通信制高校の5つのデメリット・注意点 対策と5つのメリットを解説
こんにちは。生徒さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートするキズキ共育塾です。
あなたは「通信制高校への進学・転校を考えているけれど、デメリットが多そう…」とお悩みなのではないでしょうか?
また、通信制高校への進学を希望するお子さんを持つ親御さんもいらっしゃるかもしれません。
通信制高校について調べていると、「通信制高校はやめとけ」「通信制高校=人生終わり」といった極端な情報も出てきます。
実際に、通信制高校には多くのメリットがある一方で、デメリット・注意点もあります。
ただし、通信制高校のデメリット・注意点を知っていれば、どれも十分に対策できるのです。
このコラムでは、通信制高校のデメリット・注意点や対策、通信制高校のメリットなどを解説します。
このコラムが、通信制高校に対する不安や思い込みなどを解消し、進学・転校を考える際の参考になれば幸いです。
目次
通信制高校の5つのデメリット・注意点
この章では、通信制高校のデメリット・注意点を5つ紹介します。
この章で紹介する通信制高校のデメリット・注意点は、キズキ共育塾のスタッフの知見と、実際に通信制高校を卒業した人の経験に基づいたものです。
よりよい選択をするためには、よいところだけでなく、マイナス面もしっかり把握することが大切なので、ぜひ参考にしてください。
デメリット・注意点への対策は、こちらで解説しています。
デメリット・注意点①世間の偏見がある
1つ目のデメリット・注意点は、世間の偏見があることです。
「通信制高校は、全日制高校と比べて劣っている」などの偏見が少なからずあるのは、残念ながら事実です。
特に、ネットでは「通信制高校はやめとけ」「通信制高校=人生終わり」といったネガティブな情報を目にすることもあるでしょう。
しかし、「通信制高校=劣っている」ことは決してありません。
全日制に行く人が多いためか、通信制高校に行く人に対して「何かしらの理由で全日制高校に行けなかった人」という印象を持つ人が多いのかもしれません。
また、世間からだけではなく、通信制高校に通う人自身が劣等感を持つこともあるようです。
このデメリット・注意点への対策は、こちらで解説しています。
デメリット・注意点②大学受験が難しい
2つ目のデメリット・注意点は、大学受験が難しいことです。
通信制高校から大学に進学するのは難しいと言われています。
文部科学省の「学校基本調査」によると、全日制と定時制、通信制高校の大学進学率は次のようになっています。
- 全日制・定時制の卒業者数は105万6378人
そのうち「大学等進学者」は57万8041人(約54.7%) - 通信制の卒業者数は5万3550人
そのうち「大学等進学者」は9885人(約18.5%)
このように、通信制高校から大学に進学する人が少ないのが現実です。
こういったデータを見ると「やはり通信制高校は全日制に比べて劣っているのでは…」と思う人もいるでしょう。ですが、「大学進学(を希望)する人」や「現役で大学に合格する人」が「絶対的に優れた人」ではありません。
通信制高校の卒業は、全日制と同じように高校卒業の資格を得られるので、受験資格の面で考えると大学受験で不利になることはありません。
とはいえ、通信制高校の特性を考えると、学習面において不利になる点がいくつかあります。
1つ目は、登校日数の少ないことです。
通信制高校は、基本的に全日制高校よりも学校に行く日数が少なくなっています。
そのため、勉強でわからないことがあっても、すぐには質問できない環境にあるため、全日制高校と比べると勉強を進めづらいのです。
2つ目は、通信制高校の勉強のレベルです。
通信制高校には、勉強の難易度が高くない学校が多い傾向があります。
易しい内容のレポート作成で勉強する学校だと、その内容が受験に対応していないのです。
3つ目は、自分の周りに大学を目指す仲間が少ないことが考えられます。
一緒に勉強したり、励まし合ったりすることが少ないので、やる気を維持することは困難です。
4つ目に、卒業のしやすさがあります。
通信制高校は出席しなくても卒業できるため、全日制高校であれば欠席が続いて留年するくらい心身の調子が悪い人でも、通信制高校では卒業はできるのです。
その結果、卒業だけはできたけれど、次の進路に進む元気がまだない人もいます。
