引きこもりの子どもへの親の対応5選 親に共通する特徴・体験談も紹介

こんにちは。不登校や引きこもりのお子さんを完全個別指導でサポートするキズキ共育塾です。

引きこもり問題は、近年多くのメディアで社会問題として取り上げられています。

引きこもりは、本人だけではなく、親にとっても苦しい問題です

また、引きこもりが長期化すればするほど、本人や親の年齢が上がるため深刻な問題になります。

現在、引きこもり状態のある方の中には不安を抱えている方も少なくないと見受けられます。ですが、専門家などのサポートを受けつつ、適切なケアや対応をすることで、今後の人生を切り拓いていけます

また、引きこもり経験者の中には、大学進学・卒業や就職などに成功している方も多いです。

お子さんが引きこもっているご家庭は本人にだけ解決を任せるのではなく、親も子どもと一緒に将来を考えることが大切です。

本記事では、引きこもりの定義や当事者の心理、子どもの引きこもりに悩む親に共通する特徴、引きこもりの親が子どものためにできることなどを解説します。

引きこもりとは?

厚生労働省の「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」によると、「ひきこもり」は以下のように定義されています。

(ひきこもりとは、)様々な要因の結果として社会的参加 (義務教育を含む就学, 非常勤職を含む就労, 家庭外での交遊など) を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい) を指す現象概念である。

なお、ひきこもりは原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とするが、実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべきである。

(参考:厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」

このように、引きこもりとは原因を問わず、半年以上にわたって社会活動を回避している状態のことを言います。

なお、「社会と深く関わらない程度に外出する人(コンビニや書店など)」も、引きこもりの定義に含まれます。

現代社会において引きこもりは珍しくない

社会全体で見ると、引きこもりは決して珍しいことではありません。

内閣府が2023年3月に公表した「こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)」によると、引きこもり状態にある人は15歳から64歳までの年齢層の約2%余りにあたる推計146万人に上るといわれています。(参考:内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)」

引きこもりの当事者は孤立感を抱きやすく、引きこもりの子どもがいる親御さんは、「我が子だけどうして…」「他の子は学校/職場に行っているのに…」と感じるかもしれません。

引きこもりと不登校の違い

引きこもりとしばしば混同される言葉として、不登校が挙げられます。

文部科学省は、不登校を次のように定義しています。

何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの

(参考:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」、文部科学省「不登校の現状に関する認識」

不登校は病気や経済的な理由以外の事情、例えばいじめや勉強の遅れなどで学校に行けないことを指し、一方で引きこもりは家庭外での交流を避けるなど、より広い意味で使われています

詳しくは、下記コラムをご覧ください。

引きこもり当事者の心理

引きこもり当事者の心理は、世間において知られる機会が少ない傾向にあります。

そうした中で、2019年にNHKが引きこもり当事者の心理について報道しました。(参考;NHK ハートネット「当事者・支援者が語る「ひきこもり」」

この番組の出演者が語る心理には、以下の内容があります。

  • 希死念慮があった
  • 激烈な苦しさ
  • 本当は働きたい

引きこもり当事者は、日々つらい思いを抱え自宅に引きこもりながらも、社会参画を望んでいるケースも多々あります

また、他者の中で自分の立ち位置や振る舞いが分からずに引きこもる人や成功体験がなく、自信を失う人もいます。

引きこもり状態にあるといっても1人ひとり状況は異なるため、それぞれの状況にあった適切なケアやサポートが必要なのです。

引きこもり当事者の体験談

前述のように引きこもり当事者の中には辛い思いを抱えている人が多くいます。

しかし、それを乗り越えた人も少なくありません

ここでは、引きこもりや不登校の人の学習面やメンタル面からサポートしているキズキ共育塾の生徒さんの「引きこもりの体験談」を紹介します。

高校3年生のときに不登校になり、介護をしている母の重荷になっているようにも感じました。


学ぶ機会を得るために「うつ病 不登校 塾」などのキーワードでインターネット検索をする中で不登校者を対象にした学習塾を見つけました。


入塾してみると、先生方も親切で、授業も分かりやすく、最終的に複数の大学に合格できました。(当時高校3年生女子)



