不登校中に「わがまま」に見える行動|子どもの気持ち・対応を解説

不登校中の「わがまま」に見える行動|子どもの気持ち・対応を解説

不登校の子どもの勉強とメンタルを完全個別指導でサポートするキズキ共育塾の岡田和哉です。

「子どもは不登校になってからネットやゲームばかり、昼夜逆転、言うことを聞かない。わがままばかり」と悩んでいませんか?

今回は、次のようなことを不登校経験者である私がお話しします。

  • なぜ、不登校の子どもがわがままに見える行動をするのか?
  • そんな子どもにどう対応すればよいのか?

不登校の子どもの行動の理由を理解し、子どもとうまく向き合っていくきっかけを掴んでもらえたら嬉しいです。

不登校中に「わがまま」に見えるの3つの行動

不登校中の子どもの行動で、親御さんが「わがまま」と感じるパターンは、主に次の3つです。

行動①親が「やってほしくないこと」にはまる

毎日ネットやゲームばかりの生活になっていき、やめさせようとしても言うことを聞かない状況です。

行動②生活が乱れがちになる

昼まで起きてこなかったり、食事の時間になっても顔を出さなかったり、風呂にもあまり入らなくなったりするなどの状況です。

行動③約束を守らない・言うことが変わる

「明日は学校に行く」と言っていたのに、翌朝になると「やっぱり行かない」などと言ったり、「大学に行きたい」と言っていたのに、別の日には「専門学校に行きたい」などと言ったりするなどの状況です。

わがままに見える言動も、わがままではありません

①〜③のような子どもに対して、「どうしてそんなにわがままばかり…」と思う気持ちもわかります。

ただ私は、元不登校の立場から「こういう言動は、わがままではない」と主張したいです。

親御さんを責める意図はありません。

ただ、子どもがそのような行動をする理由がわからないから、親には「わがまま」に見えるのだと思います。

3つのパターンについて、不登校の子どもの気持ちを私の経験に基づいてお伝えします。

①「親のやってほしくないことにはまる」子どもの気持ち

「親のやってほしくないことにはまる」子どもの気持ち

不登校中にゲーム(やネットやマンガなど)にはまっている子どもは、「ゲームをしたいから、他のことをせずにゲームをしている」わけではありません

やることがなかったり、あったとしても気力が起きずにできなかったりして、「結果的に、ゲーム(など)をしている(ゲームをするしかない)」のです。

つまり、「ゲームをしたいから、他のことをせずにゲームをしている(=わがままにしている)」わけではないのです。

ゲームを楽しんでいるのではなく、本人は非常に苦しい状態であることも少なくありません。

不登校の子どもに共通して見られる傾向として、「いろいろな悪循環に陥る」があります。

不登校になると、時間の感覚が止まったり、人との繋がりが減ったりする中で、「自分はダメな人間だ」「自分を理解してくれる人なんかいない」などと自分を責めるようになるのです。

そして、自信を失ったり、希望が持てなくなったり、気力をなくしたりするなどの経験が積み重なり、思考がどんどん後ろ向きになっていきます。

その結果、やる気や積極性が失われ、ものごとから逃避するようになります。

そんな状態に加え、何もすることがないつらさもあり、「今の自分でもできること」として、ゲーム(など)にはまるのです。

②「生活が乱れがちになる」子どもの気持ち

「生活が乱れがちになる」子どもの気持ち

乱れた生活を送っている子どもも、「乱れた生活を送りたい」と思っているわけではありません

「わがまま」だと断じるのは簡単ですが、規則正しい生活を送れない理由もご理解いただければと思います。

例として、子どもが「朝、きちんと起きない」理由を三つご紹介します。

一つに、「朝起きると、通学する同年代の人を見たり意識してしたり、通学していたときのことを思い出したりする」ことがあります。そうすると、「学校に通えない自分」に劣等感を覚えるため、「起きたくない」「起きられない」気持ちになるのです。

二つ目に、「睡眠医学的に、中学生くらいの年齢になると、それまでより入眠・起床時間が2時間ほど遅れる場合」があります。この場合は、体のリズム的に、朝早くに起きようと思っていてもなかなか起きられないのです。

三つ目に、「深夜にスマホや蛍光灯のブルーライトを見ているために、睡眠リズム障害や起立性障害などが起きている」、こともあります。

ブルーライトが睡眠を阻害することは、それほど知られていることでもありません。「ち少しだけスマホでネットを見てから寝よう」という現代ではよくあるライフスタイルが、知らないうちに生活の乱れにつながることもあるのです。

