通信制高校とは? 選び方やオススメの通信制高校を解説
こんにちは。生徒さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする完全個別指導塾・キズキ共育塾です。
高等学校卒業(高卒)の肩書きを得るには、全日制高校だけでなく、定時制高校や通信制高校に通うという選択肢もあります。
通信制高校への進学を検討しているあなたは、以上のような疑問をお持ちではありませんか?
- 通信制高校はどのような仕組みなのか?
- 通信制高校は自分に合っているのか?
- 通信制高校の選び方が分からない…
このコラムでは、通信制高校の概要や単位の修得方法、卒業要件、全日制高校と定時制高校との違い、入学・転入・編入できる時期、入学試験の特徴、就職率・進学率、メリットとデメリット・注意点、選ぶポイントについて解説します。
あわせて、サポート体制が充実している通信制高校や大学受験に向けた勉強指導が充実した通信制高校を紹介します。
私たちキズキ共育塾は、通信制高校への進学を検討している人のための、完全1対1の個別指導塾です。
生徒さんひとりひとりに合わせた学習面・生活面・メンタル面のサポートを行なっています。進路/勉強/受験/生活などについての無料相談もできますので、お気軽にご連絡ください。
目次
通信制高校とは?
通信制高校とは、通信教育で学習する高等学校課程のことです。基本的に毎日通学する必要がないため、場所を選ばずに勉強できる点が特徴です。(参考:文部科学省「高等学校通信教育の質の確保・向上」)
学校から送られてくる教科書や動画などの教材を利用して、自宅で学習します。成績は、レポートの提出やテストの点数で決まります。卒業の要件を満たせば、高校卒業資格が得られ、最終学歴は高校卒業(高卒)になります。
学習以外の時間を確保したい人や、自分のペースで学習したい人にオススメです。
通信制高校は、2023年時点で、全国に289校あります。うち、公立定時制高校が78校、私立定時制高校が211校です。(参考:文部科学省「学校基本調査-令和5年度 結果の概要-」)
通信制高校の生徒数は、2022年時点で、26万4974人います。うち、公立通信制高校に5万7437人、私立通信制高校に20万7537人が在籍しています。(参考:文部科学省「学校基本調査-令和5年度 結果の概要-」)
通信制高校の種類
この章では、通信制高校の種類について解説します。
種類①学年制高校と単位制高校
高等学校には、以下の2種類があります。
- 学年制
- 単位制
通信制高校は、全て単位制を導入しています。
単位とは、卒業に必要となる履修すべき学習量を科目ごとに表したもののことです。高校で卒業要件を満たすためには、一定以上の単位の取得が必要です。
単位制とは、学校が定める一律の時間割がなく、その年度に学習する教科・科目を、学校と相談しつつ、自分で決めていく制度のことです。
所定の出席日数やテストの点数を満たすと単位を取得でき、在籍期間中に必要な単位(74単位以上)を取得すると卒業できます。単位を取得できない年度があっても留年にはなりません。なお、卒業までに4年以上の在籍が必要な場合もあります。
全ての通信制高校と一部の全日制高校と定時制高校は、単位制を導入しています。
一方で、学年制とは、学校が定める一律の時間割に従って、年度ごとに学習する教科・科目があらかじめ決まっている制度のことです。
所定の出席日数やテストの点数を満たすと単位を取得でき、年度ごとに必要な単位を取得すると進級・卒業できます。必要な単位を取得できなければ進級・卒業できず留年します。留年した場合、再度その学年からの進級・卒業に必要な単位を全て取得する必要があります。
多くの全日制高校と定時制高校は、学年制を導入しています。
卒業に必要な単位の取得に向けて、どの授業をどのように受けるかを生徒自身で計画できるのが単位制の特徴です。
例えば、1日をゆったり過ごしたい人や通学や学習に不安がある人は、4年で卒業するよう計画します。ほかにも早く卒業したい人や1日の時間に余裕がある人は、3年で卒業する計画を立てる傾向があります。自分で時間割を組むために、授業がない日や時間帯ができたりもします。人によって単位を取得するペースが異なるため、学年という概念が薄いのも特徴のひとつです。
種類②狭域通信制高校と広域通信制高校
