定時制高校とは? 学費や就職率・進学率、選び方を解説
こんにちは。生徒さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする完全個別指導塾・キズキ共育塾です。
高等学校卒業(高卒)の肩書きを得るには、全日制高校だけでなく、定時制高校や通信制高校に通うという選択肢もあります。
あなたは、以下のような疑問をお持ちではないでしょうか?
- 定時制高校はどのような仕組みなのか
- 定時制高校は自分に合っているのか
- 定時制高校の選び方が分からない
このコラムでは、定時制高校の特徴や全日制高校や通信制高校との違い、学費、入学試験、就職率・進学率、定時制高校のメリット・デメリット、選び方などを解説します。
目次
定時制高校とは?
定時制高校とは、夜間、もしくは昼間の決められた時間に通学して、学校で学習する高等学校課程のことです。
1948年に勤労青少年(就業などのために全日制高校に進学できない青少年)のために発足しました。
定時制高校は基本的に全日制高校より1日の授業時間が少ない場合が多く、通学する時間帯も選べます。全日制高校とは異なる時間帯にも授業を受けられるため、働きながら高等学校教育を受けたい人や、自分のペースで学びたい人におすすめです。(参考:文部科学省「三 新制高等学校の発足:文部科学省」)
通学の時間帯、卒業までにかかる年数、学年制と単位制について、それぞれ特徴を紹介します。
①通学の時間帯
定時制高校は、夜間に通うという印象が強いかもしれませんが、通学する時間帯は学校によってさまざまです。
名称 | 授業を行時間帯 |
---|---|
昼間二部定時制 | 朝・昼 |
三部制 | 朝・昼・夜 |
夜間定時制 | 夜 |
このように自身の都合に合わせて、昼夜問わず通学する時間帯を選べます。時間の融通が利きやすく、朝が苦手な人や、昼間に仕事をしている人でも通いやすいのが定時制高校の特徴の一つです。
②卒業までにかかる年数
定時制高校の卒業条件は、「3年以上の在籍期間」と「必要な単位数の取得(各科目で一定以上の出席日数と成績をおさめること)」です。これは、全日制高校と通信制高校も同じです。
定時制高校は1日の授業時間が4時間程度の学校が多いため、卒業に必要な単位を取得するのに4年かかることも珍しくありません。
しかし、単位を取得し切れば、3年間での卒業も認められています。
そのため、入学前の段階で学校と相談し、授業時間のペースや卒業にかかる年数を確認しておくのが良いでしょう。
③学年制と単位制
定時制高校には、学年制と単位制の2種類があります。
学年制とは、学校側が時間割を定める制度(学年別に学習する教科・科目・時間割が定められている制度)のことです。時間帯以外は全日制高校と同じです。
毎日決まった時間に通学し、学校が定めた時間割の授業に出席します。
出席日数やテストの点数などが所定の基準を満たせば進級・卒業でき、足りなければ留年になります。
単位制とは、学校が定める「一律の時間割」がなく、その年に受ける授業を自分で決めていく制度のことです。所定の出席日数やテストの点数を満たすと単位が取得でき、決められた単位(74以上)を取得すれば卒業となります。
卒業に必要な単位の取得に向けて、どの授業をどのように受けるかを生徒さん自身で計画できるのが単位制の特徴です。
人によって単位を取得するペースが異なるため、学年という概念が薄いのも特徴の1つです。
定時制高校の学費〜全日制高校と比べると安い〜
この章では、定時制高校の学費について解説します。
全日制高校と比較検討されている方も多いかと思います。いくつかの都府県をピックアップして、それぞれの公立の定時制高校と全日制高校の学費を比較して、お伝えしていきます。
記載している授業料は、全て「年額」です。
東京都
- 定時制高校:3万2400円(授業料)、2100円(入学料)
- 全日制高校:11万8800円(授業料)、5650円(入学料)
(参考:東京都教育委員会「都立高等学校、中等教育学校(後期課程)の授業料・入学料及び特別支援学校高等部の授業料について」)
神奈川県
- 定時制高校:3万2400円(授業料)、2100円(入学料)
- 全日制高校:11万8800円(授業料)、5650円(入学料)
(参考:神奈川県「県立高校の授業料・諸会費について」)
愛知県
- 定時制高校:2万2800円(14単位までの授業料)、2万7600円(15単位から19単位までの授業料)、3万2400円(20単位以上の授業料)、2100円(入学料)
- 全日制高校:11万8800円(授業料)、5650円(入学料)
