発達障害のある勉強嫌いな子どもがいる親ができる対応6選
キズキ共育塾の講師で、精神保健福祉士の国家資格を持つ西村です。
あなたは、発達障害の(傾向が見られる)お子さんが勉強嫌いで、お悩みではありませんか?
または、お子さんが勉強が嫌いなのは発達障害(の傾向)のためかも、とお考えかもしれませんね。
次のように、多くの親御さんが、「発達障害と勉強」について悩まれています。
- 「どうしてこんなに勉強が嫌い・苦手なのだろう?」
- 「苦手を克服して、勉強に取り組む方法はないのだろうか」
- 「他の子どもたちとうちの子どもは、何か少し違う気がする。発達障害、というものに当てはまるのではないか」
今回は、精神保健福祉士で塾講師でもある私の経験も踏まえ、「発達障害とは何か」「勉強嫌いを克服していく方法」などをお伝えいたします。
「発達障害=勉強が嫌い・できない」というわけではありません。
お子さんの特性を知り、特性を考慮しながら接していくことで、お子さんが持つ、勉強へのマイナスイメージを軽減していくことは可能です。
また、お子さんの発達障害・勉強については、親御さんだけで抱え込む必要はありません。
適切に専門家や支援者を頼りましょう。
以下の内容が、支援者や勉強法を見つけ、お子さんのみならず親であるあなたのお悩み解決の一助となれば幸いです。
目次
発達障害の3分類とそれぞれの特性
最初に、発達障害の3分類と特性を紹介します。(参考:村上由香『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本』)
少し長いので、すでにご存知であれば、次章「小中学生の6.5%が発達障害と推計」まで進んでいただいてOKです。
まず、お子さんが発達障害かどうか判断ができるのは、発達障害についての専門知識を持つ医師のみです。
まだ診断を受けていないお子さんにつき、ご紹介する特性があると思う(ないと思う)からといって、「発達障害である(ない)」と親御さんが判断することはできません。
下記は参考としてご覧いただいた上で、お子さんの発達障害について気になるようでしたら、必ず医師の診断を仰ぐようにしましょう。
発達障害は、先天的な脳の機能の偏りによる
発達障害とは、先天的な脳の機能の偏りによって、社会生活やコミュニケーションに困難が生じている状態のことです。
2013年に刊行されたアメリカ精神医学会の定める診断基準「DSM-V」によると、主な発達障害として以下の3つを挙げることができます。
- ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- ASD(自閉症スペクトラム障害)
- LD(学習障害)
それぞれに「特性」があるのですが、その特性は、発達障害でない人にもある程度は見られるものです。
その見極めが難しいため、医師以外による判断ができないのです。
中には、「特性と、特性による困難自体はあるものの、診断基準を満たすほどではない」という、「(発達障害)グレーゾーン」と呼ばれる人もいます。
また、特性は、「どれか1つだけがわかりやすく現れる」というよりも、「いくつかの特性が様々な現れ方をする」という場合が多いです。
分類①ADHD
ADHDは、正式名称を注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)という、発達障害の一種です。
特性の程度や現れ方には個人差がありますが、ADHDには大きく分けて「不注意」と「多動・衝動性」の2つの特性が見られます。
具体的な困難としては、以下が挙げられます。
・忘れ物や記入漏れなどのミスが多い
・確認作業がうまくいかない
・整理整頓が苦手で物を失くすことが多い
・気が散りやすく、貧乏ゆすりなど常に身体を動かしていないと落ちつかない
・他人の意見に耳を傾ける前に発言したり行動したりする
・優先順位をつけることが苦手で、場当たり的になりやすく、締切を守りづらい
分類②ASD
ASD(Autism Spectrum Disorder、自閉症スペクトラム障害)とは、社会性・コミュニケーション・想像力の3つにおいて特性が目立つ発達障害です。
具体的には、以下のような特性が目立ちやすいと言われています。
・場の状況や上下関係に気が回りづらく、TPOに合わせた行動が難しい
・話を聞いていないと誤解されやすい
・質問の意図、身振り、比喩、冗談などを理解しづらい
・報告、連絡、相談がうまくできない
・決まった順序に強いこだわりを見せる
・予定が変わるとパニックになりやすい
・暗黙のルールなど明示されてない決まりに疎い
その他にも、ASDには聴覚過敏などの「感覚過敏」が併存する子が少なくありません。
