人と仲良くなる方法 重要な要素や気をつけるべきポイントを解説

こんにちは。過去に対人恐怖症(社交不安障害)があり、人と接することが怖かった経験のあるライターの渡会賢治です。

このコラムを読んでいるあなたは、以下のことにお悩みではないでしょうか?

  • 仲良くなりたい人がいるが仲良くなるための方法がわからない
  • 仲良くなるためにどんな会話をすれば良いかわからない
  • 声をかけたり、輪に入っていきたいが、勇気が出ない
  • 会話していると頭が真っ白になって何を話して良いかわからなくなる

このコラムでは、心理学(特に社会心理学)の理論を参考にしつつ、筆者の経験およびインタビューで得られた知見をもとに、人と仲良くなる方法を解説します。

本コラムを読むことで、あなたが人と仲良くなりたいときに「具体的にどうすれば良いのか?」がわかり、自信をもってその人と接することができるようになっていただければ、とても嬉しいです。

目次

人と仲良くなる上で大切な3つの前提

まず、人と仲良くなる方法の解説の前に、人と仲良くなる上での前提を、筆者の経験およびインタビューで得られた知見から解説します。

人と仲良くなるということは、シンプルに言えば、「相手にメリットを与える」ということです。

この場合のメリットとは、金銭的なものではなく、以下のような感情的なものを指します。

  • 話していて話が合う
  • 一緒にいて楽しいか、面白い
  • 一緒にいて自己肯定感があがる
  • 話していて、新しい発見がある

上記のような感情的なメリットを与える上で重要なのが、「他者理解」と「自己理解」、そして「効果的な自己表現」です。

メリットを提供するために、相手が何を求めているかを理解し(他者理解)、それを提供する自分を客観視して(自己理解)、適切なコミュニケーションをとること(効果的な自己表現)が必要になります。

これから解説する人と仲良くなる上での前提は、「他者理解」「自己理解」「効果的な自己表現」のそれぞれに対応しています。

これらを効果的に行えば、人と仲良くなることができるでしょう。

前提①他者理解〜相手を知る・相手を見る〜

最初に大切な前提は、「相手を知る・相手を見る」ことです。こちらはもっとも基本的で、大事な前提です。

なぜなら、人と仲良くなるということは、究極的に相手ありきだからです。

たとえば以下のように、人の数だけ特徴は異なります。

  • 一度会っただけでなんでもざっくばらんに話す人、あまり話さない人
  • 距離が縮まるのが早い人、ゆっくりな人
  • 感覚的なコミュニケーションが好きな人、論理的なコミュニケーションが好きな人
  • 視覚優位な人、聴覚優位な人、体感覚優位な人
  • パーソナルスペースが広い人、狭い人
  • 話すペースがゆっくりな人、早い人

そして、それぞれの人に適した関わり方があり、仲良くなる方法も、仲良くなるスピードも、人それぞれです。

人間関係はお互いの歩み寄りの中でつくられるものです。こちらが仲良くなりたいと思っていても、相手にその気がなければ、仲良くなることができないことはありえます。同時に、人と仲良くなるときに、自分に責任があると思いすぎないことも大切です。

人と仲良くなる上で大事なことは、「相手視点で考える」ことです。それは、「相手の立場に身を置く」ということでもあります。(デール・カーネギー・著、山口博・訳『人を動かす』)

その相手にあわせた仲良くなる方法を考えるためにも、その相手をよく知る・よく見るということが大切です。

前提②自己理解〜相手に仲良くなりたいと思ってもらう〜

相手から見て自分が「仲良くなりたくない」と思われるならば、その人と仲良くなることはまず難しいでしょう。

最初の前提である「相手を知る・相手を見る」とあわせて、「相手に仲良くなりたいと思ってもらう」ということも大切です。

「相手に仲良くなりたいと思ってもらう」ことは、自分を客観視する必要もあるため、自己理解であると同時に他者理解でもあるといえるでしょう。

相手に仲良くなりたいと思ってもらうための準備や行動の例は、以下のとおりです。

  • 身だしなみを整えて清潔感に気を付ける
  • あいさつをする
  • 和やかな雰囲気、やわらかい表情で話しかける
  • 相手に興味を持って質問する
  • お互いに共通に見える(五感など)ところから話しはじめる
  • 適度な自己開示と相手が答えやすい質問をする
  • 傾聴と相手にわかりやすい肯定的なリアクションをとる