このようなことから、「一般的に、通信制高校は、大学受験するには難しい環境にある」と言われるのです。
このデメリット・注意点への対策は、こちらで解説しています。
デメリット・注意点③友達をつくる機会が少ない
3つ目のデメリット・注意点は、友達をつくる機会が少ないことです。
通信制高校は、全日制や定時制のように毎日学校に行く必要がありません。
学校に行く日数が少ないので、特に高校での友達をつくる機会が少ないのが現実です。
さらに高校以外でも人付き合いが少ない場合は、卒業後に大学に進学したり就職したりしたときに、高校時代とのギャップを感じるかもしれません。
このデメリット・注意点への対策は、こちらで解説しています。
デメリット・注意点④勉強のペースがつかみにくい
4つ目のデメリット・注意点は、勉強のペースがつかみにくいことです。
こちらで解説するとおり、通信制高校は自宅学習が基本となります。
学校にも相談できるとはいえ、学校に毎日行くことがないため、自分で学習計画を立てる必要があるのです。
しかし、学習計画を立てても予定どおりに進めることが難しく、ペースが崩れたりつい怠けたりする人がいます。
「後でまとめてやろう」と考えていたのに、いつの間にか大量のレポートがたまり、困る場合もあるでしょう。
このデメリット・注意点への対策は、こちらで解説しています。
デメリット・注意点⑤生活リズムが崩れやすい
5つ目のデメリット・注意点は、生活リズムが崩れやすいことです。
全日制や定時制の高校の場合、夏休みなどの期間を除き、平日は毎日学校に行きます。
一方、通信制高校は、毎日は登校しないため、曜日や日にちの感覚がなくなりやすいです。
登校日以外は自分の都合に合わせて生活できるので、夜更かしすることも多く、昼夜逆転もしやすくなります。
通信制高校の卒業自体は生活リズムが崩れたままでもできるかもしれません。ですが、その分、大学や就職先など、卒業後の環境に適応するために苦労が生じることもあります。
また、一般的に、高校生の年齢の人にとって、崩れた生活リズムや昼夜逆転は健康のためによくありません。
このデメリット・注意点への対策は、こちらで解説しています。
通信制高校の5つのデメリット・注意点への対策
この章では、こちらで紹介した通信制高校のデメリット・注意点への対策を5つ解説します。
この章で紹介する通信制高校のデメリット・注意点への対策は、キズキ共育塾のスタッフの知見と、実際に通信制高校を卒業した人の経験に基づいたものです。
デメリット・注意点への対策を踏まえた上で、通信制高校が自分に合うか、しっかり検討しましょう。
対策①「世間の偏見がある」への対策〜明確に「偏見」なので気にする必要はありません〜
こちらで紹介したデメリット・注意点への対策を解説します。
まず、「通信制高校=劣っている」などの印象は、明確に「偏見」ですので、気にする必要はありません。
また、仮に全日制高校に馴染めなかったり、行けなかったりしても、それは悪いことではありません。
とはいえ、今すぐに「世間の偏見」をなくす方法はありませんし、あなた自身が持つ必要のない劣等感を抱く可能性も否めません。
であれば、高校生活を充実させて過ごしましょう。
充実した生活を過ごすうちに、世間の声が気にならなくなる可能性は大きいですし、あなたの将来にも役立ちますし、将来的に通信制高校への世間の偏見をなくす一助ともなるはずです。
充実した高校生活という意味では、最近では通信制高校の多くに独自のカリキュラムやユニークな課外活動があります。
例えば、さくら国際高等学校東京校では、週に一度の選択授業があります。
勉強系・スポーツ系・趣味 教養系など興味を引く講座がたくさんあり、特に「東京散歩」や「ゲーム」などは独自性が高いでしょう。
また、全日制高校の進学校と同じように、大学進学実績が豊富な学校も増えてきています。
生徒が大学受験レベルの学力を身につられるように、しっかりとしたカリキュラムが組まれているのです。
クラーク記念国際高等学校は、ネイティブ教員を採用し、大学受験に必要な英語教育に力を入れています。
大学進学の対策講座があり、通常の授業の中で学力を上げられるのも魅力のひとつ。
予備校の現役講師による特別授業もあり、受験対策がしっかりしている学校です。
就職に関しても、資格取得のサポートや、IT・語学などのスキルを身につけることにより、即戦力になれるような力を養える通信制高校もあります。