分類③LD(学習障害)
LD(学習障害)とは、「読む・聞く・話す・書く・計算する・推論する」といった6つの能力の1つ以上に、習得や使用の困難がある発達障害です。
「読む・聞く・話す・書く・計算する・推論する」のうち、どれに困難を覚えるのかは、各々の特性により異なるため一概には言えません。
しかし、「特定の情報処理が難しい」という困難に共通点があります。
例えば、読字障害の場合は「教科書の文章がうまく読めない」、書字障害の場合は「文字を書いたり覚えたりすることが苦手」です。
LDは、それらの特性から、初等教育を受ける段階で気づかれることが多いです。しかし、ADHDやASDと比べると世間での認知度が低いこと、LDでない人には理解しにくい特性であるということから、気づかれない場合もあります。
たとえば、「書体によって文章の読みやすさが著しく変わる」「字を書くことにすさまじい労力を使う」といった「感覚」は、LDでない人には理解することが難しいかもしれません。(参考:厚生労働省「学習障害(限局性学習症)」)
小中学生の6.5%が発達障害と推計
文部科学省による令和4年度の調査では、通常の学校に在籍しており、「学習面又は行動面で著しい困難を示す」小・中学生、つまり「発達障害の可能性がある小・中学生」は8.8%いると推計されています。(参考:文部科学省「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果(令和4年)について」)。
つまり、「30人の学級には、2人以上の発達障害の可能性がある子どもがいる」ということです。
ただし上記推計は、医師の確定判断ではなく教員の判断に基づくものです。
教員では気づかないレベル・タイプの発達障害の(傾向がある)子どもは、この数値にはおそらく入っていないでしょう。
発達障害の子どもは多く、あなたの子どもも、まだ診断を受けていなくてもその可能性はある、ということです。
これはあなたを不安にさせるための情報ではなく、発達障害の(傾向がある)人たちが多いということは、その「特性への対策」もたくさんあると安心してもらうための情報です。
これまでも、発達障害当事者・家族・支援機関などが、発達障害の特性にどう対処していくことができるか、という知恵を積み上げてきています。
「発達障害=勉強が嫌い・苦手」ではない
発達障害があるからといって、「絶対に勉強が嫌い・苦手」なわけではありません。
例えば最近では、発達障害者を支援する仕組みを持つ大学もよく見かけます。
例えば、法政大学では支援機器の使用、座席の確保、追加資料の作成など、早稲田大では修学支援、個別面談など、京都精華大学では履修相談・進路相談・スケジュール管理などのサポートがあります。
これはつまり、発達障害があっても大学に在学している人(=大学受験に合格する学力を持つ人、大学の授業を理解できる人)が珍しくないこと、「発達障害=勉強が嫌い・苦手」というわけではないことを表しています。
ただし、発達障害の特性によって勉強が嫌いな子どもがいるのは事実
発達障害=勉強嫌いとは限らないのですが、その特性によって、勉強を嫌い・苦手・難しいと感じる子どもがいるのは事実です。
そして、親御さんが発達障害の特性を知らないままに子どもを見ていると、「できるはずなのに、やらない、怠けている」と見えることもあります。(参考:岡田俊『発達障害のある子と家族のためのサポートBOOK 小学生編』)
「できるはずなのに」というのは発達障害ではない人の理屈で、発達障害の人にとっては「できるはず」ではないのです。
本人としては怠けているつもりはないのに、勉強しても成績が上がらない、勉強をしようと思っていないわけではないのにできない、自分に合った勉強法が見つからない…だから勉強が嫌い(苦手)、ということがあるのです。
発達障害ではない人にとっての「普通のやり方」は、発達障害者にとってはとてもハードなやり方である場合がしばしばある、ということを理解していただければ幸いです。
ただ、これを逆に言うと、「それぞれに向いた勉強法が見つかれば、勉強嫌い(苦手)は克服できる」となりますので、ご安心いただきたいと思います。
発達障害のお子さんの勉強について、親御さんに留意していただきたい4つのこと
発達障害のお子さんの勉強について、親御さんには以下の4点を気に留めていただきたいと思います。
- 大前提として、親だけで抱え込まない(支援者を頼る)
- 子どもの発達障害の特性と、特性によって勉強のどういう点で苦労しているのか理解しようとする
- お子さんに合った勉強法を模索する
