発達障害のある子どもの中学受験 メリット・デメリット、確認事項を解説
こんにちは。発達に特性のあるお子さんの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートするキズキ共育塾の寺田淳平です。
発達障害のお子さんをお持ちの、またはお子さんが発達障害ではないかと思っているあなたは、お子さんの中学受験を行うべきかどうかで悩んではいませんか?
本コラムでは、発達障害の子どもが中学受験をするメリット、デメリット、確認事項などを徹底解説します。
受験に向けて親御さんができるサポートも紹介しますので、発達障害のお子さんの中学受験でお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。(参考:鈴木慶太『親子で理解する発達障害 進学・就労準備の進め方』)
目次
発達障害とは?
まず、発達障害の概要を説明します。
少し長いので、すでにご存じの方は、次章「発達障害の子どもが中学受験をするメリット3点」までお進みください。
発達障害とは、先天的な脳の機能の偏りによって、社会生活やコミュニケーションに困難が生じている状態のことです。
2013年に刊行されたアメリカ精神医学会の定める診断基準『DSM-5』によると、主な発達障害として以下の3つを挙げることができます。
- ADHD(注意欠陥・多動性障害)
- ASD(自閉症スペクトラム障害)
- LD(学習障害)
発達障害の特性の中には、程度は異なりますが、非発達障害の人にも見られることがあります。「ある人が発達障害かどうか」は、専門医だけが判断できます。
中には、診断基準を満たすほど特性が強くないことから、確定診断は下りないものの、社会生活で困りごとを抱えている「グレーゾーン」と呼ばれる人もいます。
お子さんの発達障害を疑っている方は、以下の各発達障害の特性を参照しつつ、まずは専門医のもとで検査を受けることをオススメします。(参考:村上由香『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本』)
なお、発達障害は病気とは異なり、あくまで「目立ちやすい特性がある」というだけです。
日常生活などにおける「困難」は、過ごし方の工夫などで対策できますので、ご安心ください。
①ADHD(注意欠陥・多動性障害)
ADHDは、正式名称を注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)という、発達障害の一種です。
特性の程度や現れ方には個人差がありますが、ADHDには大きく分けて「不注意」と「多動・衝動性」の2つの特性が見られます。
具体的な困難としては、以下が挙げられます。
不注意による困難
- 忘れ物や記入漏れなどのミスが多い
- 確認作業がうまくいかない
- 整理整頓が苦手で物を失くすことが多い
多動・衝動性による困難
- 気が散りやすく、貧乏ゆすりなど常に身体を動かしていないと落ちつかない
- 他人の意見に耳を傾ける前に発言したり行動したりする
- 優先順位をつけることが苦手で、場当たり的になりやすく、締切を守りづらい
②ASD(自閉症スペクトラム障害)
ASD(Autism Spectrum Disorder、自閉症スペクトラム障害)とは、社会性・コミュニケーション・想像力の3つにおいて特性が目立つ発達障害です。
具体的には、以下のような特性が目立ちやすいと言われています。
社会性における特性
- 場の状況や上下関係に気が回りづらく、TPOに合わせた行動が難しい
- 話を聞いていないと誤解されやすい
コミュニケーションにおける特性
- 質問の意図、身振り、比喩、冗談などを理解しづらい
- 報告、連絡、相談がうまくできない
想像力における特性
- 決まった順序に強いこだわりを見せる
- 予定が変わるとパニックになりやすい
- 暗黙のルールなど明示されてない決まりに疎い
その他にも、ASDには聴覚過敏などの「感覚過敏」が併存する子が少なくありません。
③LD(学習障害)
LD(学習障害)とは、「読む・聞く・話す・書く・計算する・推論する」といった6つの能力の1つ以上に、習得や使用の困難がある発達障害です。
文部科学省の定義では、「学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない」という条件が付きます。
「読む・聞く・話す・書く・計算する・推論する」のうち、どれに困難を覚えるのかは、各々の特性により異なるため一概には言えません。
