元引きこもりが語る、失敗しない引きこもり支援団体の探し方

元引きこもりが語る、失敗しない引きこもり支援団体の探し方

引きこもりの方々の学び直しを完全個別指導でサポートするキズキ共育塾の岡田和哉です。

引きこもり支援団体を探すとき、どんな支援団体なら安心して利用できるのかわからないと悩むことはよくあります。

今回は、元引きこもりである私の経験から、失敗しない支援団体の探し方をお伝えします。

「この支援団体がオススメ!」という具体的な紹介はしませんが、支援団体を探すときの一助となれば幸いです。

共同監修・不登校新聞社 代表理事 石井志昂氏からの
アドバイス

ひきこもり状態からの回復には、特効薬もなければ、万能な対応もありません。
その上で、ひきこもりに対する支援策は、経験者たちの「私の場合はこれがよかった」という経験談に基づいて考えられています。
だから、支援団体に行っても合わなかったという人もいますし、場合によっては傷ついたという人もいます。
それほど、ひきこもりの支援は難しいことなのです。

ですが、自分に合う場所はあります。ゆっくりと自分に合った場を探してもらえれば幸いです。

探し方①「引きこもりの段階」に合った支援団体か?

支援団体を探す上でまず重要なのは、「引きこもりの段階」に合わせた選択です。

「初期・軽度の引きこもり」と「数年間にわたる引きこもり」では、必要な支援も異なるからです。

以下、引きこもりの段階別にオススメの支援団体を紹介します(※各段階の名称・定義は、医学的・科学的なものではありません)。

①引きこもり初期(軽度の引きこもり)

引きこもり初期(軽度の引きこもり)とは、次のような段階です。

  • 不登校などをきっかけに引きこもりがちになった
  • ちょっとした外出はできるけれども定期的な外出がない

この段階の方には、次のような支援団体がオススメです。

引きこもり初期にオススメ

  • フリースペースなどの、「居場所」を提供している支援団体
  • 通所型の、就労・進学支援団体

「居場所」へ定期的に外出することで、本格的な引きこもりになることを防ぐことができます。

なお、「引きこもり初期(軽度の引きこもり)の方」には、「休息が必要な時期にある方」も多くいます。

引きこもり期間が長引くと社会復帰にかかる時間も長くなりがちですが、かといってこの段階で無理な外出があると心身が休まりません。

気負わず気軽に通えるような支援団体を探しましょう。

②本格的な引きこもり期

本格的な引きこもり期とは、次のような段階です。

  • 家から一歩も出ない(出られない)

この段階では、生活リズムが崩れ、その影響で無気力な状態になっている方が多くいます(かつての私もそうでした)。

生活リズムを整えないことには、学校に通うにしても働くにしても、引きこもりからの脱出は難しいです。

そうした方には、次のような支援団体がオススメです。

本格的な引きこもり期にオススメ

  • 寮などに入所して、規則正しい生活などを身につけることができる支援団体
  • 出張相談などの訪問支援を行っている団体(勉強の場合は家庭教師も)

引きこもりが本格化した段階では、社会復帰にかかる時間が比較的長くなる傾向があります。

そのため、本格的な引きこもりからの社会復帰のためには、あせらずに時間をかける覚悟を持つことが大切です。

逆に言うと、時間をかければ必ず前に進めるので、希望を持って少しずつ前に進みましょう。

引きこもりの方のための家庭教師の例の一つとして、私たちが運営する家庭教師・キズキ家学(やがく)があります。

③引きこもり脱出期

ある程度生活リズムも整い、外出の不安もない状態の方や、引きこもりから脱出したいと思い始めた段階です。

心身のコンディションは引きこもりからの脱出に向けて高まりつつ、具体的に何をしたらいいのかわからないという方も多いです。

そうした方には、次のような支援団体がオススメです。

引きこもり脱出期にオススメ

  • 通所型の、就労・進学支援団体

ただし、心身の状態がよくなっていてもあせりは禁物です。

この時期の特徴として、「調子のよいときもあれば、何らかのきっかけで調子を崩したりするときもある」と、一進一退になりがちだからです。

自分のペースで一歩ずつ前に進めるよう、メンタル面もしっかり支援してくれる団体を探しましょう

私たちキズキ共育塾も、引きこもり・不登校・中退などからの学び直しをサポートしています。

探し方②引きこもり本人や家族と、時間をかけて関係性を築くことができる支援団体か?

引きこもり本人や家族と、時間をかけて関係性を築くことができる支援団体か?

