のときに一度不登校になりました。
自分が不登校になった直接の理由はBさんもよくわからなかったようです。
そのBさんは中学卒業まで断続的に不登校でした。そして、受験して入学した高校で、本格的に不登校になりました。
「高校は、自由な校風でのびのび過ごせるところを選んだ」と思っていたのに、実際に入学してみたところ、「クラスメイトの雰囲気になじめない」と感じたのです。
Bさんは、高校では心機一転してやっていこうと思っていただけに、ショックを受けました。
しばらく不登校のまま在籍を続けたあと、Bさんは中退を選びました。
その後、独学での高認取得、大学受験の失敗を経て、キズキ共育塾に相談に訪れました。
ともにいらしたお母さまは、Bさんの状況に寄り添い、「通い続けられる大学に行けたらと思っています」と言っていました。
そしてBさんは、キズキ共育塾で学び、家での予習復習なども行った結果、念願の大学合格を手にすることができたのです。
そこは、オープンキャンパスへ行って雰囲気が合っていると感じた大学でした。
大学入学からしばらくして、Bさんから連絡がありました。
「大学は自分に合う雰囲気で、とても楽しく勉強できています」とのことでした。
Bさんは、高校の雰囲気になじめなかったことで、不登校になりました。
ですが、その経験を大学選びに活かすことができました。
高校進学という節目では環境の変化は避けられません。
Bさんのように、そこで馴染めず不登校になることもあるかもしれません。
しかし、その高校の環境に馴染めないからといって、自分に向いている環境がないわけではないということです。
お子さんの年齢が上がるにつれて、選択肢も多くなります。
お子さんに合う環境を探すために、不登校になった「原因」を活かせるとよいのかもしれません。
参考:学校休んだほうがいいよチェックリストのご紹介
2023年8月23日、不登校支援を行う3つの団体(キズキ、不登校新聞、Branch)と、精神科医の松本俊彦氏が、共同で「学校休んだほうがいいよチェックリスト」を作成・公開しました。LINEにて無料で利用可能です。
このリストを利用する対象は、「学校に行きたがらない子ども、学校が苦手な子ども、不登校子ども、その他気になる様子がある子どもがいる、保護者または教員(子ども本人以外の人)」です。
このリストを利用することで、お子さんが学校を休んだほうがよいのか(休ませるべきなのか)どうかの目安がわかります。その結果、お子さんを追い詰めず、うつ病や自殺のリスクを減らすこともできます。
公開から約1か月の時点で、約5万人からご利用いただいています。お子さんのためにも、保護者さまや教員のためにも、ぜひこのリストを活用していただければと思います。
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」はこちら(LINEアプリが開きます)
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」作成の趣旨・作成者インタビューなどはこちら
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」のメディア掲載・放送一覧はこちら
私たちキズキでは、上記チェックリスト以外にも、「学校に行きたがらないお子さん」「学校が苦手なお子さん」「不登校のお子さん」について、勉強・進路・生活・親子関係・発達特性などの無料相談を行っています。チェックリストと合わせて、無料相談もぜひお気軽にご利用ください。
まとめ〜お子さんは、必ず次の一歩に進めます〜
これまでのことをまとめます。
まず、どんなお子さんも不登校になりえます。お子さんが不登校になったからといって、ご自身のこともお子さんのことも、責めないでください。
お子さんの不登校の原因は、主には次の10タイプに分けられます。
- 環境の変化
- がんばりすぎ
- 友人関係(いじめも含む)
- 学校関係(先生や部活の顧問との関係なども含む)
- 学業の不振
- 不安感
- 無気力・甘え
- コンプレックス(容姿、学歴、運動など)
- 心身の病気
- 発達障害
タイプ別の対応もあります。ただしいずれの場合も、次の2つが重要です。
- 家族だけで抱え込まない(適切に専門家を利用する)
- 親は親で生活を楽しむ(お子さんにかかりっきりにならない)
親御さんには、お子さんに寄り添い、気長に待つことによって、お子さんがあせらずに自信を回復できる環境を整えることを重視していただければと思います。
さて近年では、文部科学省をはじめ教育機関でも「不登校はだれしもなりうるもの」であるとみなされ、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(教育機会確保法)」などの法律も整備されています。
また、「原因を追究するのではなく、その子のいまのつらさが少しでも解消され、将来彼らが生きていきやすくなるように支援すべきだ」という考えが、スクールカウンセリングなどの領域で提唱され始めています。
原因(タイプ)は「あまり」重要ではない、という考え方です。
しかし、実際に我が子が不登校になると、その原因(タイプ)や原因別の対応を知りたくなる気持ちはよくわかります。原因に即した対応が必要なこともあります。
最後にお伝えしますのは、「原因(タイプ)を重視するにしてもしないにしても、お子さんは必ず次の一歩に進める」ということです。
このコラムがお子さんとあなたの参考になったなら幸いです。
さて、私たちキズキ共育塾は、不登校の当事者・経験者などの学び直しを支援する個別指導塾です。
無料相談も行っており、親御さんだけでのご相談も歓迎ですので、少しでも気になったらお気軽にご連絡ください。
それぞれのお子さん、ご家庭に応じて、具体的な対応法を一緒に考えていけると思います。
※紹介した生徒さんの事例は、記事の趣旨を損なわない範囲で、個人の特定ができないように一部事実を変更しています。
※文中の写真は、全てイメージです。
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