
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
キズキ共育塾の藤井祐太朗です。
あなたは、子どもの不登校について悩んでいませんか。
「この子が成長したとき、不登校だったことを後悔しないだろうか」
そんなふうに、後の人生に不登校の経験を悪い形で引きずることを心配しているかもしれません。
このコラムでは、国が発表しているデータや、実際に中学校で不登校の経験がある子たちの意見をもとに、次のような点をご紹介します。
なおこの記事は、不登校の子を持つ親御さん向けですが、今不登校であるご本人にも役に立つ内容だと思います。
この記事を読むことで、不登校で後悔しがちな内容をあらかじめ知っておくことができ、不登校でも後悔しないような選択をするための助けとなるはずです。
お子さんと、そして親であるあなた自身の「後悔」について、お役に立てればうれしいです。
共同監修・石井志昂氏からのアドバイス
不登校は、子どもが「答え」にたどり着ける期間になります
この記事で紹介する、「不登校に関する後悔の有無」の割合は、非常に意外なはずです。先に言いますと、不登校の経験を「よい」とも「悪い」とも言いきっている人は少ない(どちらも過半数に至らない)のです。このデータは、私も含めていろんな人が精査しました。
共通して言えるのは、「不登校の経験者は、その期間に『価値』や『気づき』を得ている」ということです。不登校の期間は無駄ではなく、子どもが「納得のできる答えにたどり着ける期間」と言えるのではないでしょうか。親御さんには、不登校の専門家や支援団体とも話しながら、そのためのサポートをしていただければと思います。
目次
あなたは、不登校の子どもの現在や将来について、次のように心配・悲観しているかもしれません。
それでは、参考になる情報はないのか…というと、実は文部科学省が「不登校生徒に関する追跡調査」というものを行っています。
この調査は、簡単に言うと、以下のような内容で調査・分析したものです。
私たち「不登校の生徒さんの支援実績が豊富なキズキ共育塾」から見て、現在でも大筋としては通用する内容だと思います。
それでは、ご紹介していきます。
報告書には、不登校に対する後悔の有無として、以下のような設問があります。
「今、考えると、小中学生の頃、不登校で学校に行かなかったことをどう思いますか。次の1~4の中からいちばん近いものをひとつ選んで○をつけてください。」
この設問の回答結果は以下のとおりです(有効回答数1,604)。
この回答結果から、次のことが読み取れます。
つまり、不登校に対して後悔している人は、肯定的な人に比べて3倍以上いると言えます。
ただし上記は、次のようなグループ分けで考えることもできます。
こうすると、不登校について「中立的」「後悔がない」という人の割合が、「後悔がある」人たちよりもかなり多いことがわかります。
次に、報告書内で触れられている不登校に対する後悔の内容を紹介します。
「なぜ、不登校を後悔しているのか」ということを、報告書の内容から分類・要約しています。
当該項目は、「不登校により失ったものがある」と回答した人数を100とし、失ったものの具体的内容の内訳をパーセンテージで示しています。
また、併せて私たちキズキ共育塾の生徒さんの声もご紹介します。
・一般知識が欠如していると感じる
・進みたい学校に進学できなかった
・不登校による勉強不足で、高校、専門学校、大学でも学力差や勉強についていけない感覚がある
・不登校当時に友人との時間が持てなかった
・学生時代の友人が少なく、周囲がうらやましい
・留年や浪人で、同級生が年下になった
・学校でもっと友人をつくればよかった
・進学や就職に悪影響を感じた
・不登校でなければもっといい進学先や就職先に行けた
・「今の自分の力ではこんな仕事しかできない」と自己否定的になった
・学校の楽しい思い出ができなかった
・今の友人と、中学時代の思い出を語り合えない
・成人式で、周りの参加者と思い出を共有できなかった
キズキ共育塾の生徒さんたちからは、次のような声もあります(一部です)。
報告書には、不登校を肯定的にとらえている人の意見も掲載されています。
こちらも、報告書の内容及びキズキ共育塾の生徒の声を、分類・要約して記載します。
