
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
引きこもり(経験者)の方々のための個別指導塾・キズキ共育塾の宮野唯です。
引きこもりで悩んでいるあなたは、「もう自分はずっと外出することができないんじゃないか」と不安に思っているのではないでしょうか。
ですが、もちろんそんなことはありません。ほんの少しのきっかけとして、考え方を変えたり、行動を変えたりすると、引きこもりから「脱出」することは可能です。
今回は、私がお会いしてきた、引きこもりを経験した方々の事例から、引きこもりから脱出する6つの実践(3つの思考と3つの行動)をご紹介します。
少しでもお役に立てば幸いです。
目次
まずは、思考法をご紹介します。
「考えていてもしようがないので、とりあえず行動しました」
これは、とある引きこもり経験者の生徒さん(以下、A君)に聞いた言葉です。
A君は、引きこもり期間を、「とにかくいろんなことを考えてばかりいた」と振り返ります。
「時間はたくさんあったし、昼間に一人でテレビをぼーっと見ていても『自分は何をしているんだろう』と考えたりしていました」と話していました。
考えることばかりが先だって、行動が追いつかずに、引きこもりになっていたのです。
A君は、それが自分の引きこもりの原因だと考え、「一切考えずに、飛び込む気分で行動するようにしたら、うまく引きこもりから脱出できた」と詳しく教えてくれました。
その「行動」の一つに、キズキ共育塾への相談と入塾があったのです。
A君は、キズキ共育塾に通いながら、同じく「飛び込む気分で」アルバイトも始めました。
キズキ共育塾の授業とアルバイトのシフトで生活リズムができて、人との関わりが増えたため、充実した表情を見る機会が増えました。
また、キズキ共育塾で学力を着実に伸ばしていることと、アルバイトで自分で収入を得られるようになったことから、自分に自信が持てるようにもなったようでした。
もし自分がアレコレと考えすぎて引きこもりになっているなと思う方は、A君のように、いったん考えることをやめてとにかく行動してみるのも、「脱出」のための一案です。
ある生徒さん(以下、Bさん)は、キズキ共育塾に入塾する前は、数年ほど家から出ずに過ごしていました。
Bさんはキズキ共育塾で学び、大学に合格したのですが、その報告をしてくれたとき、今後の抱負として、「まあ、低空飛行からやっていければいいかなと思います。でないと続かないので」と語ってくれました。
思い返せば、Bさんの受験勉強のモチベーションは、入塾から間もないころがピークでした。
授業で新しいことを学び始めた直後は、「もっとできます!」と前のめりな姿勢になって、しばらくして息切れする…ということも何度かありました。
自分の経験から、受験勉強のみならず、今後の生活においても「低空飛行」から始めて「続けていく」「徐々にできることを増やしていく」ことが必要だと思ったのかもしれません。
Bさん以外にも、引きこもりを経験した人は、他人よりも「遅れた」分を急いで取り戻さなければと、より完成度の高いことから取り組み始めがちです。
ですが、いきなりそんなことをしようとしても、しばらくして息切れします。
引きこもりからの脱出にあたっては、最初は、「続ける」ことを意識して、「まずは低空飛行から」と行動するということが、よい結果につながることがある、といことです。
勉強の例で言えば、「いきなり難関大学の過去問に取り組む」のではなく、「基礎的な部分を学びなおすところからじっくり取り組む」というようなイメージです。
また、就労の例で言えば、「いきなりフルタイムの正社員で働く(ことを目指す)」のではなく、「まずは人とのコミュニケーションを再開するために支援団体を訪れる」「まずは週に何時間のアルバイトから始める(ために応募を続ける)」といったイメージです。
焦らずに、持続できるようなことから始めてみましょう。
「引きこもりである今の自分」について、「どうして」「なぜ?」と原因ばかり考えてすぎていませんか?
例えば、次のような感じです。
こういうふうに考えていると、過去の自分を責めているようで、どんどん辛くなっていくと思います。
また、引きこもっている期間が長ければ長いほど、思考がマイナスになったり、堂々巡りになったりしがちです。
時間の経過が、実情と違った「よくない」考えを生むこともあります。そうなると、「脱出」はどんどん遠のくばかりです。
そこで、一度「引きこもりになった意味」を考えてみませんか?