通信制高校には、以下の2種類があります。
- 狭域通信制高校
- 広域通信制高校
狭域通信制高校とは、入学の対象者がその都道府県に住んでいる人、または通勤している人に限定している通信制高校のことです。
学校がある都道府県と隣接する1都道府県を含む場合はありますが、基本的には該当する都道府県に住んでいることが入学の条件です。公立の通信制高校や近年新設された私立の通信制高校に多いです。
広域通信制高校とは、入学できる住所・通勤の範囲が3つ以上の都道府県にまたがっている通信制高校のことです。
全都道府県から入学可能な広域通信制高校もあり、居住地を問わず入学できる可能性があります。私立の通信制高校に多いです。
種類③公立通信制高校と私立通信制高校
全日制高校や定時制高校と同じく、通信制高校も公立高校と私立高校の2種類に分けられます。
公立通信制高校と私立通信制高校の大きな違いは、学費とスクーリングです。
公立通信制高校は、私立通信制高校と比べて、入学費や学費が比較的安い点が特徴です。
ただし、在籍できる教職員の上限数が決まっており、卒業までの進学や就職に関するサポートが薄い傾向にあります。また、スクーリング回数が決まっており、柔軟な設定ができないことが多いです。公立通信制高校に進学し、高校卒業後に大学進学を考えているなら、学習塾を利用することをオススメします。
例えば、東京都立の通信制高校の場合は、月2日程度は学校で直接対面での授業を受ける必要があります。(参考:東京都教育委員会「各課程、学科、指定校・推進校等に関する内容説明」)
私立通信制高校は、公立通信制高校と比べて、スクーリングの頻度や曜日を選べたり、さまざまなコースを選べたりと、自由度が高い点が特徴です。また、メンタル面のサポートが手厚かったり、高校に通いながら資格も取得できたりといろいろなコースが用意されている場合があります。
ただし、学費が高い傾向にあります。一般的に、スクーリングの種類や回数が多いほど、学費が高くなる傾向にあります。学費以外に、教材費や修学旅行費、施設利用料、その他雑費などが数百円から十万円以上発生することもあります。
例えば、私立通信制高校である飛鳥未来高校では、心理学の専門的な知識を持つ先生に勉強や学校生活について相談できたり、美容師免許取得コースで卒業と同時に美容師免許の取得を目指せたりします。(参考:飛鳥未来高等学校「飛鳥未来6つのポイント」)
一部の私立通信制高校には、サポート校があります。
サポート校については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
通信制高校の公立と私立の違いについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
通信制高校の学費
通信制高校に限らず高校に通う場合、入学金や授業料などの学費がかかります。通信制高校の学費は、学校によって大きく違います。
2023年度時点、授業料は25単位履修の場合の初年度の学費の平均は、以下のとおりです。ただし、教科書代が別途かかる場合があります。(参考:学びリンク「2023通信制高校の学費」)
公立 | 私立 | |
---|---|---|
入学金 | 410円 | 4万2000円 |
1単位あたり授業料 | 300円 | 9960円 |
25単位履修 | 7500円 | 24万9000円 |
その他 | 8700円(諸会費) | 4万5000円(施設設備費) 10万7000円(教育充実費) |
合計(平均額) | 1万6610円 | 44万3000円 |
就学支援金を 利用した場合の合計 (年収約590万円未満) |
410円 +その他費用 |
19万4000円 |
就学支援金を 利用した場合の合計 (年収約590万円~910万円未満) |
410円 +その他費用 |
32万2700円 |
比較すると、公立の通信制高校の方が、費用が安い傾向にあります。ただし、私立高校の方が、学費が高いぶんサポートが手厚い傾向にあります。
就学支援金とは、家庭の収入が一定金額以下の場合にもらえる返済不要の奨学金のことです。(参考:文部科学省「高校生等への修学支援」)
特に公立高校の場合、世帯の年収が約910万円未満の学生の場合、授業料は実質無料となります。
教科書代などは別途必要ですが、基本的には入学金のみで学費が済むのは、公立高校の大きな特徴といえるでしょう。