(参考:愛知県「県立高等学校入学料・授業料」)
京都府
- 定時制高校:1万5000円(16単位以上理由の場合の授業料)、980円(入学料)
- 全日制高校:11万8800円(授業料)、5650円(入学料)
(参考:京都府「よくあるお問い合わせと回答」)
大阪府
- 定時制高校:3万2400円(授業料)、2100円(入学料)
- 全日制高校:11万8800円(授業料)、5650円(入学料)
(参考:大阪府「府立高等学校の授業料と就学支援金について」)
このように、定時制高校の学費は、全日制高校と比べると安いことが分かります。
ただし、入学料と授業料のほかに、施設等の設備費や交通費なども必要な場合があったり、地域や学校、課程によって料金が違っていたりする可能性があります。
また、単位制の定時制高校の場合は、履修する単位数によって、学費が変わってくるようです。
加えて、私立の定時制高校については、公立の定時制高校よりも学費が多くかかることも珍しくありません。
そのため、気になる定時制高校があれば、その学校のパンフレットを取り寄せたり、直接問い合わせたりするなどして、正確な情報を集めるようにしましょう。
定時制高校の学費については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
補足:就学支援金について
2014年度(平成26年度)入学者から「高等学校等就学支援金」が導入されました。
就学支援金は、所属高校の国公私立を問わず「課税標準額(課税所得額)×6% - 市町村民税の調整控除の額」で算出します。
算出した額が15万4500円未満(年収目安590万円未満)であれば、私立高校授業料の実質無償化の対象となり、15万4500円以上30万4200円未満(年収目安910万円未満)であれば、基準額(11万8800円)支給の対象です。
公立の定時制高校の場合月額上限2700円、私立の定時制高校の場合月額上限9900円がそれぞれ支援されます。
加えて、世帯所得や通う学校の種類により加算支給される場合があります。
他にも都道府県や市区町村独自の支援制度があるかもしれないので、各種支援金制度や利用方法については、お住まいの地域の役所に確認してください。(参考:文部科学省「高等学校等就学支援金制度に関するQ&A」)
定時制高校の入学試験の特徴
定時制高校の入学試験では、国語・数学・英語(学校によっては理科・社会も)といった基本的な学力テストを実施する学校が多いですが、テストの内容は比較的簡単です。
また、学校によっては「科目試験なし、面接と作文のみ実施」という場合もあります。
そのほか、中学校での学力や特別活動の評価などの調査書、自己PR書面などを求められることもありますが、さまざまな人たちを受け入れている傾向があります。
そのため、中学校までの勉強が苦手だったり、不登校で内申点が低かったりしても、定時制高校なら比較的チャレンジしやすいといえます。
定時制高校の就職率・進学率
30年程前までは、卒業後に就職する人が圧倒的に多かった定時制高校ですが、現在の就職率・進学率は以下のとおりです。(参考:文部科学省「令和元年度学校基本調査」)
就職率
- 全日制高校:約17.2%
- 定時制高校:約49.0%
- 通信制高校:約23.1%
進学率
- 全日制高校:約73.4%
- 定時制高校:約30.0%
- 通信制高校:約40.9%
定時制高校は基本的に進学よりも就職のサポートが手厚い傾向があり、就職する人の割合は定時制の方が多く、進学率は全日制よりも定時制の方が低くなっています。
しかし、進学のためのサポート体制が整っている学校もあるため、必ずしも定時制高校からの進学が難しいというわけではありません。
また、「高校での勉強」とは別に、「受験用の勉強」では学習塾を利用するという方法もあります。
サポート体制や卒業後の進路については、資料請求や学校説明会などで確認し、事前に検討しておきましょう。
定時制高校と全日制高校と通信制高校との違い
この章では、定時制高校と全日制高校との違い、定時制高校と通信制高校との違いを解説します。
全日制高校との違い
全日制高校と定時制高校の違いは、授業を受ける時間帯です。
全日制高校では、授業時間が朝から夕方までと決められています。一方、定時制高校は朝〜夜まで幅広い時間帯から学ぶ時間を選べます。
「全日制高校の時間帯に通学できない人も、定時制高校には通える」という点は、定時制高校の魅力の1つと言えるでしょう。
定時制高校の授業時間帯は、例えば次のように分けられます。
- 夜の時間帯に授業を行う「夜間定時制」