- お子さんが自分の苦労・困りごとを伝えることができるように、安心して話せる関係を大切にする
②〜④は、お子さんのために役立つものですが、「言うのは簡単だけど。やるのは難しい」ものです。
また、親御さんは、発達障害の専門家でも、勉強の専門家でもありません(もっと言えば、子育ての専門家でもありません)。
ですのでぜひ、①の大前提として、支援者を積極的に頼っていただきたいと思います。
相談先は、スクールカウンセラー、医療機関、発達障害者支援センター、市区町村の担当課など、たくさんあります。
公的な相談先以外にも、NPO法人、親の会、発達障害に理解の深い塾など、民間の支援団体もあります。
そうした専門家・支援者を頼ることで、お子さんに合った勉強法が見つかります。
「どんな支援者がいるのかわからない、どこに相談したらいいのかわからない」のであれば、まずはお住まいの自治体のウェブサイトや総合窓口で確認することをオススメします。
発達障害の特性による「勉強嫌い」に対応した、オススメの勉強法6選
この章では、発達障害で勉強嫌いのお子さんにオススメの勉強方法を、分類・特性別の「勉強嫌い」に対応する形でお伝えします。
ただし、発達障害の特性は人それぞれであり、下記の対応法も「いつでも全員に通用する」というものではありません。
特性の有無・強弱によって、向いている勉強法は一人ひとりで異なります。
下記は、参考として、また「発達障害で勉強嫌いでも、向いた勉強法はある(勉強を身につけることができる)」という安心材料としてご覧いただいた上で、「あなたのお子さん」のための方法の発見や実践は、ぜひ、後述する支援者を頼ってください。
①「ADHD・不注意」による勉強嫌い
不注意の特性による勉強嫌いの原因としては、次のようなものがあります。
- 勉強を計画どおりに進めることが難しい
- 問題を解くときに、見落としなどが多く見られる
①「勉強を計画どおりに進めることが難しく、勉強が嫌い」な場合は、親御さんとお子さんが、一緒に「余裕を持ったスケジュール表を作成する」という対処法が考えられます。
勉強というものは、定期的に、ある程度決められた順序で学習していくことが(特に学習初期は)必要とされます。
ADHDの不注意の特性がそれに不向きなため、学びにくさや「勉強嫌い」に繋がることがあるのです。
そして、発達障害の子どもは、一般的に言語情報(耳で聞く情報)より視覚情報(目で見る情報)を理解することが得意と言われています。(参考:西井重超『精神疾患に関わる人が最初に読む本』、厚生労働省「注意欠如・多動性障害(ADHD)」)
そのため、スケジュール表という、目で見ることができ、いつでも確認しなおすことのできるツールがあると、勉強の助けとなることが期待されます。
疲労がたまると学習への集中力は落ちるので、休憩をとるタイミングもあらかじめ予定に入れておくと、より効果的と言えるでしょう。
②「問題を解くときに、見落としなどが多く見られる」という困難については、「確認を習慣化していくこと」が効果的と言えるでしょう。(参考:鈴木慶太・飯島さなえ『知ってラクになる! 発達障害の悩みにこたえる本』
見直しができていないと、解けたつもりの問題が解けていない、問題の意図を理解できていないなどから、「勉強嫌い」につながります。
「見直し」の方法そのものと、「見直しの習慣化」を教えていきましょう(算数・数学などの計算問題では「検算」という言い方もできます)。
見直しを習慣づけて、子どもが自分で気がつけるようになるまでには、ある程度の時間がかかると思いますし、根気のいる作業ではあります。
宿題をしている様子などを見ながら、子どもが見直し忘れているようであれば、直接的に言及するのではなく、「何か忘れてないかな?」というように本人が気づくきっかけをつくってください。
②「ADHD・多動・衝動性」による勉強嫌い
多動・衝動性による困難からくる勉強嫌いの原因(勉強の難しさ)としては、次のようなものがあります。(参考:厚生労働省「注意欠如・多動性障害(ADHD)」)。
- 長時間勉強に集中できない
- 席にじっと座っていることが難しい
- すぐに別のことに気をとられてしまう
①「長時間勉強に集中できない」ために勉強が嫌いという場合は、長時間ではなく、細かく区切りをつけて学習し、「短く集中することを繰り返す」という形にすることで、勉強に集中しやすくなります。
「一問解く」という短期の目標を連続して設定するようなイメージです。
キズキ共育塾の事例としては、「一つの科目を、長時間または複数単元にわたって勉強し続ける」のではなく、「一つの科目の勉強に短期の目標(単元・問題数・時間など)を設定して、それが終わったら別の科目の勉強に変える」を繰り返すことで集中力を保っている生徒さんもいました。
