HSCとは?特徴・セルフチェックリスト・困りごとの対処法を紹介
こんにちは。さまざまな個性を持つ生徒さんの勉強とメンタルを完全個別指導で応援する、キズキ共育塾の佐野澪です。
あなたは、「HSC」に関するお悩みを抱えているのではないでしょうか?
- 子どもがHSCかもしれない
- HSCの子どもとの接し方がわからない…
筆者自身、HSP(=Highly Sensitive Person、カンタンに言うとHSCの大人版です)に該当するため、日々知識をつけたりさまざまな工夫をしたりしています。
今回は、HSCのお子さんを持つ親御さんに向けて、HSCの特性・傾向を解説し、HSCのお子さんの困りごとへの対処法をお伝えします。
HSCの教育は、むずかしいことが多く存在します。しかし、その敏感さを大切に育むことで、持ち前のよい部分を伸ばすこともできるのです。
本コラムが、あなたと、あなたのお子さんの、よりよい未来に役立ちますよう願っております。
目次
HSCとは?
「HSC」とは、Highly Sensitive Childの略語です。とても敏感・繊細であり、豊かな感受性を持った気質の子どもを意味します。
highly sensitiveとは、刺激に対して反応しやすいことを意味します。この言葉は、精神的なことだけでなく体質的なことにも使われます。
つまり、感覚処理に対する神経が、生まれつき敏感なのです。
この言葉は、”Highly Sensitive Person”=HSPから派生したもので、子どもを対象にした用語です。
「HSP」は、アメリカの心理学者・エレイン・N・アーロン博士が、25年の歳月をかけて研究してまとめあげた概念です。
アーロン博士は、1996年にHSCに関する書籍『the highly sensitive person』を出版しています。
この本はアメリカのみならず、世界各国で大きな反響を呼び、大ベストセラーになりました。
ここ数年、日本でも大きな注目を集めており、HSPやHSCの関連書籍がたくさん発行されています。
“highly sensitive”を直訳すると「非常に敏感な」です。つまり、「刺激に対して反応しやすい」という意味です。
この言葉は、精神的なことだけでなく体質的なことにも使われており、その背後には「感覚処理過敏性」が存在しています。
敏感肌のように、感覚処理に対する神経が生まれつき敏感であると説明するとわかりやすいかもしれません。
アーロン博士によれば、敏感な神経を持つ人は、人口の15〜20%を占めるそうです。
HSC・HSPの人たちは、同じ刺激を受けても他の人より強く反応します。そのため、刺激の強い環境に長時間いると神経が消耗し、疲弊しやすい傾向があります。
HSCのチェックリスト
このコラムをご覧いただいているあなたは、お子さんの様子を見て「HSCもしくはHSCに近しい要素がある」と感じているのではないでしょうか?
そこで、HSCの概念の生みの親、エレイン・N・アーロン博士によるチェックリストを引用掲載します。
あなたのお子さんの状態と照らし合わせて、どんな部分がお子さんと一致するのかをチェックしてみてください。
HSCかどうかを知るための、23のチェックリスト
次の質問に、感じたままを答えてください。子どもについて、どちらかといえば当てはまる場合、あるいは、過去に多く当てはまっていた場合には「はい」、全く当てはまらないか、ほぼ当てはまらない場合には、「いいえ」と答えてください。
- すぐにびっくりする
- 服の布地がチクチクしたり、靴下の縫い目や服のラベルが肌に当たったりするのを嫌がる
- 驚かされるのが苦手である
- しつけは、強い罰よりも、優しい注意の方が効果がある
- 親の心を読む
- 年齢の割りに難しい言葉をつかう
- いつもと違う臭いに気づく
- ユーモアのセンスがある
- 直感力に優れている
- 興奮したあとはなかなか寝つけない
- 大きな変化にうまく適応できない
- たくさんのことを質問する
- 服がぬれたり、砂がついたりすると、着替えたがる
- 完璧主義である
- 誰かがつらい思いをしていることに気づく
- 静かに遊ぶのを好む
- 考えさせられる深い質問をする
- 痛みに敏感である
- うるさい場所を嫌がる
- 細かいこと(物の移動、人の外見の変化など)に気づく
- 石橋を叩いて渡る
- 人前で発表するときは、知っている人だけのほうがうまくいく
- 物事を深く考える
得点評価:
13個以上に「はい」なら、お子さんはおそらくHSCでしょう。
しかし、心理テストよりも、子どもを観察する親の感覚のほうが正確です。
たとえ「はい」が1つか2つでも、その度合いが極端に強ければ、お子さんはHSCの可能性があります。
(引用:エレイン・N・アーロン著、明橋大二訳『ひといちばい敏感な子』(1万年堂出版)
HSCの4つの特性
いかがでしたでしょうか?