- 朝と昼の時間帯に授業を行う「昼間二部定時制」
- 朝・昼・夜の時間帯に授業を行う「三部制」
また、定時制高校は全日制高校よりも自由な時間を確保しやすいため、学業以外のことに時間を割けるのも大きな特徴です。
そのほか、定時制高校は全日制高校と比べ通学する人の年齢が幅広いため、先輩後輩といった上下関係ができづらい特徴もあります。
通信制高校との違い
定時制高校は、基本的に平日は毎日登校します。一方で通信制高校は、以下のような手段で勉強(単位の取得)を進めるため、毎日登校する必要がありません。
- 通信教材やWeb教材での勉強
- レポートの提出
- スクーリング(通学して対面で受ける授業)
- 試験
教科書や学習書に基づいて自習し、レポートにまとめて添削指導を受け、学校が指定する日に出校してスクーリングを受けるという流れが一般的です。
通信制高校は登校する回数が少ないため、遠方からでも比較的入学・通学しやすいメリットがあります。
通信制高校の詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
定時制高校の3つのメリット
定時制高校のメリットを把握しておけば、自分に合った定時制高校を選ぶ際にも役立ちます。
有意義な高校生活を送るためにも、定時制高校のメリットや特色を押さえておきましょう。
メリット①授業時間が短く、全日制高校と比べて時間の自由度が高い
定時制高校を4年で卒業する場合、1日の授業時間が4限程度と少ないため、朝から夕方まで縛られがちな全日制高校と比べ、学業以外の活動時間を確保しやすくなります。
また、学ぶ時間帯の自由度も高く、夜のみに授業を行う学校や、複数の授業時間帯を設けている学校などが様々あるので、体調や仕事など、自身の都合に合わせて通学しやすいのも嬉しいポイントです。
メリット②様々な事情を抱える生徒さんが多いため理解されやすい
定時制高校には、以下のように様々な背景を持つ生徒さんが多くいます。
- 元不登校
- 高校中退経験者
- 働いている人
- 定年退職している人 など
そのため、互いの背景を相談し合ったり、分かり合えたりする雰囲気があり、自身と似た境遇や、全く異なる境遇を持つ友人ができやすいのも大きな特徴です。
無理に話す必要はありませんが、「話したいときに話せる」「話したら共感してもらいやすい」という環境は、安心して高校生活を送るうえで重要な要素といえるでしょう。
メリット③就職のサポートが手厚い傾向がある
こちらで触れたとおり、定時制高校は全日制高校より就職のサポートが手厚い傾向があり、就職率も全日制高校や通信制高校に比べて高めです。
様々な職業の人が講師として来校し、「職業」や「働くということ」について考える機会を増やしてくれるなど、様々な試みで就職への支援を行ってくれる学校が多いです。
ただしサポート内容は学校によって異なるため、資料請求や学校説明会などで事前にしっかり確認しておきましょう。
定時制高校の2つのデメリット・注意点
定時制高校にはデメリットもありますが、事前に注意点を確認しておけば対策可能です。
いざ入学してから「思っていたのと違った」とならないように、しっかりと確認・対策をしておきましょう。
注意点①中途退学率が高い
以下のように、定時制高校の中途退学率は、全日制高校や通信制高校よりも高いです。(参考:文部科学省「令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」)
- 全日制高校の中退率・人数:約1.0%(2万8987人)
- 定時制高校の中退率・人数:約7.6%(5430人)
- 通信制高校の中退率・人数:約3.8%(8984人)
中途退学の理由や原因は人によって様々ですが、定時制高校では、学校生活や学業に適応できなかったり、進路変更を望んだりすることが理由として多く挙がるようです。(参考:金子恵美子・伊藤美奈子「定時制高校生の中途退学意識に関連する要因の検討」)
中途退学は悪いことではないですが、「不本意な中退」を避けるためには、入学前に以下の点は必ず確認しておきましょう。
- 校則や校風(教室及び先生や生徒さんの雰囲気など)が自分に合うか
- 卒業後の進路が自分の希望と合うか
これらの確認には、資料請求や学校見学会などを利用するのがおすすめです。
注意点②進学のサポートが少ない傾向がある
こちらで触れたとおり、定時制高校は進学よりも就職のサポートが手厚い傾向にあります。理由としては、定時制高校では進学志望者が少ないためと考えられています。
しかし受験対策の講座など、学校によっては進学のサポートも手厚く行っているところもあります。