いずれにせよ、「短く集中することを繰り返す」「短期の目標達成を積み重ねる」ことができれば、少しずつ勉強を習得していくことができると思います。
この形を身につけておくと、お子さんがご自身で勉強されるようになった際にも活かすことができる可能性は高いでしょう。
②「席にじっと座っていることが難しい」ために勉強が嫌いな場合は、動きながらできる勉強法を取り入れる、という対処法があります。
そもそも勉強というのは座ってしなければならないというものではありません。
むしろ、英単語の暗記などは、動きながら、発音しながら覚えた方が暗記効率が上がる、という人もいるほどです。
「じっとしておかなくてもできる勉強法」がないか、お子さんや支援者と一緒に考えてみましょう。
キズキ共育塾の生徒さんの例としては、「教科書、単語帳や自作の単語カード、歴史年表などを手に持って、歩き回りながら音読や黙読をする」というものがあります。
③「すぐに別のことに気をとられてしまう」ために勉強が嫌いな場合は、壁や仕切り板などを使う方法があります。(参考:西井重超『精神疾患に関わる人が最初に読む本』)
多動・衝動性の特性があるお子さんは、視覚情報に敏感であるがゆえに、勉強中にいろいろなものが視野に入ってくると、そっちに気が取られるという傾向があります。
視界に他のものが入ってこないようにすることで、他のものに気を取られにくくなり、勉強に集中しやすくなる、ということが期待されるのです。
③「ASD・社会性」による勉強嫌い
社会性における特性からくる勉強嫌いの原因(勉強の難しさ)としては、次のようなものがあります。
- 先生の話を集中して聞くことができない
- うまく質問をすることができない
- 会話のキャッチボールが苦手
いずれも、親御さんや支援者との会話のキャッチボールの練習を重ねていき、コミュニケーションスキルを習得していくという対処法があります。
コミュニケーションスキルを身につけていくためには、次のような方法があります。(参考:岡田俊『発達障害のある子と家族のためのサポートBOOK 小学生編』)
- こちらの話についてどのように思っているか折にふれて確認する
- すぐに子どもの話を聞けない時は、理由を明快に伝えて待ってもらい、待つ練習をする
- 子どもに質問をしてもらって、こちらが答えるのを待って聞く練習をする
④「ASD・コミュニケーション」による勉強嫌い
ASDに由来するコミュニケーションにおける特性からくる勉強嫌い(勉強の難しさ)としては、次のようなものがあります。
- 口頭での指示を理解することが難しい
- 比喩や抽象的な概念を理解することが難しい
授業で言われていることがわからない…という状況は、勉強嫌いに直結するでしょう。
ともに、絵や記号、映像など、視覚的な情報(目で見る情報)を利用する、という対処法が考えられます。
そうすることで、一般的に発達障害の特性と言われる「言語情報(耳で聞く、字を読む)よりも視覚情報(目で見る情報)を理解することが得意」という状況に対応することが可能です。
この方法は、労働の場面でも、厚生労働省の「障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン」にも記されており、比較的導入しやすいということもあって、様々な支援施設で活用されています。(参考:厚生労働省※PDF「障害者差別解消法福祉事業者向けガイドライン」
具体的な例としては、次のような方法があります。(参考:西井重超『精神疾患に関わる人が最初に読む本』)。
- 算数の計算を、ボールや、ホールケーキの絵を使って理解する
- 英単語を絵と一緒にして覚える
- その日の予定を簡単に図解する
- 簡単な意思を絵や図で示した、意思表示カードを使う
⑤「ASD・想像力」による勉強嫌い
ASDに由来する、想像力における特性からくる勉強嫌いの原因(勉強の難しさ)としては、次のようなものがあります。(参考:岡田俊『発達障害のある子と家族のためのサポートBOOK 小学生編』)
- 学校などで、急な予定変更(当日の時間割変更、遠足の雨による中止など)にパニックになりやすい
- 席替えや教室の掲示物が変わると、落ち着きがなくなる
- 周りの音や匂い、暑さや寒さが大きな刺激になり、勉強に集中できない
「遠足の変更」などは、直接的には勉強には関係しないかもしれませんが、「学校嫌い」には通じるものがあり、学校嫌いから勉強嫌いに繋がる可能性があるでしょう。