通信制高校の学費については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
通信制高校に通っている人の特徴
通信制高校の生徒には、以下のような特徴があります。
通信制高校の生徒の特徴
- いわゆる普通の人も多く在籍している
- 不登校を経験した人や、高校中退して転校してきた人もいる
- 19歳以上の人もいる
通信制高校は、自由に使える時間を手に入れやすいため、働きながら通う人や19歳以上の人、夢を追いかけながら通う人、芸能活動をしている人など、さまざまな人が通っています。
また、通信制高校は不登校経験がある生徒のサポートが手厚い場合が多いため、中学まで不登校だった人や、集団生活が苦手な人など、さまざまな理由で通う人も多いです。
通信制高校は、入学時期が比較的寛容な学校が多いため、他の高校から転入・編入してきた人が多いのも特徴です。
通信制高校に入学・転入・編入できる時期
通信制高校は、別の高校からの転入・編入による入学者を多く受け入れています。
この章では、通信制高校の入学・転入・編入できる時期について解説します。(参考:N高等学校・S高等学校「通信制高校への編入・転入の単位と時期は?」)
通信制高校に入学する場合
中学卒業後すぐに通信制高校に入学する場合、その時期は多くの学校と同じく4月です。
ただし、高校を中退した人や体調不良の関係で受験できなかった人を考慮して、一部、10月入学が可能な高校もあります。
通信制高校に転入する場合
転入とは、「書類上、以前在籍していた高校を中退した翌日に、新しい学校に入ること」です。
転入できる時期は、公立と私立で異なります。
公立通信制高校の多くは4月と10月のみの入学ですが、私立通信制高校の場合は、随時受け付けている学校もあります。
転入の場合、書類上高校に在籍していない日がないため、最速で「18歳になる年度の3月」に卒業できます。
通信制高校に編入する場合
編入とは、「以前在籍していた高校を中退して、高校に在籍していない期間があった後、新しい学校に入ること」です。
編入できる時期は、学校によって異なります。
4月や10月のみと時期が固定されている学校もあれば、いつでも編入可能な学校もあります。(参考:ルネサンス高校グループ「募集要項について」)
転入とは異なり、高校に在籍していない期間が生じるため、「3年間の在籍」を満たすことを考えると「18歳になる年度の3月」の卒業はできません。
通信制高校への編入については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
通信制高校の入学試験の特徴
通信制高校は、中学校卒業見込みの人や中学校卒業の学歴がある人なら、誰でも受験可能です。
年齢制限はなく、中学を卒業してから数年〜数十年後に入学する人もいます。また、全日制高校との併願も可能です。
通信制高校の試験内容には、以下のようなものがあります。
- 書類選考
- 学力試験
- 面接
- 作文
難易度はそれほど高くなく、面接や作文、書類審査がメインで、学力試験がない学校もあります。
面接で聞かれる内容は志望理由や将来の夢・目標、高校生活をどのように過ごしたいか、趣味などです。生徒一人ひとりに必要なサポートを見極めるのが目的なので、入学への熱意を伝え、ありのままの自分を見てもらいましょう。
通信制高校は、内申点はあまり重視されない傾向にあります。内申点が低くても合格する可能性は高いため、安心してください。
実際の受験日や併願の仕組みなどについては、各都道府県や各学校の受験制度を確認しておきましょう。
通信制高校の受験対策については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
通信制高校の単位の修得方法
この章では、通信制高校の単位の修得方法について解説します。(参考:N高等学校・S高等学校「必修授業」、飛鳥未来高等学校「ベーシックスタイル」)
方法①自主学習・レポート提出
通信制高校のメインの勉強方法は、自主学習です。
自主学習では、学校が指定する教材で勉強を進めます。教材は紙の場合もありますし、インターネットを利用したオンライン授業の場合もあります。
オンライン授業の場合、パソコンやスマホ・タブレットを利用します。それらとネット環境があれば、自宅やカフェなど好きな場所で学習できます。