しかし、「特定の情報処理が難しい」という困難に共通点があります。
例えば、読字障害の場合は「教科書の文章がうまく読めない」、書字障害の場合は「文字を書いたり覚えたりすることが苦手」です。
このようなLDは、その他の発達障害に比べると、初等教育が始まる段階で特性を自覚しているケースが少なくありません。
発達障害の子どもが中学受験をする3つのメリット
この章では、発達障害の子どもが中学受験をするメリットを見ていきましょう。
受験となると、一般的には「私立中学」を受験することになるはずです。
そのため、ここで挙げるメリットは、基本的には、「公立中学」と比較してのメリットということになる点は、あらかじめご了承ください。
メリット①障害特性に合った環境を選びやすい
1点目はのメリットは、障害特性に合った環境を選びやすいことです。
公立中学では基本的に一律・一斉の指導が行われます。そのため、一人ひとりの特性に合う指導や学習環境の提示が難しい面があります。
また、学校設備についても、学校ごとに大きな差はありません。
一方、私立の中学校では生徒ひとりひとりの個性を伸ばす指導をしているところが多いです。そのため、発達障害の特性を「個性の一つ」として理解してもらいやすいという特長があります。
学校によっては、発達障害の子の受け入れを積極的に行っているところもあります。そうした中学校であれば、より障害特性に合わせた指導を受けられるでしょう。
さらに、私立では学校設備の強化に力を入れている学校も多いです。中にはICT教育(パソコンやタブレット端末、インターネットなどの情報通信技術を活用した教育手法のこと)に力を入れている学校もあります。
そのため、授業や試験でタブレットの使用が許可されているという場合には、文字の読み書きが苦手なLDの子どもが受験・入学するのに適していると言えるでしょう。
ただし、公立中学校でも「合理的配慮」の一環として、タブレットの使用などが許可される場合があります。
しかし、その場合は、発達障害の子どもだけが「特別に」許可されることになります。
あらかじめ全員がタブレットの使用を許可されている学校に比べると、周りの子どもの不公平感につながり、学校生活に馴染みづらくなるなどの問題が生じることもあります。
そういった面から見ても、私立中学の方が比較的、障害特性に合った環境を選びやすく、伸び伸びとした学生生活を送りやすいと言えるでしょう。
メリット②小学校での人間関係をリセットできる
小学校での人間関係をリセットできることを、中学受験のメリットに挙げる人もいます。
現在、東京都などでは、学区によって入学する中学校を区切る「学区制」ではなく、学校を自由に選べる「学校選択制」を採っています。
しかし、目黒区や豊島区などは、完全に自由というわけではなく、隣接する区域内での選択が可能となる「隣接区域選択制」となっていますし、東京都と大阪府を除いた都道府県では未だに「学区制」を実施しています。(参考:東京都『都公立学校数、学校選択制の実施状況等』)
そのため、公立の中学校では、小学校の同級生の多くがそのまま進学するため、人間関係も維持されることが多いです。
これは、小学生の頃に、いじめなどを経験して、「新しい環境でやり直したい」と思っている子どもにとっては、大きな障壁になる点でしょう。
その一方、私立の中学校では、学区に関わりなく生徒を募集しています。
さらに、中学受験によって、校風や成績に見合った子どもが、私立の中学校には集まります。
そのため、小学校の頃とは違った同級生とともに、新しい環境で再スタートを切りやすいということは言えるでしょう。
メリット③(中高一貫の場合)高校受験の必要がなくなる
中高一貫校に入学した場合には、高校受験をする必要がなくなるというメリットも期待できます。
中高一貫校とは、中学校と高校の教育に一貫性・統一性を持たせるために、基本的には無試験で高校に上がることのできる、俗に言う「エスカレーター式」の中・高等学校です。
そのため、通常、中学受験を通れば、併せて高校進学も見込める仕組みになっています。
大学まである学校の場合は、大学受験の必要もなくなることがあります。
ただし、学校によっては、進学にあたって選抜試験を行うところもあります。また成績次第では中学校でも留年をする可能性もあります。その点は心に留めておいてください。(参考:文部科学省『中高一貫教育Q&A:種類・制度・入学に関すること』)
なお、中高一貫校は私立ばかりではなく、東京都立白鴎高校・附属中学校のように、公立校にもあります。
発達障害の子どもが中学受験をする3つのデメリット・注意点