①「急な予定変更にパニックになりやすい」②「席替えや教室の掲示物が変わると、落ち着きがなくなる」については、学校に協力を求めたり、親御さんにできることを考えたりして、変更があるとき(ありそうなとき)は、お子さんの心の準備ができるように、できるだけ早く予告する、という方法があります。
その際は、状況がわかるように、遠まわしではない表現で、具体的に伝えることが大切です。
例えば、遠足の日よりも前に、「晴れたら遠足、雨が降ったら普段どおりの授業になる」ということを、絵や文字なども使ってわかりやすく説明するとよいでしょう。
しかし、「どうなるのか」という不安がおさまらず、どうしても落ち着くことができない子どももいると思います。
そういう子どもには、何が何でも無理やりに変更に従わせようとせず、学校や支援者に協力を求めて、「子どもが落ち着ける場所で待機させる」「教室にはいるけれど別の課題をする」など、できるだけ子どもの意思を尊重した対応ができるようにすることも、有用な対処法となると思います。
私自身、キズキ共育塾で働く中で、発達障害の(傾向がある)生徒さんが「何かの変更」に伴ってパニックになった場合、落ち着くことを強要したり焦らせるようなことはせず、生徒さんの意思をできる限り確認しながら、落ち着ける時間をつくるような対応を心がけています。
③「周りの音や匂い、暑さや寒さが大きな刺激になり、勉強に集中できない」という困難は、「感覚過敏」という特性が原因となっていることが多いです。
苦手な環境で勉強に取り組まざるを得ない状況は、勉強嫌いに繋がるでしょう。
この場合には、「お子さんにとって、勉強するのに適した環境を用意する」ことが求められます。(参考:西井重超『精神疾患に関わる人が最初に読む本』)。
「音」に関しては、周りの生活音を減らすことに加えて、耳栓やイヤーマフといったものを使用することが考えられます。
「温度」に関しては、ご家庭での空調調節に加えて、勉強可能な図書館や市民センターなどを利用されるのもよいのではないでしょうか。
「におい」に関しては、マスクをする、お子さんがお好きなにおいのするものを用意しておく、などが考えられます。
⑥「LDの各特性」による勉強嫌い
LDの場合、「読む・聞く・話す・書く・計算する・推論する」といった6つの能力の1つ以上に、習得や使用の困難があります。
どれも勉強に必要な能力であり、その困難が勉強嫌いに直結することもあります。
ここでは「読む・聞く・話す・書く」の困難への対処法をお伝えしたいと思います。
- 「読む」ことに対する困難
→聴覚を使った勉強をする(読み上げ機能がある学習教材を利用する、リスニング音源があるものを使用する、話して聞かせる形で勉強する、など) - 「聞く」ことに対する困難
→視覚を使った勉強をする(絵や図、記号や映像を使った学習、動画学習など) - 「話す」ことに対する困難
→筆談や、簡単な意思表示カードを使用しながら勉強する。本人が話したいようであればしっかり待つようにする - 「書く」ことに対する困難
→タブレット、スマホ、PCなどの使用をする
基本的には、お子さんが苦手とする能力を、他の部分の能力で補うイメージです。
本人の意思を聞き、どのような対処がお子さんにとってもっとも快適かを確認することが大切です。
実際、私がキズキ共育塾で働く中でも、「書く」ことに対する困難がある生徒さんには、ノートやメモは全て、「書く」のではなく、「スマホで写真撮影」にしていました。
「学校では授業中にスマホを使うことはよくないとされてきたかもしれませんが、キズキ共育塾での授業ではいつでもスマホを使ってノートを取って大丈夫ですよ」とお伝えすると、安心した様子でした。
LDの特性があると、その特性が周りの人に理解されず、長い間つらい思いを抱えていることも少なくありません。
親御さんと支援者で理解者となり、理解者を増やしていくことが、お子さんの勉強嫌い、ひいては生きづらさの解消につながると思います。
「勉強」に限らず、発達障害の子どもための、保護者の関わり方のポイント
最後に、特に「勉強」に限らず、親御さんが発達障害のお子さんと関わる際に意識していただきたいポイントについてお伝えします。(参考:発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)「基本的な支援原則」)
発達障害のお子さんと関わるときには、次の二つが大切です。
- お子さんが、自分に自信・自尊心が持てるように関わること
- お子さんが、自分の特性と付き合っていくスキルを身につけていくこと
発達障害のお子さんは、学校や社会の場などで、その特性ゆえに悩み、自信や自尊心にダメージを負う機会が多くあります。
そのため、親御さんが、(支援者と一緒に、)お子さんの自信、自尊心をサポートすること、特性とうまく付き合っていくスキルを育むことを支えることが大切なのです。
