ASDがあると不登校になる? 原因や親ができる対応を解説
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こんにちは。生徒さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする完全個別指導塾・キズキ共育塾です。
あなたは、「ASDのある人が不登校になるのはなぜ?」と思ったことはありませんか?以下のような疑問や不安を抱えている人は少なくありません。
- ASDと不登校は関係ある?
- ASDのある子どもに親ができることは?
このコラムでは、ASDと不登校の関連性とASDのある子どもが不登校になる原因、不登校になったASDのある子どもに親ができる対応、不登校になったASDなどの発達障害のある子どものこれからの選択肢、不登校になったASDなどの発達障害のある人の体験談、発達障害やASDについて解説します。
不登校状態にあるASDのある人はもちろん、今後のために知っておきたい人もぜひ最後までご覧ください。
私たちキズキ共育塾は、ASDのある小学生のための、完全1対1の個別指導塾です。
生徒さんひとりひとりに合わせた学習面・生活面・メンタル面のサポートを行なっています。進路/勉強/受験/生活などについての無料相談もできますので、お気軽にご連絡ください。
目次
ASDと不登校の関連性
この章では、ASDと不登校の関連性について解説します。
ASDは不登校の要因になりえる
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ASDのある子どもはそうでない子どもたちと比べて、物事のとらえ方や感じ方が異なることなどが要因となり、不登校になるケースがあります。
特に、ASDのある小学生・中学生の場合、ASDの特性の影響で登校拒否をする傾向が高いという調査結果が出ています。
調査によると、不登校状態にある生徒のうち、小学生は約31.4%、中学生は約54.5%がASDのある生徒でした。(参考:明治安田こころの健康財団「再配信 発達障害の子どもにみられる不登校」)
ただ、ASDの診断を受けた小学5年生の子どもが面談を重ねたことで、徐々に出席率が上がっていったというデータもあるため、解決できないことではありません。(参考:畠山有紀子「不登校を示すアスペルガー症候群児童の学校適応に向けた支援」)
不登校になったASDのある子どもに親ができる対応については、こちらをご覧ください。
ASDの二次障害で不登校になることもある
ASDではもともとの主要な症状のほかに、暴力や社会不安障害、不登校などの二次障害が発生する可能性があります。
二次障害を引き起こすと社会適応が難しくなる事例も見られるため、不登校になる原因や適切な対応を知っておきましょう。
ASDのある子どもが不登校になる原因3選
この章では、ASDのある子どもが不登校になる原因について解説します。
原因①対人関係やコミュニケーションが苦手
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1つ目は、対人関係やコミュニケーションが苦手なことです。
ASDのある子どもは社会的コミュニケーションに苦手意識を抱えているため、学校生活でもうまくいかないケースがあります。(参考:発達障害ナビポータル「自閉スペクトラム症」)
学校では集団行動が重要なため、コミュニケーションをうまく取れないために不登校になることがあるのです。
原因②感覚過敏がある
2つ目は、感覚過敏があることです。
感覚過敏とは、聴覚・視覚・触覚・嗅覚・味覚の五感の一部、または複数からの刺激を過度に感じることで、苦痛や不快感が生じている状態のことです。(参考:イルセ・サン・著、枇谷玲子・訳『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』、岡田尊司『過敏で傷つきやすい人たち HSPの真実と克服への道』)
例えば、感覚過敏があると以下のようなことが過剰に気になります。(参考:生駒市「『感覚過敏』をご存知ですか?」)
- 蛍光灯のちらつき
- 時計の針の音や他人の咳払い
- 汗などの臭い
- 他人に触れられること
- 特定の味や食感
- 痛みや寒暖差
周りが気にならないようなことが気になるため、変わり者扱いされることがあり、不登校になるケースがあるのです。
原因③こだわりが強い
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3つ目は、こだわりが強いことです。感覚過敏も関係してきますが、特定のことが過剰に気になるため、こだわりも強い傾向にあります。
例えば、机の上の文房具の並べ方や行動のパターンなどです。周りはそこまで気にしていないことにこだわるため、うまく馴染めずに不登校になることがあります。
不登校になったASDのある子どもに親ができる対応11選
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不登校になったASDのある子どもに親ができる対応は、主に以下のとおりです。
なお、前提として、お子さんの不登校のことや発達障害のことは、親だけで対策を行う必要はありません。専門家や支援機関に相談するようにしましょう。
- 子どもを休ませる