教科書や動画での授業を通して学習したのち、問題集のような内容のレポートを提出します。紙で作成・提出する場合もあれば、PCなどで作成・提出が完了する学校もあります。
学習した内容をレポートにまとめ定期的に提出するのも、通信制高校卒業のために必要です。
試験とは異なり、教科書などを見ながら回答してもよいので、難易度は比較的低めです。
通信制高校のカリキュラムは学校によって大きく異なります。特色のあるコースを設定している学校も多く、興味関心や将来の夢、適性に合わせて選ぶことができます。
方法②スクーリング
スクーリングとは、高校に通学して、対面で先生から直接授業を受けることです。(参考:飛鳥未来高等学校「5DAYスタイル」、NHK学園高等学校「通信制高校での学習(スクーリング)」)
通信制高校の通学日数は、全日制高校や定時制高校よりは少ない場合が多いのですが、それでも一定の日数は通学しなくてはいけません。
スクーリングの回数や形態は学校によってさまざまです。スクーリングの回数が多い通信制高校の場合は週5日間、回数が少ない通信制高校は年3〜4日程度の通学が必要です。
五教科に加えて、実技科目の保健体育・芸術・家庭・情報のほか、学校ごとに様々な選択科目の授業があり、特別活動もスクーリング時に行います。
特別活動とは、授業以外の学校行事などの活動のことです。具体的には、ホームルームや生徒会活動、体育祭、修学旅行などです。
「できるだけ登校回数を抑えた、年一度の合宿に参加すれば必要な単位を取得できる高校」もあれば、「対面で授業を受けたい人や友達と会いたい人のために毎日登校するタイプの高校」もあります。
どのような高校に通いたいかを考え、自分にあった通信制高校を選ぶといいでしょう。
方法③単位認定試験
通信制高校には単位認定試験という試験があります。単位認定試験とは、高校卒業に必要な単位を取得するための最終試験のことです。(参考:明聖高等学校「通信制高校のテストはどんなもの?」)
各教科の単位は、自主学習・レポート提出とスクーリングを行った後、試験に合格すれば取得できます。
試験は各学校の指定する会場で行われます。試験の回数は学校によって異なりますが、年度末に1回のみ行う学校が多い傾向です。スクーリングの回数が多い学校の場合は、年2回以上試験を行うこともあります。
単位認定試験は、一般的には簡単な内容と言われています。
基本的に自主学習・レポート提出やスクーリングで学習した内容の中から出題されるため、自主学習・レポート提出やスクーリングできちんと学んでおけば合格できます。
一部の通信制高校では、試験直前のスクーリングで、試験に出やすい内容を先生が教えてくれることもあるそうです。
試験に合格できなかった場合は単位が認定されず、次回行われる試験をもう一度受ける必要があります。ただ、一回で試験に合格できなくても、追試や補習を受けることで単位が認定される場合もあります。
通信制高校の卒業要件
この章では、通信制高校の卒業要件について解説します。
全日制高校や定時制高校と異なる点が多くあります。通信制高校への入学を検討している人はしっかりチェックしておきましょう。
卒業要件①74単位以上の取得
通信制高校の卒業要件の1つ目は、国語や数学など、必履修科目を含む74単位以上の取得です。(参考:e-gov「学校教育法施行規則」)
単位は、各科目でレポートの作成・添削や授業への参加を通して、課題を提出し、単位認定試験などでの一定以上の成績を修めると取得できます。単位の修得方法については、こちらで解説しています。
編入や転入で別の高校から通信制高校に入学する場合は、以前在籍していた高校で取得した単位も含めます。
なお、単位の卒業要件は、学年制でも単位制でも変わりはありません。全日制高校や定時制高校も同様です。つまり、全日制高校も通信制高校も勉強する量は同じなのです。
卒業要件②3年以上の在籍期間
高校の卒業資格を得るには、3年間以上の在籍期間が必要と学校教育法第46条で定められています。(参考:e-gov「学校教育法」)
そのため、早い時期に卒業に必要な単位を全て取得できたとしても、在籍期間を満たさないうちは卒業できません。
編入や転入で別の高校から通信制高校に入学した場合は、以前在籍していた高校での在籍期間も卒業に必要な在籍期間に含めます。