不登校(引きこもり)になる以前は親や教師の言うことをよく聞く、勉強もスポーツもできるいわゆる良い子でした。しかし、中1の夏休みの前に部活に行けなくなり、学校にも行けなくなりました。


はっきりとした理由は分かりませんが、部活や勉強がハードで限界がきたことや、自分よりも優秀な人もいて自信喪失したことが原因だと思います。


そのうちに社会が自分を認めてくれないと思い込むようになり、友達や先生、親戚に会うのも躊躇するように


不登校の生徒を対象とする塾での経験などを踏まえ、現在の自分は学校以外にも居場所があると思えるようになりました。

子どもが引きこもりになる原因

子どもが引きこもると、「親が自分のせいだと自分を責める」「親が世間から責められる」ようなことも少なくありません。

しかし、実際に親が子どもの引きこもりの直接的原因となっているケースは少ないと見受けられます。

内閣府が2019年3月に公開した「生活状況に関する調査 (平成30年度)」では、15〜39歳の男女が引きこもりになった原因が明らかにされています。(参考:内閣府「生活状況に関する調査 (平成30年度)」

上記のデータによると、「職場になじめなかった」「病気」と回答した人が、それぞれ約23.7%と最多です。

次いで、「就職活動がうまくいかなかった」(約20.3%)「人間関係がうまくいかなかった」(約11.9%)が続いています。

また、「不登校(小学校・中学校・高校)」が約11.9%、「大学になじめなかった」が約6.8%と、学校生活でつまずいた人も少なくないようです。

上記の調査項目には、親や親に直接関係するような問題は含まれていませんが、少なくとも、親が引きこもりの原因であると断言はできないでしょう。

子どもの引きこもりに悩む親に共通する特徴3つ

引きこもりの子どもにとって、親はもっとも身近な存在です。

子どもの引きこもりを早期に解決できるかどうかのキーパーソンとなります。

ここでは、子どもの引きこもりに悩む親に共通する特徴を紹介します。

「引きこもりの親に共通することがあれば知りたい」という声が多いのであえて紹介しますが、「この特徴があればひきこもりになる」という決めつけではありません。あくまで参考としてご覧ください。

また、ご紹介する内容に今のあなたが当てはまっていても、落ち込んだり自分を責めたりする必要はありません。専門家などに相談することで、状況をこれから改善していくことはもちろん可能です。

特徴①引きこもりが長期化する仕組みをつくっている

親御さん自身が、お子さんの引きこもりが長期化する仕組みをつくっていることがあります。

例えば、「専門家への相談など、解決に向けたアクションを起こせない」などです。

「子どもの引きこもり問題を相談すること」を、「親が責任を放棄し、子どもを見捨てることではないか」と懸念されている方がいます。

ですが、こちらでご紹介するように、根本的な解決や子どもの社会復帰のためには、専門家・第三者・サポート団体などを適切に利用して、引きこもりを長期化させないようにすることが大切です。(参考:工藤定次・YSCスタッフ・永冨奈津恵『脱!ひきこもり YSC(NPO法人 青少年自立援助センター)の本』

特徴②柔軟に対応できず、世間体を気にしている

生活困窮者らへの支援を行うNPO法人ほっとプラスの代表理事である藤田孝典氏は、自身の著書『中高年ひきこもり―社会問題を背負わされた人たち―』の中で、引きこもりの子どもの親の職業として学校の先生、医師、看護師が多いと述べています。(参考:藤田孝典『中高年ひきこもり―社会問題を背負わされた人たち―』

さらに、その著書の中では、「これらの職業はいわゆる先生商売であるがゆえに権威的で、一つの考え方を教条的に信じている」「世間体を気にするため、行政の窓口や専門家・第三者・サポート団体などに相談したがらない」傾向にあるとしています。