前提③効果的な自己表現〜自分から積極的に話しかける〜

最後に大事な前提は、「自分から積極的に話しかける」ことです。

当たり前ですが、相手から話しかけてくる場合を除いて、あなた自身から相手に話しかけることがない限り、その相手と仲良くなることはありません

自己理解と他者理解をふまえた上で、「自分から積極的に話しかける」という行動を起こしてみてください。

また、仲良くなりたい人に話しかけるのは勇気がいります。

「なかなか緊張したり不安になったりして話しかけられない…」という方は、こちらを参考にしてください。

人と仲良くなる上で重要な4つの要素

人と仲良くなる上で重要になるのは、「魅力」「近接性」「類似性」「返報性」の4つの要素です。(マイケル・W・アイゼンク、山内光哉・監修、白樫三四郎、利島保、鈴木直人、山本力、岡本祐子、道又爾・監訳『アイゼンク教授の心理学ハンドブック』)

それぞれ簡単に説明すると、以下のとおりです。

  • 魅力:外見や身だしなみ・振る舞いに気を付ける
  • 近接性:たくさん会って話しかける
  • 類似性:似ている点を見つけていく(あるいは、コミュニケーションを相手に合わせる)
  • 返報性:相手に対して自分から何かを与えていく

それぞれの要素について、解説します。

要素①魅力

魅力とは、特に初期段階においては身体的(外見的)魅力です。

ではどのような見た目であれば良いでしょうか?具体的には以下のような見た目が良いでしょう。

  • 身だしなみに気を遣い清潔感がある
  • 振る舞いが自然体でありリラックスしている
  • 表情がやわらかく、話しやすい雰囲気がある
  • あいづちがわかりやすく相手にとって聞いてもらっている感がある

要素②近接性

近接性とは、頻繁に会ったり、お互いの物理的距離が近いなどのことです。

これを単純接触効果ともいい、人は会う回数が多い人ほど好意を感じやすいとされています

たとえば、以下のようなことです。

  • たくさんの回数、話す
  • 職場や学校で頻繁に顔を会わせる

要素③類似性

類似性とは、お互いが似通っていることです。

たとえば、以下のようなものです。

  • ファッションや身につけているものが似ている
  • 距離感・パーソナルスペースの感覚が近い
  • コミュニケーションの感じが似ている(態度の類似性)
  • 年齢や性別が同じや近い(統計学的類似性)
  • 共通点がある

要素④返報性

返報性とは、何かしてもらったら、お返しをしたくなる心理のことです。(ロバート・B・チャルディーニ、社会行動研究会・訳『影響力の武器[第三版]』)

たとえば、以下のようなことです。

  • あいさつをしてくれたら、あいさつを返す
  • 相手が話しかけてくれたので、自分も話しかける
  • 相手に質問をして、答えてもらう
  • 相手が自己開示をしてくれたら、自分も自分のことを話す
  • 何かプレゼントをもらったら、お返しに何かをあげる

人と仲良くなる方法 段階別に解説

この章では、人と仲良くなる方法を、ステップバイステップで解説していきます。

最終的なゴールとして、相手とお互いに自由に言い合える親密な関係を目指しましょう。

本コラムでは、人と仲良くなる段階を3段階に分けました。

人がどのように他者に魅力を感じ、好意を持つか、という社会心理学のSVR理論をもとにして、筆者の経験およびインタビューで得られた知見から解説します。

前提:SVR理論とは?

SVR理論とは、対人関係の発展を以下の3段階に分けて説明する理論です。SVR理論はもともと恋愛関係の進展を説明するために用いられたものですが、対人関係一般にも当てはまるので、参考にしています。(参考:臨床心理学用語事典「人間関係の形成と崩壊」)

  • S=Stimulus(相手からの刺激):顔立ちや外見、声、性格などに魅力を感じる段階
  • V=Value(相手の価値):趣味や価値観を共有している類似性重視の段階。相手の気持ちを汲み取るなど、情感の共有も含む。
  • R=Role(お互いの役割):相手ができないことや苦手なことを補い合う相補性重視の段階。

マースタインのSVR理論では、関係の進展を3段階に分けて説明している。まず、近接性、相手の容貌や振る舞いなどの相手から受ける刺激(stimulus)が重要となるS段階がある。(中略)交際がスタートすると、2人で一緒に行動することが多くなる。すると、互いのものの考え方や物事に対する態度、価値観(value)が似ていることが重要となってくる。これが2番目のV段階である。さらに、交際が進めば、互いの価値観が類似しているだけではなく、互いの役割(role)を分担して行動することが重要となるR段階へと至る。

(参考:吉田俊和・編、橋本剛・編、小川一美・編『対人関係の社会心理学』)