なお、在籍期間の卒業要件は、学年制でも単位制でも変わりはありません。全日制高校や定時制高校も同様です。
卒業要件③30単位時間以上の特別活動
通信制高校の卒業要件の3つ目は、30単位時間以上の特別活動です。(参考:文部科学省「高等学校学習指導要領解説」)
特別活動とは、ホームルーム活動や生徒会活動、学校行事など授業以外の活動のことです。特別活動の1単位時間は50分間。合計で25時間の特別活動が必要です。
特別活動はスクーリングに合わせて実施し、期間中に他者との協調的な取り組みを行います。
通信制高校と全日制高校と定時制高校との違い
この章では、通信制高校と全日制高校との違い、通信制高校と定時制高校との違いを解説します。
全日制高校との違い
全日制高校とは、平日の朝から、毎日決められた時間に通学して、学校で学習する高等学校課程のことです。クラスで授業を受け、定期的にテストを受けることで、卒業の要件を満たします。
通信制高校は通信での授業がメインとなります。毎日通学する必要がなく、自分のペースで学習できる点で異なります。
定時制高校との違い
定時制高校とは、夜間、もしくは昼間の決められた時間に通学して、学校で学習する高等学校課程のことです。
定時制高校は、1948年に勤労青少年(就業などのために全日制高校に進学できない青少年)のために発足しました。
定時制高校は基本的に全日制高校より1日の授業時間が少ない場合が多く、通学する時間帯も選べます。全日制高校とは異なる時間帯にも授業を受けられるため、働きながら高等学校教育を受けたい人や、自分のペースで学びたい人におすすめです。(参考:文部科学省「三 新制高等学校の発足:文部科学省」)
全日制高校と比べれば、定時制高校の方が時間の融通は効きやすいですが、毎日通学する必要がある点では全日制高校と同じです。
毎日通学しなければならないという点では通信制高校と異なります。
定時制高校については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
通信制高校の卒業率・就職率・進学率
通信制高校の場合、以下の2つの理由から一般的な卒業率が計測しづらくなっています。
- 全日制高校などの学校と比べると、編入や転入で途中から移ってきた生徒、3年以上在籍する生徒などが多い傾向にある
- 学年制ではなく単位制を取り入れているため、生徒によって在籍期間に幅がある
卒業率の代わりに、在籍生徒に対する卒業者数の割合を在籍卒業率として算出することもあります。(参考:株式会社三菱総合研究所「平成23年度『高校教育改革の推進に関する調査研究事業』定時制課程・通信制課程の在り方に関する調査研究報告書」、大久保智久「通信制高校の現状と卒業率に関わる要因の調査分析(概要)」)
卒業率の代わりとして、年間退学者数・率は以下のとおりです。(参考:文部科学省「高等学校通信教育の現状について」)
- 2015年:1万3092名(約6.4%)
- 2016年:1万2633名(約6.2%)
- 2017年:1万2105名(約5.9%)
- 2018年:1万2195名(約5.8%)
- 2019年:1万2569名(約5.6%)
以上のとおり、通信制高校を退学する生徒は一定数いるようです。
とはいえ、無理なく勉強に取り組める学校、サポート体制が整っている学校など、学校選びを慎重に行うことで、不本意な中退・退学の可能性は下げられるでしょう。また、勉強に不安がある場合は、サポート校や学習塾などを活用することも、退学を防ぐ方法の1つになるでしょう。
文部科学省によると、通信制高校を卒業した人の就職率・進学率は以下のとおりです。(参考:文部科学省「高等学校通信教育の現状について」)
- 大学等進学者:約17.6%
- 専修学校(専門課程)進学者:約23.3%
- 専修学校(一般課程)等入学者:約1.7%
- 公共職業能力開発施設等入学者:約1.0%
- 就職者:約23.1%
- 上記以外の者:約32.3%
- 不詳・死亡の者:約0.9%
以上のように、通信制高校卒業後に進学した人は、就職よりも進学を選ぶ人が多い傾向にあることが分かります。
この数値を見ると、大学への進学率が低いと感じる人もいるかもしれません。
実際、文部科学省によると、全日制高校の卒業後の大学短大進学率は約56.5%でした。(参考:文部科学省「高等学校通信教育の現状について」)