- 子どもの話を聞く
- 無理に話を聞き出そうとしない
- 家を居心地のよい場所にする
- 生活リズムを崩さないようにする
- 学校と連絡を取る
- 学校復帰以外の選択肢を考える
- 発達障害の特性について学ぶ
- ペアレント・トレーニングや療育などを受ける
- 親の会に参加する
- 勉強が気になるなら、発達障害に理解のある学習塾などを利用する
不登校になった発達障害のある子どもに親ができる対応については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
不登校になったASDのある子どものこれからの選択肢5選
不登校になったASDのある子どものこれからの選択肢は、主に以下のとおりです。
- 学校復帰する
- 学校以外の場所で勉強する
- 転校する
- 高卒認定試験を受けて進学する
- 就職する
不登校になった発達障害のある子どものこれからの選択肢については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
不登校になったASDのある人の体験談
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筆者は、訪問支援のボランティアでAくんと出会いました。Aくんは、小学6年生のときにADHDとASDの診断を受けています。
私とAくんとの出会いは、夏休みの過ぎた10月頃、彼が中2のときでした。
Aくんは、その年の春頃に、部活動の顧問とのコミュニケーションのすれ違いがありました。
それをきっかけに、それまでも抱えていた学校生活でのストレスが爆発し、不登校になり、家に引きこもっていました。
Aくんは剣道部に所属しており、その部では活動中は裸足になることがルールでした。
Aくんは、感覚過敏の一種である触覚過敏の特性がありました。
そのため、学校の体育館の床のザラザラした表面がまるで針のように尖って感じたため、靴下をはいて部活動をしていたそうです。
しかし、ある日、靴下をはいて部活動をしていたことを部活の顧問に大きな声で叱責されたそうです。
Aくんはルールが絶対と考える顧問の口ぶりに納得がいきませんでした。また、Aくんは、大きな音も苦手です。
Aくんは衝動的に、部活の道具を窓に投げつけ、窓ガラスを割りました。
こうした一連の行動について、部活の顧問やほかの先生に叱責されたことで、不登校になったのです。
Aくんの不登校の背景には、発達障害の特性である感覚過敏や衝動性、そして周囲がそうした特性を理解していない環境がありました。
これらは、Aくんの学校での生きづらさにつながっていました。
私はそんなAくんと出会い、最初は一緒に彼の好きなゲームをしたり、アニメを一緒に見たり、ご飯を一緒に食べたりしました。
毎週家に訪問する中で、少しずつ関係性を作っていきました。
訪問支援で触れ合う中でも、彼の生きづらさは垣間見えました。
例えば、一緒に話しているときに、外からサイレンの大きな音がするだけでイライラしてものを壊すなどです。
車のサイレンがASDの特性である過敏な聴覚を刺激したことで、ADHDの特性である衝動性が行動に表れているのです。
私は、Aくんは過敏な感覚が緩和されれば生きづらさも軽減されると考えました。
そこで、例えば音については、次のように、刺激に過剰に反応しなくていいような対策を一緒に考えました。
音への対策
- 周りの音を聞かなくてもよいときはイヤーマフをする
- うるさい場所に行くときはあらかじめ音楽プレーヤーやイヤホンなどをして、周囲の音を緩和する
衝動的な行動を減らすためには、次のように働きかけました。
衝動性への対策
- 衝動的な行動をしかけたけど、しなかったときにその場面で彼を誉める
そしてAくんは、対策を試行錯誤すると同時に、次のような方法で、様々な角度から自身の発達障害による特性と向き合うようになっていきました。
- 病院に通いはじめる
- 放課後等デイサービスでSST(ソーシャルスキルトレーニング)の訓練を受けはじめる
- スクールカウンセラーのカウンセリングを受けはじめる
対策や通院などを行っても、発達障害の特性は完全にはなくなりません。ですが、それらによってAくんは、少しずつ、確実に、生きやすくなっていきました。
そんな生活が続き、Aくんは中学に復学することはありませんでした。しかし、中学卒業後には、自分の特性や将来なども考えた上で、ある通信制高校に進学することができました。
通信制高校を選んだのは、自分のペースで勉強したい、趣味などにも多くの時間を費やしたいという思いからです。
現在のAくんは、大学進学を検討しています。
自分の特性と向き合える・付き合えるようになったからこそ、将来に向かって前向きに行動できるようになったのだと思います。
Aくんの例からは、次のことが言えると思います。
- 発達障害のお子さんは、特性による生きづらさを抱えている
- 現代の科学では、発達障害の特性も生きづらさも、完全になくせるわけではない
- しかしAくんのように、日常的な対策であれ、医学的な方法であれ、発達障害の特性と向き合うことで生きづらさを少しずつ減らしていくことはできる
まずは、発達障害のお子さんには、何らかの特性、特性による生きづらさがあることを理解した上で、対策を考えましょう。
親ができる対策は、こちらで解説します。
発達障害とは?
