不登校を取り巻くイライラへの処方箋|経験からお伝えするアドバイス

不登校を取り巻くイライラへの処方箋|経験からお伝えするアドバイス

学校が苦手なお子さんのための完全個別指導塾・キズキ共育塾の木原彩です。現在大阪校で講師をしながらコラムを執筆しています。

あなたは今、不登校のお子さんに対してイライラする気持ちがあり、悩んでいるのではないでしょうか?

私自身、中学3年生のときに不登校だった「不登校当事者」です。不登校当時は外出もほとんどしない「ひきこもり」でもありました。

私個人や家庭の経験から、「不登校の本人はもちろんのこと、家族の苦しみにも何か貢献できたら…」と願っています。大学では臨床心理学を学んでいます。

今回は、不登校のお子さまに不安を抱いたり、イライラしてしまったり、そんな自分に悩んでしまう親御さんに向けて、私や私の母のことも含めて記事を書きます

読んでくださった方の気持ちが少しでも軽くなることを願っています。また、苦しい経験を話してくれた母にも心から感謝を込めて書きたいと思います。

監修 / キズキ代表 安田祐輔

やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ」も運営。

【新著紹介】

『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
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KADOKAWA公式

【略歴】

2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【メディア出演(一部)】

2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

共同監修 / 不登校新聞社代表理事 石井志昂

いしい・しこう。
1982年、東京都町田市出身。NPO法人全国不登校新聞社代表。
中学校受験を機に学校生活が合わなくなり、教員や校則、いじめなどを理由に中学2年生から不登校。同年、フリースクール「東京シューレ」へ入会。19歳からNPO法人全国不登校新聞社が発行する『不登校新聞』のスタッフとなり、2006年から2022年まで編集長。これまで、不登校の子どもや若者、識者など400人以上に取材してきた。

【著書など(不登校新聞社名義も含む)】

「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること(ポプラ社)』『フリースクールを考えたら最初に読む本(主婦の友社)』『学校に行きたくない君へ(ポプラ社)』『続 学校に行きたくない君へ(ポプラ社)』

【寄稿など(一部)】

AERAdot」「プレジデントオンライン」「東洋経済オンライン」「FRaU」など多数

サイト運営 / キズキ

「もう一度学び直したい方」の勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする学習塾。多様な生徒さんに対応(不登校・中退・引きこもりの当事者・経験者、通信制高校生・定時制高校生、勉強にブランクがある方、社会人、主婦・主夫、発達特性がある方など)。授業内容は、小学生レベルから難関大学受験レベルまで、希望や学力などに応じて柔軟に設定可能。トップページはこちら。2023年7月現在、全国に10校とオンライン校(全国対応)がある。

不登校は当事者も親もイライラして苦しいもの

「不登校」と聞くと、お子さまにまず目が行きがちです。ですが、親御さんもイライラしたり、ビクビクしたり、不安になったりする苦しい状態です。

私の母に、私の不登校について当時どう思っていたか聞くと、こんなふうに言っていました。
不安だった。高校進学できなかったら、このまま外出もできなかったら将来どうしようと思っていた…