通信制高校からの大学進学率が低い理由は、以下のようなことが考えられます。
- 学校側の事情として、全日制高校と比べて、授業の難易度が易しい、またh基礎的な学習に力を入れている
- 学生側の事情として、通信制高校を卒業できるくらいの体力はあるが、大学受験・大学生活に向けた体力がまだない
ただ、全日制高校の学生も、よほどの進学校を除き、大学受験用の勉強は、高校の授業での勉強とは別に、学習塾や予備校を利用していることは珍しくありません。
通信制高校の学生も同じで、サポート校や学習塾、家庭教師を活用して、大学進学を目指すことは十分に可能です。
また、通信制高校生は全日制高校生よりも自由な時間が多いぶん、大学受験のための勉強に時間を多く使うこともできます。
通信制高校からの大学受験や就職については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
通信制高校の4つのメリット
この章では、通信制高校のメリットについて解説します。
メリット①自分のペースで勉強できる
通信制高校は、全日制高校や定時制高校のように毎日学校に通って他の生徒と一緒に勉強する必要がなく、自宅で教科書や動画などで学習を進められるため、自分のペースで勉強できます。
あらかじめ決められた時間割などもなく、周囲のペースを気にせずに学習できる点は大きなメリットといえるでしょう。
自分だけのリラックスできる環境の中で、ストレスに悩まされずに集中して学習を進められます。
メリット②費用が比較的安い
公立の通信制高校の場合、比較的費用が安い傾向にあります。
また、就学支援金などの制度を利用すればさらに家計に負担をかけずに入学できるので、ぜひ活用してください。
メリット③働いたり、夢を追いかけたりしながら通える
通信制高校は、時間の融通が効きやすいため、働きながら通う人も多いです。
また、夢に打ち込んだり、資格を取る勉強をしたりしながら通える点も大きなメリットといえます。
メリット④入学のタイミングや条件の自由度が高い
通信制高校の場合、出願の受付期間が長いことや、4月以降も入学の機会があることから、全日制や定時制と比べて入学しやすいのも特徴です。
転入や編入で入学する場合、転入・編入前に修得した単位や在籍期間も原則引き継がれ、安心して入学できるのも嬉しいポイントです。
通信制高校の3つのデメリット・注意点
さまざまなメリットがある通信制高校ですが、デメリットもいくつかあります。
ただし、デメリットは注意点を抑えておけば対策可能なので、あらかじめしっかりと確認しておきましょう。
通信制高校のデメリットについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
デメリット①自分で計画的に勉強を進める必要がある
全日制高校や定時制高校ではあらかじめある程度決められた時間割があり、登校してカリキュラム通りに勉強を行えます。
しかし通信制高校は基本的に自宅での自習がメインです。
自分で勉強時間を決め、教科書や動画を見ながらレポートを作成するので、自主的に行動しなければ勉強を進められません。
自分で勉強のペースを掴みづらい場合は、塾や予備校などを利用して勉強をサポートする方法もあります。
デメリット②クラスメイトや先生との交流の機会が少ない
通信制高校は登校頻度が少なく、クラスメイトや先生と関わる時間が少ない場合が多いです。
しかし、学校によって登校頻度はさまざまなので、高校で友達を作りたい場合は、日常的な登校が可能な距離の学校を選んだり、登校日の多い学校やコースを選んだりするとよいでしょう。
また、人との関わりの場は学校だけではありません。アルバイトやボランティア、趣味の活動などを通して人間関係を築いていくのもおすすめです。
デメリット③進学・就職のサポートが少ない傾向がある
通信制高校には、高校卒業の学歴を与えることを事実上の目的としている学校も多く、卒業後に向けたサポートが少ない学校もあります。
ただし、サポートが手厚い高校も増えているので、自身の理想に合わせて学校を選ぶようにしてください。
サポートが充実している高校の例についてこちらで解説します。参考にしてください。
通信制高校を選ぶ6つのポイント
色々な通信制高校があるので、どこを選べばいいか分からないという方も多いと思います。
この章では、通信制高校を選ぶ基準となるポイントを6つ紹介します。