例えば、ルネサンス高等学校では、他の専門学校などと提携し、ダブルスクールのような形で、PCスキルの獲得や、税理士・公認会計士・整体師・セラピストになるための勉強ができますし、一般の就職も履歴書の書き方から面接まで、その企業に合った指導を行っています。
また、特にこれまで紹介してきたようなカリキュラムがない高校でも、楽しく過ごしている人はたくさんいます。
大切なのは、「多数派が『正しい』わけではない」と理解することです。
その上で、自分に合った通信制高校に進学・転校するのであれば、周りの目を気にすることはないでしょう。
対策②「大学受験が難しい」への対策〜大学進学を重視する通信制高校への入学・転校を検討しましょう〜
こちらで紹介したデメリット・注意点への対策を解説します。
1つの方法は、大学進学のための取り組みを重視している通信制高校に入学・転校することです。
一般入試だけはなく、推薦入試や総合型選抜入試(旧AO入試)の対策に力を入れている学校もあります。
もう1つ、塾や予備校に通う選択も考えられるでしょう。
全日制の高校でも、よほどの進学校でない限り、「高校の勉強だけ」で受験勉強を行う人は多くありません。
「(通信制)高校で学ぶこと」と「受験勉強のために必要なこと」は別と考えて、塾や予備校の利用を検討しましょう。
就職も似たことが言えます。
高校卒業後に就職をしたいけれど学校の進路指導が充実していない場合には、ハローワーク、合同説明会、就職エージェントを利用する方法があるのです。
私たちキズキ共育塾は、通信制高校に通う方のための、完全1対1の個別指導塾です。
生徒さんひとりひとりに合わせた学習面・生活面・メンタル面のサポートを行なっています。進路/勉強/受験/生活などについての無料相談もできますので、お気軽にご連絡ください。
対策③「友達をつくる機会が少ない」への対策〜学校行事や部活動に積極的に参加しましょう〜
こちらで紹介したデメリット・注意点への対策を解説します。
ここでの対策は、日常のスクーリング(登校)が可能な距離の通信制高校に在籍している場合の対応です。
1つの方法として、登校日の多い学校やコースを選ぶ方法があります。
通信制高校には、通信制でありながら通学コースがある学校がありますので、そういった高校やコースを探してみましょう。
通学日数は、週に1日から5日までと、学校やコースによってさまざまです。
登校日数が増えれば、顔なじみの人ができるので、自然と仲よくなっていきます。
また、入学後にコースを変えることも可能です。
次に、学校行事に積極的に参加しましょう。
通信制高校にも、体育祭、文化祭、校外学習などの学校行事があります。その種類・内容・頻度は、学校によって大きく異なります。
そういう行事には、当日だけでなく事前準備もあり、多くの人たちと協力して取り組みます。
こういった行事や行事の準備などでは、自然と連帯感が生まれるため、「スクーリングや通学コースの登校では仲よくなるのは難しい」と思う人も、多くの人たちと友達になるチャンスになるのです。
そして、部活動や生徒会活動に参加することをオススメします。
通信制高校にも、部活動や生徒会活動が充実している学校はたくさんあります。これも、種類・内容・活動頻度は学校によって違います。
やりたいことが同じ人たちが集まるので、友達になりやすい環境なのです。
全日制高校と同じくらい部活動が盛んな学校もあります。
例えば、さくら国際高等学校東京校も、その一つです。
創立約20年の歴史あるダンス部をはじめ、サッカー部は定時制通信制の高校全国大会に毎年出場。
卓球部は個人戦で2016年に定時制通信制高校全国大会の東京代表に選ばれるほどの強豪校です。
他にも、学校によってさまざまな部活動があり、内容や頻度も「無理のない程度の活動」から「全国大会出場レベル」まで幅広いです。
体育系は、サッカー部、バスケットボール部、卓球部、水泳部、テニス部、バドミントン部など。
文科系は、美術部、書道部、演劇部、吹奏楽部、軽音楽部、パソコン部、写真部など。
「友達をつくりたいかどうか」に限らず、高校選びの際には「部活動の状況はどうか」を確認することをオススメします。
次に、特に「高校での」友達に限定しない場合、日常的にスクーリングができない高校の場合、あまり登校したくない場合の対応です。
友達は、塾・予備校、アルバイト、習い事、ボランティアなどの団体に参加・所属することでつくれます。
興味のある「学校外の団体」を探してみてください。
