ADHDのある子どもが集中できる勉強法 ADHDのある子どもと関わる際のポイントを解説
目次
ADHDのある子どもが集中できる7つの勉強法
ADHDのお子さんとその親御さんがしばしばぶつかる課題の1つとして勉強への集中が続かないことが挙げられます。
実際、親御さんから、以下のようなことをお聞きすることがあります。
- 勉強を始めたと思っても、すぐに別のことに気を取られてしまう
- 勉強をするために集中してじっと座っていることができない
- 言葉で説明しても、なかなか理解してくれない
そういった方に向けて、ご家庭で実践できる勉強の集中法を、7つご紹介していきます(例であり、実際のお子さんに向いた勉強法は、サポート団体などと相談することでより具体的にわかっていくと思います)。
私たちキズキ共育塾は、ADHDのある人のための、完全1対1の個別指導塾です。
生徒さんひとりひとりに合わせた学習面・生活面・メンタル面のサポートを行なっています。進路/勉強/受験/生活などについての無料相談もできますので、お気軽にご連絡ください。
勉強法①絵・記号・映像を多用した勉強を行う
ADHDのある人は、長い文章を集中して読むことが苦手な場合があります。
勉強を行う際には文字だけの教材を使用するのではなく、絵・記号・映像などを使用すると、集中や理解がしやすいことが期待されます。
例えば、以下のような方法があります(参考:西井重超『精神疾患に関わる人が最初に読む本』)。
- 算数の計算を、ボールや、ホールケーキの絵を使って理解する
- 英単語を絵と一緒にして覚える
勉強法②勉強予定をリスト化して、視覚的に確認できるようにする
勉強の予定は、リスト化して書き出す方が理解しやすいです(参考:西井重超『精神疾患に関わる人が最初に読む本』)、厚生労働省『注意欠如・多動性障害(ADHD)」)。
ADHDの特性のため、口頭で聞いた予定や、記憶したつもりの予定は忘れやすいからです。予定を把握できるようになれば、集中もしやすくなるでしょう。
また、「予定を忘れても、リストを見て確認すれば大丈夫だ」と安心感を感じられるのではないでしょうか。休憩をとるタイミングもあらかじめ予定に入れておくと、より効果的です。
この予定をリスト化するという勉強集中法については、将来的に自分で計画を立てるときや時間管理をするときのための練習にもなります。そういった観点からもオススメの勉強法です。
勉強法③壁や仕切り板など使い、勉強できる環境をつくる
ADHDの人は、勉強中にいろいろなものが視野に入ってくると、そっちに気が取られるという傾向があります(参考:西井重超『精神疾患に関わる人が最初に読む本』)。
対策として、仕切り板などを使って勉強机を囲い、勉強中に勉強内容以外のことができるだけ視野に入ってこないようにすることで、集中力が途切れにくくなります。
仕切り板の用意が難しければ、勉強するときに壁に向かうだけでも効果があります。
勉強法④短期の目標を設定・クリアしていくようにする
ADHDの特性がある人は、集中力が途切れやすい特性があります。
短く集中することを繰り返すことで、勉強に集中しやすくなります。
最初から30分~1時間といった長時間の学習計画を立てるのではなく、より細かく区切りをつけて学習するポモドーロテクニックと呼ばれる方法がオススメです。
ADHDのお子さんが勉強する際、たくさんの問題に一気に取り組もうとすると、長時間の集中が難しく、どうしても途中で別のことに注意が向きます(参考:厚生労働省「注意欠如・多動性障害(ADHD)」)。
一問解くという短期の目標を連続して設定するようなイメージです。
問題を解くのではなく、暗記する、教科書をしっかり読むなどの場合は、長時間の勉強を目標とせず、5〜10分くらいの短時間を1セットにして区切りをつけ、セット数を重ねるという方法があります。
問題と時間のどちらを目標にするかは、科目や現在必要な勉強によって異なってくるでしょう。
また、キズキ共育塾の事例としては、一つの科目を、長時間または複数単元にわたって勉強し続けるのではなく、一つの科目の勉強に短期の目標(単元・問題数・時間など)を設定して、それが終わったら別の科目の勉強に変えるを繰り返すことで集中力を保っている生徒さんもいました。
いずれにせよ、短く集中することを繰り返す、短期の目標達成を積み重ねることができれば、少しずつ勉強を習得していくことができると思います。
この形を身につけておくと、お子さんがご自身で勉強されるようになった際にも、自習の際に役立つ可能性は高いでしょう。
勉強法⑤雑音や外部刺激の少ない環境を用意する
続いての勉強法は、勉強するのに適した環境を用意することです。(参考:西井重超『精神疾患に関わる人が最初に読む本』)
