元ひきこもり芸人 山田ルイ53世氏インタビュー【第3回】
勉強からお笑いへ、勝負する世界をズラした
山田氏:勉強の道をあきらめた場合、真面目に働くというパターンもあると思います。小さな工場で働いて親父さんに気に入られるとか、バイトでも真面目に続けるとか。でも、僕自身はそれを許せなかったというか。ハッハッハ。
安田:芸人さんを目指していこうと思った中に、進学校に通っていたときにお持ちだったという「自分は特別な存在なんだ」という気持ちは続いていたんでしょうか。
山田氏:その気持ちは、なくなっていた…んでしょうけど、その「自分は特別だ」という味が好きなんでしょうね。ずっと同じ味が好きなのは悪癖だと思うんですけど、その性根は消えないので、まっとうにきちんと働くより、お笑いの道を選んだんです(笑)。
だから、最初は勝負する世界をズラしたことによって、ごまかしたという部分もあります。勉強の世界で評価される、特別な存在になる道は断たれた。でも、「お笑い」まで世界をズラせば、勉強のことが関係ない、別の道で評価されるということで芸人を始めたんです。
安田:僕は、大学卒業後に新卒で入社した会社を4ヶ月で辞めてひきこもりに戻り、起業していまに至ります。サラリーマンの世界では負けたけど、起業までズラしたら勝てるかなという思いはありました。
山田氏:ズラしていいんですよね。ズラすのを悪い感じにいうのがおかしい。ところで、参考までに、安田さんはなんで会社を辞めたんですか?
安田:僕はコミュニケーションが得意じゃなくて、基本的に暗いんですよ。就職したのは商社というキラキラした業界で、仕事終わりに合コンに行くのも楽しかったんですけど、なんか疲れちゃうなと(笑)。なんで朝早く起きなきゃいけないんだろうとか、満員電車に乗りたくないなとか。
山田氏:世間的にはダメ人間ですね、ハッハッハ!
人間関係を切っていたので、芸人を目指すことを否定する人がいなかった
安田:僕は「サラリーマンでダメだったオマエが起業しても、うまくいくわけない」と言われたこともありました。山田さんの場合、「中学も辞めて、大学も辞めた人が、芸人でやっていけるわけないだろう」と言われて傷付いたようなことはありますか。
山田氏:母親から言われたことはありました。母親は「小学校、中学校と勉強・運動を頑張ってて、その後ひきこもっていた僕」しか知らないわけです。で、関西のオカンですから、「上沼恵美子とかみたいになれる?できっこないやん」みたいなことを。まあ、自分でもそんなに自信はなかったんですが。
でも、それくらいですね。僕は人間関係をその都度切ってきているので、逆にノイズがないんです。当時はエゴサーチするようなものもないですし。
余談ですが、親に言わずに大学を辞めて、その後2年間くらい完全に音信不通でした。ただ、そんなにバイトもしたくないという気持ちもあり、生活はどんどん困窮するわけですよ。そんなとき、オカンに1回だけ電話して、「来週から『笑っていいとも!』のレギュラーが決まった」と嘘をついて、3万円くらい振り込ませたってことはありますね、ハッハッハ!偽物じゃなくて本人がかけているわけですけど、振込め詐欺のハシリみたいなもんですよ(笑)。
勉強の世界での成功を目指していた山田氏が、勝負する世界をズラし芸人を目指すようになった理由やモチベーション、芸人生活の現実について語っていただきました。
さて、次回はいよいよ最終回です。タイトルは「人生には、無駄があってもいい」。ひきこもり経験と人生について、相方・ひぐち君さんについて、そしていま苦しんでいる方へのメッセージをお届けします。
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元ひきこもり芸人 山田ルイ53世氏インタビュー