ひきこもりの子どもへの親の対応 親に共通する特徴を解説
こんにちは。生徒さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする完全個別指導塾・キズキ共育塾です。
近年、ひきこもりは多くのメディアで社会問題として取り上げられています。
ひきこもりは、当事者だけでなく、その親にとってもつらい問題です。
また、ひきこもりは長期化するほど、本人や親の年齢が上がるため深刻な問題になります。
現在、ひきこもり状態にある人の中には不安を抱えている人も少なくないでしょう。ですが、専門家などのサポートを受けつつ、適切なケアや対応をすることで、今後の人生を切り拓いていけます。
また、ひきこもり経験者の中には、大学進学・卒業や就職などに成功している人も多いです。
お子さんが引きこもっているご家庭は、本人だけに解決を任せるのではなく、親も一緒に将来を考えることが大切です。
このコラムでは、ひきこもりの定義や当事者の心理、子どものひきこもりに悩む親に共通する特徴、ひきこもりの親が子どものためにできることについて解説します。
目次
ひきこもりとは?
厚生労働省の「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」によると、「ひきこもり」は以下のように定義されています。
(ひきこもりとは、)さまざまな要因の結果として社会的参加 (義務教育を含む就学, 非常勤職を含む就労, 家庭外での交遊など) を回避し、原則的には6ヵ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい) を指す現象概念である。
なお、ひきこもりは原則として統合失調症の陽性あるいは陰性症状に基づくひきこもり状態とは一線を画した非精神病性の現象とするが、実際には確定診断がなされる前の統合失調症が含まれている可能性は低くないことに留意すべきである。
(参考:厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」)
このように、ひきこもりとは原因を問わず、半年以上にわたって社会活動を回避している状態を意味します。
なお、「社会と深く関わらない程度に外出する人(コンビニや書店など)」も、ひきこもりの定義に含まれます。
現代社会においてひきこもりは珍しくない
ひきこもりは、社会全体で見ると決して珍しくはありません。
内閣府が2023年3月に公表した「こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)」によると、ひきこもり状態にある人は15歳から64歳までの年齢層の約2%余りにあたる推計146万人に上るといわれています。(参考:内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)」)
ひきこもりの当事者は孤立感を抱きやすく、ひきこもり状態にある子どもがいる親御さんは、「我が子だけどうして…」「ほかの子は学校/職場に行っているのに…」と感じるかもしれません。
ひきこもりと不登校の違い
ひきこもりとしばしば混同される言葉として、「不登校」が挙げられます。
文部科学省は、不登校を以下のように定義しています。
何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるため年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたもの
(参考:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」、文部科学省「不登校の現状に関する認識」)
不登校は病気や経済的な理由以外の事情、例えばいじめや勉強の遅れなどの理由で学校に行けないことを指し、一方でひきこもりは家庭外での交流を避けるなど、より広い意味で使われています。
詳しくは、以下コラムをご覧ください。
ひきこもり当事者の心理
ひきこもり当事者の心理は、世間において知られる機会が少ない傾向にあります。
そうした中で、2019年にNHKがひきこもり当事者の心理について報道しました。(参考;NHK ハートネット「当事者・支援者が語る「ひきこもり」」)
この番組の出演者が語る心理には、以下のような内容がありました。
- 希死念慮があった
- 激烈な苦しさ
- 本当は働きたい
ひきこもり当事者は、日々つらい思いを抱え自宅にひきこもりながらも、社会参画を望んでいることが少なくありません。
また、他者の中で自分の立ち位置や振る舞いが分からずに引きこもる人や成功体験がなく、自信を失う人もいます。
ひきこもり状態といっても1人ひとり状況は違っているため、それぞれの状況にあった適切なケアやサポートが必要なのです。
ひきこもり当事者の体験談
前述のようにひきこもり当事者の中には、辛い思いを抱えている人が多くいます。
しかし、それを乗り越えた人もたくさんいるのです。
ここでは、ひきこもりや不登校状態の人の学習面やメンタル面からサポートしているキズキ共育塾の生徒さんの「ひきこもりの体験談」を紹介します。
高校3年生のときに不登校になり、介護をしている母の重荷になっているようにも感じました。
学ぶ機会を得るために「うつ病 不登校 塾」などのキーワードでインターネット検索をする中で不登校者を対象にした学習塾を見つけました。
入塾してみると、先生方も親切で、授業も分かりやすく、最終的に複数の大学に合格できました。(当時高校3年生女子)