「引きこもりにいい意味なんてない」と思われるかもしれません。
でも、少しでも、一つでもいいんです。
「そういえば、引きこもる前の自分はすごくがんばってたから、引きこもって休めたかも」とか、「ずっとテレビを見ていたから、芸能人に詳しくなったな」とか、そんなことでいいんです。
引きこもりについて、引きこもっている自分について、一つでも意味を見つけられると、「引きこもりで得られるものは得たから、次に進もうか」と心を切り替えて「脱出」できる場合があります。
続いて、行動をご紹介します。
引きこもりから脱出しようと思っても、「じゃあ実際に何のために外出しようか」ということがすぐに思い浮かばないこともあるかと思います。
そんなとき、何か「大きな目的」をいきなり設定する必要はありません。
まずは、「引きこもりからの脱出」が目的なので、楽しめるようなこと、例えば趣味のためでよいのです。
引きこもり期間で新たに興味を持ったことを趣味としてはじめてみるのもよいですし、中断していた趣味を再開してみるのも一案です。
残念ながら、興味を持ったことをできる場所や団体が家の近くにない場合もあると思います。
そういうときは、「散歩」を新たな趣味にしてみてはいかがでしょうか。
「散歩」は、一人でできて、簡単な運動にもなり、四季を感じることができる、元引きこもりの方にもハードルが低い趣味だと思います。
ご近所の目が気になる…と思う場合は、「夜の散歩」や「サイクリング」でも大丈夫です。
家にいる時間が長いほど、家族以外の人と会うことに、より勇気が必要になってくるかと思います。
無理に自分から連絡を取って約束をとりつける必要はないですが、成人式や同窓会などのイベントや懐かしい人から連絡があったときに、その機会に乗ってみることはいいかもしれません。
大きなイベントでなくても、人に誘われて出かけたことで、前向きな気持ちになれることもあります。
ご家族と一緒に暮らしている場合は、ご家族が買い物や趣味で出かけるときについて行くと、店員さんやご家族の知り合いと触れ合うこともできます。
そうした、ちょっとした人とのふれあいをきっかけに、引きこもりから「脱出」できることもあります。
キズキ共育塾のある生徒さん(以下、C君)は、大学受験の失敗をきっかけに引きこもりになっていました。
そして、引きこもりが長引くにつれ、「引きこもりが長引いた自分はみじめだ。悪い意味で『特別』だ。再び受験しても落ちるに決まっている。もう引きこもりから脱出できない」と、思考がどんどんマイナスに陥っていました。
そんな中、ある夏の日、C君は友人から中学校の同窓会に誘われました。
C君は、最初は「引きこもりの自分はみじめだから行きたくない」と答えたのですが、その友人から「みんなそんなに人のことを気にしないよ。話し相手がいなければ僕と話してればいいし、嫌になったら途中で帰ればいいし」と言われ、渋々ながらも参加しました。
そして同窓会に参加したC君は、同級生たちが、大学生、社会人、結婚した人、離婚した人、シングルマザー、資格試験のために勉強中の人、会社を辞めて求職中の人などなど、多様な人生を送っていることを知りました。
C君は、「人生は多様である」ということは頭ではわかっていました。
ですが、実際に同級生という身近な人たちが多様な人生を歩んでいることを目の当たりにしたことで、「引きこもりは『特別』じゃなくて、多様の中の一つに過ぎないんだな。みんな、自分の人生を一生懸命に生きているんだな」と実感したそうです。
その同窓会をきっかけに、C君は、自身の「引きこもり(歴)」について、変にみじめだと思うことをやめ、引きこもりを脱出することができました。そして、改めて大学受験に向けて勉強するため、キズキ共育塾に入塾しました。
C君は、その後、志望する大学に見事合格しています。
いざ外に出かけようと思ったとき、いきなり無理をする必要はありません。
例えば、「人混みは苦手だけど、がんばらなきゃ!」といきなり気負って繁華街に出かけようとしても、結局出かけられなかったり、出かけられても心身の調子が悪化したりすることがあります。
そうすると、それが新たな「失敗」となり、引きこもりからの「脱出」は遠のく可能性があります。
もし「引きこもりじゃない人は、いつでもどこにでも出かけられるはずだ。自分もそうならなければ」と考えているようでしたら、それは思い込みです。
引きこもりじゃない人でも、「繁華街に行くと気分が悪くなるから行かないようにしている」という人は割といますよね。
先に述べた「夜の散歩」とも共通しますが、特に「引きこもりからの脱出」の第一歩としては、自分が行きやすいと思う場所・時間で十分です。
人目が気になるようであれば人の少ない場所・時間帯、人が多い方が気がまぎれるようであれば賑やかな場所・時間帯です。
そうして徐々に外出に慣れていくにつれ、だんだんと行動できる範囲も広がっていきます。
以上、引きこもりから脱出するための、3つの思考と3つの行動をご紹介しました。
あなたも、今は苦しいかもしれませんが、必ず「次の一歩」に進めます。
この記事が、あなたの引きこもり脱出のお役に立つことを願っています。
さて、私たちキズキ共育塾は、引きこもり・不登校・中退などの方のための個別指導塾です。
キズキ共育塾では、十代から数年間の引きこもり期間がある生徒さんや、大学に進学したけれど通えず引きこもっている、という生徒さんが多数在籍しています。
勉強そのものや、授業でのコミュニケーション、通塾という定期的な外出などを通じて「引きこもりから脱出したい」と思われたときは、お気軽にご相談ください。
オンラインでのご相談・授業も行っていますので、「まだ外出できない…」という方は、まずそちらで徐々に人とのコミュニケーションに慣れて、次第に外出を目指す、といったご利用も可能です。
※紹介した生徒さんの事例は、記事の趣旨を損なわない範囲で、個人の特定ができないように一部事実を変更しています。
※文中の写真は、全てイメージです。