このコラムでは、「S=Stimulus(相手からの刺激)」は関係形成段階、「V=Value(相手の価値)」は関係維持段階、「R=Role(お互いの役割)」は関係深化段階に該当しています。

また、関係形成段階は、初対面から知り合いとの段階であり、関係維持段階は、少し話す人から友人の段階、関係深化段階は、親友から唯一無二な関係との段階といえるでしょう。

段階①関係形成段階〜初対面、知り合い〜

まずは、関係形成段階の人と仲良くなる方法を解説します。

関係形成段階の人とは、お互いのことをまったく知らない初対面の状態から、以下の会話のように気さくに話せるけれども、プライベートでは会うレベルではない知り合いの状態までの人を指します。

A:こんにちは

B:あ、こんにちはー

A:今日暑いですね

B:ほんとに。かき氷食べたいです

A:たしかに(笑)。〇〇って店知ってますか?

B:知らないです!なんですかそれ?

A:ふわふわかき氷があって

・・・

関係形成段階での目標は、楽しく話せる共通点を見つけることです。また、相手に「話したい」「関わりたい」と思ってもらうことです。

出会いから知人になる過程としては、以下のステップに分解できます。

  • あいさつ(認識する)
  • 表面的な会話(少し話してみる)
  • 内面に関する会話(楽しく話せる共通点を見つける)

まず、人間関係のはじまりは、あいさつからです。あいさつを受けて、不快な気持ちになる人はいません。

  • おはようございます
  • こんにちは
  • こんばんは
  • お疲れ様です

きっかけがあれば、できる限りにこやかな表情で、あいさつをするようにしましょう。

さらに可能であれば、あいさつの時に、一言雑談をするのが良いでしょう。もっとも無難なものとして、天気や気候に関することがあります。

例えば「こんにちは。今日も暑いですね」と言ったとき、相手が、「そうですね~、ほんと暑いです」などとリラックスした感じで応じてくれたとします。どの場合、相手も話す準備が整っていると考えられるため、何かを続けて話すと良いでしょう。

最初に話す内容としては、このように季節や気候に関するものがもっとも無難です。そこから続けるかたちで、相手を見て興味を持ったことを質問するのも良いでしょう。

話題のテーマは、以下のとおりです。頭文字をとって、「木戸にたてかけし衣食住」と覚えてみてください。

話題のテーマの例

  • 季節・気候
  • 道楽・趣味
  • ニュース・時事
  • 旅行
  • 天気
  • 家族
  • 健康
  • 仕事
  • 衣食住

もちろん、いずれの話題に関しても相手に失礼にならないことが肝心です。相手の表情などの反応を見ながら、控えるようにしましょう。

自分が話しやすい話題、相手が興味を持ちそうな話題から入って、相手に興味を持って質問しつつ、適度に自己開示をしつつ、相手との共通点を探ります。

コミュニケーションの基本は、気持ちのキャッチボールです。(参考:野口敏『マンガでわかる!誰とでも15分以上会話がとぎれない!話し方』)

「いま、どんなことを感じているのか?」「どういったことが気になっているのか?」など、お互いの気持ちをやりとりすることで、お互いに対する理解が深まり、共感が生まれ、距離感が縮まっていきます。

肯定的なコミュニケーションを続けていると、相互の信頼関係が生まれるため、関係を続ける上でとても重要です。

楽しく話せる共通点を発見することができれば、話す理由ができるので、仲がより深まるきっかけになります。

共通点としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 目標や趣味
  • 好きな◯◯・嫌いな◯◯(スポーツ、食べ物、旅行、映画、音楽、小説、ドラマ、芸能人、キャラクター)

関係形成段階のステップとしては、あいさつでお互いを認識して、話しやすい話題から入る中で相互の信頼関係を形成し、お互いの共通点を発見して、その共通点を通して、楽しく話せるようになることを目指していきましょう。

段階②関係維持段階〜少し話す人、友人〜

続いて、関係維持段階の人と仲良くなる方法を解説します。

関係維持段階の人とは、以下の会話のように、気さくに話せる、プライベートでもたまに会う程度の状態までの人を指します。

イメージとしては、以下の会話のように、気さくに話せる、プライベートでもたまに会う程度の友人です。

A:おぉ、元気?

B:ぼちぼちかな

A:そいえば最近、〇〇どう?

B:あー、ぜんぜんやってない(笑)

A:そっか(笑)近況話したいから、またメシ行こ!

B:いいね!天ぷら食べたい!

A:あり!

