
アダルトチルドレンって何?概要、「役割」、生きづらさ(特徴)をお伝えします

こんにちは。キズキ共育塾の佐野澪です。
「アダルトチルドレン」という言葉をご存知ですか?
近年よく耳にする言葉ではありますが、実際にどのような人を示すのかは、あまり知られていないかもしれません。
本コラムでは、そんなアダルトチルドレンの概念、特徴、家庭における「役割」、また、生きづらさ緩和のための情報を、アダルトチルドレンの概念の生みの親であり、アメリカのソーシャルワーカー・社会心理学博士であるクラウディア・ブラック氏の書籍を参考にしながら説明してまいります。
この記事が、なんらかの形で少しでもあなたのお役に立てば幸いです。
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目次
アダルト・チルドレンの概要

アダルトチルドレンとは、現在では「子ども時代を機能不全家族の中で育ち、成長してもなお精神的影響を受けつづける人々」という定義が、広く受けいれられています。
しかしもともとは、「アルコール依存症(アルコホリック)の親のもとで育ち、成人した子ども(たち)」という意味で使われていました。
本コラムでは、前者について述べてまいります。
まず、機能不全家族とは、「親としての十分な責任と機能が果たされていないために、子どもが子どもらしく生きることのできない、安心・安全感のない家族」のことを指します。
わかりやすいケースでは、アルコール依存症やギャンブル依存症の親によって、暴力や虐待が日常的にくり返されている家庭、といったものがあります。
一方、子どもの自主性を尊重しない、親の価値観で子どもを縛ったりする、一貫性のない接し方をする、などという、一見わかりにくいケースも存在します。
そして、機能不全家族で育った子どもは、成人後も自己肯定感が持てず、生きづらさを抱えやすいという傾向が見られる、すなわち「アダルトチルドレン」となる傾向があるのです。
参考: 「あの日の君へ」(精神科医の斎藤裕氏によるウェブサイト)
なお、アダルトチルドレンとは、医療的診断名、つまり「病気」ではありません。
二次的に精神疾患の症状が現れることはありますが、アダルトチルドレンという言葉自体は、「病気」でなく「概念」です。
「自分(・知人・ご家族)が病気かどうか」という視点ではなく、「アダルトチルドレンという概念を知ったことが、今後の生活にどのように影響するのか、何が変わるのか」ということに目を向けてゆきましょう。
アダルトチルドレンの「役割」・生きづらさ(特徴)
では、アダルトチルドレンには、具体的にどのような生きづらさがあるのでしょうか。
ここからは、アダルトチルドレンの「役割」や、生きづらさ(特徴)について述べてまいります。
①アダルトチルドレンの「役割」

アダルトチルドレンは、子ども時代に、家庭内で様々な「役割」を持っています。
どの役割も、子ども時代を生きのびるために必要な戦略としての意味があります。
人は、大人になっても子ども時代の役割を引きずり、同じように行動することが多いと言われています
そのため、子ども時代から家族の中で演じてきた役割を知ることは、今後の他人との関わり方を変えるための一助になります。
専門家によって名づけ方は異なりますが、ここでは、クラウディア・ブラック氏の掲げる名目に準拠します。
各役割と特徴を紹介しますので、あなた(や知人)に当てはまるかどうか、考えてみてください。
1:リスポンシブル・チャイルド(責任を負う子)
- 小さなおとなとも称される
- 家族の混乱状態に秩序をもたらすために、物事の管理に努めようとする
- 優等生であることが多く、周囲から評価を得る
2:アジャスター(順応者)
- ロスト・チャイルドとも称される
- 気配を感じさせないことにより、家族の安定に貢献する
- 周囲に感情を通さないバリアを張る
3:プラケイター(なだめ役)
- 世話焼きとも称される
- 他の家族の情緒的なニーズに応えてることで、安定を保つ
- 人に優しく接することで、周囲からの好意や関心を得る
4:アクティング・アウト(問題児)
- いけにえとも称される
- 家族に代わって声をあげる役目を果たす
- 悪い行いにより注目を得ることで、無関心を回避する
一つの役割だけではなく、いくつかを組み合わせて、その場その場で使い分ける人もいます。
重要なのは、過去に必要だったある役割を、大人になってからも続ける傾向があるという事実です。
②アダルトチルドレンの生きづらさ(特徴)

