
古文の勉強で世界が広がる。効率的に楽しく学んで、豊かに生きましょう

目次
文法の知識で、和歌が情熱的なラブレターになることも
こんにちは、キズキ共育塾スタッフの村田綾香です。
今回は、元国語教師として、古文の勉強が楽しくなる(かもしれない)お話をしようと思います。
高校に入ったばかりのころ私は、古文があまり好きではありませんでした。
細かい文法や古文単語を覚えるのが面倒だったからです。
しかし、ある和歌と出会ったことで、「もっと勉強してもっと古文のことを知りたい!」と思い、古文の勉強が楽しくなりました。
まずは、その和歌を紹介します。
ひさかたの 天つみ空に 照る月の 失せなむ日こそ 吾が恋やまめ」(萬葉集 三〇〇四)
細かい文法の説明はここでは控えますが、まずは簡単に直訳をお伝えします。
「天空に輝いているお月様が消え失せてしまうような日にこそ、私の恋は止むのだろう」となります。
これだけでは、あまり魅力的な歌には思いません。
しかし、この歌には助詞による隠し味が潜んでいます。
隠し味を含めて解釈を付け足すと、
「(天空に輝いているお月様が消え失せてしまうような日にこそ、私の恋は止むのだろう)けれど、天から月が消えることはあり得ないので、私のあなたへの恋心が止むことは生涯ありません!!」
という情熱的なラブレターであることがわかります(なぜこうなるのかについては、後で説明します)。
「勉強して古文の文法を身につけることによって、見えなかったものが見えるようになった。こうして世界が広がっていくのかな」
こんなふうに思ったことを覚えています。
これは、古文に限ったことではなく、すべての「勉強」に対して言えることでしょう。
より豊かな世界を知ることが、「勉強すること」の楽しみの一つではないでしょうか。
千年以上の昔と今で、変わらないもの、同じものを知って、世界が広がる

さて『万葉集』には、この和歌のように恋愛感情を詠んだ「相聞歌(そうもんか)」というものも多く含まれています。
その他にも、故郷から遠い地へ単身赴任した人の心情を詠んだ「防人の歌(さきもりのうた)」や、死者を悼む「挽歌(ばんか)」など、現代を生きる私たちも共有できる場面での感情が込められた和歌がとても多いです。
もちろん昔の歌なので、今の感覚とすべてが一致するわけではありませんが、中には「千年以上経っても片思いの甘酸っぱさは変わらないな」なんて思うこともあります。
千年以上経っても変わらない「人間らしさ」のようなものを感じると面白いですね。
その一方で、「現代と感覚が全く違う歌」もあります。
たとえば、「こんなことを言う人は、現代にはいないな」と思うことがあれば、「千年前には普通で、今は普通ではないこと」から、時代や社会を考えることにつながります。
すると、私たちが普段当然のように受け止めている感情が、いかに「今の時代」や「今の社会」に特有のものであるかに気づかされるはずです。
古文の世界には、「今の時代の今の社会の当たり前」以外の世界が広がっています。
そこから、あなたにとって新しい世界が広がっていく可能性があります。
これも、「見えなかったものが見えるようになり、世界が広がること」の一つで、古文を勉強してよかったことだと思っています。
「温故知新」。効率的に楽しく学んで、豊かに生きましょう
古文の授業で私が生徒さんによく言っていたことに、「温故知新(おんこちしん)」という教えがあります。
この言葉の出典は『論語』で、元々は漢文、つまり昔の中国語です。
これを日本の古文風に読む(訓読する)と、「故きを温ねて新しきを知る(ふるきをたずねて あたらしきをしる)」となります。
現代の日本語での意味は、「過去の教えを基礎として、そこから新しい見解を見出すこと」となります。
『万葉集』の様々な和歌からも、たくさんの「故きを温ねる」ことができます。
「故きを温ねる」からこそ見えてくる「新しき」と出会えたとき、古文を勉強するよさが実感できるのではないでしょうか。
たくさんの「新しき」を得て、より「豊かな世界」で生きて行きたいものです。
そして「豊かな世界」に想いを馳せると同時に思ったのは、「豊かな世界を知るために遠回りしているのはもったいないな」ということです。
「効率よく勉強して、楽しく学び、より豊かな人生を歩もう!」というのが、高校生のとき立てた目標で、高校で教師をしていたときにも大切にしていました。
助動詞を覚えると、古文がわかるようになります
古文を効率よく勉強するひとつのアイディアをお伝えします。
古文の学習において、「助動詞の種類・活用・接続方法・意味を覚えること」は最重要です。
残念ながら、助動詞を覚えずに古文を読めるようになることはありません。
しかし、助動詞の活用や接続までをひととおり把握できるようになれば、古文を解釈でき、テストなどでも問題の答えを導けるようになります。
あとは「各助動詞の使われ方」を意識しながら考えるトレーニングをすることが大事です。
助詞・助動詞の読み解き方の例を解説します