友だちのつくり方については、下記コラムで解説しています。ぜひご覧ください。
対策④「勉強のペースがつかみにくい」への対策〜塾や予備校の利用もオススメ〜
こちらで紹介したデメリット・注意点への対策を解説します。
全日制や定時制高校の生徒は、毎日決まった時間に登校して授業を受けるので、学習ペースを維持できます。
通信制高校でも、通学コースを選択するなどで登校日数を増やすことで、学習ペースを保てるでしょう。
「通学日が多いコースを選ぶなら、通信制高校の意味がないじゃん…」と思う人もいるかもしれません。
そんな人は、大学受験と同じように、塾や予備校を利用することがオススメです。
また、塾や予備校の中には、「その高校」と連携して授業内容のサポートを行う、通称「サポート校」もあります。
進学・転校の候補としている通信制高校にサポート校があるか、確認してみてください。
通信制高校のサポート校については、下記コラムで解説しています。ぜひご覧ください。
対策⑤「生活リズムが崩れやすい」への対策〜定期的な予定をつくりましょう〜
こちらで紹介したデメリット・注意点への対策を解説します。
生活ペースを維持するには、毎日決まった時間に起きて、勉強やその他の行動の時間をあらかじめ決めておくことが大切です。
勉強ペースと同様に、全日制や定時制高校の生徒は、毎日決まった時間に登校するので、必然的に生活リズムが規則正しくなります。
これも勉強ペースと同じく、通信制高校でも、通学コースを選択するなどで登校日数を増やすことで、生活面でも規則正しいペースを維持しやすくなります。
通学日が多いのが嫌な人は、塾、アルバイト、習い事、趣味の集まりなど、「学校以外の定期的な予定」を作ることを検討しましょう。
通信制高校の5つのメリット
もちろん通信制高校には、メリットもたくさんあります。
この章では、通信制高校のメリットを、キズキ共育塾のスタッフの知見と、実際に通っていた人の話に基づいて紹介します。
メリット①自分に合った高校を選びやすい
全日制高校は全国に4702校、通信制高校は257校あります。(参考:文部科学省「高等学校教育の現状について 令和3年」)
通信制高校は全日制に比べると少ないですが、きっとあなたが思っている以上に多かったのではないでしょうか?
そして、すでにご紹介してきたとおり、通信制高校は、各学校でさまざまな特色があります。
通信制ではありつつも、登校日数を増やしたり部活に取り組んだりしたいのであれば、通学コースのある学校を選ぶことも可能です。
その逆に、登校日数が少ない学校であれば、自宅近くの学校を必ずしも選ばなくてもOKです(スクーリングは大変かもしれませんが)。
たくさんある学校の中で「毎日の通学環境を考えずに、自分にいちばん合った学校を選べる」ことは、通信制高校の大きなメリットと言えるでしょう。
メリット②自分に合ったペースで学校に通える
通信制高校は、全日制や定時制高校のように毎日学校に行く必要がないので、自分に合ったペースで高校生活を送れます。
時間に縛られる生活が自分には合わないと思っている人にとっては、大きなメリットとなるでしょう。
他にも 朝起きることが苦手な人の場合、午後からのコースがある通信制高校であれば、無理なく学校に通えます。
メリット③自由な時間が多い
通信制高校の学生は、全日制高校と比較して、自由な時間がたくさんあります。
アルバイトをしたり、将来の夢を実現させるために時間を有効に使ったり、一般的には高校で学べないことを学ぶ時間を確保したりするなど、時間を自由に使いやすいのです。
例えば、スポーツ、留学の準備、芸術・音楽などの専門的な勉強など、学校の外で取り組もうと思った場合、全日制高校よりもずっと多くの時間を使えます。
特に高校の外で「やりたいこと」がない場合も、あくせく過ごすのが苦手ならのんびり過ごしてみたり、「やりたいこと」を見つけるためにいろいろな行動を始めてみたりすることもできるでしょう。
メリット④入学や転入・編入がしやすい
通信制高校の入試は、全日制高校に比べて難しくはありません。
受験科目が小論文と面接だけなど、科目の試験がない学校が多いので、入学しやすくなっています。
例えば、中学校までに勉強が苦手だった人や、不登校で学力に不安がある人にも向いているでしょう。
もう一度勉強をやり直したい、高校卒業資格を取りたい人でも、あきらめることなくチャレンジできます。
特に転入・編入の場合は、その時期も柔軟に対応していることがあります。