関係維持段階での目標は、win-winな関係を成立させることです。

社会心理学の用語で、社会的交換理論というのがあります。社会的交換理論を簡単に説明すると、「人間関係の形成や維持は、お互いにとってメリットがあるからこそ行われるものである」という考え方のことです。(参考:野島一彦、繁桝算男・監修、竹村和久・編『公認心理師の基礎と実践⑪ 社会・集団・家族心理学』)

あなたがやるべきことは、相手のニーズを理解して、自分が提供できるものの中から相手のニーズに合致するものを提供することです。

たとえば、以下のようなことが挙げられます。

  • 共通の趣味や目標がある
  • 価値観が合う
  • 一緒にいてとても楽しい・おもしろい・気が合う
  • 自分が知りたいけど知らないことをたくさん知っている
  • 話していてとてもポジティブになる
  • 一緒にいると自己肯定感が上がる

お互いが関わることにメリットがあると感じられる状態であれば、関係は継続します。

ぜひ「関係を続けることでの相手にとってのメリットは何か?」という視点で考えてください。

また、直接相手に、「何が好きか?」「どんなことに興味があるか?」「どんな目標があるか?」を聞いてみて、自分が一緒に楽しめることがあれば、一緒に遊ぶことを提案し、サポートできることがあれば援助を申し出るのも良いかもしれません。

段階③関係深化段階〜親友、唯一無二の関係〜

最後に、関係深化段階の人と仲良くなる方法を解説します。

関係深化段階の人とは、深い話ができる親友であり、親密かつ唯一無二の関係を築いている状態までの人を指します。

安定した友人関係になり、その関係を継続していると、関係がより深まるということもあります。

分かりあえたような感覚があったり、なくてはならない人と感じられたり、それがお互いにとって感じられるとすると、その関係はかなり深いものと言えます。

そのためには、お互いが楽しく過ごせる共通の何かがありつつ、関係維持段階におけるwin-winな関係を継続しつつ、以下のようなものが必要になります。

  • お互いを補い合えるような関係性がある
  • 相手の苦手が自分の得意で補え、自分の苦手が相手の得意で補える
  • お互いにとってこの人は決して代わりがいない存在であると感じられる

これらは、かなり偶然性に依拠しているため、あなたができることは、これまでの段階で気をつけてきたことを実践しつつ、お互いにとって良い関係性を築く努力をしていくことでしょう。

たとえば、以下のような実践です。

  • 相手のちょっとした違いや変化を気にかける
  • 大切な記念日(誕生日など)に相手が喜ぶプレゼントやサプライズをする

あなたにとってその人が大切な人であるならば、時間やお金をかけていきましょう。

この時に重要なのは、「相手視点」であるということです。ここでも、こちらで解説したように、「相手を知る・相手を見る」ことがとても大事になります。

自分本位なプレゼントやサプライズや企画は、あなたがどれだけそれに対してコストを支払ったとしても、相手に対して、良い影響を及ぼすのは難しいでしょう。ぜひ、相手のことを考えて実践するようにしてください。

補足:関係終焉段階

補足として、関係終焉段階についても解説します。

人と仲良くなったとしても、その関係にはいつか終わりが来るかもしれません。お互いに何らかの不満がある場合、コミュニケーションが不安定となり、その関係が終わる可能性があります。(参考:吉田俊和、橋本剛、小川一美・編『対人関係の社会心理学』)

たとえば、自分は特に不満がないが、相手がその関係に対して何らかの不満を持っていて、それが解消できなかった場合に関係が終わることはあります。

その不満とはたとえば、金銭や時間など自分が投入しているものに対して、相手から得られるものが極端に少ないと感じる、つまり割に合わないと感じていることなどが考えられます。

そのような不満を持った場合、相手がする行動としては、以下の4つのパターンが考えられます。(マイケル・W・アイゼンク、山内光哉・監修、白樫三四郎、利島保、鈴木直人、山本力、岡本祐子、道又爾 監訳『アイゼンク教授の心理学ハンドブック』)

  • 発声(対話):問題を話し合い、答えを探し求める
  • 忠誠(待機):事態が好転するのを待ち望む
  • 無視:相手を無視し、あまり一緒に過ごさない
  • 退出:関係から離脱することを決断する

「発声(対話)」と「忠誠(待機)」は関係に建設的な行動であり、「無視」「退出」は関係破壊的な行動です。

「無視」「退出」に対しては、相手がそのような状態になったとき、自分からできることはほぼないので、そのような行動を事前に防ぐ方策が必要となります。

相手や自分が何らかの不満や不安を少しでも持っているとき、その都度お互いで話し合い、持続的に成長しあえる関係を築くこと<がもっとも理想的です。そんな関係を目指していければ良いですね。

