不登校はずるいことではありません 誤解する背景や対処法を解説

こんにちは。生徒さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする完全個別指導塾・キズキ共育塾です。

不登校状態にあるあなたは、今、以下のような気持ちを抱えているかもしれません。

  • ネットやSNSに「不登校の人はずるい」と書かれているのを見てモヤモヤしている
  • 不登校について「自分はずるいことをしているのかも…」と罪悪感がある

また、不登校状態にあるお子さんがいる親御さんの中には、「不登校はずるい」と言う人への接し方や、そんな言葉に傷ついているお子さんへの対応がわからず、悩んでいる人もいるのではないでしょうか。

このコラムでは、「不登校はずるい」という誤解が生まれる背景や、不登校はずるくないと言える事実、「不登校はずるい」という考えの問題点などについて解説します。

このコラムが、少しでも「不登校はずるい」という言葉に悩むあなたの助けになりましたら幸いです。

私たちキズキ共育塾は、不登校状態にある人のための、完全1対1の個別指導塾です。

生徒さんひとりひとりに合わせた学習面・生活面・メンタル面のサポートを行なっています。進路/勉強/受験/生活などについての無料相談もできますので、お気軽にご連絡ください。

ゲーム依存、昼夜逆転、勉強の話、子どもにしてもいいの…? 疑問への答えが見つかるウェブメディア 不登校オンライン 不登校の親のためのオンラインコミュニティできました! 不登校の親専用 親コミュ オンラインコミュニティ

不登校はずるいことではありません〜不登校はずるいことではない3つの理由〜

前提として、不登校はずるいことではありません。

この章では、不登校はずるいことではないと言える理由について解説します。

理由①不登校はずる休みなどではない

毎日頑張って学校に行っている人からすると、不登校状態にある人に対して、「学校に行かないなんてずるい」と思うことがあるかもしれません。

また、不登校状態にあるあなたは、以下のような理由から「自分はずるいことをしているのかも…」と悩むこともあるでしょう。

  • 仮病など嘘をついて学校を休んでいる
  • 勉強せずに自分だけが怠けているように感じる
  • 「本当は学校に行けたかも…」と思う

しかし、不登校には環境や人間関係、勉強、心身の不調など、さまざまな原因があり、学校に行かないのではなく、学校に行けない状態になっていることが少なくありません。単なるずる休みなどではないのです。

また、不登校状態にある本人でも不登校の原因がわからない場合や、本人は自覚していなくても心や身体が深刻な状態になっている場合もあります。

理由②不登校は誰でもなり得る可能性がある

不登校は特別なものではなく、誰でもなり得る可能性があります。

今、「不登校はずるい」と思っている人も、何かふとしたことから不登校になる可能性があり、その時に「不登校はずるい」という考えは、自分自身を苦しめるかもしれません。

つまり、「不登校はずるい」という言葉だけで不登校を完結させようとするのは、どんな人にとっても危険なことなのです。

理由③「不登校はずるい」と感じている人も無理に学校に行く必要はない

このコラムでは、不登校はずるいことではないという立場から、さまざまな情報をお伝えしていきます。

ただし、このコラムは、「不登校はずるい」という主張や意見を否定するためのものではありません。不登校について考えるための1つの材料として、参考にしていただけますと幸いです。

また、今、無理をして学校に行っていて「不登校はずるい」と感じている人は、無理に学校に行く必要はありません。学校に行くこと以上に、あなたが無理をせずに安心していられる選択をすることが大切です。

学校に行きたくない時の対処法については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

不登校とは?

不登校とは、なんらかの心理的な要因や交友関係や家庭環境を含む社会的な背景などが複雑に絡み合った結果、長期間にわたって登校しない、または登校したくてもできないでいる状態のことです。

不登校という状態は、文部科学省によって以下のように定義されています。

何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者をのぞいたもの

(参考:文部科学省「不登校の現状に関する認識」

不登校には、学業のプレッシャーやいじめ、家庭の問題など、さまざまな要因が関与します。そのため、不登校の原因は、不登校になった人の数だけ存在するのです。

不登校の定義や要因などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

「ずるい」の意味とは?