段階別にオススメの団体があっても、その中で具体的にどこの支援を受けるのかわからないこともあるでしょう。

ここからは、具体的な支援団体の探し方と注意点についてお伝えします。

次のことを確認しましょう。

確認事項

  • その支援団体が、時間をかけて当事者や家族と関係性を築くことができるかどうか

引きこもり状態の解決には、ほとんどの場合、時間がかかります。

なぜなら、引きこもり生活が長引くことで、生活リズムの悪化や、自己否定、無気力などの状態がどんどん連なった悪循環の中にいることが多いからです。

例えば、私の場合は、高校時代に不登校となり、そのまま引きこもりとなりました。

その結果、外に出ないので体力もなくなり、生活リズムも乱れました。

そうなると、それまでできていたこともできないようになり、「できない自分」に苦しむ自己否定や、「新しいことに挑戦してもどうせ無理だろうな…」と考える無気力状態になっていました。

そして、余計に外に出なくなる、生活リズムも崩れるという悪循環の中にいたのです。

そのような悪循環を解決するには、どんな人であっても時間がかかるということです。

そのため、時間をかけて本人や家族と関係性を築き、根気強く向き合う姿勢のある団体が「いい団体」であると、私は思います。

個人的には、「必ず短期間で解決します」と宣伝している支援団体は、ちょっと注意が必要かなと思います。

探し方③引きこもり本人の性格・状態や抱える問題に柔軟に寄り添える支援団体か?

「引きこもりの人たち」には、共通する部分ももちろん多くありますが、その前に(当たり前ですが)一人一人が異なる人間です。

そのため、引きこもり支援には、最初に述べた段階別タイプに加えて、次のことも確認しましょう。

確認事項

  • 本人の状態や抱える問題、性格などに応じたタイプや柔軟さがあるか

ものすごく単純化した例(イメージ)を言えば、「フリースペース」の中でも、次の2種類では人によって向き不向きが異なります。

  • 自宅から近い、年齢の近い人たちが集まるタイプ
  • 自宅から遠い、老若男女が集まるタイプ

入寮型支援でも、次の2種類では、向き不向きがやはり大きく異なるでしょう。

  • 厳格なルールがあるタイプ
  • のんびりとした、ある程度自由なタイプ

さらにそのタイプの中で、一人ひとりに応じて、その日その日の心身の調子などに応じて、より柔軟な支援が必要となります。

柔軟な対応がある支援団体を探しましょう。

これまでのことを逆に言うと、次のような団体は柔軟な対応を行っていない場合もあり、その点では注意が必要です。

注意が必要な団体

  • 「引きこもりは絶対に親の責任(自己責任、家庭の責任)」などと断言する支援団体
  • 「引きこもりは○○という方法で絶対に解決する」などと一つの方法論を掲げる支援団体

探し方④引きこもり本人に合った理念・ビジョンを持つ支援団体か?

さて、支援団体のほとんどは、支援に関する理念やビジョンを掲げています。

理念やビジョンはその支援団体を知るために重要な情報です。確認した上で共感できるところを選びましょう。

ネット上にインタビュー記事や動画などがある場合もあるので、探してみましょう。

ただ、ネットの情報だけでは、なかなか相談先を決められない方も多いと思います。

最初の相談は無料で行っている支援団体もあるので、相談してみたいと思える団体があったなら積極的に相談してみてください。

きっと力になってくれると思います。

なお、次のような団体は、引きこもりの支援に大切な「時間をかけて信頼を築くこと」と、「本人に合わせた柔軟さ」が欠けている可能性が高いため、ちょっと注意が必要です。

注意が必要な団体

  • 相談者をおどすようなことを言う団体
  • 相談者に考える時間を与えない団体

もう少し具体的な例を言うと、次のような発言があると要注意です。

  • うちに入会しないとあなた(のお子さん)は立ち直れませんよ
  • うちの方法で立ち直れなかった人はいませんよ
  • 入会するかしないか、いま決めてください

引きこもり支援に限らず、100%通用する方法論は存在しません(だからこそたくさんの支援団体があり、あなた(のお子さん)に向いたところも必ずあります)。

これも、支援団体を選ぶときの、一つの指針になると思います。

事例:勉強も雑談もできるキズキ共育塾で、趣味の話を通じて引きこもりから脱出したA君

勉強も雑談もできるキズキ共育塾で、趣味の話を通じて引きこもりから脱出したA君

過去にキズキ共育塾に通っていた、高校不登校から引きこもりがちになった生徒さん(以下、Aくん)をご紹介します。

A君は「ゲームが好き」が高じて生活が不規則になり、もともと通っていた高校を不登校になり、中退しました。

その後は通信制高校に転校し、スクーリングなど最低限必要なとき以外は外出していない、という状況です。

逆に言えば「最低限必要なとき」には外出ができており、つまりA君は「引きこもり初期(軽度の引きこもり)の状態」でした

A君は、家にいるときはずっとゲームをしていました。

全く勉強をしないA君のことを心配したお父さまの紹介によって、A君は、通信制高校の課題サポートを受けるためにキズキ共育塾に入塾しました。

入塾当初のA君は、次のように言っていました。

「このままじゃ卒業できないかもしれないから、勉強はしなければならないと思っています。
でもゲームが好きだし楽しいから、なかなか勉強できないんです。
引きこもりなのもよくないとわかってますけど、外出する理由もなくて…」