もし、関係を続けたい相手がいる場合は、相手の行動に気を付け、話し合う機会をつくるようにすると良いかもしれません。

人とリラックスして楽しく仲良くなる方法5選

この章では、人と関わる上で重要である人とリラックスして楽しく関わる方法を解説します。

この章は、以下のようなことに課題を感じている人が対象です。

  • 仲良くなりたい人に話しかけることができない
  • 緊張や不安でうまくコミュニケーションがとれないときがある

本来、新しい人と出会うことや、人とコミュニケーションをとることは、とても楽しいものです。この章でそのことを思い出していただければ、とても嬉しいです。

方法①対人コミュニケーションにおける緊張や不安の構造を理解する

人と仲良くなる方法には、どのような相手にも一般化できる方法・理論があります。たとえば、社会心理学において、社会的関係の形成・維持に関するさまざまな理論があります。

そのような理論を理解しておくと、人とリラックスして楽しく仲良くなれるでしょう。

人とコミュニケーションをとる際に、なぜ緊張や不安がおこるのでしょうか?

シャイネスという考え方があります。シャイネスとは、人とコミュニケーションをとる際に起こる緊張や不安のことです。

シャイネス(shyness)とは、対人的不適応に関わる概念であり、対人交流に不安や緊張を感じたり、動悸・ 発汗・赤面などの身体的特徴や、本人が望む社会的行動が抑制されるなどの行動特徴をもつ。様々な社会的場面で高い社会性が求められる現代において、シャイネス特性は社会的活動を妨げる要因のひとつとなっている。

(参考:田島祥、坂元章、松尾由美「オンラインゲームを活用したシャイネス改善訓練の効果の検討」)

シャイネスは、一般には「恥ずかしがり」「内気」「はにかみ屋」「照れ屋」「人見知り」「物怖じ」などと翻訳される。(中略)シャイネスは、「他者から評価されたり、評価されると予測したりすることから生じる対人不安と行動の抑制という特徴をもつ感情行動症候群」と定義されている。

(参考:吉田俊和、橋本剛、小川一美・編『対人関係の社会心理学』)

では、シャイネスはなぜ起こるのでしょうか? 以下の式で表せます。(参考:吉田俊和、橋本剛、小川一美・編『対人関係の社会心理学』)

シャイネス=自分を良く見せたいという思い(自己呈示動機)の強さ×自分を良く見せる能力(自己呈示効率)の低さ

つまり、自分を良く見せたいという思いが強く、かつ、自分を良く見せる能力が低いと思っている場合、シャイネスが起こります

たとえば、まったく自分をよく見せようと思わないのであれば、シャイネスは起こらず、緊張や不安は起こりません。長年一緒にいる、家族などが近い例となるでしょう。

また、自分を良く見せる自信があるのであれば、自信を持って人に話しかけることができ、緊張や不安は少ない(シャイネスが少ない)ということになります。

このことから、対人関係における緊張や不安を解消して、リラックスして楽しく関わるためには「自分を良く見せたい」という思いを少なくして、「自分を良く見せる能力(自信)を上げる」という方法が必要となります。

「自分を良く見せたい」思いを少なくするためには、以下の方法があります。

「自分を良く見せる能力(自信)を上げる」ためには、以下の方法があります。

方法②呼吸を深くする

緊張していると、呼吸が浅くなります。逆に呼吸を深くすると、不思議なくらい気持ちが落ち着き、リラックスできます。

方法はとてもシンプルで、息をはききって、深く吸うだけです。

身体の中の空気をすべて出しきるつもりで、5〜10秒ほど息をはききり、3〜5秒ほどかけて鼻から息を吸ってみてください

とてもシンプルですが、筆者の経験上、とても効果があった方法です。ぜひ試してみてください。

方法③相手のことに集中する

相手に興味を持って観察することで、自分の意識を相手に向けられて、緊張や不安が軽減されます

相手に興味を持つこと、つまり「相手を知る・相手を見る」ことは、こちらで解説したようにとても重要です。

次のようなことを観察して、それを想像してる間は、周りの目を気にすることはありません。

  • この人はどういう人だろうか
  • この人はどんなことに興味があって、何が好きだろうか

相手の服装や髪型、振る舞い、話し方、話している内容、どんなことに興味を持っているかなどを観察してみましょう。

人と仲良くなる方法としては、観察するだけでなく、失礼にならない範囲で相手に話を聞いてみましょう。相手に誠実な興味を持って質問をすることは、仲良くなる上でとても重要です。

方法④SSTなどのトレーニングを受ける

SSTとは、「ソーシャルスキルトレーニング(Social Skills Training)」の略語で、対人関係や社会生活に必要なスキルを学ぶプログラムのことです。