そして、「状況を好転させられない自分自身に対してイライラしていた」とも言っていました。

母はそんな不安やイライラを娘(私)にぶつけてしまうこともあり、そんな日は自分を責めていたそうです。

私自身も苦しい状況だったのですが、母は母で「不安・イライラ」と「自責」の悪循環の中にいたのです。

私と不登校①:負けん気と無力感、母とのすれ違い

私と不登校:負けん気と無力感、母とのすれ違い

そんな私と母は、私の不登校をめぐる状況について、認識にすれ違いがありました。

私自身は、自分が不登校になった原因は「部活動での挫折による無力感・挫折感と、その部活での人間関係」だと考えています。

その背景には「自分は結果を出さなければいけない」という価値観がありました。

対して母は「①娘は今の中学校が嫌なのだろう。②そして、偏差値の高い高校に行くために受験勉強に集中したくて学校に行かなかったのだろう」と、今でも考えています。

認識にすれ違いがあるからこそ、お互い葛藤があったように感じます。

とはいえ、母の言葉も、全くのハズレではありません

「①娘は今の中学校が嫌なのだろう」という部分は確かに当てはまります。私は学校で、次のような「生きづらさ」を覚えていました。

  • 陰口やいじめ
  • 担任の同調圧力
  • 成績や内申書や受験に対する不安など

ですが、それは不登校の直接の原因ではありません。

私が「学校での生きづらさ」と向き合う手段は、「負けたくない」という意志、負けん気にもとづく「通学も含めた部活と勉強」であり、「不登校」ではなかったのです。

ところが、部活動で挫折したことにより、「やっぱり自分は結果を出せない」という無力感や、自分に対する失望でいっぱいになりました。

そして「部活ができない今、自分には勉強しかない。もう後がない」という思いを持つようになり、だんだん学校に行かなくなり、そのうち、完全な不登校になりました。

不登校気味になってからは、ご飯もろくに食べずに受験勉強をするようになりました。

つまり、②のうち「偏差値の高い高校に行くために受験勉強に集中」も事実なのですが、それは不登校の原因(目的)ではなく結果であるということです。

全くのハズレではないことが、「もどかしい葛藤」に繋がっていたのかもしれません。

この記事を読んでいる親御さんにも、「不登校を取り巻く状況の認識」について、もしかしたらお子さまとすれ違いがあるかもしれません。

逆に、お子さまの側にしても、お子さま自身が苦しい中、状況を正確に把握したり言語化したりできるとも限らず、また本音を言うとも限りません。

無用な葛藤を避けるため――つまり、お子さまだけではなく親御さんのためにも――、親御さんには「自分が思う認識」を押しつけず、お子さまにそっと寄り添ってほしいなと思います。

とはいえ、「我が子がなぜ不登校になったのか」を知りたくなるのは当然のことだと思います。

次の記事では、不登校の原因を詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

私と不登校②:当時は知らなかった母の苦悩

母は、「彩は大丈夫なのだろうか?」という不安を持ちつつも、「少しでも彩が過ごしやすいようにしなきゃ」という思いから、不登校の私に寄り添おうとしてくれました。

その反面、私の将来への不安や、母自身のイライラを私にぶつけることもありました。

例えば、私は受験勉強で徹夜してしまうことがありました。

熱心な受験勉強で徹夜というよりも、「受験に落ちたらどうしよう」という不安で寝付けず、疲れて眠くなるまで勉強していたら朝になっていた、という感じです。

そうなると、明け方から昼ごろまで寝ることになります。

そんな私を見て、母は「学校に行かなくてもいいけど、朝ぐらいきちんと起きなさい!」と叱ります。

母も、「彩は不安でなかなか眠れないから、昼夜逆転気味になっている」ということは知っていました。

しかし、私の不登校に関して、私自身が不安であるように――もしかしたら私以上に――、母は母で精神的につらい状況でした。

不安とイライラから私を叱ったときの母は、
「彩はがんばっているのに、私が余計なことを言って追い込んでしまった」
と自責し、こっそり泣いていたそうです。

当時の私は自分のことで精一杯で、母のそんな苦しみを知りませんでした。

私と不登校③:学校の無理解と母の愛

私と不登校:学校の無理解と母の愛

私が不登校になってから、母は学校に「娘は体調悪いので休みます」と毎日連絡してくれていました。

しかし、担任の先生は「多少体調が悪くても登校するべき」という考えでした。

やはり当時の私は知らなかったのですが、母は、学校から次のようなことを言われていました。

  • 「受験前の大事な時期ですから、無理してでも学校に来るべきです」
  • 「学校にずっと来なくて、これからどうするつもりですか?」

これらはまだ、価値観を押しつけ気味ではあるものの「母とは角度の違う私への心配」と言えるかもしれません。

ですが、
「不登校になったのは、お母さんが甘やかしているからではないですか?」
と言われたときは、
私も彩もなんとかがんばっているのに、なんで理解してくれないの
と思い、とてもつらかったそうです。

それでも母は私のことを思い、ひたすらそのつらい気持ちに耐えてくれていました。

そして、中学卒業まで「今日は娘が体調悪いので休みます」と学校に連絡し続け、私のことを見守ってくれました。

今になって不登校当時のことを改めて聞き、母が私のことを大切に思ってくれていたことを、母が私を愛してくれていたことを感じています

私と不登校④:弟への申しわけなさと、どうすることもできない「イライラ」

母はさらに、「不登校の娘(私)」と「息子(私の弟)」の間で板挟みになることがよくありました。

板挟みの状況についても、やはりどうしようもできない母自身にイライラしていたと当時の心境を話してくれました。

例えば、弟は屋内で友達とゲームをしたりブロック等で遊んだりすることが好きで、友達と家を行き来して遊んでいました。

しかし、私が不登校になると、弟は家に友達を呼ぶことができなくなりました。

それは母が弟に「不登校で受験生の姉がいるんだから、受験が終わるまで家で遊ぶのはだめだよ」と声掛けをしていたためです。

母は、弟にそう言いながらも、悔しさとイライラを覚えていたとのことです。
娘が悪いとは思わないけど、息子だって何にも悪くないのに、なんで我慢を強いなければいけないんだろう