ずるいという言葉は、自分のことを優先してルールや他人を無視した振る舞いをする様子を指す際に使われます。具体的には、以下のように説明されています。

自分の利益を得たりするために、要領よく振る舞うさま。また、そういう性質であるさま。

(参考:goo辞書「狡い(ずるい) とは? 意味・読み方・使い方」

また、ずるいという言葉は、近年、羨ましい気持ちを表す言葉として、ポジティブな意味合いで使われることがあるそうです。具体的には、以下のとおりです。

要領のよさをうらやむ気持ちや、かえって感心する気持ち

(参考:goo辞書「狡い(ずるい) とは? 意味・読み方・使い方」

「不登校はずるい」と言う人は、「学校に行かなければならないというルールを破っている」「毎日頑張って学校に行っている人を無下にしている」「不登校状態にある人は得をしていて、そうではない自分は損をしている」などの考えから、ずるいという言葉を使っているのかもしれません。

しかし、こちらでも解説したとおり、不登校にはさまざまな原因があり、学校に行きたくてもいけない人がたくさんいます。つまり、不登校はずるいことではないのです。

「不登校はずるい」という誤解が生まれる背景

この章では、「不登校はずるい」という誤解が生まれる背景について解説します。

背景①学校に行くことが当たり前だという考え

1つ目の背景は、学校に行くことが当たり前だという考えです。

「学校に行くことは当たり前」「学校には必ず行かなければならない」という考えを持つ人からすると、学校に行かない不登校状態にある人は、ルールを破っていると感じるでしょう。

また、不登校状態にある人が、ルールを守ることよりも自分自身を優先していると感じ、「不登校はずるい」という考えにいたることもあるかもしれません。

しかし、近頃は不登校状態にある児童・生徒が増加しており、多様な学びの機会を子どもたちが得られるよう国も動いています。つまり、学校に行くことは当たり前ではなくなりつつあるのです。

詳しくは、こちらで解説しています。

背景②学校に行かないことを羨ましく思う気持ち

2つ目の背景は、学校に行かないことを羨ましく思う気持ちです。

何らかの理由で、本当は学校に行きたくないけれど我慢をして毎日学校に行っている人からすると、学校に行っていない不登校状態にある人を羨ましく思うことがあるのかもしれません。

しかし、学校は無理をしたり我慢をしたりしてまで、通う必要はありません。また、小学校と中学校は義務教育と言われますが、学校に行くことは義務ではありません。

詳しくは、こちらで解説しています。

背景③親の教育が悪いという考え

3つ目の背景は、親の教育が悪いという考えです。

「不登校はずるい」という誤解を持つ人は、以下のように不登校の原因は親にあると考える人もいます。

  • 親が子どもを甘やかしてるから不登校になるんだ
  • 子どもを放ったらかしにしているから不登校になるんだ

実際に、親御さんに関連することが不登校の原因になることはあります。例えば、家庭の生活環境の急激な変化や親子関係をめぐる問題、家庭内の不和などです。

こういった状況を傍から見ている第三者からすると、「不登校はずるい」という考えに結びつくかもしれません。

しかし、これらの原因はどんな家庭にも起こり得ることであるのはもちろん、親も人間であり不完全な部分があるのは仕方のないことです。

また、どんな育て方をしても、どんな子どもでも、不登校になる可能性があります。そのため、親が悪いと責めても、何の解決にもならないのです。

とはいえ、親御さんの中には、自分自身が不登校の原因になっているのではないかと不安な人もいるかもしれません。

子どもが不登校になりやすい親の特徴や家庭環境などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

不登校はずるくないと言える4つの事実

この章では、不登校はずるくないと言える4つの事実について解説します。

事実①学校に行きたくてもいけない人はいる

1つ目は、学校に行きたくてもいけない人はいるということです。

実際に、学校に行きたくても行けない体調や精神状態になることがよくあります。

例えば、不登校を経験したキズキ共育塾の生徒さんに睡眠習慣について尋ねると、「不登校になった当初は、布団に入っても朝まで眠れませんでした」という答えがよく返ってきます。

不登校状態にある人は、学校での過度なストレスによって睡眠が阻害されている可能性があるのです。また、学校に行かない生活によって、生活習慣が悪化し睡眠が阻害されることで、朝から昼まで眠かったり、精神的に落ち込んだりすることも考えられます。