発達障害の子どもが中学受験をするときには、メリットだけではなく、デメリット・注意点もあります。
この章では3点に絞って、確認していきましょう。
デメリット①受験勉強が大きな負担になることがある
中学受験のための勉強が、お子さんの負担になることがあります。
発達障害の有無に関わらず、受験勉強によって、お子さんは多少なりともストレスを感じるでしょう。
発達障害の子どもの中でも、特に、座学などが得意でない傾向があるADHDや、読み書きが苦手な傾向のあるLDの子どもは、受験勉強による負荷が大きくなるかもしれません。
発達障害の特性ゆえに勉強がうまく進まなかったり、思ったより模試の点数が取れなかったりすることで、ストレスを溜め込む子どももいます。
その結果、いわゆるノイローゼや自信喪失、うつ病につながるケースもあります。
こうした発達障害に伴う精神障害を「二次障害」と呼びます。
二次障害が悪化すると、成長してからも「自分は何をやってもうまくいかないのではないか」という自尊心の欠如や不安が付いて回ることもあります。
しかし、かかりつけ医や専門のカウンセラーなど、第三者によるアドバイスを得ながら、無理なく受験勉強に取り組むことで、お子さんの負担は軽減できることがあります。
もし、中学受験によるお子さんへの負担を心配される場合は、積極的にこのような専門家の意見を仰ぐようにしましょう(専門家のいる支援機関については後述します)。
デメリット②状況によっては留年する可能性がある
私立の中学校では、状況によっては留年する可能性があります。
公立の中学校では、「年齢主義」という考えに基づいて義務教育を行っています。そのため、出席日数が少なかったり成績が悪かったりしても、基本的には進級・卒業できます。
ただし、例外として、不登校や入院などで極端に欠席日数が多い場合、校長からの確認に保護者・本人が同意した上で、留年することはあります。
しかし、「年齢主義」は法的に定められたものではなく、あくまでも「方針」です。
それゆえ、公立に比べて独自の方針を採ることの多い私立では、成績不良や病気療養、引きこもり、不登校など、留年となる「例外」の範囲が広いため、留年する可能性が若干高くなります。
実際、玉川学園のように、学習到達度が不足した場合には留年もありうる旨をウェブサイト上で明記している学校もあります。(参考:玉川学園『Q&A|中学部・高等部』)
とはいえ、留年者数自体は少なく、発達障害による学習の困難などがあっても、よほど成績や出席日数に問題がない限りは進級できます。過度に不安に思う必要はありません。
あくまでも、「公立に比べて」留年の可能性が高まるという理解に留めておいてください。
デメリット③学費がかかる
最後のデメリットは、学費がかかることです。
文部科学省の2018年度の調査によると、1年当たりの公立と私立それぞれの学校教育費、学校給食費、学校外活動費を含む「学習費総額」の平均は以下になります。(参考:文部科学省『平成30年度子供の学習費調査の結果について』)
- 公立中学校:488,397円
- 私立中学校:1,406,433円
このように、私立の方が年間で「100万円」近く学費がかかるとされています。
さらに、中学受験をするにあたって受験料も上乗せされます。中高一貫校に入学する場合には、高校3年間で支払う学費も考慮しなくてはなりません。
このような経済的な面をデメリットに挙げる人も少なくないようです。
発達障害の子どもが中学受験を考えるときの7つの確認事項
ここからは具体的に、発達障害の子どもが中学受験を考えるにあたって、事前にチェックしておきたい確認事項を紹介します。
前提として大切なのは、「親子間で悩みを抱え込まずに、周囲の人に相談すること」です。
ここで言う「周囲の人」とは、担任の先生やスクールカウンセラー、発達障害の子どもの指導実績がある塾のスタッフなどの専門家です。
もちろん、同じ状況での中学受験の経験がある親御さんに体験談を聴くのもよいでしょう。
上記の点を意識しながら、以下の確認事項をチェックしていってください。
7つもあるのか…とお思いかもしれませんね。ですが、一つひとつはそんなに難しい話ではありませんので、まずはリラックスしてお読みください。
確認事項①お子さんの意思が尊重されているか
1点目の確認事項は、お子さんの意思が尊重されているかです。
発達障害のお子さんの進路選びでは、「その進路が発達障害とどう関係するか」という観点はもちろん重要です。
しかし、何よりもまずは「本人の望む進路かどうか」を確認することが大切です。
もしかすると、次のような希望が、お子さんの中であるかもしれません。
