ひきこもり・ニート・不登校の違いって?曖昧な意味・定義を解説します

ひきこもり・ニート・不登校などの人の学び直しをサポートする個別指導塾・キズキ共育塾のあべあいりです。
「ひきこもり(引きこもり)」「ニート」「不登校」という言葉は、近頃さまざまなところで使われるようになりました。
このコラムでは、「ひきこもり」について、厚生労働省が定める定義や精神医学の領域の認識などについて紹介します。併せて、ニートや不登校との違いについても説明します。
ご家族にひきこもりの方がいる人や、ひきこもりをサポートしたい人はご一読ください。ひきこもりについての理解が深まり、ご家族の一助となれば幸いです。
目次
「ひきこもり」とは?

厚生労働省は、「ひきこもり」を、次のように定義しています。
様々な要因の結果として、社会的参加を回避し、原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態
ここでいう「社会参加」には、学校や仕事のほか、家庭外での交友関係なども含まれます。
外出していたとしても、それが他者と関わらない形の外出であり、またその状態になってから6か月以上が経っているならば、ひきこもり状態と定義されます。
例えば、近所のコンビニへの買い物のために外出ができていても、「ひきこもり」と定義されることがあるのです。
このような状態のことを俗称で「社会的ひきこもり」と呼ぶこともあります。社会的ひきこもりの子ども・若者は、日本全国に約70万人いるといわれています。
同様の「問題」は、東アジアを中心に世界的に認知されるようになっています。日本にとどまらず「Hikikomori」は世界的な問題に発展してきました。(出典:内閣府「ひきこもり支援者読本」)
ひきこもり・不登校・ニートの違いとは
ここまで「ひきこもり」について話してきました。
似たような状態と思われがちな「不登校」や「ニート」との違いとは何なのでしょうか?
①ひきこもりと不登校の違い

ひきこもりと不登校の違いは、「日数」と「社会参加の有無」です。ひきこもりは「社会参加がない状態」なのに対して、不登校は「学校に行っていない状態」のことを表しています。
文部科学省は、不登校のことを、次のように定義しています。
不登校の定義には、社会参加の有無についての言及はありません。何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの
例えば、不登校でも、習い事に通う、友達と交流するなどを行っていれば、「ひきこもり」ではありません。
厚生労働省と文部科学省の定義をまとめると、次のようになります。
- 学校に所属しておらず、社会参加していない状態が6か月以上継続している場合は、「ひきこもり」
- 学校に所属していて、年間30日以上の欠席があり、学校以外の社会参加がある場合は、「不登校(だけどひきこもりではない)」
- 学校に所属していて、年間30日以上の欠席があり、学校以外の社会参加も6か月以上ない場合は、「不登校かつひきこもり」
②ひきこもりとニートの違い

ひきこもりとニートの違いは、「社会的な組織(学校や仕事など)に所属しているか否か」です。(15歳未満と35歳以上については省略。参考:立命館大学,西田亮介※PDF「ニートとひきこもり」)
それぞれ、次のように分けられます。
- 15歳以上35歳未満で、組織に所属していて、社会参加が6か月以上ない場合は「ひきこもり」
- 15歳以上35歳未満で、組織に所属せずに、社会参加が6か月以上ない状態なら「ニート」
そもそも、ニートとは、「Not in Education,Employment or Training」の頭文字を取ったイギリスの造語のことです。直訳すると「就業、就学、職業訓練のいずれもしていない人」になります。
日本では、内閣府が次のように定義しています。
高校や大学に通学にしておらず、独身であり、ふだん収入になる仕事をしていない15歳以上35歳未満の個人
ニート全体の半数弱である49.5%がひきこもり状態であるという数値も出ています。(出典:H19厚生労働省「ニートの状態にある若年者の実態及び支援策に関する調査研究」)
③ひきこもり・不登校・ニートは、密接に関連することも少なくない
それぞれ定義は異なるにせよ、ひきこもり・不登校・ニートは、密接に関連することも少なくありません。
そのため、公共機関・民間団体を問わず、横断的な支援を行っているところも多くあります。
公的な支援窓口としては、厚生労働省が全都道府県・政令指定都市に設置している「ひきこもり地域支援センター」があります。
また、市区町村が独自に支援施策を行っていることもあります。
さらに、民間の支援施設も今は数多くあります。
お子さんやご家族に合いそうな施設・支援があるか、いくつか調べてみることをオススメします。
私たちキズキ共育塾も民間の支援団体の一つです。
一概に「ひきこもり」=病気・障害ではない

