
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
こんにちは、キズキ共育塾の寺田淳平です。
不登校のお子さんをお持ちのあなたは、不登校の原因がゲームにあると考えて不安に思ってはいませんか。
ゲームはそれ自体が悪いものではありませんが、生活に障害が出るほどの依存症になると、何らかの対処をする必要が出てきます。
大切なのは、ゲームとの「うまい付き合い方」です。
そこで今回は、不登校の子がゲームとうまく付き合う方法と親御さんへの注意点を徹底解説いたします。
実際に私が不登校だった時期に、ゲームに夢中になっていた経験も交えて解説いたしますので、不登校の子を持つ親御さんはぜひ一度、読んでみてください。
動画では、このコラムの内容に補足して、実際にゲーム依存で高校を不登校だったときの生活・気持ち、ゲーム依存から抜け出した方法などを語っています。
ご興味がありましたらぜひご覧ください。
目次
不登校のお子さんがゲームばかりしているのを見ていると、もしかして不登校の「原因」はゲームにあるのではないかと考える親御さんは、多いかと思います。
「不登校の原因がゲームである」というケースは、確かにあるかもしれません。
しかし、諸々の調査やキズキ共育塾にご相談いただくケースを踏まえた上でも、それはかなり少数派のように思われます。
発達障害やゲーム依存の治療相談に携わる精神科医の八木眞佐彦先生は、自身の著書の中で、子どもにとってゲームは「学校や家庭での孤立感、対人関係のストレスなどを解消するもの」としています。(参考:花田照久・八木眞佐彦『ゲーム依存からわが子を守る本』)
つまり、八木先生の言葉を借りるなら、ゲームがその子にとっての心の拠りどころ、「生きていくための心の杖になっている」場合があるのです。
さらに、その著書の中では、ゲームを取り除くことが根本的な解決には結び付かず、それよりも「ゲームに打ち込む要因となった環境を改善する必要がある」とされています。
実際に、私が不登校だった間、惰性でゲームをやり続けていた時期がありましたが、そのときも「他にすることがない、拠りどころがない」という現状や環境への不満が根底にありました。
また、お子さんの中には、いじめや人間関係の悩みなどがきっかけで、引きこもっている子もいるかと思います。
こうした子の場合は、不登校で生じた孤独な時間を埋めるものがないから、オンラインゲームなどでネット上の人との交流を図ったり、時間を潰したりしているケースもあります。
「ゲームが原因で不登校になった」のではなく、「不登校ですることがない、またはその不安を解消するためにゲームをしているだけ」の可能性があるのです。
しかし、ゲームと関係なく不登校になった場合でも、不登校によってゲームとの距離感・バランスが崩れ、「ゲーム依存」になることは避けなければなりません。
ゲーム依存になると、就学だけでなく、日常生活にも支障が出る可能性が高いからです。
ゲーム依存は、2019年5月にWHOが「ゲーム障害」を定めたこともあり、社会問題としても広く認知されつつあります。
賛否両論ありますが、日本でも、香川県によるゲームの使用時間を制限する条例の制定・施行が進んでいるのは有名な話です。
ゲームが不登校の直接の原因だとしても、またはそうでなかったとしても、いずれにせよ「ゲーム依存」という状況を回避することが大切であるということは、ぜひ心に留めておくようにしましょう。
ここからは具体的に、不登校の子がゲームをする理由を5つ紹介いたします。
ひとつ念頭に置いていただきたいのが、これから挙げる理由は「ゲームだけに限らない」という点です。
不登校の子の中には、ゲームではなく、漫画を夢中になって読んだり、アニメやYouTubeなどを観たりしている子もいるでしょう。
ゲームには、もちろんゲームだけの特徴がありますが、ある種の娯楽や当面の現実逃避という点では、その他のメディアなどと同じです。
そのため、これから解説する理由は、「不登校の子が娯楽に夢中になる(なっているように見える)理由」と捉えていただけると、より理解が深まるかと思います。
また、これから紹介する理由については、実際に「ゲームが原因の不登校」に共通する点もありますので、「原因がゲームかどうか」に関わらずご覧ください。
1つ目は「他にやることがないから」です。
先述したように、これは不登校だった当時の私が特に感じていたことです。
不登校になるまでは、朝から夕方まで授業を受けていた分、不登校になってからは時間が間延びして感じられました。
そうした暇を持て余しているときに、自宅で手軽に楽しめるゲームのような娯楽があると、その間延びした時間を埋めるために、際限なく続けることがあります。
「他にやることがないから」というのは、不登校の子であれば多かれ少なかれ感じていることのはずです。
2つ目は「現実を忘れられるから」です。
不登校や引きこもりの子の中には、自分の現状を振り返ったり自覚したりすることが、苦痛に感じられる子も多いはずです。
そうしたときに、ゲームの世界に没頭することで、現実逃避できるという側面があります。