そうなると、朝に起きたくても起きられず、学校に行きたいと思っていてもいけなくなるのです。

事実②学校に行くことは義務ではない

2つ目は、学校に行くことは義務ではないということです。

小学校や中学校は義務教育なので、「学校に行くのが義務である」と思っている人は多いでしょう。

しかし、ここで使われている義務とは、子どもが学校に行く義務ではありません。

義務があるのは、子どもではなく親や保護者なのです。

義務教育の義務とは、「親や保護者が、子どもが教育を受けられる環境を整える義務」という意味です。

つまり、子どもには学校に通って教育を受ける権利はありますが、必ず行かなければならない義務があるわけではありません。

事実③学校に行くことが当たり前ではなくなりつつある

3つ目の事実は、学校に行くことが当たり前ではなくなりつつあるということです。

文部科学省は2023年3月31日に、誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策、いわゆるCOCOLOプランを取りまとめ、その中では学校以外のさまざまな学べる環境を整えるとしています。(参考:文部科学省「「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」(令和5年3月31日)」

  • 学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)
  • 校内教育支援センター(スペシャルサポートルーム等)
  • 教育支援センター
  • NPOやフリースクール
  • 夜間中学
  • 公民館、図書館等の社会教育施設

このように、国が学校に行くことだけを推奨するのではなく、さまざまな学びの場を作ることを目指して動いているのです。

実際に、学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)は全国に35校、フリースクールは全国で474の団体・施設、教育支援センターは約63%の自治体で設置されているなど、不登校状態にある人が学べる環境が整えられつつあります。(参考:文部科学省「学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)の設置者一覧」、文部科学省「不登校に関する調査研究協力者会議フリースクール等に関する検討会議合同会議(19回)配布資料」、文部科学省「フリースクール・不登校に対する取組」

事実④不登校=楽な選択ではない

4つ目の事実は、不登校=楽な選択ではないということです。

「不登校はずるい」と思う人の中には、以下のような理由から「不登校は楽をしているからずるい」と考えている人もいるでしょう。

  • 不登校状態であれば家で好きなことができる
  • 学校に行かないということは勉強をしなくてもいい

しかし、その考えは誤解です。不登校状態にある場合、自分自身で勉強を進めなくてはならなかったり、勉強のための教材などを探したりしなければなりません。また、高校受験では、内申点の関係上、進学先が限られる可能性も考えられます。

もちろん、学習塾や家庭教師などを利用して勉強を進めることは可能ですが、学校のように毎日の多くの時間、授業を受けられるわけではありません。そのため、自分自身で考え、試行錯誤しながら勉強を進めなければならないのです。

このように、不登校には楽ではない側面がたくさんあり、それらを乗り越えるための努力が必要になるのです。

「不登校はずるいかもしれない」という不安を和らげる4つの方法

この章では、「不登校はずるいかもしれない」という不安を和らげる方法について解説します。

方法①気持ちの切り替え方法を実践する

1つ目の方法は、気持ちの切り替え方法を実践することです。

ネットやSNSでは、不登校について「ずるい」「甘えているだけだ」などと、ネガティブな意見や主張が多くあります。そういった内容を目にすると、気分が落ち込んだり、「自分はずるいことをしているのかも…」と不安になったりすることもあるでしょう。

しかし、気持ちを切り替えられずにいると、ネガティブな考えが頭をめぐり、ますます気持ちが落ち込んでいくため、気持ちを切り替えることが大切です。

気持ちの切り替え方法は、以下のようにたくさんあるため、自分に合った方法を探してみてください。

  • 運動や散歩をする
  • 呼吸法を取り入れる
  • 音楽を聴く、歌を歌う
  • 本や漫画を読む
  • バラエティー番組やコメディ映画などを見て笑う
  • ゲームをする・ゲームの実況動画を見る
  • かわいいものに触れる
  • 湯船につかって身体をあたためる
  • いつもより早く寝る
  • 周囲の人に相談する