当該項目は、「不登校により得たものがある」と回答した人数を100とし、得たものの具体的内容の内訳をパーセンテージで示しています。
・苦しんでいた時間があったから今の自分がいる
・不登校のつらさを乗り越えて自信がついた
・自分のことや周りのことが見つめ直せて成長できた
・肯定的な休息だった
・学校のメリット・デメリットが俯瞰的に見ることができた
・不登校の間に、新しい友達やカウンセラーなど、自分を支えてくれる存在と出会えた
・不登校の自分を見捨てないでいてくれる友人や先生の大切さを実感した
・学校では得られない経験を積んだ
・他の人とは違う見方ができるようになった
・同じ経験をしている人の気持ちが理解できる
・自分で決めたことなので後悔はしていない
・無理して学校に行っていたら取り返しがつかなかったかもしれない
・学校に行っていても今よりいい状況になるかわからない
・友だちもいるし仕事もしているので後悔はない
キズキ共育塾の生徒さんからは、次のような声があります(一部です)。
不登校の後悔について、補足します。
不登校期間は、学校に行かない分、自分で「何か」をする時間が多く取れます。
不登校期間中に継続して「何か」をやっておくと、継続できたという事実そのものや、それが具体的に役立つ機会によって、「不登校の期間があってよかった」と思える可能性は高まります。
ただし、心身の調子を整っていないときに無理は禁物です。心身の調子を整えることが一番です。
嫌なことを無理やりするのではなく、楽しみながら自分の自信につながることのほうがよいでしょう。例えば、次のようなことはいかがでしょうか。
また、もしかしたら「楽しんで」はできないかもしれませんが、「勉強」はもちろん一般論として役に立ちます。
ご紹介してきたように、不登校にまつわる「後悔」については、しているかいないかも含めて、その思いや内容は様々です。
現実として、「後悔している人はそれなりにいる」「学力や進路とに苦労が生じる場合がある」ことは否めません。
とはいえ、後悔があること自体は「絶対的に悪い」ということでもありません。学力や進路を後からカバーすることも可能です。
その上で、「できれば子どもには後悔や苦労をしてほしくない」というのが親心でしょう。
では、あなたのお子さんが不登校について後悔をしない、または、後悔はあっても前向きに生きていくためには、どうすればよいのでしょうか。
そのためには、主には次の3つの観点があります。
不登校の「次の一歩」として「在籍している学校への登校再開」を考える親御さんは多いのですが、それだけとは限りません。
新しい学校も、学校以外の居場所も、「次の一歩」になり得ます。
「今の学校で、不登校のためにできなかったこと」や、それに伴う後悔を、全く同じ形で取り戻すことはできないでしょう。
ですが、新しい学校や学校以外の場所で「同じような経験」や「全く別の経験」をすることはできますし、それらが後悔を小さくしていくこともできます。
学校以外の居場所とは、次のような場所です。(後で改めて紹介します)。
学校以外の居場所のメリットは、以下のようなことが挙げられます。
報告書からは、「不登校を後悔するかどうかは、不登校の時間をどのように過ごすかに左右されやすい」といった傾向が読み取れます。
ぜひ、在籍している学校に限らず、お子さんのための「次の一歩」を探してみてください。
ただし、親御さんだけで探す必要はありません。
次章で紹介するように、お子さんのことや親御さん自身のことを相談できるところはたくさんあります。
相談先を積極的に頼ることで、どのルートを選んだ方がいいかもわかるでしょう。
そうすれば、お子さんも親御さんも、きっと今の状況は変わっていきます。
特に親御さんにとっては、「あのとき、子どもにこうすればよかった(こうしなければよかった)」という後悔を減らすことにもつながります。
なお、不登校からの転校については、コラム「『我が子の不登校、転校した方がいいの?』〜親御さんへのアドバイス〜」に詳細を記していますので、ご興味があればご覧ください。
お子さんの不登校について、また親であるご自身のお悩みについて、相談先をご紹介します。
まずは、お子さんの在籍している学校(担任・学年主任・保健医・スクールカウンセラーなど)へのご相談をオススメします。
「親ではわからない、学校での様子」を知ることで、次の一歩が見つかるかもしれません。