また、学校で嫌な体験をしたり、トラウマを抱えたりしている不登校の子には、ゲームで現実を忘れることが、気持ちの回復につながる場合もあります。
「現実を忘れられるから」というのもメジャーな理由のひとつでしょう。
3つ目は「単純に楽しいから」です。
昨今のゲームは、映像技術を駆使して演出を派手にしたり、他人とのコミュニケーションを楽しめるシステムを取り入れたりと、プレイヤーをゲームの世界に引き込む仕掛けが盛り込まれています。
新しいイベントや期間限定のフェアを次々に催すことで、人を飽きさせない工夫がなされているのです。
そのため、「単純に楽しいから」ゲームにのめり込むのだという不登校の子も多いでしょう。
4つ目は「居場所になるから」です。
特にオンラインゲームでは、プレイヤー同士が会話できるチャット機能があったり、一緒に協力してプレイしたりするものが多いです。
気に入った名前を付けて、現実世界の友達と同じようにやり取りができます。
そのため、学校の人間関係に問題があったり、対人不安を抱えている子にとっては、ゲームが「居場所」になっているケースがあるのです。
不登校の子の中には、こうした理由から、楽しいというよりも「ゲームをしていると落ちつく」という子もいるようです。
最後の理由は「達成感があるから」です。
ゲームによっては、「クエスト」と呼ばれる依頼やタスクをこなすことで、操作しているキャラクターが成長していくものがあります。
先述したように、協力してプレイをする場合には、そうした成長がチームの仲間を助けることに直結するため、自信を高めることにもつながります。
このようなゲーム内での成長と結びつく「達成感」も、不登校の子がゲームに入れ込む理由のひとつです。
それでは、不登校の子がゲームとうまく付き合うには、どうすればよいのでしょうか?
大切なのは、これから解説する方法を「強制する」のではなく、自分からやろうという「自主性を促す」ことです。
無理に従わせようとすると、反発を招くこともあります。
徐々に習慣づけていき、お子さんが自然に実行できるまで、根気強く付き合うように心がけてみてください。
その点に注意して、ここでは5つの方法を見ていきましょう。
1つ目は「区切りをつけてやりきる」です。
不登校の子に頭ごなしに「ゲームをしてはいけない」と禁止しても、反発を招くなど逆効果になる場合があります。
それよりも「何時から何時までの間は思いきりやっていい」と割り切って、限定付きでゲームをすることを肯定することがオススメです。
ゲームをしたいと思う欲求を満たすことで、自然とゲーム離れが進みやすくなります。
また、先述したように、タスク単位で進むゲームであれば、それを片付けて達成感を得たタイミングで区切るというのも効果的です。
まずは、「区切りをつけてやりきる」という方法を取りいれてみましょう。
2つ目は「一日のスケジュールを立ててみる」です。
楽しいからゲームをする子も、惰性でやり続けている子も、根底にあるのは「予定がない」という感覚です。
まずはその日の日課を定めたり、行動予定表を作ったりしましょう。
買い物や家事をお願いするなど、あまり負担に感じない範囲の軽いお願いごとをするのも有効です。
このとき、多少、時間が長く思われても、ゲームの時間も盛り込むことが大切です。
ゲームの時間を定めるきっかけにするためにも、ぜひ「一日のスケジュール」を立ててみてください。
3つ目は「生活の中で目標を持つ」です。
不登校や引きこもりの期間は、「生活に張り合いを持てない」という子も多いです。
結果として、長時間ゲームを続けることで、時間を潰すことがあります。
そのため、子どもが生活の中で「目標を持つこと」自体が前進につながります。
前の項目で挙げた「スケジュール」を守るなど、最初は簡単なことで構いませんので、その日の目標を親子で一緒に定めましょう。
最初のうちから目標をいくつも作ると、達成するだけで精一杯になることもあるので、まずは一つだけ簡単な目標から始めてみると、長続きしやすいです。
4つ目は「ゲーム以外に興味が持てることを探す」です。
始終ゲームをしているのであれば「依存」かもしれませんが、他に好きなことを見つけて時間を分散させているのであれば、それは「趣味のひとつ」です。
特に不登校の場合は、長時間ゲームだけをしていることで、結果的に引きこもりになっているケースもあります。
こうした場合は、屋外で楽しめそうな趣味を探してみるのがオススメです。
もし、外に連れ出すことが難しい場合には、一緒に映画を観るなど、家族の時間を作るのもよいでしょう。
無理に外出しなくとも、家庭でできる趣味というのは、ゲーム以外にもたくさんあります。
ぜひ、ゲーム以外に興味が持てることがないかを、ぜひ考えてみてください。
最後は「外に居場所を見つける」です。
先述したように、ゲームの中に居場所を求めている不登校の子は、学校以外に居場所を見つけることで、ゲームと距離が取れるようになる場合があります。
ぜひ、お子さんの居場所を親子で一緒に探してみてください。