「コミュニケーションスキルが重要」とはよく言われることですが、それらを理解し、能力を高める方法の一つが、ソーシャルスキル生起過程モデルであり、SSTなどのトレーニングです。

人とのコミュニケーションでは、相手の反応を適切に読み取り、それらに応じてその場での適切な反応を決定し、感情を統制して、相手にアプローチする、そのアプローチの結果として表れた相手の反応を適切に読み取り…というループを繰り返していきます。

これらの個々のスキルを高めていくことで、コミュニケーションスキルが高まり、自信を持って、緊張することがなく、人と仲良くなることができます。

SSTのトレーニングを受けることで、適切な人との関わり方を知って、「人とうまく関わる能力」「人と仲良くなる能力」を高め、シャイネスを軽減して、リラックスして楽しく人と関われるようになりましょう。

方法⑤コミュニケーションを純粋に楽しむ・楽しさを思い出す

人とリラックスして楽しく関わる方法として大切なことは、コミュニケーションを純粋に楽しむことです。

以下のように、自分が「楽しい!」と思える人や関わり方を増やすことで、人とリラックスして楽しく関われるでしょう。

  • いろいろな話を聞くのが・知るのが楽しい
  • 相手と一緒に笑うのが楽しい
  • 自分のことをうまく伝えられて嬉しい
  • お互いがわかりあえる瞬間が好き
  • 共通の趣味で話せる人がいるとと嬉しい

ぜひ、自分がどんな人や関わり方なら楽しいと思うか、試しつつ考えてみてください。

補足:人と仲良くなるために場の力を活かす

人と仲良くなるために場の力を活かすことも1つの方法です。

人と仲良くなりやすいかどうかは、その人とコミュニケーションをする場の良し悪しによっても変化します

たとえば、居酒屋などのフランクな場だと、お互いがリラックスしていることもあり、仲良くなりやすいかもしれません。

一方、出会った場が職場や学校の場合は、プライベートに関する会話をしづらいこともあるため仲良くなりづらいこともあるでしょう。

相手にとって居心地が良いか、自分にとって居心地が良いか、また双方の関係が進展するうえで有効な場所かどうかという視点で、どのような場であれば人と仲良くなりやすいかを考えて試すと良いでしょう。お互いのことをじっくり話せたり、一緒になって楽しめる場が良いかもしれません。

人と仲良くなりやすい場の例として、以下のような場が挙げられます。

  • カフェ
  • 居酒屋・バー
  • テーマパーク
  • スポーツを一緒にする場

人と仲良くなりやすい人の3つの特徴

この章では、人と仲良くなりやすい人の特徴を解説します。

特徴①自然体でリラックスしている

人と仲良くなりやすい人は、自然体でリラックスしていて、ナチュラルにコミュニケーションができます。その様子は相手から見て自然にうつります。

人と関わるときに気負わずにいることが難しいという人もいるかもしれません。

そういったときは、まずはこちらを参考にして、自分自身が楽なコミュニケーションができるような方法を探っていきましょう。

自然体でリラックスしていると、自然と、明るくオープンなコミュニケーションもできるようになっていきます。

明るくオープンなコミュニケーションは、人と仲良くなりやすくなる上でとても重要です。

具体的に言えば、笑顔ややわらかい表情である、相手を受け入れてるような姿勢や態度などです。まずは、ゆったりと楽なコミュニケーションができる状態を目指していきましょう。

特徴②聞き上手で、気持ちが良いリアクションができる

人と仲良くなりやすい人は、人の話を聞くのがとてもうまいという特徴があります

それは、興味をもって相手に質問して、気持ちが良いリアクションをしているからです。

気持ちが良いリアクションをできれば、相手は気持ちよく話せるはずです。そうすれば、相手からたくさん話をしてくれるので、相手のことをより知ることができ、お互いの共通点が見つかることもあるでしょう。

そうすると、どんどん会話を広げるきっかけがつかめるので、仲良くなれる可能性が高まります。

特徴③人のことを心からほめられる

人と仲良くなりやすい人は、心から相手をほめることができます。(参考:デール・カーネギー・著、山口博・訳『人を動かす』)