さて、「ひきこもりは何らかの病気・障害が原因なのでは?」と思うかもしれません。
ひきこもりは、必ずしも病気・障害が原因ではありません。病気・障害がなくともひきこもりになる人はいらっしゃいます。
ひきこもり状態になる原因はさまざまです。
例えば、特に若年層では、いじめ、成績の低下、受験の失敗などが挙げられます。しかし、きっかけとなる原因がはっきりしないケースも少なくありません。
もともとの性格が内向的、非社交的だったり、「手のかからない子ども」として育ってきたりした子どもが、ひきこもりになることはしばしばあります。
しかしそれらの性格も、必ずしも決定的な要因ではありません。
どのような家庭のどのような子どもも「ひきこもり」になり得ると考えられています。
ですので、「自分の子育ての仕方が悪かったのではないか」などと、変に悔やむ必要はありません。(出典:内閣府「ひきこもり支援者読本」)
ひきこもりに関連する病気・障害もある
一方で、実際に病気・障害とひきこもりが関連する場合があります。
病気・障害が原因でひきこもりになっているケースもあれば、ひきこもり状態が原因で精神疾患などになっているケースもあります。
何らかの病気・障害が認められる場合は、厚生労働省が定めるひきこもりの定義とは厳密には異なります。
ひきこもりと精神疾患や発達障害は、因果関係や関連性の判断が難しいのです。
いずれにせよ、病気や障害の可能性がある場合は、適切に医療機関を頼ることが重要です。
以下、ひきこもりにつながりうる病気・障害の例を紹介します(参考:日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』)。
ひきこもりに関連する病気・障害①統合失調症
統合失調症の症状に、誰かに嫌がらせを受けている、だまされている、見張られているなどの「被害妄想」があります。
そうした症状のために部屋にひきこもり、社会参加をしない選択をしている場合があります。
障害の兆候のいくつかは、少なくとも6か月間持続して見られます。多くは10代後半〜30代半ばの間に出現するため、その年代のひきこもりは、統合失調症が原因である可能性もあります。
ひきこもりに関連する病気・障害②不安障害
不安障害の症状である分離不安症や選択性緘黙が、ひきこもりの原因になることがあります。
- 分離不安症とは
愛着のある人から離れることに極度の不安を抱く障害です。
家から離れて学校や仕事場所へ出かけることに不安を感じるため、社会的参加に持続的な抵抗や拒否が見受けられます。
このような症状がひきこもりにつながることがあります。 - 選択性緘黙とは
家庭などでは話しているにも関わらず、特定の社会的状況(学校や職場など)において、話すことができない障害です。
小児期に発症が多く治療されなければ持続する傾向もあります。男性よりも女性に多く発症するといわれています。
これらの障害が学業上、職業上の成績や対人コミュニケーションを妨げていて、プレッシャーを感じたことからひきこもりを選択している可能性も考えられるでしょう。
ひきこもりに関連する病気・障害③双極性障害(気分障害)
双極性障害は、うつ病と軽躁病が見受けられる障害です。
調子のよいとき・悪いときが見受けられ、発症はおおむね平均18歳といわれています。抑うつ状態の際にひきこもりになる可能性が考えられます。
まとめ〜ひきこもりからの社会復帰のためには、専門家の利用が効果的〜

ひきこもりは「社会参加をせずに、家庭にひきこもった状態が6か月以上継続している状態」のことを指します。
原因はさまざまであり、病気や障害ではなくとも、誰しもがひきこもりになる可能性があります。
一方で、精神疾患や障害のためひきこもりの症状が出たり、ひきこもり生活が病気を誘発したりすることもあります。
ですので、病気・障害と引きこもりの関係は、判断が難しいところです。精神疾患や発達障害の場合は、適切に医療機関を利用することが重要となります。
ひきこもり状態の問題は、本人や家族だけの努力だけで解決しようとするよりも、専門の支援団体を利用した方が効果的です。
公的な定義に当てはまるかどうかに関わらず、ひきこもりに対してはさまざまな支援団体があります。
インターネット検索などで、お子さんやご家庭に向いている支援団体を探してみましょう。きっとお子さんの力になるところが見つかります。
この記事が、ひきこもり、ニート、不登校などでお悩みの方の一助となったなら幸いです。
さて、私たちキズキ共育塾は、ひきこもり・不登校・ニートなどの当事者・経験者を、学習面とメンタル面からサポートしています。
一人ひとりのお悩みに寄り添い、丁寧な個別指導で学び直しに徹底的に支援します。
少しでも気になるようでしたら、お気軽にお問い合わせください。親御さんだけでのご相談も可能です。
お子さんや家族の皆さんが次の一歩に進めるよう、心から祈っています。
※文中の写真は、全てイメージです。
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