勉強法③とも似ていますが、勉強法③は特に視覚だけに注目しています。
この方法では、音、温度、においなど、お子さんにとって刺激になるものをできるだけ減らすということが大切になります。
音
周りの生活音を減らすことに加えて、耳栓やイヤーマフといったものを使用することも考えられます。
温度
ご家庭での空調調節に加えて、勉強可能な図書館や市民センターなどを利用する方法もあります。
におい
マスクをする、お子さんがお好きなにおいのするものを用意しておく、などが考えられます。
(ADHD以外にASDもあり、そのために)感覚が過敏なお子さんの場合、この方法はより有効になると思います。
勉強法⑥動きながらできる勉強を取り入れる
ここから解説する方法は、キズキ共育塾の事例に基づきます。
じっと机に向かうことが難しい場合は、その特性を変えようとするのではなく、その特性があるままでもできる勉強法を取り入れることで、集中しやすくなります。
そもそも勉強とは、机に向かってしなくてはならないというものではありません(試験や授業の際にはある程度そうする必要はありますが)。
じっとしておかなくてもできる勉強法がないか、お子さんや支援者と一緒に考えてみましょう。
キズキ共育塾の生徒さんの例としては、教科書、単語帳や自作の単語カード、歴史年表などを手に持って、歩き回りながら音読や黙読をするというものがあります。
勉強法⑦疲労を蓄積させないようにする
ADHD以外の方にもある程度当てはまると思いますが、疲労が溜まっているときには、勉強に集中しづらいものです。
体育の授業があった日、部活が長かった日、緊張する出来事があった日、昼間によく遊んだ日、(高校生の年齢なら)アルバイトをした日などが当てはまるでしょう。
疲労が現れるのは1日だけとは限らず、さまざまなことを原因に、もう少し長い期間で現れることもあります。
そんなときは、なかなか勉強に集中できないのです。逆に言うと、できるだけお子さんが疲労しないように工夫することで、勉強に集中しやすくなります。
何がお子さんにとっての疲労要因なのか、専門家とも話しながら、対策していきましょう。
なお、疲労がある日にも、単語カードを眺めるなどの簡単な勉強には取り組めることもあります。
一方で、勉強前に軽めの運動をすることで勉強に集中しやすくなる、という生徒さんもいました。ですので、疲労につながらない程度の運動を勉強前に取り入れるのも一つの工夫として考えられます。
補足①:ADHDのあるお子さんの勉強法は専門家への相談が効果的
これらの勉強法が、あなたとお子さんのお役に立つことを心から願っています。
しかし、以下のような方もいらっしゃるかもしれません。
- 試してみてもなかなかうまくいかない…
- 試したことがあるものも多かった…
- もう手を尽くしていて途方に暮れている…
そんな方は、方法自体がお子さんに合っていない可能性もありますが、方法をうまく実施できていない可能性もあります。
親は、発達障害・勉強・子育て、いずれの専門家でもありません。
そして、お子さんのADHDの特性や、ADHDに関係のない性格などは、一人ひとり異なります。
これまでお子さんに真摯に向き合ってきた親御さんは、お子さんのことをたくさんご存知だと思います。ですが、ぜひ医療機関や支援機関を利用してみてください。別の視点からお子さんを見てもらうことで、よりお子さんに合った方法・実施の仕方がきっと見つかります。
ぜひ、スクールカウンセラー、医療機関、市区町村や発達障害情報・支援センターなどに相談し、支援者とお悩みを共有していただけたらと思います。
その上で、「すでに相談しているけど、うまくいかない」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれませんね。
ですが、支援機関も支援方法もたくさんあります。お子さんに合わないところがあっても、落ち込まないでいただきたいと思います。
お手間はかかるかもしれませんが、今の相談相手に加えて、お子さんに合う新たな支援機関も探してみましょう。私たち、キズキ共育塾でも無料相談を承っていますので、選択肢のひとつにしていただけたら幸いです。
補足②:ADHDのあるお子さんも高校受験・大学受験は十分に可能
ADHDのお子さんをお持ちの親御さんは、勉強の遅れや周囲と我が子の違いから、高校受験や大学受験に不安を抱えている方も少なくありません。
ですが、結論から言いますと、ADHDの特性があっても志望する高校、大学に受かっていった方はたくさんいます。
実際わたしの生徒さんにも、特性があり、勉強できていない期間があっても、少しずつ勉強を進め、志望校に合格されていった方が何人もいます。
ADHDの特性があり、中学不登校から高校に進学した生徒さんの事例