そのため、資料請求や学校説明会への参加などを通して、事前に進学サポートの詳細を確認しておきましょう。
また、全日制高校・定時制高校に関わらず、大学受験のための勉強を予備校で補うことは珍しくありません。学校のサポートが心配なら、高校と並行して通える塾や予備校などを探すと、進学への助けになるはずです。
私たちキズキ共育塾は、定時制高校に通う人のための、完全1対1の個別指導塾です。
生徒さんひとりひとりに合わせた学習面・生活面・メンタル面のサポートを行なっています。進路/勉強/受験/生活などについての無料相談もできますので、お気軽にご連絡ください。
定時制高校を選ぶ6つのポイント
定時制高校を選ぶポイントを6つのポイントに分けて紹介します。
「定時制高校に通いたいけど、自分に合う高校の選び方が分からない」という方はぜひ参考にしてください。
ポイント①公立か私立かで選ぶ
公立と私立では学費が大きく違い、一般的には公立の方が安い費用で通えます。
そのため、ご家庭の経済状況や各種助成金なども踏まえて、公立に通うか私立に通うかを考えてみてください。
自分で学費を払う場合は、仕事や貯金、今後の生活など、現実的な見通しを立てることが大事です。
また、保護者など自分以外の方が学費を払う場合も、費用についてしっかり相談し、確認しておきましょう。
ポイント②学年制か単位制かで選ぶ
毎日決められた時間割通りに通学する学年制、一律の時間割が決まっていない単位制のどちらかで選ぶという方法もあります。
こちらでも解説していますが、決まった時間割をこなす方が向いている方は学年制が、卒業までの計画をある程度自分で立てたい方は単位制が向いています。
ポイント③在学年数で選ぶ
卒業までの期間を3年にするか、4年にするかで選ぶ方法もあります。
3年間で卒業する場合は、1日の授業数が全日制高校と同等の5〜6限程度です。4年間で卒業する場合は、1日の授業数は全日制高校と比べても少なめで4限程度です。
学年制の学校は、学校資料などに3年制か4年制かの記載があるので、事前によく確認しておきましょう。
単位制の学校は、各学校の制度により3年で卒業するか、4年で卒業するか、自分で計画できる学校もあります。
高校を早く卒業したい人、学業に費やす時間を1日当たり多めに取れる人は3年制が向いているといえます。
一方、1日をゆったり過ごしたい人、学業以外の活動時間を多く取りたい人、1日に多くの授業を受ける自信がない人、仕事などの都合で学校に長くいられない人は4年制が向いているといえるでしょう。
ポイント④授業の実施時間帯で選ぶ
こちらでも解説していますが、定時制高校は、学校によって授業を行う時間帯が異なります。
夜の時間しか授業に出られないのであれば「夜間定時制」、朝・昼・夜幅広く授業を受けたいのであれば「三部制」など、自身の都合に合わせて選びましょう。
生活リズムと授業時間が合う学校なら、通学しやすく、快適な高校生活を送れるはずです。自身の生活を豊かにするためにも、しっかりと確認しておきましょう。
ポイント⑤通学手段や通学時間で選ぶ
定時制高校は、ほぼ毎日通学することになるので、通学の手段や時間はとても重要です。
家から学校までの距離、電車・バス・自転車・徒歩などの交通手段、通学にかかる時間を確認し、毎日通うのに支障がないか検討しましょう。
電車やバスなどを使うのであれば、時間帯によって混雑したり、本数が少なくなったりすることを視野に入れておくのも大切です。
なお、学校によっては車やバイクでの通学も認められるので、希望するのであれば事前に学校に確認しておいてください。
ポイント⑥校則や校風などを見て選ぶ
校内の雰囲気やルールなどは、学校によって様々です。校則や制服が定められていない学校も多いので、厳しい指導が苦手な人は事前に確認しておきましょう。
学校説明会などに行けば学校の様子が伺えるので、参加して下見しておくのがおすすめです。
まとめ〜快適な高校生活を送れることをお祈りしています〜
せっかく定時制高校に通うのであれば、有意義な高校生活にしたいものです。自身の好みや生活スタイルなどから、どの高校なら自分に合うか、しっかり吟味してください。
- 通学する時間帯
- 卒業にかかる年数
- 学年制か単位制か
定時制高校を選ぶのに困った際は上記のポイントを確認し、毎日通うのが苦じゃないか、校則の厳しさのような不安要素はないかなどの確認もしておきましょう。
事前確認には、学校の資料を請求するほか、学校説明会などへの参加もおすすめです。
自分に合った学校を選んで、快適な高校生活を送ることができることをお祈りしています。
Q&A よくある質問