メリット⑤同級生との人付き合いが少ない
先ほど、デメリット・注意点として「高校の友達ができにくい」とお伝えしました。
しかしそれは、裏を返せば「高校での人付き合いが少なくてすむ」ともとらえられます。
「たまたま同じ学校に在籍している人」との人間関係を重視しない人や、現段階で人付き合いが苦手な人には、その環境はメリットになるでしょう。
ただし、人間は、一人では生きていけません。
「今すぐ」「誰とでも」「ベッタリ仲よくする」必要はありません。ですが、最低限のコミュニケーションはできるよう、人との交流は、ある程度は保つようにしましょう。
通信制高校の特徴
この章では、通信制高校の基本的な特徴や仕組みを簡単に解説します。
通信制高校とは、通信教育で学習する高校です。
卒業の要件を満たせば、全日制や定時制と同じように高校卒業の資格を得られます。
そんな通信制高校の大きな特徴は、次の2つです。
特徴①自宅学習が基本
通信制高校は、全日制や定時制のように毎日学校に通う必要がありません。
学校で授業やホームルームなどを受ける「スクーリング」の際は登校しますが、通う日数は少なく自宅での学習が基本となるのです。
学習内容は、学校から送られてくる教材に基づくレポート作成が主で、学校に提出したあとに添削による指導を受けられます。
特徴②単位制
高校には、学年制と単位制の2つのタイプがあります。
全日制高校に多いのは学年制ですが、通信制高校は単位制です。中には学年制の通信制高校もあるかもしれませんが、私が知っている通信制高校は全て単位制です。
学年制とは、各学年で学校が作成した時間割に従って授業を受ける仕組みです。
各科目につき、テストなどで一定の成績を修め、必要な出席日数を満たすと「単位」が取得でき、必要な単位を取得できれば進級・卒業ができます。
「単位」とは、「その科目をしっかり勉強した証明」のようなものです。
学年制では、その学年で設定された単位を取得できない場合は、留年となり進級や卒業ができなくなることがあります。
一方、単位制では、取得する単位のスケジュール、つまりその年度で何の科目を学ぶかのスケジュールを、学校と相談しつつ、自分で決められる仕組みです。
一定の成績を修めることで単位を取得できるところは学年制と同じで、在籍期間中に定められた単位を取得すると卒業できます。
つまり、学年制のような「学年」の概念がないので、単位を取得できない年度があっても「留年」にはなりません。
このように、「もう一度同じ学年(全体)をやり直すことがない」ことも、通信制高校の大きな特徴です。
ただし、卒業に必要な単位が取得できなかった場合は、次年度などに同じ科目を再び学習し直すことになったり、卒業できなくなったりもします。
通信制高校の種類
この章では、通信制高校の種類について解説します。
それぞれの学校によって特徴が異なるので、通信制高校選びのヒントにしてみてください。
狭域通信制高校と広域通信制高校
通信制高校は、狭域と広域に分けられます。
狭域通信制高校とは、入学の対象者が「その都道府県に住んでいる人、または通勤している人」に限定している学校のことです。
「学校がある都道府県と隣接する1都道府県」を含む場合はありますが、基本的には該当する都道府県に住んでいなければ入学できません。
一方、広域通信制高校とは、入学できる住所・通勤の範囲が3つ以上の都道府県にまたがっている学校のことです。全都道府県から入学可能な学校もあります。
そのため、広域通信制高校であれば、居住地を問わず入学できる可能性があるということです。
公立の通信制高校と私立の通信制高校
全日制高校や定時制高校と同じく、通信制高校にも公立と私立の学校があります。
主な違いは2つあり、その1つが学費です。
さきほども2023年度の通信制高校の初年度の平均学費をお伝えしましたが、一般的に公立の方が私立よりも学費が安い傾向にあります。また、私立の通信制高校は、学校ごとに学費が大きく異なります。
2つ目の違いは、スクーリングの柔軟さです。スクーリングとは、学校などに登校して先生から直接授業を受ける機会になります。
公立の場合、スクーリングの回数や日程は学校側に決められている場合が多く、それらに従う必要があります。また、一般的な公立の通信制高校は、「週1回、決まった曜日」にスクーリングが行われることが多いです。