娘にはADHDの特性があり、中学校を不登校でした。「このまま何も勉強しなくても大丈夫か」と不安になったときに、キズキ共育塾のことを知りました。
キズキの創業者である安田祐輔さんにも発達障害があると知り、「塾自体に娘への理解がありそう」「通いやすそう」と思い、入塾しました。
それからは、先生に恵まれて、毎回楽しんで行くようになりました。
生活面でもメリハリがつき、明るくなったと思います。おかげで高校に進学することができました。先生は、娘の話を毎回熱心に聞いてくれて、本当にありがたかったです。
高校進学に伴って休塾することになったときも、「なんでもいいからまた話に来てね」と言ってくれたと、娘が嬉しそうに話していたのが印象的でしたね。
娘は、「私の中学校はキズキだよね」と、楽しかったことや嬉しかったことをいまでも話してくれます。
今回紹介した生徒さんの体験談をより詳しく知りたい方は、以下の体験談をご覧ください。
親が心がけたいADHDのある子どもと関わる際のポイント
ここからは、親御さんがADHDのお子さんと関わる際に、意識していただきたいポイントについてお伝えします(参考:発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)「基本的な支援原則」、厚生労働省「注意欠如・多動性障害(ADHD)」)。
ADHDのお子さんと関わるときには、以下の2つが大切です。
- お子さんが、自分に自信・自尊心が持てるように関わること
- お子さんが、自分の特性と付き合っていくスキルを身につけていくこと
ADHDのお子さんは、学校や社会の場などで、その特性ゆえに悩み、自信や自尊心にダメージを負う機会が多くあります。
そのため、親御さんが、支援者と一緒に、お子さんの自信、自尊心をサポートすること、特性とうまく付き合っていくスキルを育むことを支えることが大切なのです。
スキルとは、例えば、お子さんなりの集中方法、予定の立て方、自分の感情への対処の仕方などのことです。
関わり方の具体的な例を、発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)の「保護者向けハンドブックひな型」から、(一部編集した上で)引用します。
①ポジティブな関わり方
- できなかったことを叱るのではなく、できたことを褒める
- 「それはダメ」と否定するのではなく、どうするとよいかを伝える
②伝え方の工夫
- 短い文章で具体的に伝える
- 写真・絵などで示しながら伝える
- 1日の活動の流れや予定の変更などは事前に伝え、見とおしを持てるようする
③環境の調整
困っているお子さんの中には、感じ方や感覚に特徴がある方が多くいます。お子さんが苦手なものと上手に向き合えるよう、安心できる環境をつくりましょう
- 特定の音を過度に嫌がる→音が聞こえすぎたり、特定の音が痛く聞こえていたりする場合は、イヤーマフを活用する
- 乗り物の中のにおいや食べ物のにおいを嫌がる→マスクをする
- 服を着ることを嫌がる→タグや生地が痛いと感じる場合は、タグを切ったり、好きな生地を探して心地よく着られる服を何枚か用意する
- 冷たい水やシャワーを嫌がる→水を痛いと感じている場合は、濡れタオルを活用する
以上は一例です。このような関わり方をすることで、お子さんは勉強の集中以外のことも含めてより生きやすくなっていきます。
とはいえ、現実的には、全ての物事をお子さんに合わせることは難しいこともあるでしょう。
ですので、できる限りの範囲で、短い文章で具体的に理由を伝えるとよいといわれています。
そして、お子さんの得意な部分を自信につなげ、苦手な部分はその子なりの努力として認めるようにしましょう。そうすることで、お子さんの自信や自尊心につながります。
そういった関わり方の中で、生活や勉強で必要となる情報やスキルを丁寧に教えましょう。お子さんが成功体験を積んでいくことが、お子さんのためにも、親御さんのためにもなります。
ただ、繰り返すとおり、親御さんだけで対応する必要はありません。できるだけ早めに、医療機関や支援機関に相談していただきたいと思います。
そうすることで、それぞれのお子さんに応じた、状況をよりよくしていく手段を、専門的な知識を持った支援者とともに考えていくことができるはずです。
最近では国のサポートも増えてきています。例えば発達障害情報・支援センターというものが全国に設置されています。また、ADHDや発達障害を診ている病院も増えています。
ADHDに関する医療機関や支援機関が増えていることは知っていても、もしかしたら以下のようにお悩みかもしません。
- こんなことで相談していいのかな…
- 自分の子どものことだから、自分ががんばらないと…!