ここでも母は、「自分がしっかりしていないから、娘も息子も苦しい思いをしているのでは…」と自責したそうです。

そんな母を見て、弟も「自分がわがままをいって迷惑をかけられない」と我慢をしていました。

私自身も含め、家族の誰もが我慢し、自責し、苦しみ、イライラしていました。

そんな母は、母自身が本当に立ち直ることができたのは、「たくさんの人の支えがあったからだ」と言います。

母が立ち直ったのは、他の人たちと交流するようになったから

母が立ち直ったのは、他の人たちと交流するようになったから

私は高校に進学し、その後は大学にも進学しました。大学生活を送る中で、母との関係性も修復しました。(高校進学以降の話については、自己紹介をご覧ください)

ですが、私が大学に進学した後に、今度は弟が不登校になりました。

弟の不登校について、母は、最初は私のときと同じように一人で抱え込もうとしていました。

ですが、「それでは娘のときと同じように、息子を傷つけるような対応をしてしまう」と思い直したそうです。

そこで、弟の主治医、デイケアのスタッフ、「不登校の親の会」で出会った同じような親御さんなどと積極的に交流を持つようにしました。

その関わりを通して、「自分は一人でない」という実感を得たり、「自分ひとりがしっかりせねば」と気負わなくてもいいのだ、思ったりするようになったとのことです。

つまり、変に不安を持ったり、イライラしたりしなくなったということです。

母の変化に伴い、弟の状況は私のときよりもスムーズによい方向に変わっていき、弟は今では大学生になっています。

母が変わるきっかけをくれたたくさんの人のおかげで、弟は不登校から前に進むことができるようになったのだと思います。

また、家族全体の関係性もよくなりました

お子さまにとってだけでなく、親御さんにとっても、頼れる場所が必要なのだなと感じます。

次の記事では、不登校についての具体的な相談先を紹介しています。ぜひ参考にしてください。

まとめ:不登校に関するイライラを抱え込まないでください

不登校のお子さまを持つ親御さんに伝えたいことがあります。それは次の2つです。

  1. 「あなたは一人ではありません」
  2. 「お子さまのために本当にがんばりましたね。ゆっくり休んでいいんですよ」

お子さまを思うからこそ、イライラしたり自責することもあるかもしれません。
私の母のように、お子さまのことを一人で抱え込んでしまう方もいるかもしれません。

不登校のお子さまのために、親御さんだからこそできることはもちろんあります。
ですが、第三者だからこそできること、第三者と関わることでできるようになることもあります。

私の家族の経験からも、キズキ共育塾の経験からも、第三者の重要性を感じます。

信頼できる方に「ちょっとした助け」を求めてほしいです。

お子さまのためを思うとともに、親御さんのことを思うからのお願いです。

キズキ共育塾でも、無料相談を実施しています。

もし、お子さまの不登校のことでお悩みがありましたら、些細なことでもご相談ください。

親御さんだけでのご相談でも大丈夫です。それぞれのお子さま、親御さん、ご家庭に応じて、具体的なお話ができると思います。

一緒に話していく中で、親御さんとお子さまが希望を持てるように、少しでも安心して前に進んでいけるようにと願っています。

共同監修・不登校新聞社 代表理事 石井志昂氏からの
アドバイス

不登校は、「親子関係を見つめ直すきっかけ」になります

お子さんが不登校だと、親御さんにも不安やあせりが生じます。そして、いけないとはわかっていても、「その不安やあせりを子どもにぶつけること」を止められないこともあるでしょう。

親だって、「初めての親」をしています。不登校が関係してもしなくても、お子さんへの対応にわからないことやイライラすることがあって当然です。そして、「親子の在り方」は、親子で互いに学びながら見つけていくものです。

 その上で、「不登校が親子関係の再構築に役立った」という話はたくさん聞いてきました。お悩みの多い日々だとは思いますが、お子さんの不登校を、「親子関係を見つめ直す(よりよいものにしていく)きっかけ」と考えてみることをオススメします

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