例えば、不登校のお子さんの居場所として、フリースクールが挙げられます。
フリースクールとは、不登校など、何らかの事情で学校に通うことができない子どものための教育施設です。
学校によっては、そうしたフリースクールやサポート校への出席を、「学校への出席」とカウントできる場合があります。
まずは、在籍している学校やご検討中のフリースクールなどに確認を取りましょう。
また、学習塾もお子さんの居場所として考えられます。
学習塾によっては、不登校の子を指導した実績を多く持つところもあります。
このような塾では、不登校を実際に経験した講師の先生がいることもあるので、不登校の悩みを相談しやすいと思います。
もし、いきなり勉強することが難しければ、簡単な習いごとから始めてもよいかもしれません。
ゲームに居場所を求めている子には、他に居場所になりそうなところを提案してみるとよいでしょう。
最後に、ゲーム好きの不登校の子を持つ親御さん向けに、注意点を5つ解説いたします。
不登校の子に接する上で一番大切なのは、「見守る姿勢を保つこと」です。
あなたにとっては一見無意味に思えたり、怠けて見えたりする場合であっても、不登校の子には心の調子を取り戻すために必要な期間であることが多いです。
そうした時期に親御さんから過敏に反応されると、心が休まらず、不登校から次の一歩を踏み出すことに、お子さんが戸惑いを感じることがあります。
ただ、「見守る姿勢を保つ」だけではなく、そのためにはあなた自身も心の余裕を持つことが必要です。
そのため、気持ちを切り替えるための息抜きなど、あなた自身のリフレッシュも欠かさないようにしましょう。
1点目は「無理にゲームを没収しない」です。
お子さんからゲームを奪うことで、感情を刺激すると、親子の信頼関係が損なわれる可能性があります。
また、ゲームが居場所になっていた子にとっては、急に居場所を失うことになるため、ストレスが増す恐れもあります。
無理なゲームの没収は、不登校の解決にはつながりません。
不登校の子がゲームを離れ、次の一歩を踏み出すためには、他の手段を頼ることが大切です。
2点目は「感情的に叱らない」です。
先述したように、ゲームによる現実逃避は、お子さんが心の調子を取りもどすための行動かもしれません。
親御さんが感情的になって叱った結果、お子さんが萎縮して、よりゲームにのめり込んだり、よりストレスが大きくなるケースも考えられます。
ぜひ感情的に叱ることなく、繰り返しにはなりますが、長い目でお子さんを見守ってください。
3点目は「ゲームの肯定的な面を考える」です。
ゲームは否定的な面ばかりが取り上げられがちですが、肯定的な面もあります。
また、近年ではゲームが「eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)」として競技化されたり、各地で大会が催されるなど、肯定的に捉えようという動きが高まっています。
そのため、引きこもりや不登校の子であっても、ゲーム好きが高じて大会を観戦に行ったり、趣味の友達を作ったりすることに積極的になるケースもあるようです。
このように、ゲームには否定的な面だけでなく、肯定的な面もありますので、「ゲーム好きを活かせないか」という視点を持ってみるのもよいでしょう。
4点目は「課金や犯罪に気をつける」です。
最近では、「子どもがスマホゲームに没頭するあまり、多額の費用をつぎ込んだ」という話を聞くこともあります。
もちろん、お小遣いや自分で稼いだお金で楽しむ分には問題ないのでしょうが、中には詐欺に巻き込まれたり、気づかずに犯罪の加担していたというケースもあります。
自宅に請求の連絡があったりしない限り、親御さんが気付くのは難しいかもしれませんが、お子さんがやたらにお金を必要としていないかなど、日頃の振る舞いや言動に注意するようにしましょう。
最後の注意点は「依存症かどうか医師の判断を仰ぐ」です。
先述したWHOの「ゲーム障害」のように、生活に支障を来たす程度の「ゲーム依存」になっている場合には、親御さんの力だけでは断ち切ることができない可能性があります。
激昂したお子さんが暴力を振るうといった事件も、ニュースなどで耳にします。
ゲーム依存症を疑っている方は、ひとまず医師の判断を仰ぐようにしましょう。
不登校とゲームの関係から、ゲームとうまく付き合う方法、親御さんの注意点を解説してきましたが、実践できそうなことはありましたか?
繰り返しにはなりますが、ゲームは必ずしも不登校の原因とは限りません。
また、ゲームそれ自体は決して悪いものではありません。
大切なのは、ゲームとの上手な付き合い方です。
不登校中は時間も余っているため、ゲーム依存に陥りやすい状況ではありますが、日頃の心掛けと親御さんの注意次第で、依存を防ぐことはできます。
ぜひ、ゲーム依存にならないように、不登校の間の生活を充実させ、次の一歩を踏み出してください。
このコラムが、不登校でゲームに夢中になる子を持つ親御さんの、助けになれば幸いです。
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