ひさかたの 天つみ空に 照る月の 失せなむ日こそ 吾が恋やまめ
最初に紹介したこの和歌のうち、「失せなむ日」という部分の助動詞の見分け方と意味、そしてこの和歌が「情熱的なラブレター」である理由を、合わせて解説します。
下線をつけているところは、「覚えておかないとわからない部分」です。
なお、解説を読んで、「古文の専門用語ばかりで何を言っているのかわからない」と思うかもしれませんが、勉強していくうちにわかるようになるので、「現時点でわからない」からといって不安にならなくても大丈夫です。
では、解説に入ります。
パッと見て意味がわからないものが「助詞」「助動詞」ですから、「なむ」の部分がそれにあたります。
ただ、「なむ」という助動詞はありません。
どんな助動詞があるかを把握しておく必要があります。
では、「な」と「む」に分けるとどうなるでしょうか。
「な」は登場頻度が低いのですぐに思いつかないかもしれませんが、「む」は基本形でもあるのですぐにわかります。
推量その他の助動詞「む」の終止・連体形ですね。
ここでは、下に「日」という名詞(=体言)があるので連体形です。
では、「む」の接続(上に何系の活用形がくるか)は?……正解は「未然形」です。
接続についても必須項目です。
未然形で「な」の形になる助動詞は、「ぬ」があります。
「ぬ」の意味はほとんどの場合「完了」ですが、下に推量系の助動詞がきている場合は「強意」の意味になるので、この「なむ」は、「~してしまう(=な)ような(=む)」という意味になります。
また、この和歌を解釈するための「文法の隠し味」は、「こそ」にあります。
「こそ」は、「係助詞」と言われるもので、強調のために使われ、通常はあまり訳に出しません。
テストや受験などで重要視されるのは、「文末の活用語を已然形にする」という働き(係り結び)です。
ただし、この「こそ~已然形」が和歌の句末で使われた場合、逆接を強調する(そちらが真意になる)という働きが生まれます。
そこで、「お月様が消え失せてしまうような日にこそ、私の恋は止むのだろう」という直訳ではなく、「月が消えることはあり得ないので、私のあなたへの恋心が止むことは生涯ありません!!」という解釈になるのです。
「何を覚えると何がわかるようになるか」を意識しましょう

さて、解説の下線部を見て、「覚えることばかりじゃないか……」と嫌になった人もいるかもしれません。
しかし、この「順番に考えるトレーニング」を重ねることで、「考えること」に必要な時間は確実に減っていきます。
重要なのは、「何を覚えれば、何がわかる・できるようになるか」を意識することです。
それを考えずに「すべてをとにかく覚えよう」とすれば無駄がたくさん出てくるので、常に「今自分に必要な知識は何か?」を心に留めておくとよいでしょう。
少し細かい古文のお話しもしましたが、「今自分に必要な知識は何か?」「これを知っていれば何ができるか?」を考えることは、すべての教科において重要なことではないでしょうか。
今回は、私が勉強してよかったと思えたことと、効率よく勉強するためのヒントについてお伝えしました。
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