自分が優秀であったり、社会を支援する立場にあったりすると、ある種の成功体験があるため、引きこもりの子どもと同じ視点に立つのが難しくなります

特定の考え方に固執し、子どもの個性や特性に合った柔軟な対応ができないと、子どもを精神的に追い詰めることになるかもしれないのです。

特徴③子どもと共依存状態にある

30代や40代で引きこもり状態にある人の中には、親の価値観や考え方に固執しているケースも多々あります。(参考:片田珠美『他人の支配から逃げられない人』

いわば、親と子どもが共依存状態にある状態です。

子どもは親の期待や考え方に則した生き方ができないと、その乖離から精神疾患を患うこともあります。

上記参考資料から、例を紹介します。

ある男性は、大学に馴染めずに中退したものの、専門学校を卒業して調理師になりたいという夢がありました。


そして、中退後は飲食店でアルバイトをしていたところ、親に「そんな仕事はよくない。正社員になりなさい」と責められたことをきっかけに、引きこもり状態になりました


男性は成人しており、親の保護下にある年齢ではありません。


ですが、父親の価値観や考えに逆らえず、大人になっても自分の人生を自ら切り拓いていけない状況に陥っています。

引きこもりの子どもをもつ親ができる対応5選

親は子どもが社会との関わりを復活させるためにも重要な存在です。

子ども自身で引きこもり状態から抜け出すよう機会を探ることも大切ですが、親のサポートが必要なケースもあります

ここでは、引きこもりの子どもをもつ親ができることを紹介していきます。

対応①サポート団体などに相談する

まず、大切なことは、専門家・第三者・サポート団体などに相談することです。

近年では、引きこもりの人をサポートする行政サービスや民間団体が増えています(参考:厚生労働省「ひきこもり支援推進事業」

これらを活用することで、我が子の引きこもりに悩む親同士がつながれるほか、引きこもり当事者も同じような環境にある人たちと出会えます。

これまでは社会的孤立を抱えていた人たちも、社会への帰属意識を抱けたり、就学や就労の機会につなげたりすることも可能です。

例えば、厚生労働省が運営する引きこもりに関する情報をまとめたひきこもり支援ポータルサイト「ひきこもりVOICE STATION」では、経験者、家族会、支援者などが集まり、意見交換をしたり、正しい情報を共有したりする場となっています。

支援機関・相談窓口は、下記WEBサイトを参考にしてみてください。

私たちキズキ共育塾も、引きこもりのお子さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートしています。

また、就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ」では、うつや発達障害で離職した方々のために再就職の支援も行っています。

