元ひきこもり芸人 山田ルイ53世氏インタビュー【第4回】

実は元ひきこもりである髭男爵 山田ルイ53世氏に、キズキ共育塾がインタビューを行いました。キズキ共育塾は、不登校・ひきこもり・中退などの挫折を経験した方々のための学習塾です。全4回でお届けします。(山田氏のご経験については、ご著書「ヒキコモリ漂流記」に詳しく書かれています。)
第4回(最終回)となる今回は、「人生には、無駄があってもいい」です。

インタビュアー:株式会社キズキ代表取締役社長 安田祐輔(写真左)


人生には、無駄があってもいい

ひきこもり経験を美談にしたがる人がいる

山田氏:ひきこもりの経験について話をすると、どうしても落とし所を美談にしたがる人が多いんですよ。「その期間があったから今のあなたが…」みたいな。

いろんな気持ち、心境があってひきこもっていたわけなんですが、普通に考えたら、やっぱり友だちと触れ合った方がそりゃ楽しいし、学校に行って勉強した方が充実してるし、運動して、アホみたいなこともした方が人生にとっては絶対いいんですよ。

僕的には、ひきこもっていた6年間は、ほんまに無駄やと、人生をドブに捨てたと思ってるんですよ。そのおかげで本を出せたというのはプラスなんですけど(笑)。

でも、それを「無駄」にしたくない人たちっているんですよね。ちょっとした美談にしたいというか。その話を突き詰めていくと、「無駄やったらもうアカン」と思っているんだと気づいたんです。無駄があったら、その人生を2級品みたいに思ってしまうんだと。その気持ちが、逆に美談にしたがる、落とし所を見つけたがっているんだなと。

無駄でええやんと。なんのプラスにもならない、ゼロの部分が人生にあってもええやんと。なんでそこまで、ええ感じで仕上げたがるかなという疑問はありますね。

無理やり美談を求められると、当事者には重荷になる

安田:僕の場合は、ひきこもり経験があったおかげでキズキの起業やいまの生活ができているということはあるんですが、美談にはしていないつもりです。でも経験をうまく活かしていこうという視点はありますね。とは言え、あんな長い期間はいらなかったな。2、3か月ひきこもって、それを膨らませて話す力があればそれでよかったなと(笑)。

山田氏:本人が思う分には、その経験が美談であろうが無駄であろうが、どっちでもいいと思います。ただ、周りの人間が「いやいや、あのひきこもり経験が、期間があったからこそいまの君が…」と言うのはちょっとね。

無理やり美談にしなくてはいけないという感覚が、当事者にとってはむしろ重荷なんだと思います。なんでも美談にしたがるバイアスが、この世に満ち溢れすぎてる。

安田:キズキ共育塾への取材でも、元ひきこもりが慶應義塾大学に受かった、というようなキラキラした事例は、すごく好まれます。でも、元ひきこもりが調理士専門学校に進んだ、というような事例は、メディアからはあまり好まれませんね。本人が楽しく生きていけるようになればそれでいいと思うのですが。

相方・ひぐち君――唯一の友だち

ひぐち君に出会うまでは、相方を何回も変えていた

安田:芸人さんとして活躍される中で、特に感謝している方はいらっしゃいますか?例えばひぐち君さんとか。

山田氏:相方に関して言えば、感謝していないこともないですね。

僕は、芸人を目指して、最初は東京NSC(吉本興業の芸人・タレント養成所)に入ったんですけど、そこも卒業の1、2か月前くらいに辞めています。その後、元ひきこもりとは思えないくらいまあまあアクティブやなと思うんですけど、自分からホリプロさんのお笑い勉強会に行ったりしてて、その過程で相方を何回も変えているんです。

当時、芸人を目指す人には、高校までの友達と一緒に養成所に入ってコンビを組むというのが多かったんですが、僕は人間関係を切ってきているから、それはできない。で、元ひきこもりの僕のコミュニケーション能力で近寄ってくる人間は、残念ながら、失礼ながら、そんなに面白くない(笑)。

「溺れる者は藁(ワラ)をも掴む」の藁として相方を掴んでるわけですから、藁は藁なんですよ。向こうにとっては僕が藁でしたんでしょうけど。そんな中で、最後に掴んだ藁がひぐち君だったわけですよ。やっぱり実力的に藁なんですけど(笑)。

ひぐち君は、相方というよりも唯一の友だち。お互いいろいろ折れながら

山田氏:僕はそうやって何度もコンビ替えをしてるわけですから、芸人としてなかなかスタートを切れていなかったんですよ。当時の相方たちとは、お互いに、ちょっとやったらもうアカン、ちょっとやったらもうアカン、となっていました。

そうした経験から、「コンビでやっていく中で一番大事なのは才能やない、いかに続けるかや」と気持ちを切り替えたときに出会ったのが、ひぐち君だったんですよ。で、そのままずーっと来てます。

ひぐち君が僕に腹を立てることもいっぱいあったと思うんですよ。僕だってまっすぐな人間じゃないですから。お互いいろいろ折れながら続けてこれてる、ということには感謝しています。

ひぐち君はイヤでしょうけど、僕にとっては相方というより唯一の友だちです。

安田:それまでは人間関係を切ってきたのに、ひぐち君さんとは続いているわけですね。

山田氏:そうですね。ひぐち君には憧れることも1個もないんですが。ホンマに(笑)。ここ何年かで痛感したんですが、ひぐち君は、頑張れないというか、人間的にもダメなんですよ。いろいろ文句はあるんですが、ずーっと付き合い続けてくれているという感謝はあります。

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