不登校(ひきこもり)になる以前は親や教師の言うことをよく聞く、勉強もスポーツもできるいわゆる良い子でした。しかし、中1の夏休みの前に部活に行けなくなり、学校にも行けなくなりました。
はっきりとした理由は分かりませんが、部活や勉強がハードで限界がきたことや、自分よりも優秀な人もいて自信喪失したことが原因だと思います。
そのうちに社会が自分を認めてくれないと思い込むようになり、友達や先生、親戚に会うのも躊躇するように。
不登校の生徒を対象とする学習塾での経験などを踏まえ、現在の自分は学校以外にも居場所があると思えるようになりました。
私たちキズキ共育塾は、ひきこもり状態にある人のための、完全1対1の個別指導塾です。
生徒さんひとりひとりに合わせた学習面・生活面・メンタル面のサポートを行なっています。進路/勉強/受験/生活などについての無料相談もできますので、お気軽にご連絡ください。
子どもがひきこもりになる原因
子どもが引きこもると、「親が自分のせいだと自分を責める」「親が世間から責められる」ようなことも少なくありません。
しかし、実際に親が子どものひきこもりの直接的原因となっているケースはあまり多くないと考えられます。
内閣府が2019年3月に公開した「生活状況に関する調査 (平成30年度)」では、15〜39歳の男女がひきこもりになった原因が明らかにされています。(参考:内閣府「生活状況に関する調査 (平成30年度)」)
以上のデータによると、「職場になじめなかった」「病気」と回答した人が、それぞれ約23.7%と最多です。
次いで、「就職活動がうまくいかなかった」(約20.3%)「人間関係がうまくいかなかった」(約11.9%)が続いています。
また、「不登校(小学校・中学校・高校)」が約11.9%、「大学になじめなかった」が約6.8%と、学校生活でつまずいた人も少なくないようです。
以上の調査項目に、親や親に直接関係するような問題は含まれていませんが、少なくとも「親がひきこもりの原因である」と断言はできないでしょう。
子どものひきこもりに悩む親に共通する特徴3つ
ひきこもり状態にある子どもにとって、親はもっとも身近な存在です。
そのため、親は子どものひきこもりを早期に解決できるかどうかのキーパーソンとなります。
この章では、子どものひきこもりに悩む親に共通する特徴について解説します。
ひきこもり状態にある子どもがいる親に共通することがあれば知りたいという声が多いのであえて紹介しますが、「親にこの特徴があれば子どもはひきこもりになる」という決めつけではありません。あくまで参考としてご覧ください。
また、ご紹介する内容に今のあなたが当てはまっていても、落ち込んだり自分を責めたりする必要はありません。専門家などに相談することで、現状を改善することが可能です。
特徴①ひきこもりが長期化する仕組みをつくっている
親御さん自身が、お子さんのひきこもりが長期化する仕組みをつくっていることがあります。
例えば、「専門家への相談など、解決に向けたアクションを起こさない・起こせない」ことです。
「子どものひきこもり問題を相談すること」を、「親が責任を放棄し、子どもを見捨てることではないか」と懸念される人がいます。
ですが、こちらでご紹介するように、根本的な解決や子どもの社会復帰のためには、専門家・第三者・サポート団体などを適切に利用して、ひきこもりを長期化させないようにすることが大切です。(参考:工藤定次・YSCスタッフ・永冨奈津恵『脱!ひきこもり YSC(NPO法人 青少年自立援助センター)の本』)
特徴②柔軟に対応できず、世間体を気にしている
生活困窮者らへの支援を行うNPO法人ほっとプラスの代表理事である藤田孝典氏は、自身の著書『中高年ひきこもり―社会問題を背負わされた人たち―』の中で、ひきこもりの子どもの親の職業として学校の先生、医師、看護師が多いと述べています。(参考:藤田孝典『中高年ひきこもり―社会問題を背負わされた人たち―』)
さらに、その著書の中では、「これらの職業はいわゆる先生商売であるがゆえに権威的で、一つの考え方を教条的に信じている」「世間体を気にするため、行政の窓口や専門家・第三者・サポート団体などに相談したがらない」傾向にあるとしています。
自分が優秀であったり、社会を支援する立場にあったりすると、ある種の成功体験があるため、ひきこもり状態の子どもと同じ視点に立つのが難しくなります。
特定の考え方に固執し、子どもの個性や特性に合った柔軟な対応ができないと、子どもを精神的に追い詰めることになるかもしれません。
特徴③子どもと共依存状態にある
30代や40代でひきこもり状態にある人の中には、親の価値観や考え方に固執しているケースも多々あります。(参考:片田珠美『他人の支配から逃げられない人』)
いわば、親と子どもが共依存状態になっているということです。
子どもは親の期待や考え方に則した生き方ができないと、その乖離から精神疾患を患うこともあります。
以上参考資料から、例を紹介します。
ある男性は、大学に馴染めずに中退したものの、専門学校を卒業して調理師になりたいという夢がありました。
そして、中退後は飲食店でアルバイトをしていたところ、親に「そんな仕事はよくない。正社員になりなさい」と責められたことをきっかけに、ひきこもり状態になりました。
男性は成人しており、親の保護下にある年齢ではありません。
ですが、父親の価値観や考えに逆らえず、大人になっても自分の人生を自ら切り拓いていけない状況に陥っています。
ひきこもり状態にある子どもをもつ親ができる対応5選