- 誰にも相談できない…
ですが、このようなお悩みをサポートするために私たち支援者は働いています。親御さんだけ・ご家庭だけでお悩みを抱えこむ必要はありません。
ぜひ、専門家、支援者と話をしてみてください。
ADHDの社会生活への影響~小学生から大人まで~
- 勉強への集中力が続かない
- 何かに夢中になると、なかなか切り上げられない
- 忘れ物がよくある
- 会話のキャッチボールが苦手
ADHDの特性に由来する以上のような状態から「これからの学校生活、社会生活は大丈夫だろうか…」と不安に思っている親御さんも少なくありません。
ですが、平成18年に発達障害者支援法が施行されてから、医療、福祉、教育といった各分野で「幼少期から成人まで、生涯にわたる支援体制」の推進が行われてきました。
実際に、学童期の相談先として、以下のような幅広い選択肢が存在しています。
- 総合的な相談・支援
- 健康、発達に関する支援
- 療育に関する支援
- 子育て、家族に関する支援
- 生活に関する支援
- 勉強に関する支援
各項目の詳細については「発達障害の小学校一年生。その困り事、親にできる対応、相談先などを紹介」をご覧ください。
そのほか、「発達障害と勉強・受験」については、以下のコラムもご覧ください。
「発達障害と勉強・受験」関連コラム
ADHDの就労支援
ADHD、発達障害のある方が、人生のステージで悩みを抱えるタイミングのひとつに「就職」があります。
そんな「ADHDなどの特性から就職につながらない、働き続けることが難しい」といった悩みを持つ人が利用できる支援制度に就労支援があります。
就労支援を利用することで、自分の特性や悩みについてスタッフと一緒に相談しながら、より自分に合った就職を実現することができます。
お子さんにとってはまだ早い話かもしれませんが、お子さんをサポートする団体はたくさんあるということを覚えておくと、将来きっと役に立ちます。
現時点の参考として、よろしければコラム「発達障害者の就労支援を3タイプ10選紹介〜今すぐ就職・転職したい/準備しながら進めたい/長く働き続ける支援がほしい〜」をご覧ください。
以下のようなサポート団体について紹介しております。
ADHDとは?