以上、わずかな例ではありますが、不登校中の子どもは、「わがまま」で生活が乱れているわけではないことが伝わりましたら幸いです。

そして、理由がなんであれ、一度乱れた生活は、いつの間にか「乱れた状態」が当たり前になり、今度は直そうと思ってもなかなか直せません

私の場合も、不登校時代の習慣である昼夜逆転生活を改善するのに大変苦労しました。

すると今度は「生活時間を直そうと思っても直せない自分」が嫌になり、それが再び「子どものやる気や、積極性が失われる悪循環」に繋がっていく場合もあります。

③「約束を守らない・言うことが変わる」子どもの気持ち

「約束を守らない・言うことが変わる」子どもの気持ち

約束を守らなかったり、言うことがコロコロ変わったりする場合も、子どもがわがままで嘘をついているわけではありません

一つには、「本当にそうしたいと思っていたのに、できなかった」場合があります。例えば、不登校の子どもには「気持ちとしては学校に行きたいけど、どうしても行けない」という矛盾する気持ちを抱えることも多いです。夜には「明日は学校に行く」と本心で思っていても、朝になるとどうしても行けなくなるのです。

二つ目は、「自信と気力を喪失しているため、行動に踏み切れない」場合です。

例えば、次のようなケースが挙げられます。

  • 「学校に戻るために勉強する」と言うのだけど、勉強するそぶりを見せない
  • 「大学を目指す」と言っていたのに、すぐに「やっぱ専門学校にする」と変更する
  • 「明日からバイトを探す」と宣言したものの、動きださない

親には理解できない言動かもしれません。

不登校の子どもは「プライドはあるけど自信がない」「願望はあるけど気力がない」などの状態にいることがよくあります(私もそうでした)。

「今の自分ではダメだ」「人生を成功させたい」「自分にだって、できるはず」などのプライドや願望があるため、「○○をする!」と宣言します。

一方、不登校中の生活で自信、気力、自己肯定感などを失い続ける悪循環の中にいることから、「実際に行動しても、ひどく失敗するのではないか。どうせ自分には無理なんじゃないか」とも思っています。

この相反する感情の間で揺れ動いているため、どうしても一歩踏み出せないのです。

そして、「自分でもどうしたらいいのかわからなくて、その場しのぎの嘘をついている」場合もあります。

ただ、例え「その場しのぎの嘘」だとしても、「わがまま」とは見ないでほしいというのが、私の願いです。

繰り返すように、親御さんを責めるつもりはありません。ですが、不登校の子どもには、「このままじゃダメだ」と思いつつ、自分でもどうしたらいいかわからないことがよくあるのです。

そんなときに、親御さんから「これからどうするつもり?」と聞かれると、(親御さんにはそんなつもりはなくても)「何か答えなきゃ」と追い詰められて、嘘をつくこともあるのです。

不登校でわがままに見える子どもに親ができること

不登校でわがままに見える子どもに親ができること

これまで、不登校中に「わがまま」とみなされがちな3つの行動の背景にある、子どもの気持ちをお伝えしました。

この3つのパターンの背景は、それぞれが完全に独立しているわけではなく、繋がっている部分も多くあります。

また、それぞれのパターンの中でも、いくつかの背景が複雑に絡み合っていることも珍しくありません。

不登校の子どもは、複雑な背景の中で、「何とかしたい。でも、できない」ともがき苦しんでいるのです。

親御さんには、まず子どもの気持ちや状態を受け止めて、信頼関係を築いてほしいと思います。

なぜなら、そのような子どもは「自分でもうまく理解できていないのに、親に理解してもらえるわけない」と、悩みを独りで抱え込むことも少なくないからです。

親が「あなたは独りじゃない」と認めることで、子どもは少しずつ前向きな気持ちになっていけます。

どういうことか、ひとつ例を紹介します。

ネットやゲームで昼夜逆転状態にある子どもと、「夜の12時以降はネットやゲームをしないようにする」などの約束をしたことがある人もいるでしょう。

こうした約束は、子どもの状態を受け止めないうちに交わしても、結果として守れずに終わることがよくあります

不登校の子どもの行動には様々な背景があります。その背景は、「ルールをつくってお子さんに任せれば一気に解決する」ものではないのです。

お子さんとしても、約束を守れなかった自分に自信を失ったり、独りで抱え込んだりする場合もあります。

大切なことは、「ただ約束を交わす」のではなく、お子さんの現状を受け止め、「失敗してもいいから、少しずつでいいから、一緒に改善していこう」という姿勢を持つことです。

そういう姿勢でコミュニケーションを取っていくと、次第に親子の信頼関係ができ、お子さんは「独りで抱え込む孤独な状態」から抜け出せます。

「自分は独りじゃない」と思った子どもは、一歩ずつ前に進めるようになります。

参考:学校休んだほうがいいよチェックリストのご紹介

2023年8月23日、不登校支援を行う3つの団体(キズキ不登校新聞Branch)と、精神科医の松本俊彦氏が、共同で「学校休んだほうがいいよチェックリスト」を作成・公開しました。LINEにて無料で利用可能です。