- そのまま公立に進学したい
- 中学受験をしたくない
- 受験するなら○○中学がいい
また、小学校での通常学級についていくのが難しかった場合は、「特別支援学校に通う」ことも選択肢に入るでしょう。
まずは、お子さんの現時点での意思を確認するために、じっくり話し合う場を設けて、それを尊重することを心掛けてください。
その上で、お子さんの希望する進路が「お子さんの特性や学力などに合っているか」を調べたり、詳しい人に相談したりすることで、よりよい進路が見つかるはずです。
結果としては、お子さんの第一希望ではない進路や、元々親御さんが考えていた進路を選択する可能性もあります。ですが、「お子さんを思うあまり、親御さんだけで進路を決める」ことにならないように心がけましょう。
お子さんは「未成年の子ども」であり「発達障害(の可能性がある人)」でもある一方、「一人の個人」でもあることを忘れないようにしてください。
まずは、何よりも「お子さんの意思を尊重すること」を念頭に置いた上で、以下の確認事項をご覧ください。
確認事項②発達障害があることを中学校に開示するか
2点目は、発達障害があることを中学校に開示するかです。
前提として、「発達障害であることを中学校に知らせなくてはいけない」という定めはありません。
ただし、発達障害に関連して、中学受験の際に特別な措置を受けたり、進学後に配慮・支援を受けたりしたい場合は、開示する必要があります。
学校側でも、その子の発達障害の特性に合った対応ができるよう、前もって準備する必要があるからです。
中学受験を考えている方は、お子さんの発達障害の特性や程度を考慮して、開示すべきかどうかをよく検討し、必要に応じて発達障害に詳しい人に相談するようにしましょう。
確認事項③入学後にどのような配慮を受けられるか
3点目は、進学後にどのような配慮を受けられるかです。
発達障害の子は先生と相談した上で、学校生活や学習に関する「合理的配慮」を受けることができます(程度や内容は中学校によって異なります)。
先述したように、書字障害の子どもであれば、「特別にタブレットのような電子端末の使用許可を得る」といったことが、この「合理的配慮」にあたります。
特に、LDの子どもは、情報の入出力の媒体を変えるか、電子機器などの道具を頼ることで、学習に伴う困難がだいぶ緩和されます。
こうした合理的配慮が効果を発揮するため、どういった配慮を受けられるかを確認することが大切です。
また、中学校によっては、発達障害の子どもに対して「個別支援」を実施しているところもあります。
そのため、中学受験をするにあたっては、「進学後にどのような配慮を受けられるか」を志望校へ詳しく問い合わせるようにしましょう。
確認事項④受験勉強が過剰な負担になっていないか
4点目は、受験勉強が過剰な負担になっていないかです。
先述したように、受験に伴うストレスが、自信喪失や精神障害などの二次障害を招く可能性があります。
そのため、「学校や塾に通いたがらない」「いつも疲れた様子で元気がない」といったお子さんの変化を、注視することが大切です。
現状の成績や障害の程度によっては、大きな負担を避ける必要もあります。必ずかかりつけ医や支援機関の専門家に相談をしながら、お子さんの様子を見極めるようにしましょう。
もし、お子さんが受験に対するストレスを過剰に感じているのであれば、中学受験以外の進路を検討することも大切です。
確認事項⑤学校の制度や校風から考えて、卒業できそうか
5点目は、学校の制度や校風から考えて、卒業できそうかです。
前述の配慮・支援と併せて、次のような「学校の制度や校風」を確認しておくことも大事です。
- 進級・卒業の要件はどうなっているか
- 出席日数とテストの成績(単位)はそれぞれどの程度重視されるか
- 授業の進度は早いか
- 先生は厳しいか優しいか
- 生徒の雰囲気はどうか
- 部活動に力を入れているか
- 行事や地域との交流を大切にしているか
お子さんの特性や性格はそれぞれですので、「こうだったらいい」ということは言えません。総合的に判断するために、必要に応じて問い合わせ・見学などをして、卒業まで無事に通えるかどうかを見極める参考にしましょう。
確認事項⑥学校の設備は適切か
学校の設備は適切かも重要なポイントです。
例えば、LDや視覚過敏の子どもには、教室の照明や黒板、ホワイトボートの色などによっては、集中しづらかったり、板書が頭に入りづらかったりする可能性があります。
また、ASDの子どもには、一人で学習できる自習室や図書室など、静かに休憩できそうな環境が整っているかも大切です。