改めて、ADHDとは何かを紹介します。
すでにご存知かもしれませんが、これまでに紹介した内容の理解も深まると思いますので、ぜひご覧ください。
①ADHDは発達障害の一種
ADHD(注意欠如・多動症)は、一般的に「発達障害」という名前で知られている、脳の機能障害の分類の一つです。
ADHD以外の発達障害には、ASD(自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)や、LD(限局性学習症群)などがあります。
なお、発達障害は現在、医学的には神経発達症と呼ばれるようになっています。しかし、新しい名称がまだ十分に認知されていないため、このコラムでは「発達障害」の表記で統一しています。
発達障害における「脳の機能障害」とは、脳の機能のバランスにばらつきがある、つまり突出している機能や十分に発達していない機能があるといった状態のことを指します。
そのばらつきが大きく、学校や家庭での生活の妨げとなる場合に、医師の診察のもと、発達障害という診断がなされます。
発達障害は生まれつきのものです。親の育て方や環境など、後天的な原因でなるものではありません。
また、お子さんがADHDであったとしても、「親御さんの育て方や関わり方が悪かった」ということでは決してありません(参考:黒澤礼子『新版 発達障害に気づいて・育てる完全ガイド』)。
これからADHDについて理解を深め、対応方法や支援制度、支援者について知っていただくことで、お子さんと一緒に安心感を持って未来に歩んでいく一助としていただけたらと思います。私の持つ精神保健福祉士という資格も支援職のひとつです。
②ADHDの原因
ADHD(注意欠如・多動症)は、生まれつきのものです。ADHDの特徴は幼少期から見られます。
そのため成長してからADHDになる(成長につれてADHDになる)ということはありません。
なので「子どもの集中力が続かない原因が自分の子育てにあるのではないか」「子どもが勉強できないのは、小さいときの接し方が原因なのでは…?」と、親御さんが不安にならなくて大丈夫です。
また、以前はADHDは、子ども特有のものと考えられていましたが、現在の医学では、ADHDの症状は、大人になっても継続するものであるとされています。(ただし、多動・衝動性の特性は、一般的に成長するうちに薄れることも多く見られます)
ADHD特性への対処には、さまざまな対処法や相談先、特性を緩和する治療薬などがあります。苦労や困難が生じることもあるとは思いますが、必要以上に不安に感じる必要はありません。
サポート団体を利用したり、医師に相談したりしながら、適切な接し方を見つけていきましょう。
③ADHDのお子さんに見られる2つの特性
発達障害の中でも特にADHDの特性として、以下のようなことが挙げられます。(参考:発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害とは」)
- 不注意(例:一つのことに集中していることが難しい)
- 多動性・衝動性・多弁(例:じっとしていることが難しい、空気を読まず話し続ける、考えるより先に動く)
お子さんは、学校や家庭で、以下のようなことがありませんか?
- 勉強に集中できず、なかなか内容を覚えられない
- お友達や親御さんの気持ちを想像することが難しい
- 人の話を集中して聞くことができない
以上の傾向は、上で挙げたADHDの特性がどのように現れるかで非常に大きな個人差があります。なお、挙げたような傾向があればADHDであると断言できるものではもちろんありません。
ある人がADHDかどうかを診断できるのは、医師だけです。
以上のような傾向が強く、学校での勉強や日常生活に難しさを感じられているようであれば、以降の情報も参考にしていただきつつ、医療機関や支援機関に相談することをオススメします。
④ADHDの診断基準
以下は、2013年にアメリカ精神医学会がまとめた『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』に挙げられているADHDの診断基準です。
以下のような診断基準に当てはまればADHDの可能性があります(あくまで可能性です。「どの程度なら『当てはまる』と言えるか、他の病気や障害の可能性はないかなども含めて、「ある人がADHDかどうか」は、医師だけが判断できます)。
不注意(a)学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする(例:細部を見過ごしたり、見逃す、作業が不正確である)
(b)課題または遊びの活動中に、しばしば注意を持続することが困難である(例:講義、会話、または長時間の読書に集中し続けることが難しい)
(c)直接話しかけられたときに、しばしば聞いていないように見える(例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ、心がどこか他所にあるように見える)
(d)しばしば指示に従えず、学業、用事、職場での義務をやり遂げることができない(例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる、また容易に脱線する)
(e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である(例:一連の課題を遂行することが難しい、資料や持ち物を整理しておくことが難しい、作業が乱雑でまとまりない、時間の管理が苦手、締め切りを守れない)
(f)精神的努力の持続を要する課題(例:学業や宿題、成人では報告書の作成、書類に漏れなく記入すること、長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う
