不登校の子どもへの母親の接し方|元不登校からの3つのアドバイス

不登校の子どもへの母親の接し方|元不登校からの3つのアドバイス

不登校のお子さんのための完全個別指導塾・キズキ共育塾大阪校講師の木原彩です。

あなたは今、母親として不登校のお子さんのことを不安にお思いなのではないでしょうか?

「母親である自分の育て方が悪かったのかも…」とお悩みかもしれません。

ですが、お子さんの不登校について、母親であるご自身のことを責めないでください

不登校になる原因はさまざまですし、誰しもが不登校になる可能性があるからです。

そして、不登校を経験したからといって、お子さんの将来が閉ざされることは決してありません

母親であるご自身を責めず(もちろんお子さんも責めず)、前向きな気持ちに考えていただければと思います。

さて、母親と不登校のお子さんとコミュニケーションがうまくいかないことは、少なくありません

私も不登校を経験しており、当時は母親とのコミュニケーションにすれ違いが多々ありました(今では感謝しています)。

今回は、不登校の頃の私と母親との話を例に、不登校のお子さんへの「母親の接し方」についてのアドバイスをお伝えします。

お子さんと母親であるあなたが前に進めるよう、力になれれば幸いです(特にご相談の多い「母親」の観点で述べていますが、基本的には「父親」や「きょうだい」などでも同じです)。

共同監修・不登校新聞社 代表理事 石井志昂氏からの
アドバイス

不登校のサポートにおいて、医師や教員などのどんなに優れた専門家の手法でもかなわないのが、「保護者の愛情や笑顔」だと言われています。

お子さんは、保護者の方からの思いや愛情は、不登校になった瞬間はわからないかもしれません。しかし、後でしっかり伝わるものです。

その上で、保護者の方が「伝わってないのでは?」と心配になるのであれば、それは「すれ違い」が起きているだけの可能性もあります。本コラムのように、お子さんの気持ちを第一に考えることが大切です。

①母親には不登校の子どもの「本音」に寄り添ってほしい

私は中3のときに不登校になりました。

もともと、学校での陰口や同調圧力を見て不安・モヤモヤ・イヤな気持ちは持っていましたが、なんとか学校には通えていました。

ですが、部活動での挫折と、関連する人間関係のもつれが直接の原因となり、不登校になったのです。

不登校になる前は活発な中学生だったので、不登校になった当初は母親も私の変化に慌てていました。

母親は私を心配して、次のように声をかけてくれていました。

  • 「なんで学校に行かないの?なんで?学校で嫌なことがあったの…?」
  • 「なんで黙ってるの?なんでもいいから教えて」

私は、今でこそ不登校になった原因を言葉にできますが、当時は自分の気持ちを伝えることができませんでした

なぜなら、「不登校の原因」を母親に伝えるためには、つらい出来事を思い出して言葉にしなければならなかったからです。

また、「不登校の原因」を自分で言葉にすると、「自分はダメな奴だ」とみじめな気持ちになりました。

そのため、本当の原因である部活のことは言わずに、「陰口や同調圧力があって、中学校がもともとイヤだった」と伝えました。

すると母親は、「そんなの学校だけじゃなくて社会にもたくさんあって、対応方法もたくさんある」と言いました。

そして、陰口や同調圧力に関する、母の職場での話(アドバイス)を続けました。

本音を話していないのは私の方で、母は「私が伝えたこと」に対して真剣に応えてくれました。

ですが当時の私は、そんな母親の言動に対して、「なんで言葉にできない思いに寄り添ってくれないんだろう…」と思っていたのです。

このように、「不登校のお子さんは、自分の気持ちを母親や大人に伝えられない場合がある」のです。

苦しい経験を言いたくない場合があります。
自分の気持ちを自分でもよくわかっていない場合もあります。
もともと自分の気持ちを言葉にすることが苦手な場合もあります。

どうか、お子さんの「本音」に寄り添ってほしいと思います。

母親がお子さんの本音に寄り添うことができれば、お子さんは前向きな気持ちになれます。

②不登校への母親の思いを伝えてほしい

不登校についての母親の思いをきちんと伝えてほしい

私の突然の不登校に向き合ってくれた母親でしたが、その「励まし方」にも私とすれ違いがありました。

母親の励まし方は、端的に言うと「学校で少しくらい嫌なことがあったって、ガマンして登校しなさい」ということでした。

当時の私はその言葉にも傷つき、「なんで私の気持ちをわかってくれないんだろう…」と感じ、母親に対して心を閉ざし気味になってしまいました。

しかし、私が大人になってから母親の「本当の意図」を知りました。

実は母親にも、中学生当時に人間関係が原因で学校に行きたくなかった経験があったのです。

結局母親は不登校にはならず、「なんとか登校を続け、つらいこともがんばれば乗り越えられる」という成功体験と自信を持つようになったそうです。

だからこそ、母親は「娘である私もつらいことを乗り越えられる、その経験が自信につながる」と思い、私に「ガマンして登校しなさい」と伝えていたのです。

この背景を知らなかった私は、ただ母親に反発していました。

もし不登校当時に、その背景や母親の本当の思いまで聞けていたら、「私のことを信じて、私のことを思ってくれている」と感じ、もっと素直に話し合ったり、頼ったりできていたと思います。