ここからは、HSCをさらに深く理解するために、アーロン博士が説明している、HSPやHSCの特徴的な4つの性質「DOES(ダズ)」を紹介します。
最近、私はこの根底にある性質には「4つの面がある」と説明しています。つまり、人一倍敏感な人には、この4つの面が全て存在するということです。
4つのうち1つでも当てはまらないなら、おそらくここで取り上げる「人一倍敏感」な性質ではないと思います。次の4つを、DOESと覚えてください。
D 深く処理する:Depth of processing
O 過剰に刺激を受けやすい:being easily Overstimulated
E 全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い:
being both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular
S ささいな刺激を察知する:being aware of Subtle Stimuli
(引用:エレイン・N・アーロン著、明橋大二訳『ひといちばい敏感な子』(1万年堂出版)
以下、それぞれの特性を詳しく解説します。
D:深く処理する
HSCは、内外から受け取った情報を深く処理する傾向が見られます。
決断や判断をする際に、さまざまな選択肢を考慮して慎重に行動したり、また相手の感情の機微にすぐ気がついたり、するのです。
上記のチェックリストからいくつか抜粋すると、次の項目この特性に該当します。
- 17.考えさせられる深い質問をする
- 21.石橋を叩いて渡る
- 23.物事を深く考える
O:過剰に刺激を受けやすい
HSCは、「感覚処理に対する神経が生まれつき敏感である」と先ほどご説明しました。
神経が細やかな分、神経の興奮が疲労感につながることが多い傾向があります。
たとえ、嬉しい感情であっても、刺激が強すぎると疲労として身体反応にあらわれやすいため注意が必要です。
上記のチェックリストからいくつか抜粋すると、次の項目がこの特性に該当します。
- 1.すぐにびっくりする
- 10.興奮したあとはなかなか寝つけない
- 11.大きな変化にうまく適応できない
E:全体的に感情の反応が強く、特に共感力が高い
HSCは、共感性や同調性が高い傾向があります。
そして、心の境界線がもろいため、自己の感情のみならず他者の感情が自然と手に取るようにわかることがあるのです。
上記のチェックリストからいくつか抜粋すると、次の項目がこの特性に該当します。
- 5.親の心を読む
- 15.誰かがつらい思いをしていることに気づく
S:ささいな刺激を察知する
HSCは、大多数の人が感知しない身の周りに存在するさまざまな刺激(ときには五感以外のものでさえ)に対して、敏感に反応します。
一見して何もしていないように見えますが、本人は多くのエネルギーを消費しているため、疲れやすいのです。
上記のチェックリストからいくつか抜粋すると、次のような項目がこの特性に該当します。
- 7.いつもと違う臭いに気づく
- 9.直感力に優れている
- 18.痛みに敏感である
- 20.細かいこと(物の移動、人の外見の変化など)に気づく
HSCの特性による困りごと・対処法
ここまで、HSCへの理解を深めるための知識や情報をお伝えしてきました。
HSCへの理解を深めることはとても大切です。しかし、それ以上に親御さんやお子さん自身が「今後、敏感な性質とどうつきあっていくか」を考えることが大切です。
そこで次に、HSCの特性から起こり得る困りごとと、状況に合った対処法の例を解説します。
困りごと①環境(学校など)に上手くなじめない
HSCの特性上、不安や緊張などの神経回路が活発です。
そのため、集団生活で人よりも疲れを感じやすい傾向にあります。長時間大人数の中で過ごさなければならない環境は、つらさを感じることが多いでしょう。
そんなHSCのお子さんにとって、ご家庭でリラックスできる時間は、消耗した神経を回復させる上でとても大切です。
お子さんが疲れている様子のときは、1日がんばったお子さんをねぎらいましょう。そして、お子さんに対して肯定的な声掛けを行いましょう。
声掛け例
- 「あなたはあなたのままでいいよ」
- 「毎日よくがんばっているね」
対処例
- ペットを飼い、気持ちがほぐれるようにする
- 日記をつけて感情を解放するよう促す