学校以外には、次のように、市区町村が運営している相談窓口があります。
公的な窓口の詳細は、お住まいの市区町村の公式サイトから確認できます。
名称や機能はお住まいの市区町村によって異なることもありますので、窓口がわからない場合は、総合窓口にメールや電話で確認してみましょう。
さらに、公的な機関以外にも、次のような相談先があります。
その他、「相談」機能はなくても、お子さんが楽しく過ごすことで「次の一歩」に進めるようになるところもあります。
例としては、次のようなものがあります。
このように、お子さんの不登校について相談できる場所、お子さんが次の一歩に進むための場所はたくさんあります。
こうした場所を適切に頼る・利用することで、不登校に関連して将来的に後悔が生じる可能性を減らすこともできるでしょう。
相談先によっては、前章で述べた「学校以外の居場所」として、「学校に代わり、学力や社会性を身につけたり、楽しく過ごせたり、将来のためのする場所」となる可能性もあります。
「データも、不登校経験者の声も、相談機関のこともわかった。それでもわが子のことは客観的には見られない。どうしても心配だ」と思う親御さんもいらっしゃるでしょう。
不安や心配のあまり、お子さんの生活などについて、ついつい厳しく口を出したくなるかもしれません。
しかし、不登校の子どもは、自分の言葉に耳を傾けてくれる存在を求めています。
望んで不登校になる子は多くありません。
お子さんには、不登校になる、不登校にならざるをえなかった理由があるはずです。
厳しいことを言いたくなる気持ちはよくわかりますが、子どもの気持ちを第一に考えましょう。
相談機関のアドバイスにも従いつつ、親が自分の意見を言うのは、子どもから相談などを通じて求められたときにとどめておきましょう。
ここまで不登校に対する後悔に関して、子どもを中心に解説してきました。
ただ、親であるあなたも、子どもと同じくらい、あるいはそれ以上に心に負担を抱えているかもしれません。
自分のことではないぶん、余計に歯がゆかったりじれったかったりしますよね。
前章でお伝えしたように、「厳しいことを言わない」ようにすると、余計に心配が増すこともあるでしょう。
親御さん自身も、その不安をケアしていく必要があります。
そのために大切なのは、次の2つです。
特に不登校の子どもは、常に親がそばにいると、「いつも親に心配をかけて、自分に時間を割いてもらって申しわけない」といった罪悪感を抱く可能性があります。
子どもに対しては、必要な世話はもちろん行いつつ、少し距離を置いて、自分の時間を持つように心がけましょう。
子どもにとっても、そうした生活は、上記のような罪悪感が発生せず、安心して過ごせるようになります。
また、子どもは、楽しそうな時間を過ごす親を見ることで、自分の将来に対して希望を持つこともできます。
「どこまでが必要な世話か」ということは、前章の相談先にも話をしつつ、子どもと同じように、あなた自身のケアを心がけましょう。
具体的なストレスケアの方法を紹介します。
一人だけ・夫婦だけ・親子だけで悩んでいると、どうしても行き詰まることが多くなります。
他者からの視点によるアドバイスをもらうことで、状況を打開できる場合があります。
そんなときは、次のような行動を起こしてみましょう。
具体的な解決策に繋がらなくても、気持ちを話すだけでもすっきりしたり、共感をもらえて安心したりできて、ストレスの解消につながります。
不登校の子どもを持つ親が情報交換や交流を行える、「不登校の親の会」は全国にたくさんあります。
気になるようならインターネットで調べてみましょう。
子どもから離れて、自分一人の時間や夫婦の時間を持つことも有効です。
そうした時間を有意義に過ごすことで、ストレスが緩和されます。
有意義に過ごすとは、必ずしも何かをしなければならないということではありません。
日常の悩みから一時的に避難することができる、リラックスできる環境に身を置くということです。
そのためには、次のような自分や夫婦に合ったリラックス法を見つけましょう。
特に睡眠が足りていないと、ストレスがたまりやすくなるので注意です。
繰り返しとなりますが、専門機関を利用することをオススメします。
親は、不登校の専門家ではありません。
もっと言うと、子育ての専門家でもありません。
