
やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」も運営。
キズキ共育塾の清水優希です。
あなたは、周りと自分を比べて焦っていませんか?
「学校の勉強についていけない」
「自分は落ちこぼれだ」
などと思って、あきらめてしまっていませんか?
もしそう思っているなら、
「大丈夫ですよ。つらい時期を乗り越えて、前に進むことはできます」
と伝えたいです。
今回のコラムでは、実際に「落ちこぼれ」から前に進み、今は大学に通いながらキズキで講師をする二人にインタビューを行いました。
学校で「落ちこぼれ」になった人が、何をきっかけに落ちこぼれから前に進んだのか、今の思い、自分のことを落ちこぼれだと思って悩む人に伝えたいことをまとめています。
あなたのつらい気持ちが少しでも楽になり、自分を変えるためのヒントが少しでも見つかれば幸いです。
目次
そもそも、落ちこぼれとはどういう意味でしょうか。
『広辞苑 第5版(岩波出版)』によると、
①落ちてちらばっているもの。
②あまりもの。残り物。
③普通一般から取り残された人。特に、授業についていけない生徒
という意味が記されています。
自分のことを落ちこぼれだと悩む場合の意味は、「③普通一般から取り残された人。特に、授業についていけない生徒」でしょう。
同じようなネガティブな意味の言葉には、「負け犬」「負け組」「劣等生」「役立たず」などがあげられるのではないでしょうか。
そして、自分のことを「落ちこぼれ」だと思う要因は様々です。
模試の点数を例にすると、
「全国平均より低い点数を取って落ちこぼれだと思う人」
「全国平均よりも高い点数を取ったけど、クラスの平均より低いから落ちこぼれだと思う人」
「スポーツが得意なのに、勉強が苦手で模試の点数が低いために自分はいいところがない落ちこぼれだと思う人」
などがいます。
自分のことを、どんな環境で、何を基準に考えているか、ということです。
ただし、どんなタイプの「落ちこぼれ(だと自分のことを思う人)」であっても、それで「人生終わり」というわけではもちろんありません。
環境や視点を変えれば、「落ちこぼれじゃない自分」になることは誰にでも可能です。
落ちこぼれだった自分を変えた体験談を2つご紹介します。
一人目は、キズキ共育塾の長谷川大地講師(中央大学総合政策学部在籍)です。
クラスで下から2番目の成績で、同級生に見下され、自分を「落ちこぼれ」だと思っていた長谷川講師は、「環境を変えたことで落ちこぼれだった自分が変わった」と言います。
それでは、長谷川講師の体験談を見ていきましょう。
僕は中高一貫の男子校に通っていました。
その学校が大好き、というわけではありませんでしたが、仲のよい友達もできて、基本的には毎日を楽しく過ごしていました。
しかし、大学受験を意識し始める高2の夏ごろからそれが一転し、学校の雰囲気がガラリと変わりました。
「勉強ができるかどうか」が、人を判断する上で一番重要な価値基準になったのです。
例えば、模試で成績がいい人は絶対的存在としてチヤホヤされるようになりました。
同級生たちは、それまで楽しく過ごしてきた仲間ではなく、学力が同じくらいの人同士で新たにグループ的に集まるようになりました。
僕自身はもともと勉強が苦手で、クラスでは下から2番目ぐらいの成績でした。
そんな僕のことを、同級生たちは「将来を舐めている」「親不孝者だ」と見下すようになりました。
授業中にも、先生に指されたときに答えられないと「あいつ勉強してないんだー」とバカにされました。
「人間関係って、こんなにもあっさり変わるものだったのか」と思いました。
それまでは楽しく過ごせていたので勉強が苦手でも気にしていなかったのですが、このころから、自分を「落ちこぼれ」だと思うようになりました。
でも周りから落ちこぼれだと見られたくないから、毎日ひたすら目立たないように過ごしていましたね。
そして次第に教室での居心地が悪くなり、学校を休みがちになりました。
その後は保健室登校をして、卒業はなんとかできました。
ただ当時の僕は、勉強ができるような精神状態ではありませんでした。
大学受験は一応しましたが、全て不合格でした。
勉強が苦手ながらも「大学に行きたい」という思いはあったので、浪人してもう一年受験勉強をすることに決めました。
自分は集団よりも個人で勉強するほうが合っていると思っていたので、予備校に通わず自宅での独学を考えていました。
ですが、親から「予備校に通いなさい」と言われ、半ば強制的に予備校に入学しました。
しかし、やはり思ったとおりで、予備校の雰囲気が合わずに毎日つらい思いをしながら通っていました。
加えて、家庭でも、諸事情で僕が安心できるような状況ではありませんでした。
家の中にも外にも、安心できる場所がない。
つらさを素直に相談できる人もいない。