相手の話をうまく聞けるようになれば、相手のことを深く知れると思います。その中で、相手の良いところを探していきましょう。

そして、相手の内面や人間性、これまでの人生経験などで、心から「すごいな」と思うことをさがして、それを率直にほめてみましょう。

深い話の中でそれができれば、相手は「こんなことをほめられて嬉しい」と思うかもしれません。そうすれば、相手との距離がグッと縮まるでしょう。

人と仲良くなりにくい人の3つの特徴

この章では、人と仲良くなりにくい人の特徴を解説します。

特徴①人との関わりに緊張や不安がある

人と仲良くなりにくい人は、人との関わりに緊張や不安がある傾向があります。

人と関わる上で緊張や不安があると、本来の自分を表現できないことはもちろん、相手もその緊張や不安感を感じ取るため、仲良くなりにくくなります。

こちらを参考にして、緊張や不安を取り除いた上で、適度にリラックスしたコミュニケーションをとれるようにしていきましょう。

特徴②否定的なリアクションをしがち、反応が薄い

相手の話に対して、否定的なリアクションをしがちな人や反応が薄い人は、人と仲良くなりにくいです。

口癖で「いや」「違うよ」などと言いがちだったり、なんとなく表情が不機嫌そうだったり、あるいは話をしても反応が薄かったりすると、相手は話しにくくなります。

もちろん、コミュニケーションの中で「これは違う」と思うこともあるかもしれませんが、基本的に仲良くなりたいのであれば、肯定的なリアクション、コミュニケーションを心がけるのが良いでしょう

特徴③当たりさわりのない関わりしかしていない

たとえば、「良い天気ですね」という会話だけでは、人と仲良くなることは難しいでしょう。

天気の話や趣味の話はあくまで仲良くなるためのきっかけです。そこからお互いの内面について少しずつ、踏み込んだ話をしていきましょう。

相手に聞くのも良いですし、自分から話すのも良いでしょう。自分から話題を提供することで、相手もそのことについて話してくれるかもしれません。相手が話しにくいこともあるかもしれないので、相手の様子を見ながら話を聞いていきましょう。

相手の価値観や目標、人間性を知ることで、お互いの仲は深まっていきます。そうすれば、相手の良い面をたくさん知ることができるので、それを率直に表現すること(=褒めること)で、さらに距離は縮まっていくでしょう。

人と仲良くなる上で気をつけるべきポイント 相手・状況別に解説

この章では相手別・状況別に、それぞれ気をつけるべきポイントを解説します。

ポイント①同性の友人をつくる場合

同性の友人をつくる場合、共通の趣味や目標を発見することを通して、お互いに仲良くなると良いでしょう。

何かを共同で取り組む趣味や、共通の目標に向かうことを通して、絆を深めていくのが、自然なパターンの1つです。

また、ランチや飲み会などを通して、その人との会話を楽しみ、仲良くなるというパターンも自然です。

サークルやカルチャースクールなど、同性、同世代がたくさん集まる場に行くのもおすすめです。

まずは、相手が好ましいと思う関わり方がなにかを考えて、相手に合わせて仲良くなる方法を考えましょう

ポイント②異性の友人をつくる場合

異性の友人をつくる場合に気をつけることは、相手に警戒心を抱かせないことです。

もちろん、初対面の人に一定の警戒心をお互いに持つ必要はあると思います。その前提を踏まえた上で、以下のような工夫をすると、相手は安心するでしょう。

  • グループで話をする
  • 友人に紹介してもらう
  • 公共の場で話す

ポイント③職場の人と関わる場合

職場の人と関わる場合、特に配慮が必要となるのは、上司や先輩との関係です。上司や先輩との関係性によって、職場内での居心地のよさが変わることも少なくありません。

職場の人とうまく関わっていくために、以下のような方法が挙げられます。

  • 仕事をきっちりこなし周囲の信頼を得る
  • あいさつを丁寧にする
  • 相手に興味を持って質問し、適度に自己開示する
  • プライベートな話題に踏み込みすぎない
  • 新聞やニュースで時事問題に関する知識を仕入れる

まず前提として、職場は仕事をする場です。そのため、人と仲良くなるかどうかは、仕事をきちんとこなしている前提での話となります。

いくら仲良くなれたとしても、自分の仕事をこなせていない状態では、信頼関係の構築はおそらく難しいでしょう。

そのため、最も重要なことは、仕事を責任を持ってやりとげることです。それによって周囲の信頼を得られれば、関係構築がより簡単になるでしょう。

その前提をふまえた上で、職場に限らずどんな場面でも基本となるのは、あいさつです。朝のあいさつ、終業後のあいさつを基本として、すれ違うたびに少なくとも会釈をして、なにか一言でも雑談をかわせれば良いと思います。

相手に興味を持って話を聞くために質問したり、自分のことを適度に話すことで、お互いの共通点などが見つかり、距離が縮まるかもしれません。

ただし、プライベートな話題に踏み込みすぎることは、あまりおすすめしません。相手によっては、職場は職場として、関係性を割り切りたいという人もいます。適切な関係を模索していきましょう。