スキルとは、例えば、お子さんなりの集中方法、予定の立て方、自分の感情への対処の仕方などのことです。
関わり方の具体的な例を、発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)の「保護者向けハンドブックひな型」から、(一部編集した上で)引用します。
・できなかったことを叱るのではなく、できたことを褒めましょう
・「それはダメ」と否定するのではなく、どうするとよいかを伝えましょう
・短い文章で、具体的に伝えましょう
・写真や絵などで示しながら伝えましょう
・1日の活動の流れや、予定の変更などについて事前に伝え、見とおしを持てるようにしましょう
以上は一例ですが、このような関わり方をすることで、お子さんは(勉強の集中以外のことも含めて)より生きやすくなっていきます。
とは言え、現実的には、全ての物事をお子さんに合わせることは難しいこともあるでしょう。
ですので、できる限りの範囲で、短い文章で具体的に、いろいろな「理由」を伝えるようにされるとよいと思います。
そして、お子さんの得意な部分を自信につなげ、苦手な部分はその子なりの努力として認めるようにすると、お子さんの自信や自尊心につながります。
そういった関わり方の中で、生活や勉強で必要となる情報やスキルを丁寧に教えて、お子さんが成功体験を積んでいくことが、お子さんのためにも、親御さんのためにもなります。
お子さんが、自信・自尊心を保ち、自分の特性と付き合っていくスキルを身に着けることで、発達障害の特性も活かしながら「自分の世界を楽しむ」といったことができるようになっていきます。
ただ、繰り返すとおり、親御さんだけで対応する必要はありません。
支援者を頼ることで、それぞれのお子さんに応じた、「状況をよりよくしていく手段」を、専門的な知識を持った支援者とともに考えていくことができるはずです。
最近では国のサポートも増えてきていて、「発達障害者支援センター」というものが全国にありますし、発達障害を診ている病院も増えています。
「発達障害者支援センター」では、幼児から成人まで、保健、医療、福祉、教育、労働における相談・支援を行っています。
明確な診断があっても、グレーゾーンでも、子どもの「特性」に悩みを抱えるようであれば、子どもの今後の生きやすさのため、そして親であるあなたのためにも、スクールカウンセラー、医療機関、支援機関、市区町村、民間の支援団体などを積極的に頼っていただけたらと思います。
「こんなことで相談していいのかな」
「自分の子どものことだから、自分ががんばらないと」
「誰にも相談できない…」
「子どもの勉強のことは自分の家庭の中でなんとかしないと…」
と思われていらっしゃる親御さんも多いのですが、遠慮する必要はありません。
ぜひ、専門家、支援者を頼ってください。
最後に〜勉強を、嫌いものから興味あるものに変えていきましょう〜
発達障害の特性によって、勉強を嫌いになったお子さんはいらっしゃいます。
ですが、ご紹介したように、対応もたくさんあります。
スクールカウンセラー、医療機関、市区町村、発達障害者支援センター、民間の支援団体など、相談先はたくさんありますので、そうした専門家・支援者をぜひ頼ってください。
そして、あなただけでなく、支援者も交えたチームで、お子さんの勉強法や生活の工夫を考えていき、勉強を嫌いなものから興味あるものに変えていきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事が、少しでもあなたのお役に立ったなら幸いです。
さて、私たちキズキ共育塾は、お悩みを抱える方々のための個別指導塾です。
発達障害の(傾向が見られる)生徒さんにも、一人ひとりの特性に向き合った上での支援を行います。
無料相談も承っており、ご相談いただければ、「あなたのお子さん」のための具体的なお話ができると思います。
キズキ共育塾の概要をご覧の上、少しでも気になるようでしたらお気軽にご相談ください(ご相談は無料です。また、親御さんだけでのご相談も承っています)。
/Q&Aよくある質問
発達障害の子どもの勉強について、親が気をつけるべきことを知りたいです。
- 大前提として、親だけで抱え込まない(支援者を頼る)
- 子どもの発達障害の特性と、特性によって勉強のどういう点で苦労しているのか理解しようとする
- お子さんに合った勉強法を模索する
- お子さんが自分の苦労・困りごとを伝えることができるように、安心して話せる関係を大切にする
発達障害で勉強嫌いな子どもに対応した勉強法を知りたいです。