
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
キズキ共育塾の講師で、精神保健福祉士の国家資格を持つ西村です。
あなたは、お子さんのADHD特性に向き合う上で、次のようなお悩みをお持ちではありませんか?
ADHDの特性がある子どもの勉強について悩まれる親御さんは、決して少なくはありません。
ADHDという言葉は、以前よりも目にするようにはなってきていますが、まだまだその実態や正しい情報が世間に浸透しているとは言えないのではないでしょうか。
そのため、どうしたらいいのかわからないという方や、無理解な人の言葉や視線につらい思いをされている方も多いのではないかと思います。
今回は、精神保健福祉士としての私の知識や、キズキ共育塾の事例を踏まえて、次の2点をお伝えします。
ADHDの特性に悩むお子さんの実例や、親御さんの対応方法を知ることで、お子さんとよりよい未来へ歩んでいきましょう。
目次
まず、「ADHDとは何か」を見ていきたいと思います。
ADHDや発達障害について、もうたくさん調べられている場合は、次章「ADHDの特性とうまく付き合い、勉強に集中する7つの方法」にお進みください。
ADHD(注意欠如多動症)は、一般的には「発達障害」という名前で知られている脳の機能障害の分類の一つです。
ADHD以外の発達障害には、自閉症という名前で知られるASD(自閉スペクトラム症)や、学習障害という名前で知られるLD(限局性学習症群)などがあります。
なお、発達障害は現在、医学的には神経発達症と呼ばれるようになっています。しかし、まだ新しい名前が十分に認知されていないということもありますので、この記事では「発達障害」の表記で統一させていただきます。
発達障害における「脳の機能障害」とは、脳の機能のバランスにばらつきがある、つまり突出している機能や十分に発達していない機能があるといった状態のことを指します。
そのばらつきが大きく、学校や家庭での生活の妨げとなる場合に、医師の診察のもと、発達障害という診断がなされます。
発達障害は生まれつきのもので、親の育て方や環境など、後天的な原因でなるものではありません。
また、お子さんがADHDであったとしても、「親御さんの育て方や関わり方が悪かった」ということでは決してありません(参考:黒澤礼子『新版 発達障害に気づいて・育てる完全ガイド』)。
これからADHDについて理解を深め、対応方法を知り、支援者もいるということを知っていただくことで、お子さんと一緒に、安心して未来に歩んでいく一助としていただけたらと思います。私の持つ精神保健福祉士という資格も支援職のひとつです。
発達障害の中でも特にADHDの特性として、次のようなことが挙げられます。(参考:発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)「発達障害とは」
お子さんは、学校や家庭で、次のようなことがありませんでしょうか?
上記の傾向は、上で挙げたADHDの3つの特性がどのように現れるかで非常に大きな個人差があります。
なお、挙げたような傾向があればADHDであると断言できるものではもちろんありません。
「ADHDかどうか」を診断できる資格を持っているのは、医師だけです。
上記のような傾向が強く、学校での勉強や日常生活に難しさを感じられているようであれば、以降の情報も参考にしていただきつつ、医療機関や支援機関に相談することをオススメします。
ADHDのお子さん(と親御さん)がしばしばぶつかる課題のひとつとして「勉強への集中が難しいこと」が挙げられます。
実際、親御さんから、次のようなことをお聞きすることがあります。
「勉強を始めたと思っても、すぐに別のことに気を取られてしまう」
「勉強をするために集中してじっと座っていることができない」
「言葉で説明しても、なかなか理解してくれない」
そういった方に向けて、ご家庭で実践できる勉強の集中法を、7つご紹介していきます。
とは言え、「親」は、ADHDの専門家でも勉強の専門家でもありません。もっと言うと、子育ての専門家でもありません。