気持ちを切り替える方法については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

方法②保健室登校や別室登校をする

2つ目の方法は、保健室登校や別室登校をすることです。

学校に行っていないことに対して、「ずるいことをしているような気がする…」という場合は、保健室登校や別室登校などを検討してみましょう。

保健室登校や別室登校は、不登校への罪悪感を和らげられることに加えて、学校とのつながりを保てたり、学校生活のリズムを維持できたりするなどのメリットがあります。

一方で、保健室登校や別室登校を行う場合、学校での人目が気になったり、教室に行けないことへの後ろめたさを感じたりする可能性もあります。

そのため、メリットと注意点の両方を踏まえて検討するようにしましょう。

保健室登校については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

方法③学校以外の居場所をつくる

3つ目の方法は、学校以外の居場所をつくることです。

「不登校はずるいかもしれない」と不安を感じている人の中には、ずっと家にいることへの罪悪感や自分と同じ境遇の人が周りにいない心細さなどを感じている人もいるでしょう。

そんな場合は、学校以外に自分が安心して通える居場所を作ることがオススメです。例えば、以下のような場所が、居場所になり得ます。

  • フリースクール
  • 教育支援センター(適応指導教室)
  • 学校内フリースペース
  • 学習塾や習い事
  • 通信制高校
  • 不登校特例校
  • 夜間中学

特に、フリースクールや教育支援センター(適応指導教室)には、不登校状態にある人が多く通っているため、「不登校はずるいかもしれない」という気持ちや心細さが和らぐかもしれません。

不登校中の居場所については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

方法④家で勉強を始める

4つ目の方法は、家で勉強を始めることです。

「不登校はずるいかもしれない」と不安を感じている人の中で、勉強をしていないことへの罪悪感がある人には、この方法がオススメです。

不登校状態にあると、どのように勉強すればいいかわからず困ることもあるかもしれませんが、以下のように家で勉強する方法はたくさんあります。

  • 自主学習
  • 通信教育・映像授業
  • オンライン・リモート型個別指導
  • 家庭教師

また、外出することに抵抗がない場合は、以下のような勉強方法も考えられます。

  • 学習塾
  • フリースクール
  • 教育支援センター(適応指導教室)

それぞれの勉強方法にメリットや注意点があることはもちろん、どの勉強方法が適しているかについても個人差があります。

そのため、まずは気になる勉強方法を試し、自分に合うものを探してみましょう。

不登校中の勉強方法については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

「不登校はずるい」と言う人への対処法5選

この章では、「不登校はずるい」と言う人への対処法について解説します。

対処法①不登校の背景などを説明する

1つ目の対処法は、不登校の背景などを説明することです。

「不登校はずるい」と言う人の中には、不登校について詳しく知らなかったり、どういう背景で不登校になるのかを想像することが難しかったりする人も少なくありません。

そのため、不登校の原因や背景、不登校に関する客観的なデータなど、不登校への理解が深まる情報を伝えてみてください。

不登校への理解が深まると、不登校への考え方が変わり、「不登校はずるい」という考えが変わっていくかもしれません。

ただし、不登校に限らずどんなことであっても、人それぞれ考えは異なります。無理に相手を説得しようとしたり、考えを変えさせようとしたりすると逆効果になることもあるため、伝え方には注意しましょう。

また、万が一、相手の考えが変わらない場合も、あなた自身が落ち込む必要はありません。

対処法②「ずるい」と言う人の意見にも耳を傾ける

2つ目の対処法は、「不登校はずるい」と言う人の意見にも耳を傾けることです。

こちらで解説したとおり、「不登校はずるい」と思っている人の中には、以下のように学校に行かないことへの羨ましさを抱いている人もいます。

  • 本当は自分だって学校を休みたい
  • 学校を休めていてうらやましい
  • 自分は休みたくても休めない

相手がこのような気持ちを持っているようであれば、「そうだったんだ」「頑張っているんだね」と相手の気持ちに耳を傾けて、寄り添いましょう。

そうすることで、相手は自分の気持ちを吐き出すことができ、「不登校がずるい」という気持ちが和らいでいくかもしれません。

ただし、相手があなたを傷つけるようなことを言ったり、攻撃的な言動が多く見受けられたりする場合は、無理をして相手の意見に耳を傾ける必要はありません。

対処法③専門家の意見を紹介する

3つ目の対処法は、専門家の意見を紹介することです。

「不登校がずるい」と思っている人は、不登校は一個人のわがままだと考えている可能性があります。しかし、実際は不登校は国全体が支援に取り組むほどのもので、一個人だけの問題ではありません。