- 安心できる場所でこまめに休憩をとるように意識させる
困りごと②学校に行きたがらない
がんばって学校に適応しようとした結果疲れ果てると、登校を渋ったり拒否したりするかもしれません。
本人も親御さんに心配をかけていることに対して、負い目や罪悪感を覚えているはずです。
親御さんは、「疲れたときは休んでいいんだよ」とお子さんに言葉にして伝えてあげてください。
声掛け例
- 「疲れちゃったね。今日はお休みしようか?」
- 「私に何かできることや、してほしいことはある?」
対処例
- 学校ではない逃げ場を見つける・用意しておく(家庭、環境の合う習い事など)
- じっくり話を聞く時間を設ける
- 五感を通じてリラックスできることを行う(一緒に料理する、アロマを焚くなど)
困りごと③身体症状が表れたとき
HSCは、HSCでない子どもよりも頭痛や不眠を引き起こしやすい傾向があります。
過剰な神経の興奮が続いて抑うつ状態などが生じた場合、これまでに無理を重ねていた可能性が高いです。
そのため、お子さんをいたわり、抱えているストレスを発散できるように工夫しましょう。
声掛け例
- 「がんばりすぎちゃったね、無理しないで」
- 「今はゆっくり休むことが大切だよ」
対処例
- カウンセリングを受ける(スクールカウンセラーや心理士など)
- 思い切って生活環境を一新する(引っ越し・転校など)
いくつか例を挙げてきましたが、一番重要なのはどんなときも親御さんがお子さんの味方であることを伝え、寄り添う姿勢を示すことだと思います。
また、親御さん自身も難しく考えすぎず、適宜休憩を取られてくださいね。
HSCへの理解向上に役立つ書籍・専門家
ここまで、HSCの概念や特性、お子さんと接する際の工夫などをお伝えしてきました。
しかし、HSCを理解するために必要な情報はまだまだたくさんあります。とはいえ、そのすべてを網羅することはできません。
HSCのお子さんとよりよく関わっていくためには、日々の情報収集を行い、正確な知識を得ることが大切です。そして、お子さんの傾向を知り、お子さんに適した環境を整えましょう。
以下、HSCへの理解を深めるために役立つ書籍や相談先をまとめています。ご参考になさってください。
HSCに関する書籍4選
1万年堂出版刊、エレイン・N・アーロン著、明橋大二翻訳
長年の研究によるHSCに関する豊富な知識、お子さんの時期別のアドバイスが掲載されています。
多くのHSPを診察してきた第一人者による情報です。
5章にわけ、HSCの子育てにまつわるアドバイスが載っています。
漫画やイラストが多く、HSCの対処法がわかりやすく学べる一冊です。
HSP向けの内容ですが、巻末のアイデアリストにはさまざまな休息法が載っており、参考になります。
HSCについて相談できる専門家・支援機関
クリニック・心療内科などの専門機関を利用すれば、お子さんを客観的に理解することができ、その後の対応に活かすことができます。
また、クリニックの仲介やインターネット検索を行うことで、「HSCの親の会」のような、悩みを相談しあえるコミュニティを知ることもできます。
親御さんやご家庭だけでお悩みを抱え込む必要はありません。ぜひいろいろな人を頼ってくださいね。
まとめ:HSCの特性である「敏感さ」を宝物に
HSCには、次の特徴的な4つの性質「DOES(ダズ)」があるため、困りごとを抱えやすい傾向があります。
- 深く処理する
- 過剰に刺激を受けやすい
- 全体的に感情の反応が強く特に共感力が高い
- ささいな刺激を察知する
しかし、親御さんが接し方や声掛けを工夫することで、これらの特性がお子さんの強みになることもあるのです。
HSCのお子さんとよりよく関わっていくために、まずは情報収集を重ねましょう。
そして、適切に専門機関を利用し、お子さんに適した環境を整えることが大切です。
この記事が、少しでもお子さんの生きやすさにつながったなら幸いです。敏感で繊細な気質が、あなたとお子さんの宝物になるよう、心から願っております。
さて、私たちキズキ共育塾は、HSCも含めて、不登校、引きこもり、高校中退など、多様な生徒さんの勉強面とメンタル面を支援する個別指導塾です。HSPの性質を持つ講師も多数在籍しています。
もしお力になれることがございましたら、お気軽にキズキ共育塾にご相談くださいね。 ご相談は無料です。また、親御さんだけでのご相談も可能です。