一方で、私立の場合は、スクーリングの機会が複数回設けられていることが多いため、自分の都合がよい日を選ぶことができます。頻度(週1日〜週5日)や曜日も選べることが多いです。
通信制高校の3つの卒業要件
通信制高校は、卒業の要件を満たせば全日制や定時制と同じように高校卒業の資格を取得できます。
ここでは、通信制高校の3つの卒業要件を解説します。
要件①3年以上の在籍
通信制高校を卒業するには、「3年以上の在籍期間が必要である」と学校教育法の第46条で定められています。(参考:e-gov「学校教育法」)
そのため、早い時期に卒業に必要な単位を全て取得できたとしても、在籍期間を満たさないうちは卒業できないのです。
なお、別の高校から通信制高校に転入または編入した場合、前の学校での在籍期間も「卒業に必要な在籍期間」に含まれます。
要件②74単位以上の取得
高校を卒業するのに必要な単位数は、74単位以上です(参考:e-gov「学校教育法施行規則」)。
これは、学年制でも単位制でも変わりはありません。
つまり、「全日制も通信制も勉強する量は同じ」なのです。
通信制高校で単位を取得するには、基本的にはレポートの作成とスクーリングへの参加、その後の単位認定試験などでの一定以上の成績を収めることが必要になります。
また、出席日数と同じく、別の高校で単位を取得してから通信制高校へ転入・編入した場合は、その単位も引き継げます。
要件③30単位時間以上の特別活動の実施
「30単位時間以上の特別活動」も卒業のために必要があります。(参考:国立教育政策研究所 高等学校学習指導要領(平成30年告示)「第1章総則 第2款の3及び5」)
特別活動とは、授業以外の活動のことです。
具体的には、ホームルーム活動、生徒会活動、学校行事があります。
また、「1単位時間」は「50分間」なので、合計で25時間となります。
通信制高校への入学を検討する際に知っておきたいこと
この章では、通信制高校への入学を検討する際に知っておきたいこととして、次の通信制高校に関する基本情報を解説します。
知っておきたいこと①学費
1つ目は、学費についてです。通信制高校に限らず高校に通う場合、入学金や授業料などの学費がかかります。
具体的な学費は、地域や学校によって異なる部分が大きいですが、ここでは25単位履修の場合の通信制高校の初年度の平均学費について紹介します。ただし、教科書代が別途かかる場合があります。(参考:学びリンク「2023通信制高校の学費」)
公立
- 入会費:410円
- 諸会費:8700円
- 1単位当たりの授業料:300円
- 25単位履修:7500円
- 合計(平均額):1万6610円
私立
- 入会費:4万2000円
- 施設設備費:4万5000円
- 教育充実費:1万7000円
- 1単位当たりの授業料:9960円
- 25単位履修:24万9000円
- 合計(平均額):44万3000円
上記からもわかるとおり、同じ通信制高校であっても、公立か私立かによって費用は大きく異なります。
ただし、ご家庭の収入が一定以下の場合、「就学支援金」を国からもらえる可能性があります。
通信制高校の費用や就学支援金については、下記コラムで解説しています。ぜひご覧ください。
知っておきたいこと②入学方法・受験
2つ目は、入学方法や受験についてです。
通信制高校の入学資格は、一般的に「中学卒業見込みの人」「中学を卒業した人」で、年齢などの制限はありません。
入学のタイミングは、一般的な高校とイメージされることが多い全日制高校と同じく4月です。ただし、高校を中退した人や体調不良の関係で受験できなかった人を考慮して、10月に入学できる高校も少なくありません。
通信制高校に入学するためには、入学試験を受ける必要があります。通信制高校の試験内容には、次のようなものがあります。
- 書類選考
- 学力試験
- 面接
- 作文
学校によって試験内容の組み合わせは異なりますが、書類選考に加えて学力試験、もしくは作文や面接が行われることが多いです。
通信制高校への受験については、下記コラムで解説しています。ぜひご覧ください。
知っておきたいこと③卒業率
卒業率も知っておきたいことの1つですが、通信制高校では、一般的な「卒業率」は計測しづらくなっています。
その理由としては、次の二つがあるようです。
- 全日制高校などの学校と比べると、編入や転入で途中から移ってきた生徒、3年以上在籍する生徒などが多い傾向にある
- 学年制ではなく単位制を取り入れている通信制高校もあり、生徒によって在籍期間に幅がある
