
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
こんにちは。引きこもりの当事者・経験者の勉強とメンタルをサポートするキズキ共育塾の清水優希です。
この記事を読んでいるあなたは、引きこもりで悩んでいる中学生本人か、中学生のお子さんが引きこもりになってお悩みの保護者さまだと思います。
私には、高校卒業後に引きこもりになった経験があります。
このコラムでは、引きこもり経験のある私から、引きこもりの中学生とその保護者さまに向けて、引きこもりから「次の一歩」に進むための6つのお願い事項をお伝えします。
お悩みを抱えるあなたの気持ちが少しでも軽くなり、一歩ずつ前に進めるようお役に立てれば幸いです。
共同監修・石井志昂氏からのアドバイス
「引きこもり経験者の話を聞く」などがオススメです
このコラムの内容は、「さすが引きこもりの経験者がまとめた情報」だと思います。私も引きこもり当事者への取材を20年間続けていますが、同じような心境の方が大勢いらっしゃいました。
不登校や引きこもりの人たちは、「当事者・経験者じゃないとわからない景色」も見ているものです。逆に言うと、当事者・経験者以外には想像できないこともあります。
周囲の人にまずオススメする行動は、詳しい人に相談したり、経験者の話を聞いたり(不登校・引きこもりに関連した講演・イベントなどはたくさんあります)、手記を読んだりすることです。
目次
まずは、引きこもりのご本人と保護者様に共通してお伝えしたいことです。
私が一番に伝えたいのは、「引きこもりになったこと自体を責めないでほしい」ということです。
引きこもりになる可能性は誰にだってあります。そのきっかけも人によってさまざまです。
あなたやお子さんが引きこもりになったのは、たまたま「きっかけ」に出会っただけです。
また、私の知る限り、引きこもりは「引きこもりになりたかった」わけではなく、「引きこもる以外にどうすればいいかわからなかった」ケースが多いです。
どうか、引きこもりになったこと自体はそのまま受け止めて、「次の一歩」を探してほしいと思います。
続いて、特に保護者さまに伝えたいことです。
保護者さまには、家庭の中でお子さんが安心できる空間をつくってほしいと思います。
引きこもりになったということは、家の外で、本人では解決ができない、または向き合うのがつらい出来事があったということです。
引きこもっている本人はとっても不安で、孤独ですし、あせりもあります。
特に中学生の場合は、中学卒業後の不安もあります。
次のような不安は、お子さん本人が一番感じています。
そんなときに「がんばって」や「このままじゃダメだよ」などの咤激励は、逆効果になることがあります。
少なくとも私の場合はそうでした。
親からそういうことを言われたときは、次のように思っていました。
いまの私には、保護者さまはお子さんのためを思って「がんばって」と言っているということがわかります。
ですが、苦しみの最中にいるお子さんにとっては、投げやりで、具体的な解決策につながらない言葉に聞こえる場合もあるのです。
そうなると、お子さんは、次のように考えてさらに殻にこもり、前に進む一歩がもっと踏み出しにくくなります。
お子さんが引きもっている姿を見ると、いろいろと口を出したくなるでしょう。
そこを我慢して、お子さんが安心できる空間をつくってあげてください。
「安心できる空間」とは、「守られていると感じられる空間」、「自分らしく、自由に振る舞える空間」、「自分が受け入れられていると実感できる空間」などと言い換えてもいいでしょう。
では、どうやったらそういった空間をつくれるのでしょうか?
引きこもりについて、「親子で過ごせる時間が増えた」とポジティブに考えてみるのはどうでしょうか。
そうすると、親子で一緒に料理をしてみたり、動画を観たり、少しの外出が可能ならば近所まで散歩をしてみたりできるようになります。
部屋からも出てこられないようだったら、少しそっとしておいてあげるのもいいかもしれません。
そうするうちに、お子さんは家庭で安心できるようになり、次第に不安や悩みを打ち明けてくれるようになります。
そこで、不安や悩みに寄り添って、この後どうすればいいのかを一緒に考えていけるようになります。
引きこもりのお子さんについて、「あれこれしてあげているのに、どうして言うことを聞かないの?」と思うこともあるのではないでしょうか。
大人の視点から見ると、こうした方がいいとか、こうなってほしいとか、アドバイスはたくさんあると思います。
それが「お子さんのためを思って」であることも否定しません。
ですが、「保護者さまが思う形での、引きこもりからの脱出」の強制になると、保護者さまもお子さんも苦しくなります。
親子といえども、お子さんと保護者さまは「他人」です。
中学生はまだ若く、保護者さまと比べれば知識も経験も不足しています。それでも、お子さんにはお子さんの価値観や選択があります。
お子さんの考えが保護者さまの望みと違ったとしても、頭ごなしに否定せず、まずは尊重してほしいと思います。
なぜこれを伝えたいのかというと、私が引きこもりだったときに一番悩んだことだからです。
両親は、引きこもる私にある職業を進めてきました。
それは資格の必要な仕事で、求人も多く、安定した職と呼べるものでした。その職業に就くための進学先まで考えてくれていました。
しかし私はその職業にあまり興味がなく、将来的にやりたいことは別にありました。
それを私が伝えると両親は猛反対し、「私たちがここまでやってるのに、どうしてそれを裏切るようなことをするのか。親をなんだと思っているのか」と言いました。
私は両親に育ててもらったことを感謝していますし、親をバカにしていたつもりもありませんでした。
だからこそ、「私のことを両親が理解してくれていない」という事実に悲しくなりました。
引きこもりで自己肯定感が下がっていた時期だったので、心のダメージはかなり大きかったです。