そんな状況に疲れ、予備校に行かない日が次第に増えていきました。
でも予備校に行かないと両親が怒るので、予備校に行くふりをして公園で一日フラフラして過ごすこともありました。
一人で、孤独で、先が見えなくて、本当につらかったです。
自分のことを、「ずっと落ちこぼれ続けてるな」と思っていました。
そんな僕を変える、大きな出来事がありました。
ある日、予備校の先生が僕の話を親身になって聞いてくれたんです。
それまでは落ち着いて話のできる人がいなかったので、自分の話に向き合ってくれるのは、素直に嬉しかったです。
話を聞いてくれる人の存在は、心のよりどころになりました。
その先生は、「偏差値だけを基準にしない」先生でした。
授業でも、受験勉強の指導以外に、大学時代に学んだことや世界中を旅行したことなどを話してくれていました。
そういう話を聞いて純粋にワクワクして、「改めて、大学という環境に身を置いて勉強したい!」と思うようになりました。
こうして僕は覚悟を決めて、休みがちだった予備校の授業に全て出席するようになりました。
正直、それでもつらさはありましたし、勉強すればするほど将来への不安は強くなりました。
そんなときは、その先生に相談に乗ってもらい、励ましの言葉をもらい、なんとかモチベーションを保ちました。
最終的には、志望度の高かった中央大学総合政策学部に合格することができました。
ずっと「自分は勉強が苦手だ」と思っていましたし、高2からは「自分は落ちこぼれだ」とも思うようになっていました。
なので、志望度の高い大学に合格できて、ものすごく嬉しかったですね。
たった一人、自分のことを気にかけてくれる人と出会えたおかげで自分がこんなに変わるなんて、驚きです。
そして大学生になった僕は、「今度は僕が悩みを抱える人を支えたい」と思い、キズキ共育塾で講師になりました。
長谷川講師の話からは、「環境を変えてみると、落ちこぼれからの目標達成が可能である」ということがわかります。
長谷川講師は、高校では自分のことを「落ちこぼれ」だと思っていました(し、実際に成績も低かったとのことです)。
しかし、彼は、予備校で信頼できる講師と出会うことによって、勉強に集中できるようになり「大学進学」という目標を達成しています。
つまり、「環境の変化」と、それに伴う「人との出会い」によって、落ちこぼれだった自分を変えたのです。
もしあなたが、今の(これまでの)環境が苦手だったり、頼る人がいなかったりするなら、その環境を飛び出してみたり、新たな居場所を探したりしてみてはいかがでしょうか。
あなたが「落ちこぼれ」になった(と思っている)のは、これまでの環境がたまたま合わないだけかもしれないからです。
違う環境であれば、あなたは楽しく過ごせるかもしれず、また自分を変える出会いがあるかもしれません。
二人目は、キズキ共育塾の二宮真由講師(東京都内の私立大学在籍)です。
「医者になってほしい」という親の期待に応えられずに自分のことを「落ちこぼれ」だと思っていた二宮講師は、「視点を変えたことで落ちこぼれだった自分が変わった」と言います。
それでは、二宮講師の体験談を見ていきましょう。
私は、「医者になること」を両親から期待されて育ってきました。
「人のためになるし、仕事もずっとあるし、尊敬されるし、いいことばかりだよ」という理由です。
私自身としては、医学部受験に必須の理系科目は苦手でしたし、「医者になりたい」という強い思いを持っていたわけではありません。
ですが、特にやりたいこともありませんでしたので、親の期待に従い、高校の文理選択で理系の特進クラスに入り、医学部を目指し始めました。
今考えれば、その選択が、自分が「落ちこぼれ」になった転機でした。
元々得意ではない理系の授業は難しく、また特進クラスだったので授業のスピードが速くて、授業についていけなくなったのです。
テストでも点数が取れなくなり、成績も下がっていきました。
親の期待と、勉強についていけないという焦りは、私をどんどん追い詰めていきました。
次第に教室にいることすら苦しくなり、ある朝、起き上がることができなくなってしまいました。
なんとか保健室登校をし、卒業だけはできたのですが、クラスには通えず、勉強はできませんでした。
正直に言うと、当時のことはあまり覚えていません。
とにかくずっと「混乱」しており、受験もできませんでした。
卒業後も「混乱」が続いていましたが、「親の期待に応えたいし、自分のためにも大学に行かなくちゃ」と思いが強く、予備校に通い始めました。
しかし、「混乱」が続く中では体力が持たず、満足に勉強できませんでした。
1浪目の受験は納得いく結果ではなく、もう1年浪人することを決意します。
この時期の私は、自分のことを「ずっと落ちこぼれ続けてるな…」と思っていました(長谷川講師と同じですね)。
予備校に通って結果が出なかったので、2浪目は自宅で勉強しました。