(g)課題や活動に使うようなもの(例:学校教材、鉛筆、本、道具、財布、鍵、書類、眼鏡、携帯電話)をしばしばなくす
(h)しばしば外的な刺激(成年後期および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう
(i)しばしば日々の活動(例:用事を足すこと、お使いをすること、青年後期および成人では、電話を折り返しかけること、お金の支払い、会合の約束を守ること)で忘れっぽい
・以上の項目のうち、6つ以上の項目が少なくとも6か月以上続いている
・症状のいくつかが2つ以上の環境(職場・家庭・学校など)で見られる
・12歳以前から複数の症状が見られる。
多動性および衝動性(a)しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする、またはいすの上でもじもじする
(b)席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる(例:教室、職場、その他の作業場所で、またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる)
(c)不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする(注:成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)
(d)静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない
(e)しばしば”じっとしていない”、またはまるで”エンジンで動かされているように”行動する(例:レストランや会議に長時間留まることができないかまたは不快に感じる;他の人には、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じられるかもしれない)
(f)しばしばしゃべりすぎる
(g)しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう(例:他の人達の言葉の続きを言ってしまう;会話で自分の番を待つことが困難である)
(h)しばしば自分の順番を待つことが困難である(例:列に並んでいるとき)
(i)しばしば他人を妨害し、邪魔する(例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)
・以上の項目のうち、6つ以上の項目が少なくとも6か月以上続いている
・症状のいくつかが2つ以上の環境(職場・家庭・学校など)で見られる
・12歳以前から複数の症状が見られる。
⑤ADHDの治療法
ADHDの特性に働きかける治療薬や対応などの治療は確立されてきています。
その例はコラム「大人のADHDとは?その特徴・特性/診断/対応法/サポート団体などを紹介」の「ADHDの特性への4つの対応方法」の「ADHDの特性への4つの対応方法」の章をご覧ください。
以下の3つの治療法と、ケアレスミス・マルチタスク対策について記載されています
- 認知行動療法
- ソーシャルスキルトレーニング
- 投薬治療
⑥ADHDの合併症(二次障害)
ADHDや発達障害の合併症(二次障害)とは、発達障害の特性に関連して、「うつ病や不安障害のような精神障害をわずらう」「ひきこもりになる」といった困難を抱えている状態を言います。 (以下参考:齊藤万比古『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』、小栗正幸『発達障害児の思春期と二次障害予防のシナリオ』)
二次障害の原因は、発達障害の特性により環境に適応できなかったり、それに伴いストレスがたまることで生じると考えられています。
そもそも発達障害の人は、脳の機能の偏りによって、発達障害ではない人と異なる特性を持っています。
例えば、ADHDの症状がある場合「ひとつのことに集中し続けることが難しい」「じっとしていることができず、動きながら考える」などがあります。これらの合併症(二次障害)に関しても、適切な対応方法を知っていくことで対処していくことができます。
ADHDの二次障害に関するコラム
最後に〜ADHDのお子さんも勉強法を工夫することで集中できます〜
以上、ADHDの特性を意識した勉強法について、主にお伝えいたしました。
読む中で気づかれたかもしれませんが、勉強法も関わり方も、親御さん、ADHD当事者、支援者の人たちがこれまでに残してきた知恵の集合です。
そういった人たちから学び取れることは、ADHDであっても、他の人と変わらず前を向いて歩んでいくことができるということだと思います。
改めて、ADHDは医学的な診断名です。お子さんがADHDかどうかは、医師にしか診断できません。そして、ADHDだと思われる特性で悩まれているのであれば、ご家庭で抱え込む必要はありません。
スクールカウンセラー、医療機関、市区町村など、相談先はたくさんありますので、そうした専門家・支援者を利用してください。
専門家や支援者を頼ることは、お子さんはもちろん、保護者であるあなたにとっても、悩みやつらさを解消し、前向きに歩んでいく助けになるはずです。
お子さんにとっても、あなたにとっても、よりよい未来につなげていきましょう。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
このコラムが、あなたのお役に立ったなら幸いです。
さて、私たちキズキ共育塾は、お悩みを抱える人のための個別指導塾です。
ADHD(発達障害)のある生徒さんにも、それぞれの特性に寄り添い、一人ひとりに合わせた授業を行うことが可能です。
キズキ共育塾の概要をご覧の上、少しでも気になるようでしたらお気軽にご相談ください。
ご相談は無料です。また、親御さんだけでのご相談も承っています。