あなたにとってどのポイントが重要かを考えることで、あなたに向いた通信制高校を選びやすくなると思います。参考になれば幸いです。
ポイント①学費
通信制高校を選ぶ際にまず確認しておきたいのが学費です。
学費については、こちらでも解説していますが、学費は公立か私立かで大きく変わります。そのほか、就学支援金の利用なども考慮しておくとよいでしょう。
入学金などが高額な場合でも、各種制度を調べれば通える場合もあるので、あらかじめ確認しておくのがおすすめです。
通信制高校の学費については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
ポイント②サポートの手厚さ
通信制高校では自習が中心となるため、学習面サポートの充実度はしっかりと確認しておきましょう。
電話や対面で相談の可否、学習が遅れがちな生徒へのアプローチなど、学校によってサポートや特色はさまざまです。
自分が高校生活で何を得たいのかを考えたうえで、どのようなサポート体制があるのかをじっくりと考えておくとよいでしょう。
ポイント③登校頻度
通信制高校は、全日制や定時制に比べ頻度が少ないとはいえ、スクーリングは必ずあります。
対面でのコミュニケーションが苦手な方や、できるだけ通学する時間を取りたくない方は登校頻度が少ない学校を選びましょう。
逆に、コミュニケーションを増やしたい方や、積極的に校内活動を行いたい方は、登校頻度が多い学校やコースを選ぶとよいでしょう。
ポイント④自宅からの距離:「広域」と「狭域」
こちらでも解説したとおり、通信制高校には、広域通信制高校と狭域通信制高校があります。
登校頻度が少ないとはいえ、必ず何度か通うことになるため、自宅からの距離も検討材料に入れ、自身が住んでいる地域と、学校が募集している地域との兼ね合いも確認しておきましょう。
ポイント⑤取得できる資格やコース内容
学校によって受けられる学科やコースはさまざまです。
専門科目がある学校、資格取得やマナー研修などがある学校など、学校ごとの特色を確認し、自分の目的にあった学校を選びましょう。
進学するのか就職するのか、卒業後のプランも見据えて学校を選ぶのも重要です。
ポイント⑥入学時期や転籍のしやすさ
今は毎日高校に通えなくても、ゆくゆくは全日制高校に戻りたいという方もいると思います。
その場合、全日制高校や定時制高校と併設されている学校なら、期間を空けずストレスフリーに転籍できるのでおすすめです。
通信制高校と並行して学べる環境
通信制高校生には、通信制高校の勉強と並行して学校以外で勉強できる施設があります。
また、通学と高卒認定試験の合格を同時に行うことで、より早く大学などの受験が可能になる場合もあるので検討しておくとよいでしょう。
環境①サポート校
サポート校とは、通信制高校に通う生徒のために、通信制高校の仕組みやカリキュラムに対応して学習を支援する、学習塾や予備校のような教育支援機関のことです。
サポート校では、以下のような支援を行っています。
- 通信制高校に通う生徒に向けた学習方法指導
- 通信制高校に通う生徒に向けた進路相談
- 学校生活などに関するメンタルサポート
- サポート校独自のカリキュラムによる教育
サポート校は、「通信制高校の生徒なら、絶対に通わなくてはいけない」というものではありません。また、サポート校は名前のとおり「サポート」が目的なので、サポート校で授業を受けただけでは単位は取れません。
サポート校にも特色があり、日常の勉強に加えて大学受験のサポートをしているところもあれば、ITやデザインなどの専門知識を学べる学校もあります。
特に勉強が不安な方は、進学を考えている通信制高校にサポート校があるかということもポイントになるでしょう。
サポート校については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
環境②技能連携校(技能連携制度)
技能連携制度とは、通信制高校と同時に連携している専門学校などの技能教育施設に通い、両方で学べる制度です。
工業系や社会福祉系など様々なコースがあり、高校の勉強に加えて専門技術を身につけられます。
進学を考えている通信制高校がどのような施設と連携しているか、自分に向いていそうな施設があるか、確認してみましょう。
補足:高卒認定試験
