元不登校が伝える「不登校の親は仕事を辞めるべきか」への答え
2018年6月6日 水曜日 投稿
2021年4月15日 更新

不登校のお子さんをお持ちで、仕事をしている親には、次のようなお悩みがつきものです。
「子どもは、不登校になる前も不登校になった今も、苦しんでいる。自分が仕事を辞めて世話をした方がいいんだろうか」
今回のコラムは、そんな悩みや不安を抱える親に向けた内容です。
この記事を読んでわかること
- 不登校の親が仕事を辞めるべきではない理由
- 不登校の子どもの複雑な気持ち
- 家庭・学校以外の「第三の居場所」の重要性
私自身、中学3年生の秋から春にかけて不登校だった「不登校当事者」です。
この記事を読むことで、「不登校のお子さんの親」と「仕事をする個人」という両方の立場を持つあなたの気持ちが少しでも軽くなり、「次の一歩」が見つかれば幸いです。
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娘・息子が不登校に…。「親の私は仕事を続けていいんでしょうか?」
このように、お子さんを思って「仕事を辞めようか」と考える親は多いです。
親が「仕事を辞めようか」と考える大きな理由は、お子さんが心配だからという「お子さんへの愛」だと思います。
では、親が仕事を辞めることで子どもは幸せになるのでしょうか?
この問いに対して、全ての家庭に当てはまる答えはありません。
というのも、収入・支出、仕事の内容、お子さんの状況などの諸条件は、それぞれの家庭によって異なるからです。
ですが、「できる限り、親は仕事を辞めるべきではない」というのが私の考えです。
親御さん自身のお悩みもご相談ください
私と不登校〜「お母さん、私のために無理しないで」

私は中学3年生の秋に不登校になりました。
高校進学を考えていた私は、「不登校からの高校受験」のプレッシャーに押しつぶされそうになっていました。
また、不登校の直接のきっかけとなった「部活動のチームメイトのきつい言葉」を思い出して、涙が止まらない日もありました。
そんな日々、母は仕事を早退し、私の好きなご飯をつくってくれたり、「勉強疲れてない?彩の好きなお菓子を買ってきたよ」と声をかけたりしてくれました。
母は、当時のことを次のように振り返っています。
私はそんな母の対応が嬉しかったのですが、一方で、次のように、母が無理をしている様子も見てとれました。
仕事の早退について職場の同僚に電話で謝っている様子。
「私が仕事をしてなかったらもっと彩の相談に乗れて、彩は不登校になるまで悩まなかったんじゃないか…」と親戚に悩みを打ち明ける姿。
そんな母を見て、次のような不安や罪悪感でいっぱいになりました。
そのほかにも、当時の気持ちを、昨日のことのように覚えています。
- お母さんが、自分のことを思ってくれて嬉しい
- お母さんに、自分のために仕事を早退させて申しわけない
- お母さんはお母さんらしくいてほしい。無理しないでほしい
- でも、ひとりで家にいるのは寂しい…
つまり、母への思いには、「感謝」と同時に、「罪悪感」や「自分でも、母にどうしてほしいのかわからない気持ち」などが入り混じっていたのです。
「あなたのお子さん」への対応を考えます
親が仕事を辞めるべきではない理由