各「役割」を果たしてきた子どもたちは、次のような生きづらさ(特徴)を持つアダルトチルドレンになる傾向があります(もちろん、「必ずなる」というわけではありません)。
感情(思考)・行動・対人の3つの観点別に紹介します。
■感情・思考的特徴
- 自己防衛的である
- 泣くこと、恐れ、怒り、罪悪感を回避する(感情の抑圧)
- 慢性的な喪失感がある
- 自己否定感が強い
■行動的特徴
- 何事も完璧にやろうと努力する
- なにかに依存する(アルコールやカフェイン、過食や拒食など)
- 自分で決断することに恐れを感じ、引き延ばしをする
- いつも緊張しており、リラックスするのが下手
■対人的特徴
- 適切な距離感を築くことが難しく、信頼関係が築けない
- ありのままの自分を隠そうとする
- 他人の世話やきに熱中しやすい(共依存に陥りやすい)
- 他人との境界線を引くのが不得意
一部の例をあげましたが、アダルトチルドレンにはさまざまな特徴があり、そのすべてが当てはまることはないかもしれません。
ただし、「自分らしく生きられない」という葛藤は、共通しているでしょう。
回復へのアプローチ

これまで、アダルトチルドレンの子ども時代から続く「役割」と生きづらさ(特徴)について紹介してきました。
大人になっても抱える生きづらさを和らげるためには、自己肯定感の低さと認知の歪みを少しずつ回復させることが肝要です。
アダルトチルドレンにおける回復とは、何を意味するのでしょうか?
クラウディア・ブラック氏は、著書『子どもを生きればおとなになれる』の中で、「癒されるためには自分の喪失にきちんと目を向けることが必要」だと述べています。
同著書の中で傷を癒す、すなわち回復することについて語られた箇所を、一部抜粋します。
- 回復とは、今をどう生きるかに積極的に責任を持つこと。
- 回復とは、過去を越えて進むことができること。
- 回復とは、子ども時代について本当のことを話せるようになること。
- 回復とは、子ども時代に学べなかったスキル(生き方の技術・技能)を育てていくこと。
- 回復とは、一度の出来事でもゴールに到達することでもなく、日々続いていくプロセス。
- 回復とは、もはや恐れや自己否定感を土台にして生きないこと。
(以下略)
つまりは、自分が傷ついていたのだと自覚し、自分を受け入れることが回復のスタートといえます。
そこにゴールはなく、日々プロセスを踏んでいく中で、徐々に回復していくということでしょう。参考書籍
もしもご自分、または近しい人が、アダルトチルドレンの概念によく当てはまると感じられた場合には、理解を深めるために、書籍を参考にされることをオススメします。
いくつか、ご紹介します。
- 『子どもを生きれば大人になれる』
クラウディア・ブラック著/アスク・ヒューマン・ケア - 『アダルト・チャイルドが自分と向きあう本』
アスク・ヒューマン・ケア研修相談センター - 『アダルト・チャイルドが人生を変えていく本』
アスク・ヒューマン・ケア研修相談センター - 『心がつながるのが怖い 愛と自己防衛』
イルセ・サン著/ディスカヴァー・トゥエンティーワン
ただし、読み進めたり、書籍に書かれた「ワーク」を進めたりするうちに、動揺するおそれがあります。
不安を感じた場合には、精神科医やカウンセラーなどの専門家を頼ることを推奨します。
また、ゆっくり時間をかけて進めていくことが大切です。
まとめ〜ゆっくり、一歩ずつ、前に進んでいきましょう〜

ここまでの内容をまとめます。
アダルトチルドレンとは、「子ども時代を機能不全家族の中で育ち、成長してもなお精神的影響を受けつづける人々」を指します。
機能不全家族とは、親としての十分な責任と機能が果たされていないために、子どもが子どもらしく生きることのできない、安心・安全感のない家族のことを指します。
そのような家庭環境で育った子どもには、成人後も自己肯定感が持てず、生きづらさを抱えやすいという傾向が見られます。
アダルトチルドレンにはさまざまな特徴がありますが、共通しているのは、根底に生きづらさが存在することです。
子ども時代における自分の役割を把握することは、今後の対人関係を整えることに貢献します。
アダルトチルドレンが抱える生きづらさを解消させるためには、自己肯定感の低さと認知の歪みを少しずつ回復させていくことが必要です。
参考となる書籍などを読みながら、また精神科医やカウンセラーなどの専門家の力も借りながら、ゆっくり、一歩ずつ、前に進んでいきましょう。
二次的に精神疾患が現れた(現れている)ときも、迷わず専門家を頼りましょう。
あなたや、あなたの周りの人の「アダルトチルドレン」としての生きづらさが解消されるよう、心から祈っています。
さて、私たちキズキ共育塾には、一から勉強をやり直す社会人の方も大勢いらっしゃいます。
もしあなたが勉強のやり直しをしたいのであれば、きっとお力になれると思いますので、お気軽にご相談ください(ご相談は無料です)。
【参考文献】
- クラウディア・ブラック『子どもを生きれば大人になれる』、『私は親のようにならない』
- イルセ・サン『心がつながるのが怖い 愛と自己防衛』
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