また、新聞やニュースで時事問題に関する知識を仕入れることも、話題作りにとても有効だと思います。

相手が何に興味を持っているかは、その職場にいる人によりますが、社会問題や国際情勢、経済、スポーツ、話題のイベントなどは、興味を持つ人が多い話題に関して知識があると、会話ははずみやすいでしょう。

ポイント④苦手な人と関わる場合

苦手な人がいる場合、自分の居心地が悪くなり、精神的にも良い影響を与えません。

まずは、その人を苦手だと感じる原因を特定しましょう。

もし、単なる自分の先入観であった場合、たとえば、怖そうな外見で避けていた場合、「話してみたら、意外と良い人だった」ということはありえます。

その人を苦手だと感じているのは、自分の先入観にすぎないのではないか?」と疑ってみて、ひとまず相手と関わりながら、また考えてみてください。

ほかにも、相手が自分を何らかの原因で嫌っている場合などが考えられます。

その場合、可能な範囲でお互いに話し合い、原因を特定して改善すると良いでしょう。それが難しい場合は、第三者などに相談して、間をとりもってもらうなどが良いでしょう。

それでも難しい場合は、無難に接しつつ、適度に距離を置いておくのが良いと思います。

相手が自分を嫌っているのであれば、距離を置いてほしいと思っているはずなので、それがお互いにとって最善といえます。

ただし、嫌った上に攻撃してくる相手に対しては、あなた自身のために、第三者機関へ相談するなど、然るべき対応をとることも検討してみてください。

補足:多くの人と出会い仲良くなりたい場合

多くの人と出会い仲良くなりたい場合、「人からの誘いを受け入れて、新しい場に積極的に行ってみる」こと、そして「先入観をなくして、とりあえず関わってみる」ことがおすすめです。

人からの誘いを受け入れることで、新しい場でいままで関わることのなかった多くの人と出会えるかもしれません。それらの人と関わる際、あえて先入観をなくして、どんな人とも積極的に関わるようにすると、より多くの人と仲良くなれるでしょう。

多くの人と出会い仲良くなりたいのであれば、新しい場に積極的に行ってみて、その場の人と会って話してみてください。

人生が変わるような出会いもあるかもしれません。

まとめ〜人生をより楽しんでいただけるように〜

ここまで人と仲良くなる方法について、解説してきました。

このコラムによって、あなたが人とリラックスして楽しく関わり、仲良くなりたい人と仲良くなることができて、人生をより楽しんでいただけるようになれれば、とても嬉しいです。

読んでいただきありがとうございました。

Q&A よくある質問

人と仲良くなるために大切なことはなんですか?

大切な前提として、以下が考えられます。

  • 他者理解
  • 自己理解
  • 効果的な自己表現

詳細については、こちらで解説しています。

どういう人が人と仲良くなりやすいんですか?

以下の特徴が考えられます。

  • 自然体でリラックスしている
  • 聞き上手で、気持ちが良いリアクションができる
  • 人のことを心からほめられる

詳細については、こちらで解説しています。

監修 / キズキ代表 安田祐輔

やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ」も運営。

【新著紹介】

『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
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KADOKAWA公式

【略歴】

2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【メディア出演(一部)】

2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

共同監修 / キズキ相談担当 半村進

はんむら・すすむ。1982年、茨城県生まれ。東京大学文学部卒。
小学校時代から転校を繰り返し、運動ができないこと、アトピー性皮膚炎、独特の体形などから、いじめの対象になったり、学校に行きづらくなっていたことも。大学に入学してようやく安心できるかと思ったが、病気やメンタルの不調もあり、5年半ほど引きこもり生活を送る。30歳で「初めてのアルバイト」としてキズキ共育塾の講師となり、英語・世界史・国語などを担当。現在はキズキの社員として、不登校・引きこもり・中退・発達障害・社会人などの学び直し・進路・生活改善などについて、総計1,000名以上からの相談を実施。

【執筆記事・インタビューなど(一部)】

日本経済新聞 / 朝日新聞EduA / テレビ東京 / 不登校新聞 / 通信制高校ナビ

サイト運営 / キズキ

「もう一度学び直したい方」の勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする学習塾。多様な生徒さんに対応(不登校・中退・引きこもりの当事者・経験者、通信制高校生・定時制高校生、勉強にブランクがある方、社会人、主婦・主夫、発達特性がある方など)。授業内容は、小学生レベルから難関大学受験レベルまで、希望や学力などに応じて柔軟に設定可能。トップページはこちら。2023年7月現在、全国に10校とオンライン校(全国対応)がある。

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