不登校の私たちは、親に対して、次のような複雑な気持ちを持っています。
不登校の子どもの気持ち
- 親が働いていると寂しいこともある反面、自分のために仕事に支障があると申しわけない
そのため、親が仕事を辞めると「親に対する申しわけなさ」は増していきます。
もちろん、家に親がいると、寂しさはなくなります。
ですがやがて、次のような気持ちになることもよくあるのです。
親が仕事を辞めた後の子どもの気持ち
- いつもいるからうっとうしくなってきた…。あまり話したくないな…
- 仕事を辞めるなんて、よっぽど自分は信用されていないんだな…
そして、不登校のお子さんが思う「親に対する申しわけなさ」の一つには、「家計」のこともあります。
お子さんには、次の②の「思いこみ」によって、悩みが深くなることがあるのです。
親が仕事を辞めた後の家計への思い
- ①「自分のために親が仕事を辞めた」
- ②「自分のために収入が減ったんだから、自分は高校や大学に進学しない方がいいな」
- ③「でも、進学以外で『次』に何ができるのかわからない…」
- ④「ますます悩みが深くなる…」
以上のような状況になると、家族仲がどんどんギスギスしていきます。
不安にさせるつもりは決してありませんが、こういう状況になっては、お子さんはなかなか「次の一歩」に進めませんし、親も苦しくなるでしょう。
これが、「お子さんのために仕事を辞めるべきではない」という理由です。
お子さんへの愛はわかります。
親がお子さんに寄り添うことは重要です。
ですが、「仕事を辞めてつきっきり」になることはオススメしません。
先述のとおり、お子さんは親に対して「複雑な気持ち」を持っていて、自分でもうまく表現できません。まずは、自分の気持ちをうまく表現できないお子さんの声をじっくり聞いてください。
その上で、お子さんが「そばにいてほしい」と願うときは、「いきなり退職」ではなく、次のような手段が取れないか、職場に相談することをオススメします。
- 柔軟な遅刻・早退
- 時短勤務
- 時間の都合がつきやすい部署への異動
- (一部を)在宅勤務化
「お子さんの複雑な気持ち」の理解が難しければ、カウンセラーや相談機関の利用も考えてみてください(私たちキズキ共育塾も無料相談を受け付けています)。
お子さんの気持ちの理解をサポートします
家でも学校でもない「第三の居場所」を利用しましょう
お子さんとしても家で一人っきりではさみしいですし、不登校の「次」に向けた準備も必要です。
最近では、フリースクールや適応指導教室などが増えてきました。
そこでは、お子さんと一緒にご飯を食べる人や、一緒に趣味の話をする人や、勉強を教える人がいます。
フリースクールのような、家でも学校でもない「第三の居場所」をうまく利用できれば、お子さんは孤独を感じることなく、「今日は楽しかったな」「そろそろ次のことを考えようかな」と前向きな気持ちを持てるようになります。親としても、家を空けている時間の心配が減ります。
送迎が難しかったり、近くにそういう場所がなかったり、行ってみた団体がお子さんに合わなかったりしたときは、オンラインで話ができるサービスもあります。
お子さんの居場所になります
まとめ〜お子さんも親も、両方が幸せになれますように願っています

これまでのことを振り返ります。
不登校のお子さんのために、「仕事を辞めて面倒を見た方がいいのだろうか」とお思いでしょう。
しかし、実際に仕事を辞めると、お子さんは嬉しい反面、次のような感情を覚えることがよくあります。
- 「自分のせいで仕事を辞めさせて申しわけない」という罪悪感
- 「自分を信じてもらえてないんじゃないか」という不信感
- 家計に対する過剰な気遣い
仕事を辞めてつきっきりで面倒を見ると「いつも顔を合わせるとうっとうしいな」と思うようになることもあります。
そうなると家族仲がギスギスし、お子さんも親も苦しい状況が続きます。
なので、仕事を辞めることはオススメしません。
まずは落ち着いて「お子さんの声を聞きつつ、仕事を辞めずにお子さんをケアする方法」を探してみませんか?
お子さんがどう思っているのかわからなかったり、お子さんに対して何ができるか悩んでいたりする場合は、相談機関等を利用しましょう。
例えば、自治体の子育て相談窓口、不登校の「親の会」、フリースクール、臨床心理士などのカウンセラーに相談できます。
相談することで、それぞれのご家族・お子さんに応じてより具体的なアドバイスがもらえると思います。
このコラムが、不登校に悩むお子さんと親の、「次の一歩」につながったなら幸いです。
さて、私たちキズキ共育塾でも無料相談を行っており、親だけのご相談も可能です。
キズキ共育塾では、不登校経験を乗り越えた講師やスタッフも大勢働いています。
私たちとの出会いを通して、何かお子さんの気持ちに「気づく」きっかけになればと思います。
少しでも気になるようでしたら、お気軽にご相談ください。
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