A君を担当した講師がゲーム好きだったこともあって、授業ではゲームの話を挟みながら高校の基礎レベルの内容をゆっくり進めていきました。

講師とゲームの話ができるということが楽しくなったA君は、欠席もあまりせずに通塾していました。

講師は、A君の「ゲーム好き」自体は否定的に考えておらず、逆に、「生活に楽しみがあるのはいいことだ」と思っていました。

A君も、講師がそう思ってくれているからこそ、キズキ共育塾に通い続けることができていたのだと思います。

とは言え、A君も講師も「四六時中ゲームをプレイではダメだ」とは思っており、高校卒業後の進路をどうするか、お互いに話し合っていました。

そんなある日のこと、雑談の流れで講師が「友人にゲームクリエイターがいるんだよ」と話したことから、A君は、ゲームは「プレイする側」としてだけではなく、「作る」側として楽しむこともできると気づきました。

もちろんA君も「自分が楽しんでいるゲームを誰かが作っている」ということはわかっていましたが、「知り合いの知り合い」という近いところにゲームクリエイターがいるということで、一気に身近に、現実的に感じられたとのことです。

そしてA君はゲームに関連する仕事をしたいと思うようになりました。

A君は、目標ができたことで引きこもり気味の生活から脱出し、生活習慣も改まりました

その後A君は無事に通信制高校を卒業し、現在はゲーム関連の専門学校に通っています。

結果から考えると、A君にはキズキ共育塾のように「勉強も雑談もできる支援団体」が合っていたということでしょう。

その環境で、ゲームについて否定されずに、むしろゲームについての雑談を続ける中で、引きこもりがちな生活から脱出し、自分の将来像を描けるようになりました。

「雑談のできない環境」で、「ゲームなんてダメだ!」という対応だったら、おそらく同じ結果にはならなかったと思います。

最後に〜「引きこもりから再び前に進める」と希望を持ちましょう〜

最後に――「引きこもりから再び前に進める」と希望を持ちましょう

これまで、「こういう探し方がオススメ」と、「こういう団体にはちょっと注意が必要」ということをお伝えしてきました。

私が思う「注意が必要な団体」にも実績があるということは、その団体の支援が向いていた人もいるということであり、それは否定しません(私には合わないと思いますが…)。

ここで明確にお伝えしたいのは、「ある一つの支援団体の支援方法」が自分に合わなかったからと言って、「自分はやっぱりダメだった…」と落ち込む必要はないということです。

今は引きこもりの支援団体はたくさん存在します。段階に合わせて、自分(やお子さん)に合わせて、向いているところを探しましょう。

引きこもりは、誰だってなり得ます。

あなたやあなたのお子さんが引きこもりであっても、失望せず、決してあきらめず、必ず再び前に進めると希望を持ってほしいなと思います。

さて、私たちキズキ共育塾も不登校や引きこもりの方の支援団体の一つです。

キズキ共育塾の支援の特徴は、「完全個別指導の授業で、勉強とメンタルの両面を支援する」ということです。

通塾して授業を受けるだけでなく、スカイプやラインを通じて、ご自宅でオンライン授業を受けることも可能です。

無料相談を行っていますので、よろしければ選択肢のひとつとしてご検討ください。一人ひとりに応じた、柔軟なお話ができると思います。

/Q&Aよくある質問

引きこもりの支援団体の探し方の観点を知りたいです。

一例として、「引きこもり本人や家族と、時間をかけて関係性を築くことができる支援団体か?」という観点があります。これは、引きこもり状態の解決には、時間がかかることがよくあるからです。逆に言うと、「必ず短期間で解決します」と宣伝している支援団体は、ちょっと注意が必要です。詳細はこちらをご覧ください。

引きこもりの支援団体の、よい例を知りたいです。

一例として、「本人の状態や抱える問題、性格などに応じたタイプや柔軟さがある団体」がよい団体です。「引きこもりの人たち」には、共通する部分ももちろん多くありますが、一人ひとりが異なる人間です。詳細はこちらをご覧ください。

監修 / キズキ代表 安田祐輔

やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ」も運営。

【新著紹介】

『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
Amazon
KADOKAWA公式

【略歴】

2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【メディア出演(一部)】

2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

共同監修 / 不登校新聞社代表理事 石井志昂

いしい・しこう。
1982年、東京都町田市出身。NPO法人全国不登校新聞社代表。
中学校受験を機に学校生活が合わなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から2022年まで編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた。

【著書など(不登校新聞社名義も含む)】

「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること(ポプラ社)』『フリースクールを考えたら最初に読む本(主婦の友社)』『学校に行きたくない君へ(ポプラ社)』『続 学校に行きたくない君へ(ポプラ社)』

【寄稿など(一部)】

AERAdot」「プレジデントオンライン」「東洋経済オンライン」「FRaU」など多数

サイト運営 / キズキ

「もう一度学び直したい方」の勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする学習塾。多様な生徒さんに対応(不登校・中退・引きこもりの当事者・経験者、通信制高校生・定時制高校生、勉強にブランクがある方、社会人、主婦・主夫、発達特性がある方など)。授業内容は、小学生レベルから難関大学受験レベルまで、希望や学力などに応じて柔軟に設定可能。トップページはこちら。2023年7月現在、全国に10校とオンライン校(全国対応)がある。

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