そして、お子さんのADHDの特性や、ADHDに関係のない性格などは、一人ひとりによって異なります。
ご紹介する方法は、「お子さんに合うものがあれば採用する」「うまくいくかどうかお子さんとともに取り組む」「ADHDのお子さんでも勉強に集中することはできるという安心材料にする」とご理解いただいた上で、「支援機関を利用する」といった形で参考にしていただきたいと思います。
ADHDの方は、一般的に、言語情報(耳で聞く情報)よりも視覚情報(目で見る情報)を理解することが得意と言われています。
ですので、視覚情報をより有効に活用するため、勉強を行う際には、文字だけを使用するのではなく、絵、記号、映像などを使用すると、集中や理解が容易になることが期待されます。
例えば、次のような方法があります(参考:西井重超『精神疾患に関わる人が最初に読む本』)。
視覚情報が理解しやすいということは、勉強の予定も、口頭で伝えたり頭の中で考えたりするのではなく、リスト化して書き出す方が理解しやすいということになります(参考:西井重超『精神疾患に関わる人が最初に読む本』)、厚生労働省「注意欠如・多動性障害(ADHD)」)。
予定を把握できるようになれば、集中もしやすくなるでしょう。
休憩をとるタイミングもあらかじめ予定に入れておくと、より効果的です。
また、リスト化することで、もしお子さんが予定を忘れても、後々に本人がリストを見て、確認することができるという利点もあります。
お子さんとしても、「予定を忘れても、リストを見て確認すれば大丈夫だ」と安心感を感じられるのではないでしょうか。
この「予定をリスト化する」という勉強集中法については、将来的に自分で計画を立てるときや時間管理をするときのための練習にもなります。そういった観点からもおすすめの勉強法です。
ADHDの人は、視覚情報に敏感であるがゆえに、勉強中にいろいろなものが視野に入ってくると、そっちに気が取られるという傾向があります(参考:西井重超『精神疾患に関わる人が最初に読む本』)。
対策として、仕切り板などを使って勉強机を囲い、勉強中に勉強内容以外のことができるだけ視野に入ってこないようにすることで、集中力を途切れにくくすることができます。
仕切り板の用意が難しければ、「勉強するときに壁に向かう」だけでも効果があります。
私たちキズキ共育塾は、発達に特性のあるお子さんのための完全個別指導塾です。進路/勉強/受験/生活などについて、無料相談ができます。中学/高校/大学など合格実績多数。お気軽にご連絡ください。
校舎一覧を見る(オンライン校は全国対応)ADHDのお子さんが勉強する際、たくさんの問題に一気に取り組もうとすると、長時間の集中が難しく、どうしても途中で別のことに注意が向きます(参考:厚生労働省「注意欠如・多動性障害(ADHD)」)。
そこで、細かく区切りをつけて学習し、「短く集中することを繰り返す」という形にすることで、勉強に集中しやすくなります。
「一問解く」という短期の目標を連続して設定するようなイメージです。
「問題を解く」のではなく、「暗記する」「教科書をしっかり読む」などの場合は、「長時間の勉強」を目標とせず、「10〜20分くらいの短時間を1セットにして区切りをつけ、セット数を重ねる」というものがあります。
問題と時間のどちらを目標にするかは、科目や「現在必要な勉強」によって異なってくるでしょう。
また、キズキ共育塾の事例としては、「一つの科目を、長時間または複数単元にわたって勉強し続ける」のではなく、「一つの科目の勉強に短期の目標(単元・問題数・時間など)を設定して、それが終わったら別の科目の勉強に変える」を繰り返すことで集中力を保っている生徒さんもいました。
いずれにせよ、「短く集中することを繰り返す」「短期の目標達成を積み重ねる」ことができれば、少しずつ勉強を習得していくことができると思います。
この形を身につけておくと、お子さんがご自身で勉強されるようになった際にも活かすことができる可能性は高いでしょう。
続いての勉強法は、「勉強するのに適した環境を用意する」です(参考:西井重超『精神疾患に関わる人が最初に読む本』)。
方法3とも似ていますが、方法3は特に「視覚」だけに注目しています。