不登校や子育てなどについての専門的な知識や経験を持つ専門機関を利用することで、お子さんのみならず、親御さんのストレスケアにも役立ちます。
専門機関はさまざまなケースを通じて知識やノウハウを蓄積しているため、類似ケースから解決策を見出してくれることも多いです。
私たちキズキ共育塾の講師には、挫折経験がある人もたくさんいます。
不登校経験についても例外ではありません。
筆者自身も、中学1年生から3年生までの間、不登校でした。
この章では、そんな私自身や他の講師の、「不登校と後悔」にまつわる体験談をお伝えします。
私自身は、結論から申し上げると、不登校だったことに全く後悔はありません。
理由は2つあります。
(1)中学不登校から進学した高校で、今でもつき合いのあるかけがえのない友人たちと出会えた
私は、高校受験・進学にあたり、私が中学で不登校だったことを知る人がいないであろう、地元から少し離れた学校を選びました。
不登校でなかったなら、家から遠いその高校は選ばず、違う高校に進学していたと思います。
それでも楽しい生活を送れたかもしれませんが、少なくとも、今の友人たちとは出会えなかったでしょう。
(2)今に通ずる価値観を得られた
もし不登校になっていなければ、おそらくこうして不登校の子を支援する仕事に就くことはなかったでしょう。
また、自分自身が不登校というマイノリティを体験したことは、社会的にマイノリティな立場の人や弱い立場の人の不安や苦しみを理解する上での助けとなっています。
ただし、後悔はしていないものの、特に高校では、次のような中学不登校の悪影響を感じることはありました。
とは言え、その悪影響は深刻なものではなかったようで、学力も出席日数も、中学に比べるとよくなっていたことは確かです。
結果としてその後の私は、高校を卒業し、大学に進学・卒業でき、就職することもできています。
このように、あなたのお子さんも、今現在で学校や不登校にまつわる悪影響や後悔をすでに持っていたとしても、これから楽しい時間や充実した時間を過ごすことで、それらを次第に小さくしていくこともできます。
大切なのは、不登校という過去や今にこだわりすぎず、これからの人間関係や勉強環境を大切にしていくことだと思います。
私以外の体験談として、佐藤講師(仮名)も、中学で不登校を経験しています。
以下、佐藤講師の一人称で、「不登校と後悔」についてお伝えします。
私が不登校で後悔したことは、次のようなことでした。
ただ、不登校だった当時には、そのことに気づいていませんでした。
なぜなら、経験していないために、それらが楽しいかどうかもわからなかったからです。
そんな私は、その後高校と大学を卒業し、一時期は都立の学校で教師として働いていました。
そして、教師として上記のようなイベントを経験したとき、教師という立場であっても、それらを楽しんでいる自分に気づいたんです。
そのとき私は、学校に行けなかったことをどこかで後悔していたんだなとあらためて感じました。
しかし、不登校でよかったこともあります。それは次のようなことです。
不登校でぽっかり穴があいたような気持ちだった私の心を、出会った人たちが少しずつ埋めてくれたように思えます。
世の中には優しい人たちがいる、自分のことを思ってくれる人たちがいる…。
学校に通っていたら、こうしたことはあまり意識せずに過ごしていたかもしれません。
よい出会いがあったこと、そしてそれに気づけたことが、不登校をしてよかったと思う理由です。
以上、不登校と後悔についてのお話でした。
少しでもあなたとお子さんの役に立ったなら幸いです。
繰り返しとなりますが、不登校に伴って後悔や困難が発生する可能性は否定できません。ですが、必ず発生するとも限りません。
また、発生したとしても、その後の「別の経験」で、それらを小さくしていけます。
あなたとお子さんの人生が、これから、より充実していくことを祈っています。
さて、私たちキズキ共育塾は、お悩みを抱える人のための個別指導塾です。
生徒さんには、不登校の人や、過去に不登校を経験している人も少なくありません。
キズキ共育塾の概要をご覧の上、少しでも気になる人は、お気軽にお問い合わせください。
あなたのお子さんのための、これからの話ができると思います。
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