発達障害とは、脳の機能的な問題や働き方の違いにより、物事の捉え方や行動に違いが生じることで、日常生活および社会生活を送る上で支障が出る、生まれつきの脳機能障害のことです。(参考: American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、こころの情報サイト「発達障害(神経発達症)」、NHK福祉ポータル ハートネット「そもそも「発達障害」って?|大人の発達障害ってなんだろう? – 大人の発達障害」、宮尾益知・監修『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』、松本卓也、野間俊一・編著『メンタルヘルス時代の精神医学入門 ーこころの病の理解と支援ー』、福西勇夫・山末英典・監修『ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 精神の病気 発達障害編』)
発達障害は主に、以下の3つの診断名に分類されます。
- ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)
- ASD(自閉スペクトラム症/広汎性発達障害)
- LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害)
同じ診断名でも、人によって多様な特性が現れるのが発達障害の特徴です。また、いずれかの発達障害のある人は、他の発達障害が併存している可能性もあります。
参考記事:キズキビジネスカレッジ(KBC)「発達障害とは?生まれつき? ADHD、ASD、LD/SLDを解説」
ASD(自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)とは?
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ASD(自閉スペクトラム症/広汎性発達障害、Autism Spectrum Disorder)とは、人とのコミュニケーションなどに困難が生じる発達障害の一種のことです。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、e-ヘルスネット「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について」、CDC「Autism Spectrum Disorder (ASD) 」、厚生労働省「No.1 職域で問題となる大人の自閉症スペクトラム障害」、福西勇夫、福西朱音『マンガでわかるアスペルガー症候群の人とのコミュニケーションガイド』)
かつて使用されていた以下の診断名・分類は、ASDという診断名・分類に統合されています。
- アスペルガー症候群
- 自閉症
- 高機能自閉症
- 広汎性発達障害(PDD)
それぞれ別の発達障害として、診断基準も異なっていましたが、2013年に行われた『DSM-5』の改訂の際に、厳密に区分するのではなく、地続きの=スペクトラムな障害として捉える現在のASDに変更されました。
ただし、変更前の診断名・分類が、法令や病院、日常会話などで現在も使用されることがあります。また、かつてアスペルガー症候群などと診断された人が、現在のASDという名称を認知していないこともあります。
参考記事:キズキビジネスカレッジ(KBC)「ASD(自閉スペクトラム症/広汎性発達障害)とは? 特性や診断基準を解説」
参考:学校休んだほうがいいよチェックリストのご紹介
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2023年8月23日、不登校支援を行う3つの団体(キズキ、不登校ジャーナリスト・石井しこう、Branch)と、精神科医の松本俊彦氏が、共同で「学校休んだほうがいいよチェックリスト」を作成・公開しました。LINEにて無料で利用可能です。
このリストを利用する対象は、「学校に行きたがらない子ども、学校が苦手な子ども、不登校子ども、その他気になる様子がある子どもがいる、保護者または教員(子ども本人以外の人)」です。
このリストを利用することで、お子さんが学校を休んだほうがよいのか(休ませるべきなのか)どうかの目安がわかります。その結果、お子さんを追い詰めず、うつ病や自殺のリスクを減らすこともできます。
公開から約1か月の時点で、約5万人からご利用いただいています。お子さんのためにも、保護者さまや教員のためにも、ぜひこのリストを活用していただければと思います。
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」はこちら(LINEアプリが開きます)
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」作成の趣旨・作成者インタビューなどはこちら
- 「学校休んだほうがいいよチェックリスト」のメディア掲載・放送一覧はこちら
- 【オリジナル書籍プレゼント】学校外で友だちができるBranchコミュニティ(Branch公式LINEが開きます)
私たちキズキでは、上記チェックリスト以外にも、「学校に行きたがらないお子さん」「学校が苦手なお子さん」「不登校のお子さん」について、勉強・進路・生活・親子関係・発達特性などの無料相談を行っています。チェックリストと合わせて、無料相談もぜひお気軽にご利用ください。
まとめ〜ASDなどの発達障害による不登校は、専門機関に相談しましょう〜
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ASDは不登校の要因になりますが、決して悪いことではありません。
学校へ復帰する以外にも、転校したりフリースクールなどで勉強したりする選択肢もあります。
親にできることをしながら専門機関に相談して、子どもに最適な方法を提案してあげられるようにしましょう。
Q&A よくある質問