今回の方法では、「音」「温度」「におい」など、お子さんにとって刺激になるものをできるだけ減らすということが大切になります。
ここからご紹介する方法は、キズキ共育塾の事例に基づきます。
じっと机に向かうことが難しい場合は、その特性を変えようとするのではなく、その特性があるままでできる勉強法を取り入れることで、集中しやすくなります。
そもそも勉強とは、机に向かってしなくてはならないというものではありません(試験や授業の際にはある程度そうする必要はありますが)。
「じっとしておかなくてもできる勉強法」がないか、お子さんや支援者と一緒に考えてみましょう。
キズキ共育塾の生徒さんの例としては、「教科書、単語帳や自作の単語カード、歴史年表などを手に持って、歩き回りながら音読や黙読をする」というものがあります。
ADHD以外の方にもある程度当てはまるかもしれませんが、疲労が溜まっているときには、勉強に集中しづらいものです。
体育の授業があった日、部活が長かった日、緊張する出来事があった日、昼間によく遊んだ日、(高校生年齢なら)アルバイトをした日などが当てはまる可能性があります。
疲労が表れるのは1日だけとは限らず、さまざまなことを原因に、もう少し長い期間で溜まっていきます。
そんなときは、なかなか勉強に集中できないのです。
逆に言うと、できるだけお子さんが疲労しないように努めることで、勉強に集中しやすくなります。
何がお子さんの疲労につながるのか、専門家とも話しながら、対策していきましょう。
なお、疲労がある日にも、単語カードを眺めるなどの簡単な勉強には取り組めることもあります。
一方、勉強前に軽めの運動をすることで勉強に集中しやすくなる、という生徒さんもいましたので、「疲労につながらない程度の運動」も、試しに勧めてみてはいかがでしょうか。
私たちキズキ共育塾は、発達に特性のあるお子さんのための完全個別指導塾です。進路/勉強/受験/生活などについて、無料相談ができます。中学/高校/大学など合格実績多数。お気軽にご連絡ください。
フォームで問い合わせ以上、「ADHD特性とうまく付き合う、おすすめの勉強集中法7つ」でした。
これらの勉強法が、あなたのとお子さんのお役に立てることを心から願っています。
しかし、次のような方もいらっしゃるかもしれません。
「試してみてもなかなかうまくいかない」
「試したことがあるものも多かった」
「もう手を尽くしていて途方に暮れている」
そんな方は、「方法自体がお子さんに合っていない」可能性もありますが、「方法をうまく実施できていない」可能性もあります。
繰り返すとおり、「親」は、発達障害・勉強・子育て、いずれの専門家でもありません。
これまでお子さんに真摯に向かい合ってきた親御さんを責めるつもりは決してありません。
ですが、医療機関や支援機関を頼ることで、「よりお子さんに合った方法・実施の仕方」が見つかります。
ぜひ、スクールカウンセラー、医療機関、市区町村や発達障害情報・支援センターなどに相談し、支援者とお悩みを共有していただけたらと思います。
その上で、「すでに相談しているけど、うまくいかない」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれませんね。
支援機関も支援方法もたくさんありますので、お子さんに合わないところがあっても、落ち込まないでいただきたいと思います。
お手間はかかるかもしれませんが、今の相談相手に加えて、お子さんに合う新たな支援機関も探してみましょう。私たち、キズキ共育塾でも無料相談を承っています。
ここからは、親御さんがADHDのお子さんと関わる際に、意識していただきたいポイントについてお伝えします(参考:発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)「基本的な支援原則」、厚生労働省「注意欠如・多動性障害(ADHD)」)。
ADHDのお子さんと関わるときには、次の二つが大切です。
ADHDのお子さんは、学校や社会の場などで、その特性ゆえに悩み、自信や自尊心にダメージを負う機会が多くあります。