卒業率の代わりとして、在籍生徒に対する卒業者数の割合を「在籍卒業率」として算出することもあります。(参考:株式会社三菱総合研究所「平成23年度『高校教育改革の推進に関する調査研究事業』定時制課程・通信制課程の在り方に関する調査研究報告書」、大久保智久「通信制高校の現状と卒業率に関わる要因の調査分析(概要)」)
そこで今回は、卒業率の代わりに「年間退学者数・率」を紹介します。(参考:文部科学省「高等学校通信教育の現状について」)
- 2015年:1万3092名(約6.4%)
- 2016年:1万2633名(約6.2%)
- 2017年:1万2105名(約5.9%)
- 2018年:1万2195名(約5.8%)
- 2019年:1万2569名(約5.6%)
このように、通信制高校を退学する生徒は一定数いるようです。
とはいえ、無理なく勉強に取り組める学校、サポート体制が整っている学校など、学校選びを慎重に行うことで、(不本意な)中退・退学の可能性は下げられるでしょう。
また、勉強に不安がある場合は、サポート校や学習塾などを活用することも、退学を防ぐ方法の1つになるでしょう。
知っておきたいこと④卒業後の進路
通信制高校の卒業後、どのような進路を選べるのかが気になる人はとても多いと思います。
文部科学省が発表した「高等学校通信教育の現状について」では、通信制過程の卒業者の進路やその割合が次のようになっています。(参考:文部科学省「高等学校通信教育の現状について」(令和2年))
- 大学等進学者:約18.0%
- 専修学校(専門課程)進学者:約21.7%
- 専修学校(一般課程)等入学者:約1.7%
- 公共職業能力開発施設等入学者:約0.8%
- 就職者:約19.6%
- 上記以外の者:約37.4%
- 不詳・死亡の者:約0.9%
このように、通信制高校卒業後に進学した人は、卒業者全体の40%以上を超えています。また、卒業後に就職した人は約20%です。
この数値を見ると、大学への進学率が低いと感じる人もいるかもしれません。
実際、文部科学省が発表した「高等学校教育の現状」では、全日制高校の卒業後の大学短大進学率は55.5%となっています。
通信制高校からの大学進学率が低い理由は、次のようなことが考えられます。
- 学校側の事情として、全日制高校と比べて、授業の難易度が易しい(基礎的な学習に力を入れている)
- 学生側の事情として、通信制高校を卒業できるくらいの体力はあるが、大学受験・大学生活に向けた体力がまだない
ただ、全日制高校の学生も、よほどの進学校を除き、「大学受験用の勉強」は、「高校の授業での勉強」とは別に、塾や予備校を利用していることは珍しくありません。
通信制高校の学生も同じで、サポート校や塾、家庭教師を活用して、大学進学を目指すことは十分に可能です。
また、通信制高校生は全日制高校生よりも自由な時間が多いぶん、大学受験のための勉強に時間を多く使うこともできます。
通信制高校からの大学受験や就職については、下記コラムで解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ〜通信制高校のデメリット・注意点は全て対策できます〜
進学先や転校先の候補として通信制高校を考えていても、「通信制高校はやめとけ」「通信制高校=人生終わり」といったネットの情報を見て、不安になることがあると思います。
しかし、それらの情報は極端な情報であり、通信制高校が他の学校と比べて劣っているということはありません。
また、通信制高校のデメリット・注意点は対策することができるので、メリットと合わせて「通信制高校が自分(やお子さん)に合っているかどうか」を検討しましょう。
あなたの高校進学・転校がうまくいき、素敵な高校生活を送れることを心から祈っています。
さて、私たちキズキ共育塾には、通信制高校から大学受験を目指す生徒さんがたくさん在籍しています。
また、中学生で通信制高校への進学を検討している人や、高校不登校・中退から通信制高校への転校を検討している人も多数います。
授業では、勉強の話だけではなく、「どんな通信制高校が向いているか」「通信制高校以外にどんな選択肢があるか」といったご相談も可能です。
通信制高校への進学・転校・再入学に関してお悩みでしたら、ぜひ一度無料相談・教室見学にいらしてください。親御さんだけのご相談も受け付けております。
Q&A よくある質問