この頃には、両親も医学部以外の選択肢も認めるようになっていたので、文系の学部を受験することにしました。
ただ、自分一人で勉強するのは想像以上に難しく、2浪目も集中できませんでした。
勉強以外についても、不登校から2浪をしている自分には友達もあまりおらず、どんどん引きこもっていくようになりました。
当時は本当につらくて、毎日「死にたい」と考えていました。
そんな中で迎えた受験、都内の私立大学の法学部になんとか合格しました。
世間的には「いい大学」と言われるところなのですが、私にとっては第一志望ではありませんでした。
ですが両親から「これ以上は浪人できない」と言われたこともあり、結局私はその大学に入学しました。
正直に言うと、大学入学の時点でも、自分が「落ちこぼれ」だという気持ちはぬぐえていませんでした。
大学に入学した私は、パントマイムやジャグリングなどを行うパフォーマンスサークルに入りました。
高校までは演劇部に所属しており、ちゃんとした目標ではないものの「役者になりたい」と言っていた時期もありました。
なので、大学では学部の勉強に加えて表現系の活動をしたいと思っていたのです。
サークルでは、マジックやパントマイムを行う際に、声を張る機会が多々あります。
演劇をやっていたおかげで、私は声を張るのが得意で、周りの人もそれを褒めてくれました。
褒めてもらえると、自分のことを認めてもらえた気がして、とっても嬉しくて、パフォーマンスをすることがどんどん楽しくなりました。
しかも、練習すればするほど、周りが「上手だね!」と認めてくれました。
練習だけではなく、実際に観てくれたお客さんも喜んでくれました。
自分の存在を認めてもらえたと思えて、本当に嬉しくて、「生きててよかった」と思いました。
勉強以外の場所で、活躍できる場所、認めてもらえる場所が見つかって、自分のことを「落ちこぼれ」だと思わなくなったのです。
両親が「医者にならなかった私」のことを、本心でどう思っているかはわかりません。
ですが、いつか自分が納得のできるパフォーマンス作品をつくり、発表会に招待できたらと思っています。
そして「期待には応えられなかったけど、私は幸せだから心配しないで」と伝えたいですね(もちろん、学部の勉強もキズキ共育塾での授業もしっかりやります!)。
二宮講師は、親の期待である「医者になる」という目標を達成することができず、自分を「落ちこぼれ」だと思っていました。
高校時代や浪人時代は、「医学部に向けた受験勉強」という観点のみで考えると、実際に「落ちこぼれ」だったかもしれません。
その自己認識は、世間的には「いい大学」と言われる学校に合格・入学しても変わりませんでした。
そんな二宮講師が、今の自分を「落ちこぼれ」だと思わずに充実した毎日を過ごしているのは、大道芸という「医学部受験以外の場所」「受験勉強以外の場所」で、自分の居場所を見つけることができたからです。
一つの道を追求し、やり遂げるというのは素晴らしいことです。
ですが、人生の道のりは長く、またその道はたくさんに枝分かれています。
つまり、それまでの目標がうまくいかなくて悩んでいても、視点や目標を変えてみるとうまくいき、楽しく過ごせることがある、ということです。
「目標を変える」には勇気がいるかもしれませんが、それまでとは違うことにチャレンジしてみると、自分の「いい一面」を新たに発見できるかもしれません。
自分を「落ちこぼれ」だと思っているあなたは、「これまでの環境」や「これまでの目標」に対してうまくいかない自分を責めていませんか?
ですが、長谷川講師のように「環境を変え、人と出会ったこと」で目標を叶えられることがあります。
また、二宮講師のように「それまでの目標と違う生き方をすること」で、自分が活躍できる場を見つけ、充実して日々を過ごせるようになることもあります。
今自分のことを「落ちこぼれ」だと思っているあなたも、必ず前に進めます。
そして私から最後に伝えたいことは、
「一人で悩まなくてもいいんじゃない?」
ということです。
家族でも、先生でも、部活の仲間でも、信頼できる人に助けを求めてください。
それは決して恥ずかしいことではなく、前に進んでいくための手段の一つです。
解決方法が見つかるかもしれませんし、話すことで少しでも気が楽になるかもしれません。
もし、身近な人には話しづらかったり、自分と同じような経験をした人に相談したかったりするなら、相談機関を探してみましょう。
キズキも相談先の一つです。
キズキには、今回インタビューをしたお二人のような経験を持つ講師がたくさんいますので、お気軽にご相談ください。
あなたの気持ちが少しでも楽になり、一歩ずつ前に進めるように祈っています。
キズキ共育塾卒業生の受験体験談
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