このリストを利用する対象は、「学校に行きたがらない子ども、学校が苦手な子ども、不登校子ども、その他気になる様子がある子どもがいる、保護者または教員(子ども本人以外の人)」です。

このリストを利用することで、お子さんが学校を休んだほうがよいのか(休ませるべきなのか)どうかの目安がわかります。その結果、お子さんを追い詰めず、うつ病や自殺のリスクを減らすこともできます。

公開から約1か月の時点で、約5万人からご利用いただいています。お子さんのためにも、保護者さまや教員のためにも、ぜひこのリストを活用していただければと思います。

私たちキズキでは、上記チェックリスト以外にも、「学校に行きたがらないお子さん」「学校が苦手なお子さん」「不登校のお子さん」について、勉強・進路・生活・親子関係・発達特性などの無料相談を行っています。チェックリストと合わせて、無料相談もぜひお気軽にご利用ください。

まとめ:不登校中の「わがまま」に見える言動には理由があります

まとめ:まとめ:不登校中の「わがまま」に見える言動には理由があります

これまでのことをまとめます。

不登校中の子どもは、「わがまま」と思われがちな言動を行うことがよくあります。よくあるパターンは次の3つです。

  1. ゲームなど、親としては「やってほしくないこと」にはまる
  2. 生活が乱れがちになり、基本的なことをやらなくなる
  3. 約束を守らない、言うことがコロコロ変わる

しかし、これらは「わがまま」ではありません

子どもたちは、「自分でもどうしたらいいのかわからない」「自分でもなんとかしたいけど、できない」などの状況の中で悩み、苦しんでいます。

親御さんとして大事なことは、「子どもの状況を受け止め、失敗してもいいから、少しずつでいいから、一緒に前に進もう」という姿勢を保つことです。

「自分は独りじゃない」と実感できたお子さんは、前に進めるようになります。

とは言え、子どものことを、親御さんだけ、家庭だけで抱え込む必要はありません

親御さんとしても、子どもの状態に不安を感じ、うまく対応できないことはよくあることです。

ぜひ、専門の相談機関やカウンセラーなどの力を借りてください。

それぞれのご家庭、子どもに応じて、より具体的なアドバイスがもらえると思います。

私たちキズキ共育塾でも無料相談をお受けしています。親御さんだけでのご相談も可能です。少しでも気になるようでしたら、お気軽にご相談ください

最後に私から、「どんな状況でも、人には前に進む力がある」とお伝えします

時間はかかるかもしれません。

ですが、悪循環も必ず好循環に変えられます。
お子さんも、不登校から「次の一歩」に踏み出せます。
今がつらくても未来に希望を持ってください。

そうすれば、親御さんの笑顔も自然と増え、結果として子どもの笑顔も増えていくと、私は信じています。

監修 / キズキ代表 安田祐輔

やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ」も運営。

【新著紹介】

『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
Amazon
KADOKAWA公式

【略歴】

2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【メディア出演(一部)】

2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

共同監修 / 不登校新聞社代表理事 石井志昂

いしい・しこう。
1982年、東京都町田市出身。NPO法人全国不登校新聞社代表。
中学校受験を機に学校生活が合わなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から2022年まで編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた。

【著書など(不登校新聞社名義も含む)】

「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること(ポプラ社)』『フリースクールを考えたら最初に読む本(主婦の友社)』『学校に行きたくない君へ(ポプラ社)』『続 学校に行きたくない君へ(ポプラ社)』

【寄稿など(一部)】

AERAdot」「プレジデントオンライン」「東洋経済オンライン」「FRaU」など多数

サイト運営 / キズキ

「もう一度学び直したい方」の勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする学習塾。多様な生徒さんに対応(不登校・中退・引きこもりの当事者・経験者、通信制高校生・定時制高校生、勉強にブランクがある方、社会人、主婦・主夫、発達特性がある方など)。授業内容は、小学生レベルから難関大学受験レベルまで、希望や学力などに応じて柔軟に設定可能。トップページはこちら。2023年7月現在、全国に10校とオンライン校(全国対応)がある。

共同監修・不登校新聞社 代表理事 石井志昂氏からの
アドバイス

行動の背景を考えてみましょう

不登校になってからのお子さんの行動は、一見わがままに見えるものが多くなります。親としては、「がまんできないほどではないけれど、これを許すと悪化するのでは…」などと心配するのは当然です。

そうした状況は、お子さんの気持ちを理解して行動を受け入れると、改善していくことが多いです。「どう対応すればいいのか」よりも、「なぜわがままに見える行動をするようになったか」を考えてみていただければと思います。

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