そのため、親御さんが、支援者と一緒に、お子さんの自信、自尊心をサポートすること、特性とうまく付き合っていくスキルを育むことを支えることが大切なのです。
スキルとは、例えば、お子さんなりの集中方法、予定の立て方、自分の感情への対処の仕方などのことです。
関わり方の具体的な例を、発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)の「保護者向けハンドブックひな型」から、(一部編集した上で)引用します。
ポジティブな関わり方をしましょう。
伝え方の工夫
環境の調整
以上は一例です。このような関わり方をすることで、お子さんは勉強の集中以外のことも含めてより生きやすくなっていきます。
とはいえ、現実的には、全ての物事をお子さんに合わせることは難しいこともあるでしょう。
ですので、できる限りの範囲で、短い文章で具体的に、いろいろな「理由」を伝えるようにされるとよいと思います。
そして、お子さんの得意な部分を自信につなげ、苦手な部分はその子なりの努力として認めるようにしましょう。そうすることで、お子さんの自信や自尊心につながります。
そういった関わり方の中で、生活や勉強で必要となる情報やスキルを丁寧に教えて、お子さんが成功体験を積んでいくことが、お子さんのためにも、親御さんのためにもなります。
ただ、繰り返すとおり、親御さんだけで対応する必要はありません。
できるだけ早めに、医療機関や支援機関に相談していただきたいと思います。
そうすることで、それぞれのお子さんに応じた、「状況をよりよくしていく手段」を、専門的な知識を持った支援者とともに考えていくことができるはずです。
最近では国のサポートも増えてきていて、「発達障害情報・支援センター」というものが全国にあります。また、ADHDや発達障害を診ている病院も増えています。
次のようにお悩みかもしません。
「こんなことで相談していいのかな」
「自分の子どものことだから、自分ががんばらないと」
「誰にも相談できない…」
このように、お悩みを親御さんだけ・ご家庭だけで抱えこむ必要はありません。
ぜひ、専門家、支援者を頼ってください。私たちキズキ共育塾は、発達に特性のあるお子さんのための完全個別指導塾です。進路/勉強/受験/生活などについて、無料相談ができます。中学/高校/大学など合格実績多数。お気軽にご連絡ください。
LINEで問い合わせ以上、ADHDには3つの特性(不注意、多動・多弁、衝動性)があることと、特性を意識した勉強の集中法について、お伝えいたしました。
読む中で気づかれたかもしれませんが、勉強法も関わり方も、親御さん、ADHD当事者、支援者の人たちがこれまでに残された知恵の集合です。
そういった人たちから学び取れることは、「ADHDであっても、他の人と変わらず前を向いて歩んでいくことができる」ということだと思います。
改めて、ADHDは医学的な診断名であり、「お子さんがADHDかどうか」は、医師にしか診断できません。
しかし、ADHDだと思われる特性で悩まれているのであれば、ご家庭で抱え込む必要はありません。
スクールカウンセラー、医療機関、市区町村など、相談先はたくさんありますので、そうした専門家・支援者を利用してください。
専門家や支援者を頼ることは、お子さんはもちろん、保護者であるあなたにとっても、「悩み」や「つらさ」を解消し、楽しく歩んでいく助けになるはずです。
お子さんにとっても、あなたにとっても、よりよい未来につなげていきましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
この記事が、あなたのお役に立ったたなら幸いです。
さて、私たちキズキ共育塾は、お悩みを抱える人のための個別指導塾です。
ADHD(発達障害)のある生徒さんにも、それぞれの特性に寄り添い、一人ひとりに合わせた授業を行うことが可能です。
キズキ共育塾の概要をご覧の上、少しでも気になるようでしたらお気軽にご相談ください。
ご相談は無料です。また、親御さんだけでのご相談も承っています。
/Q&Aよくある質問
ADHDの特性とうまく付き合い、勉強に集中する方法を知りたいです。
ADHD特性のある子どもを伸ばすために、保護者にできることはありますか?