両親は両親で、私に期待をしてくれていたのだと思います。
ところが、その期待は私にとっては大きな負担でしたし、私の思いとも関係ないものでした。
その後も私と両親は何度もぶつかりました。そして最終的には両親は私の意見を尊重してくれるようになり、私も引きこもりから前に進むことができました。
もちろん、「何でもかんでもお子さんの言うことに従うべき」という意味ではありません。また、一般論として保護者さまからお子さんへのアドバイスは重要です。
ですが、せっかくの「お子さんを思う心」がお子さんとすれ違ってしまうのは悲しいことだと思います。
ぜひ、お子さんを一人の人間として尊重した上で接してほしいと思います(次の④で述べる相談機関などを挟むとスムーズに進むと思います)。
保護者さまは、お子さんの一番近くにいる存在ではあるものの、引きこもりの専門家ではありません。
お子さんの引きこもりに関するお悩みを、保護者さまだけ、家庭の中だけで抱え込む必要はありません。
引きこもりのお子さんと向き合うには忍耐が必要です。また、安心できる空間をつくるにしても、不安や悩みに寄り添うにしても、「具体的に、いつ、何をすればいいのか」は家庭(保護者さま・お子さん)によって異なります。
お子さんのためにも、そして保護者さまのためにも、相談機関などを適切に利用することで、よりスムーズに前に進むことができるようになります。
相談機関には、公的なものも民間のものもあります。
インターネット検索などでお子さんやご自分に合いそうなところを探して、次のようなお悩みを、ぜひ話してみてください。
特に民間の相談機関の探し方は、コラム「元引きこもりが語る、失敗しない引きこもり支援団体の探し方」をご覧ください。
それぞれの事情に応じた具体的なアドバイスがもらえると思います。
最後に、引きこもりのご本人である、あなたにお伝えしたいことです。
中学生で引きこもりのあなたは、たくさんの悩み事があるでしょう。
その中でも、中学卒業後など「将来への不安」が特に大きいのではないでしょうか?
私も、引きこもっていた時期には、「このままでいいのかなぁ。将来どうなっちゃうんだろう。でも、どうすればいいのかわからないなぁ」と、毎日考えていました。
そんなあなたにいまの私が伝えたいのは、「大丈夫。なんとかなる!」ということです。
確かに、「理想どおり」に生きるのは難しいかもしれません。
例えば、中学での出席日数が少なければ進学できない高校があることも事実です。
しかし、人の生き方は一つではありません。
想定していたルートで行けなかったとしても、他の道が探せます。
目的地が変わることもよくあります。
高校進学の例を続ければ、中学の出席日数が少なくても進学できる高校はあります。
大学や専門学校への進学を考えているのなら、高校に行かずに高卒認定の取得を目指す、というルートもあります。
そうして、少しずつ前に進んでいけば、いつの間にか「あ、もう大丈夫だ」と思える地点に必ず到達できます。
いまお悩みを抱えるあなたは、「何とかなるって言われても、自分には無理」と思うかもしれません。
ですが、あなたの人生は、決して「終わり」ではありません。
気持ちが落ち着いてきたら、「大丈夫。なんとかなる!」と思って一歩踏み出してみてほしいのです。
私は、自分が引きこもっていた時期のことを「自分にとって必要な時間だった」と認識しています。
「人生のレール」から一歩外れ、悩むうちに自分と向き合えるようになったからです。
一方で、引きこもり経験のある芸人・髭男爵の山田ルイ53世さんは、「引きこもっていた期間は無駄だったけど、人生には無駄があってもいい」と話されています。(こちらのインタビューはとても面白いです!)
私は「意味がある」も「無駄だったけど、無駄があってもいい」も、どちらも正しいと思います。
引きこもり期間に得るものがあったら、私のように、それを足がかりにして「次の一歩」に進めます。
そして、引きこもり期間に得るものがなかったからといって、「次の一歩」に進めないということは決してありません。
引きこもりじゃなくても、日常生活で「これを得たから次に進もう」と意識せずに「普通に」暮らしている人は大勢います。
とは言え、「自分は引きこもり期間中に得るものがなかったな(自分の引きこもりには意味がなかったな、引きこもりは無駄な期間だったな)」と思うと、何かを得るまで「次の一歩」になかなか進めない人もいます。
そんなときは、例えば、次のように、日常生活や娯楽の中から得られるものを探すのも一つの方法です。
私たちキズキ共育塾は、外出や学校が苦手な人のための完全個別指導塾です。進路/勉強/受験/生活などについて、無料相談ができます。高校/高認などの合格実績多数。お気軽にご連絡ください。
資料を無料ダウンロード不登校の中学生と保護者さまに向けて、これまでのことをまとめます。
ご本人と保護者さまへ
保護者さまへ
いま引きこもっているあなたへ
以上のことを覚えておくと、きっと「次の一歩」に進めるようになります。
この記事が、あなたのお役に立ったなら幸いです。
さて、キズキ共育塾は、引きこもり状態にいる人たちが「次の一歩」に進むことを応援しています。
キズキ共育塾で学んで高校に進学した引きこもりの中学生もたくさんいます。
「勉強したいけど、外出できないから通塾できない」という人は、オンラインで授業を受けることもできます。
少しでも気になるようでしたら、お気軽にご相談ください(ご本人のみ、保護者さまのみののご相談も可能です)。
勉強のことに限らず、親子の接し方、生活のこと、また「これからどうすればいいのかわからない」といったご相談もお受けしています。
ご相談いただければ、それぞれのご事情に応じて、より具体的な話ができると思います。
私たちと一緒に、「次の一歩」に進んでみませんか?
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