この話からお伝えしたいのは、「母親の言いたいことは、お子さんに伝わっていないことがある」ということです。

母親だからといって、誰もがうまく気持ちを表現できるわけでないでしょうし、母親自身も子どもと同様に「本音」を隠して話したいこともあると思います。

しかし、それでは母親と子どもの間で、すれ違いが生じます。

どうか、ご自分の気持ちをしっかり伝えてください

お子さんは、母親の思いをきちんと知ることで、「お母さんは自分と真剣に向き合ってくれてる」と安心して過ごせるようになり、相談などもしやすくなります。

③子どもが不登校でも母親は母親の生活を楽しんでほしい

不登校だった当時の私は、家にいても不安を覚えました。

これも、母親に関することが理由です。

次のようなことを考え、母親の顔色をうかがっていたのです。

  • 「今日も学校に行けなかった。お母さんから怒られたら嫌だなあ」
  • 「お母さんは今どんな気持ちなんだろう。怒らせないようにしなきゃ」

当時は家の中でどう行動すればいいのか、正直わかりませんでした。

しかしその一方、次のような母親に対する申し訳ない気持ちもありました。

  • 「お母さん、私のせいで、いつも不安そう…」
  • 「私のせいでお母さんの元気がなくなっていって、悲しい…」

そしてまた、次のような感謝や願いもありました。

  • 「お母さん、私のためにいろいろしてくれてありがとう」
  • お母さんはお母さんで、楽しく生きてほしい」

そんな私は、母親が生活の全ての時間で私のために苦しんでいるのを見ると、ますますどうしたらいいのかわからなくなっていきました。

つまり、「不登校のお子さんは、母親や父親もしくは兄弟姉妹に対して複雑な気持ちを持っている」ということです。

母親のサポートは、不登校のお子さんが前に進む原動力になります。

だからこそ、「複雑な気持ち」を持っているお子さんに、母親がつきっきりで(母親だけで)対応することはオススメしません

それでは母親もお子さんも疲れたりイライラしたりして、お子さんの「複雑な気持ち」がますますこじれることがあるからです。

母親は母親で生活を楽しみながらお子さんのサポートをすると、お子さんは変に気を使うことなく、今のことや将来のことを話し合えるようになります。

まとめ:子どもの不登校を母親だけで悩まないでください

子どもの不登校を母親だけで悩まないでください

これまでの内容をまとめます。

①不登校のお子さんの本音に寄り添ってください
お子さんは、母親に本音を言えないことが多いです。

母親がそんなお子さんの本音に寄り添った対応ができると、お子さんは前向きな気持ちになれます。

②お子さんに母親であるあなたの思いを伝えてください
母親であるあなたの思いがお子さんに伝わらないこともよくあります。

母親の思いをきちんと伝えることで、お子さんは安心し、相談できるようになります。

③母親は母親で、生活を楽しんでください
母親に対して複雑な気持ちを抱いているお子さんに、母親がつきっきりで面倒を見ようとすると、お互いに疲れていきます。

母親は母親で生活を楽しみながらお子さんをサポートすることで、お子さんは変に気を使わずに、今や将来のことを話せるようになります。

とは言え、これらのことを母親だけ、家族だけで行う必要はもちろんありません

また、「本音に寄り添うってどうすればいい?」「きちんと向き合うってどういうこと?」など、具体的に何をすればいいかわからないこともあると思います。

お子さんだけでなく、母親であるあなたのためにも、ぜひ専門家にご相談ください

専門家とは、不登校の親の会や、スクールカウンセラーや、フリースクールや、子ども向けメンタルクリニックなどのことです(私たちキズキ共育塾でも無料相談を受け付けています)。

専門的な知見から、それぞれのご家庭・お子さんに応じた具体的なアドバイスがもらえるでしょう。

あなたのお子さんも、そして母親であるあなたも、きっと前に進めます。

最後にもう一度、不登校になった私を見守り続けてくれた母に、改めて感謝します。

※文中の写真は、全てイメージです。

監修 / キズキ代表 安田祐輔

やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ」も運営。

【新著紹介】

『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
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KADOKAWA公式

【略歴】

2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【メディア出演(一部)】

2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

共同監修 / 不登校新聞社代表理事 石井志昂

いしい・しこう。
1982年、東京都町田市出身。NPO法人全国不登校新聞社代表。
中学校受験を機に学校生活が合わなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から2022年まで編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた。

【著書など(不登校新聞社名義も含む)】

「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること(ポプラ社)』『フリースクールを考えたら最初に読む本(主婦の友社)』『学校に行きたくない君へ(ポプラ社)』『続 学校に行きたくない君へ(ポプラ社)』

【寄稿など(一部)】

AERAdot」「プレジデントオンライン」「東洋経済オンライン」「FRaU」など多数

サイト運営 / キズキ

「もう一度学び直したい方」の勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする学習塾。多様な生徒さんに対応(不登校・中退・引きこもりの当事者・経験者、通信制高校生・定時制高校生、勉強にブランクがある方、社会人、主婦・主夫、発達特性がある方など)。授業内容は、小学生レベルから難関大学受験レベルまで、希望や学力などに応じて柔軟に設定可能。トップページはこちら。2023年7月現在、全国に10校とオンライン校(全国対応)がある。

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