このことを理解してもらうためには、不登校の専門家の意見や国が出している不登校支援の方針などを紹介することが、有効かもしれません。

また、これらのことを紹介することで、不登校への理解が深まることもあるでしょう。

加えて、「不登校はずるい」という人が、家族などの近しい間柄であれば、専門家や支援機関との相談の際に同席してもらい、直接専門家の意見を聞く機会を設けるのもよいかもしれません。

ただし、こちらも「そこまでは踏み込まれたくない」「子どもが同席を拒否している」といったことがあれば、無理に行う必要はありません。

対処法④自分の体験をシェアする

4つ目の対処法は、自分の体験をシェアすることです。

「不登校はずるい」と言う人の多くは、不登校を経験したことがない可能性が高いと考えられます。

不登校を経験したことがない人にとって、不登校状態にある人の心境を想像しづらく、自分が想像できる範囲で不登校について考え、「不登校はずるい」と言っていることもあるのです。

そのため、あなた自身の体験をシェアして、不登校状態にあることは楽なことではないということを伝えましょう。また、学校に行けないことへの不安や不登校状態であることへの罪悪感など、あなた自身の心境を伝えてみてもよいかもしれません。

ただ、自分自身のつらい体験を人に話すことは簡単なことではありません。ましてや、自分の状況に批判的な意見を持つ人に話すとなると、大きな負担になる可能性もあります。そのため、無理のない範囲で実践するようにしましょう。

対処法⑤一定の距離をとる

5つ目の方法は、一定の距離をとることです。

あなたがどんなに一生懸命、相手と向き合ったとしても、相手の考えが変わらず「不登校はずるい」と言い続けることがあるかもしれません。

そういった場合、無理に相手の考えを変えようとする必要はありません。無理に相手の考えを変えようとすると相手が反発し、あなたを傷つけるような発言をする可能性があります。

「何とかして理解してほしい」「『不登校はずるい』という考えを改めてほしい」などと思う気持ちはとてもよくわかりますが、あなた自身を守るためにも一定の距離を置きましょう。

物理的に距離をおけない場合は、「世の中にはいろんな考えの人がいる」と割り切ったり、不登校に対して理解のある人を見つけたりして、できる限り負担を軽減できるようにしてみてください。

「不登校はずるい」という考えの5つの問題点

この章では、「不登校はずるい」という考えの5つの問題点について解説します。

問題点①不登校への偏見を生む

1つ目の問題点は、不登校への偏見を生むことです。

こちらでも解説したとおり、ずるいという言葉はネガティブなイメージにつながりやすい言葉です。

そのため、「不登校はずるい」という考えや発言は、不登校自体にネガティブな印象を与え、場合によっては不登校がルールを無視した自分勝手な選択肢であるといった、偏見につながる恐れがあります。

そして、そういった偏見は、不登校状態にある子どもたちに降りかかり、さまざまな障壁になる可能性も考えられるのです。

問題点②不登校を適切に理解できない

2つ目の問題点は、不登校を適切に理解できないことです。

不登校にはさまざまな原因があり、不登校になる原因は1人ひとり異なります。また、不登校から次の一歩に進むための過程も人それぞれで、学校に復帰する人もいれば、別の居場所を見つける人もいます。

このように、不登校と一括りに言っても、その実態は個人によって大きく異なります。

不登校を「ずるい」という言葉だけで完結させようとすることは、不登校の原因や背景、不登校から次の一歩に進むための方法などを考えるための機会を奪い、不登校を適切に理解できなくなる恐れがあります。

問題点③不登校状態にある子どもへの支援が遅れる

3つ目の問題点は、不登校状態にある子どもへの支援が遅れることです。

不登校状態にある子どもたちは、どんな原因であれ、何らかの支援が必要です。

しかし、「不登校はずるい」という考えがあると、「不登校は自己責任でただのわがままだから、支援なんていらない」という考えに結び付く恐れがあります。

支援が遅れれば、昼夜逆転の生活になったり、精神的な負担が大きくなったりするなど、次の一歩に進みづらくなり、子どもの人生に大きな影響を与える可能性があるのです。

問題点④不登校状態にある子どもの自信を失わせる

4つ目の問題点は、不登校状態にある子どもの自信を失わせることです。

不登校状態にある子どもは、ただでさえ学校に行けないことに罪悪感を抱いています。そんな中で、第三者から「不登校はずるい」と言われれば、深く傷つき、「自分はずるいことをしているんだ…」と自信を失うかもしれません。