高卒認定試験(正式名称:高等学校卒業程度認定試験)とは、高校を卒業した人と同等以上の学力を認定するための試験です。文部科学省が実施しており、「高認」とも呼ばれています。(参考:文部科学省「高等学校卒業程度認定試験(旧大学入学資格検定)」)
合格者には、大学・短大・専門学校の受験資格が与えられるほか、一部の国家資格や公務員試験の受験が可能になります。
通信制高校には、この「高卒認定試験」の合格を目指すコースを設けている学校もあります。
高卒認定試験は科目ごとに合否判定され、高校で一定の単位を取得した科目は受験の免除も可能です。
つまり、高卒認定試験の合格を目指すコースでは、高校で単位を取得して高卒認定試験の免除を狙ったり、勉強をして高卒認定試験を合格したりすることで、高校を卒業せずに大学などの受験資格取得、一部の資格・就職試験を目指せるということです。
すでに大学受験などの目標が定まっている場合は、高卒認定試験の合格によって受験勉強に早く取りかかれる場合もあります。
また、ある高校を中退し、空白期間を経て通信制高校に編入した場合は、高校卒業に必要な「3年間の在籍期間」を考えると、元々の同級生と同じタイミングでの卒業・大学受験はできません。
高卒認定を取得すると、高校を卒業しなくても大学などの受験が可能になるため、元々の同級生と同じタイミングで大学受験ができるようになる場合もあります。
なお、高卒認定試験に合格するだけでは、学歴としては「高卒」にはならず、最終学歴は「中卒」となります。
例えば、高校を卒業せずに高卒認定試験に合格し、進学した大学を中退したりすると、学歴としては「中卒」になります。
高卒認定試験については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
サポート体制が充実している通信制高校5選
ここからは、キズキ共育塾の知見からサポート体制が充実している通信制高校を紹介します。
それぞれ特色あるカリキュラムなどが用意されており、スクーリング会場も多く存在します。
ウェブサイトを見たり、問い合わせや見学などを行ったりして、これまでに紹介したポイントを検討しつつ、どの高校を選ぶか決めましょう。
通信制高校①代々木高等学校(私立・広域)
通信制高校の中では比較的老舗で、面倒見のよい学校です。
参考:代々木高等学校
通信制高校②さくら国際高等学校(私立・広域)
こちらも不登校支援を長く行っており、面倒見がよい学校です。
参考:さくら国際高等学校
通信制高校③クラーク記念国際高等学校(私立・広域)
日本最大の通信制高校で、「普通の学校」に近いイメージです。
行事や部活にも力を入れているので、学校生活を楽しみたい生徒さんには好まれます。
また、「国際」の名のとおり、留学プログラムなどもあります。
参考:クラーク記念国際高等学校
通信制高校④NHK学園高等学校(私立・広域)
名前のとおり、NHK(日本放送協会)の外郭団体が運営する学校です。
NHK高校講座の視聴により、スクーリングが少なくて済みます。
参考:NHK学園高等学校
通信制高校⑤ルネサンス高等学校(私立・広域)
サポートも厚く、オンラインの学習が充実しています。
登校日は、最短だと年4日間です。
参考:ルネサンス高等学校
大学受験に向けた勉強指導が充実した通信制高校3選
この章では、大学受験に向けた勉強指導が充実した通信制高校を紹介します。
通信制高校①屋久島おおぞら高等学校(私立・広域)
通信制高校の中でも、学力の高い生徒が多いようです。
参考:屋久島おおぞら高等学校
通信制高校②駿台甲府高等学校 通信制課程(私立・広域)
駿台予備学校グループの高校です。
大学受験に向けた学習は、駿台予備学校グループの良質な授業・個別指導・映像学習など全面的な学習支援をフル活用できます。
参考:駿台甲府高等学校
通信制高校③つくば開成高等学校(私立・広域)
運営方針として、大学受験対策にも力を入れています。
参考:つくば開成高等学校
まとめ〜自由度の高い通信制制高校で自分らしい未来を〜
通信制高校は自由度が高く、働きながら通ったり、夢を追いかけながら通ったりと、自分らしい生き方の中で学習できます。
通信制高校は学費やコース、サポート体制、学校の雰囲気、学校までの距離など、選ぶ学校によってさまざまです。
自分に合った学校を見つけて、ストレスなく勉強できる環境を手に入れてくださいね。
Q&A よくある質問