それゆえ、学校の設備を確認するときには、お子さんの障害特性を念頭に置いて、「学習や生活に負担がかからないかどうか」という視点を持つようにしましょう。
学校によっては、事情を話した上で、受験前に見学なども可能です。
中学受験の前までに、親御さんとお子さんご自身の目で、志望校の設備を確認することをオススメします。
確認事項⑦通学時間や手段に無理がないか
通学時間や手段に無理がないかも、忘れてはいけません。
特に、ASDや感覚過敏が併存する子どもには、混み合うバスや満員電車などに乗るだけでも、大きなストレスになります。
また、例えば通学時間が片道1時間を超えるような遠方の進学先だと、障害の程度に関わらず身体的な疲労が溜まりやすいため、あまりオススメできません。
中学受験に合格したとしても、物理的に通いづらいところでは、負担が増すばかりです。
通学時間や手段に無理がないかは、受験をする前に確認するようにしましょう。
発達障害の子どもの中学受験に向けて親ができるサポート
最後に、発達障害の子どもが中学受験を目指すにあたって、親御さんができるサポートを紹介します。
ご紹介する前に、サポートを行うにあたって大切なことが2点あります。
- 情報収集は早めに行う
- 詳しい人の意見を求める
中学受験の際に特別な配慮を受けるときなどは、学校側に早めに申請が必要なこともあります。できるだけ早く情報収集を始めるようにしましょう。
また、お子さんが「中学受験が本当に可能かどうか」は、その子どもの成績や特性など、多くの面を踏まえて見極める必要があります。
そのため、親御さんだけの判断のみでなく、医師や進学塾の講師といった、詳しい人の意見を求めることが重要です。
上記2点を前提に、以下のサポートを実践してみてください。
サポート①担任の先生・スクールカウンセラーとよく相談する
1つ目は、担任の先生やスクールカウンセラーとよく相談することです。
「どの教科が苦手か」といった具体的な勉強の問題や、学校生活の悩みなど、身近でお子さんの様子を見ている担任の先生であれば、込み入った相談にも乗ることができます。
また、お子さんが通っている学校にスクールカウンセラー在籍していれば、普段の生活の悩みだけでなく、発達障害に伴う悩みに対しても、アドバイスを得られるでしょう。
場合によっては、お子さんが受けられる公的支援や、適切な支援機関を紹介されることもあるはずです。
いずれも学校教育・制度を知る専門家です。中学受験に関わらず、お子さんの進路で全般的にお悩みなら、まずは担任の先生やカウンセラーを頼ってみてください。
サポート②専門機関・学習塾に協力を求める
2つ目は、専門機関や学習塾に協力を求めることです。
特に重要なのが、かかりつけの医師や臨床心理士との情報共有・協力です。
小さい頃から発達障害の傾向が明らかになっている場合、継続的にお子さんを診ている先生がいると思います。
こうした先生であれば、専門知識を有しているだけでなく、発達の経過も知っているため、あなたのお子さんに適したアドバイスを得られるはずです。
また、学校以外にも、+αになる支援体制・相談先はたくさんあります。
例えば、発達障害の子どもの指導実績がある学習塾などであれば、学習面のサポートだけでなく、生活面におけるアドバイスも得られるなど、多角的な支援を期待できるのでオススメです。
自治体の障害福祉担当窓口や、「発達障害者支援センター」などの公的機関を利用しながら、ぜひお子さんに合った支援機関を探してみてください。
サポート③親の会で情報収集や意見交換をする
3つ目は、親の会で情報収集や意見交換をすることです。
発達障害に関する「親の会」が、全国各地には存在します。
親の会には、お子さんの発達障害に関する悩みを抱えた方や、その悩みを乗り越えた方が集います。
例えば、「JPALD(特定非営利活動法人 全国LD親の会)」では、東北や関東など、各地を6ブロックに分けて、保護者による情報交換会、勉強会、LDの子の友達作り、イベントなどを催しています。
親の会に参加することで、次のようなメリットが期待できるでしょう。
- 同じように中学受験を考えている親御さんと意見交換をして有益な情報を得る
- 悩みを共有できて気持ちが楽になる
興味のある方は、「発達障害 親の会」と検索すれば、ご紹介した団体以外にも、多くの団体の活動をお調べいただけます。
「親の会」は、それぞれに目的や性質が異なりますので、もし一つの会が合わなかったとしても、別の会を探してみることをオススメします。
サポート④適度に休ませる
中学受験に向けての勉強では、適度に休ませることも大切です。