そうなると、心身の調子が悪くなったり、自宅学習を思うように進められなくなったりすることもあるでしょう。

また、自分の将来に対して自暴自棄になったり、不登校からの次の一歩を踏み出せなかったりするなど、さまざまな悪影響が出ることが考えられるのです。

問題点⑤不登校や子どもが抱えている悩みの解決にならない

5つ目の問題点は、不登校や子どもが抱えている悩みの解決にならないことです。

ここまで解説してきた問題点からもわかるように、「不登校はずるい」という考え方は、不登校への偏見を生んだり、不登校状態にある人を追い詰めたりするなど、実態を悪化させる可能性があります。

また、不登校について「ずるい」という言葉だけで完結させると、そこから原因や解決策を考えたり模索したりすることが遠ざかっていく可能性もあるのです。

何らかの理由によって、「不登校はずるい」と考える気持ちが生まれることはあるかもしれません。

しかし、その考え方は、不登校や子どもが抱えている悩みの解決にならないということを心にとどめておくことが大切です。

まとめ~不登校はずるいことではありません~

繰り返しにはなりますが、不登校はずるいことではありません。

今、不登校状態にあるあなたは、「不登校はずるい」と見聞きすると、罪悪感や不安が頭によぎるかもしれません。しかし、自分の気持ちや体調を無視し、無理をして学校に行けば、心や身体の調子を崩す可能性が高まります。

そのため、無理をせずに自分自身が安心できる選択をしましょう。また、学校以外にも居場所や勉強できる場所、方法はたくさんあるので、自分に合ったものを探してみてください。

自分1人では見つけられない場合や不安な場合は、支援機関を頼るのがオススメです。専門的な視点から、あなたに合った選択肢の提案、アドバイスなどを得られるはずです。

不登校状態にあることに罪悪感を持たず、周りの人を頼りながら次の一歩を踏み出しましょう。

Q&A よくある質問

「不登校はずるい」という考えの背景には、何があるのでしょうか?

以下が考えられます。

  • 学校に行くことが当たり前だという考え
  • 学校に行かないことを羨ましく思う気持ち
  • 親の教育が悪いという考え

詳細については、こちらで解説しています。

「不登校はずるい」と言われた時の対処方法を教えてください。

以下が考えられます。

  • 不登校の背景などを説明する
  • 「ずるい」と言う人の意見にも耳を傾ける
  • 専門家の意見を紹介する
  • 自分の体験をシェアする
  • 一定の距離をとる

詳細については、こちらで解説しています。

監修 / キズキ代表 安田祐輔

やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ」も運営。

【新著紹介】

『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
Amazon
KADOKAWA公式

【略歴】

2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【メディア出演(一部)】

2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

共同監修 / キズキ相談担当 半村進

はんむら・すすむ。1982年、茨城県生まれ。東京大学文学部卒。
小学校時代から転校を繰り返し、運動ができないこと、アトピー性皮膚炎、独特の体形などから、いじめの対象になったり、学校に行きづらくなっていたことも。大学に入学してようやく安心できるかと思ったが、病気やメンタルの不調もあり、5年半ほど引きこもり生活を送る。30歳で「初めてのアルバイト」としてキズキ共育塾の講師となり、英語・世界史・国語などを担当。現在はキズキの社員として、不登校・引きこもり・中退・発達障害・社会人などの学び直し・進路・生活改善などについて、総計1,000名以上からの相談を実施。

【執筆記事・インタビューなど(一部)】

日本経済新聞 / 朝日新聞EduA / テレビ東京 / 不登校新聞 / 通信制高校ナビ

サイト運営 / キズキ

「もう一度学び直したい方」の勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする学習塾。多様な生徒さんに対応(不登校・中退・引きこもりの当事者・経験者、通信制高校生・定時制高校生、勉強にブランクがある方、社会人、主婦・主夫、発達特性がある方など)。授業内容は、小学生レベルから難関大学受験レベルまで、希望や学力などに応じて柔軟に設定可能。トップページはこちら。2024年10月現在、全国に11校とオンライン校(全国対応)がある。

Share
学習スタイル診断 つづけられて、効果がでる!自分にピッタリの学習スタイル診断してみませんか? いますぐ診断する