引きこもっている子どもが社会との関わりを復活させるためには、親が重要な存在になります。
子ども自身でひきこもり状態から抜け出すために機会を探ることも大切ですが、親のサポートが必要なケースもあります。
この章では、ひきこもりの子どもをもつ親ができることについて解説します。
対応①サポート団体などに相談する
まず、大切なことは、専門家・第三者・サポート団体などに相談することです。
近年では、ひきこもり状態にある人をサポートする行政サービスや民間団体が増えています。(参考:厚生労働省「ひきこもり支援推進事業」)
これらを活用することで、我が子のひきこもりに悩む親同士がつながれるほか、ひきこもり当事者も似た環境にいる人たちと出会えます。
これまでは社会的孤立を抱えていた人たちも、社会への帰属意識を抱けたり、就学や就労の機会につなげたりすることも可能です。
例えば、厚生労働省が運営するひきこもりに関する情報をまとめたひきこもり支援ポータルサイト「ひきこもりVOICE STATION」では、経験者、家族会、支援者などが集まり、意見交換をしたり、正しい情報を共有したりする場となっています。
支援機関・相談窓口は、以下WEBサイトを参考にしてみてください。
私たちキズキ共育塾も、ひきこもりのお子さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートしています。
また、就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ」では、うつ病や発達障害で離職した人のために再就職の支援も行っています。
相談は無料です。少しでも気になるようでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
参考サイト:キズキ共育塾
対応②子どもが安心できる愛情を与える
ほとんどの親が、子どもに対して愛情を抱いていると思います。
しかし、愛情にはさまざまな形があります。愛情の注ぎ方によっては、子どもが安心できたり、逆に不安になったりする場合があります。
安心できる愛情とは、「子どもの成長に合わせて、自分で乗り越えられる力があるという承認を与えるもの」です。
「親に頼らなくても自分でできる、自分には乗り越える力がある」と思うことで、子どもは社会でさまざまなことにチャレンジできます。
また、「自分が困った際には親だけでなく社会が助けてくれる」と思えると、周囲に溶け込みやすくなります。
一方で、子どもが不安になる愛情とは、「我が子を心配するあまり、子どもの挑戦を妨げるもの」です。
子どもが成長してからも心配ばかりをしていると、子どもは親の保護下から抜け出せないばかりか、自分に自信をもつこともできません。
適度に子どもを信じて愛情を注ぎましょう。(参考:田村毅『ひきこもり脱出支援マニュアル 家族で取り組める実例と解説』)
対応③ 親が前向きな気持ちでいる
親が前向きな気持ちでいることも大切な対応です。(参考:田村毅『ひきこもり脱出支援マニュアル 家族で取り組める実例と解説』)
親が充実した生活を送る姿を見たお子さんは、将来に対してポジティブなイメージを持つことができます。
そして、子どもはふとしたことをきっかけに親の誘いにのってくれることがあるかもしれません。
前向きな気持ちを継続して持つためには、親自身が家族や友人と充実した時間を共有したり、夫婦でお互いを肯定し合ったりすることが大切です。
対応 ④子どもの話に耳を傾ける
ひきこもり状態にある人の中には、孤独感や社会的孤立を感じている人も多いです。(参考:最上悠『8050 親の「傾聴」が子どもを救う (子どもの声に耳を傾けていますか?)』)
「誰にも自分の気持ちを理解されない」「誰も自分の存在を認めてくれない」と感じる状況は、つらいものです。
そのため、子どもの話に耳を傾けてください。そして、子ども自身が「自分を受け止めてもらえた」と感じられることが大切なのです。
親が子どもの声に耳を傾け共感することで、子どもは自分に対する自信を持てるようになっていきます。
そして、やがて心も元気になっていくはずです。
対応⑤子どもに精神疾患があるかどうかを医師に相談する
精神科医の川上憲人氏によると、ひきこもりによって精神障害のリスクが増加する可能性の方が高いとされています。(参考:川上憲人「こころの健康についての疫学調査に関する研究 」)
しかし、精神疾患は目に見えにくいほか、世間において広く知られていないため見落とされることも少なくありません。
例えば、うつ病や摂食障害は命にもかかわる病気です。そのため、早期発見をする必要があります。
子どもに精神疾患があるかどうかを医師に相談するのも、大切な対応です。
まとめ〜お子さんも親御さんも、ともに幸せになれるように心から願っています〜
本コラムで解説したとおり、子どものひきこもりは親に直接的な原因があるケースばかりではありません。
子どもが引きこもっていることを自分の責任だと責める親御さんも多く見受けられますが、親に全ての責任があるわけではないのです。
ただし、子どもが早期に社会復帰するためには、親が外部の専門機関に相談したり、子どもにとって居心地のよい環境を提供したりするなどのアクションが必要です。
また、親は子どもが引きこもると、精神的にも消耗しやすくなります。
しかし、親である自分自身が充実した生活を営み、子どもに前向きに生きる姿を見せることで、子どもは将来に対してポジティブなイメージを持てるようになっていきます。
親御さんも、ひきこもり状態にあるお子さんも、ともに幸せになれるように心から願っています。