ASDやADHDの子どもの中には、集中しはじめると休まずに長時間作業に取り組む「過集中」の傾向があるお子さんがいます。
しかし、集中が続くといっても、疲れ知らずというわけではなく、中には疲労で倒れる子どももいます。
そのため、お子さんがあまりに集中しすぎるようであれば、親御さんが声を掛けて、休憩を取るといったサポートが必要です。
ちなみに、受験の際には、お子さんだけでなく、親御さんも気を張り詰めることが多々あるかと思います。
意外と忘れがちですが、親御さんの方も、時には一人で羽休めをしたり、ご自身の趣味を楽しんだりといった気晴らしが大切です。
親御さんが余裕のある姿を見せることが、お子さんの心のゆとりにもつながりますので、ぜひ親御さんも適度にリフレッシュするようにしましょう。(参考:星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち』)
サポート⑤集中しやすい環境を整える
5つ目は、特性に合わせて集中しやすい環境を整えることです。
発達障害の子どもの中には、塾などの大人数の教室で勉強するよりも、静かな環境でマイペースに勉強した方がよいという子どももいます。
そうした発達障害の特性を意識せずに、「○○の受験対策コースの評判がよいから通わせよう」といった考え方をすると、逆に受験勉強がはかどらないだけでなく、自信喪失につながる場合があります。
また、ご家庭でも、発達障害に伴って聴覚過敏などの特性がある子どもが勉強するときは、できるだけ静かにするなど、必要に応じて配慮するようにしましょう。
このように発達障害の特性に合わせて、勉強に集中しやすい環境を作ることが、中学受験を目指す上でのポイントです。
なお、塾を選ぶ際には、発達障害の特性に合った指導を受けやすい「個別指導」の塾の方をオススメします。
サポート⑥ペアレントトレーニングを受ける
最後は、ペアレントトレーニングを受けることです。
ペアレントトレーニングとは、発達障害の子どもを持つ親に、「効果的な親としてのスキル」を教えるもので、子どもへの接し方を見直す意味でも非常に有効だと言われています。
ペアレントトレーニングの内容には、以下のようなものがあります。
- 各発達障害の特性について理解を深める講習
- 各発達障害に見られる行動を分類して理解する
- 子どもの良いところへ目を向ける練習する
- 効果的な指示の仕方や好ましくない行動を取ったときの対処法を勉強する
- 同じ悩みを持つ親御さん同士で情報交換をする
医療機関や教育機関などで指導者を招き、毎週決まった時間に上記のようなトレーニングを実施します。
地域の施設で行われているペアレントトレーニングに参加すれば、年長のお子さんを持つ親御さんから、進学先などで得られる支援について、詳しい話を聞けることもあるでしょう。
受験に限らず、発達障害のお子さんのサポートを充実させたいという親御さんは、お近くの機関で実施されているペアレントトレーニングを探して、受けてみてはいかがでしょうか?
まとめ~発達障害の子どもの中学受験では、子どもの意思が重要です~
繰り返しにはなりますが、中学受験に際しては、まずはお子さんの意思を確認することが大切です。
親御さんが勇み足になって、受験を推しすぎていないかを振り返ってみてください。
その上で、中学受験を望むようであれば、担任の先生やかかりつけ医、指導塾の講師といった専門家に意見を求めるとよいでしょう。
親子間で抱え込まずに、周りの人の協力を得ることが、中学受験を成功させるための第一歩です。
ぜひ、このコラムを参考に、お子さんに合った進路を選べるよう、サポートをしてください。
さて、私たちキズキ共育塾は、お悩みを抱える方のための個別指導塾です。
生徒さんには発達障害の方も少なくなく、発達障害の方々の進路相談・勉強支援などにも実績があります。
キズキ共育塾の概要をご覧の上、少しでも気になる方は、お気軽にお問い合わせください。
/Q&Aよくある質問
発達障害の子が中学受験をするメリットを知りたいです。
- 障害特性に合った環境を選びやすい
- 小学校での人間関係をリセットできる
- (中高一貫の場合)高校受験の必要がなくなる
発達障害の子が中学受験を考える際に、しておくべきことはありますか?
- お子さんの意思が尊重されているか
- 発達障害であることを中学校に開示するか
- 入学後にどのような配慮を受けられるか
- 受験勉強が過剰な負担になっていないか
- 学校の制度や校風から考えて、卒業できそうか
- 学校の設備は適切かどうか
- 通学時間や手段に無理がないか