相談は無料です。少しでも気になるようでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。

参考サイト:キズキ共育塾

対応②子どもが安心できる愛情を与える

ほとんどの親が、子どもに対して愛情を抱いているかと思います。

しかし、愛情といってもさまざまです。愛情の注ぎ方によっては、子どもが安心できたり、逆に不安になったりする場合があります

安心できる愛情とは、「子どもの成長に合わせて、自分で乗り越えられる力があるという承認を与えるもの」です。

親に頼らなくても自分でできる、自分には乗り越える力があると思うことで、子どもは社会でさまざまなことにチャレンジできます。

また、自分が困った際には親だけでなく、社会が助けてくれると思えると、周囲に溶け込みやすくなります

一方で、子どもが不安になる愛情とは、「我が子を心配するあまり、子どもの挑戦を妨げるもの」です。

子どもが成長してからも心配ばかりをしていると、子どもは親の保護下から抜け出せないばかりか、自分に自信をもつこともできません

適度に子どもを信じて愛情を注ぎましょう。(参考:田村毅『ひきこもり脱出支援マニュアル 家族で取り組める実例と解説』

対応③ 親が前向きな気持ちでいる

親が前向きな気持ちでい続けることも大切な対応です。(参考:田村毅『ひきこもり脱出支援マニュアル 家族で取り組める実例と解説』

親が充実した生活を送る姿を見たお子さんは、将来に対してポジティブなイメージを持てるのです

そして、子どもはふとしたことをきっかけに親の誘いにのってくれることもあるかもしれません。

前向きな気持ちを継続して持つためには、親自身が家族や友人と充実した時間を共有したり、夫婦でお互いを肯定し合ったりすることが大切です。

対応 ④子どもの話に耳を傾ける

引きこもり状態にある人の中には、孤独感や社会的孤立を感じている人も多いです(参考:最上悠『8050 親の「傾聴」が子どもを救う (子どもの声に耳を傾けていますか?)』

「誰にも自分の気持ちを理解されない」「誰も自分の存在を認めてくれない」と感じる状況は、つらいものです。

そのため、子どもの話に耳を傾けてください。そして、お子さんに自分を受け止めてもらえたと思ってもらうことが大切なのです。

親が子どもの声に耳を傾け、共感することで、子どもは自分に対する自信が芽生えていきます

やがて、心も元気になっていくはずです。

対応⑤子どもに精神疾患があるかどうかを医師に相談する

精神科医の川上憲人氏によると、「引きこもり」によって精神障害のリスクが増加する可能性の方が高いとされています。(参考:川上憲人「こころの健康についての疫学調査に関する研究 」

しかし、精神疾患は目に見えにくいほか、世間において広く知られていないため見落とされることも少なくありません。

例えば、うつ病や摂食障害は命にもかかわる病気です。そのため、早期発見をする必要があります

子どもに精神疾患があるかどうかを医師に相談するのも大切な対応です。

まとめ〜お子さんも親御さんも、ともに幸せになれるように心から願っています〜

本記事で見てきたように、子どもの引きこもりは親に直接的な原因があるケースばかりではありません

また、子どもが引きこもっていることを自分の責任だと責める親御さんも多く見受けられますが、親に全ての責任があるわけではありません。

ただし、子どもが早期に社会復帰するためには、親が外部の専門機関に相談したり、子どもにとって居心地のよい環境を提供したりといったアクションが必要です。

また、親は子どもが引きこもると、精神的にも消耗しやすくなります。

しかし、自分自身が充実した生活を営み、子どもに前向きな姿を見せることで将来に対してポジティブなイメージを持てるのです。

親御さんも、引きこもりのお子さんも、ともに幸せになれるように心から願っています。

監修 / キズキ代表 安田祐輔

やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ」も運営。

【新著紹介】

『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
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KADOKAWA公式

【略歴】

2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【メディア出演(一部)】

2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

共同監修 / キズキ相談担当 半村進

はんむら・すすむ。1982年、茨城県生まれ。東京大学文学部卒。
小学校時代から転校を繰り返し、運動ができないこと、アトピー性皮膚炎、独特の体形などから、いじめの対象になったり、学校に行きづらくなっていたことも。大学に入学してようやく安心できるかと思ったが、病気やメンタルの不調もあり、5年半ほど引きこもり生活を送る。30歳で「初めてのアルバイト」としてキズキ共育塾の講師となり、英語・世界史・国語などを担当。現在はキズキの社員として、不登校・引きこもり・中退・発達障害・社会人などの学び直し・進路・生活改善などについて、総計1,000名以上からの相談を実施。

【執筆記事・インタビューなど(一部)】

日本経済新聞 / 朝日新聞EduA / テレビ東京 / 不登校新聞 / 通信制高校ナビ

サイト運営 / キズキ

「もう一度学び直したい方」の勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする学習塾。多様な生徒さんに対応(不登校・中退・引きこもりの当事者・経験者、通信制高校生・定時制高校生、勉強にブランクがある方、社会人、主婦・主夫、発達特性がある方など)。授業内容は、小学生レベルから難関大学受験レベルまで、希望や学力などに応じて柔軟に設定可能。トップページはこちら。2023年7月現在、全国に10校とオンライン校(全国対応)がある。

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