元ひきこもり芸人 山田ルイ53世氏インタビュー【第1回】
家族揃って追い詰められる必要はない
山田氏:これは僕が勝手に思っていることなんですけど、子どもが不登校やひきこもりになると、「親も悲壮にならないとダメだ」みたいな空気感がありませんか?「うちの子は引きこもったから、ドロップアウトしたから、レールから外れたからこれはもう大事件だ」みたいな。大事件には違いないんですが、それで親まで「ハァ…」みたいになるのも違うと思います。子どもがひきこもってても、ママ友と料理教室に行ってもいいと思うんですよ。
安田:それは大事なことですね。
山田氏:親まで悲壮になっても、ただただ追い詰められるだけだから。僕の場合は、本当に申し訳ないんだけど、僕のひきこもりがきっかけで親父が浮気して…って実はその前から浮気してたんやけど(笑)、オカンは明らかに老け込みました。原因となった自分から言うのもおこがましいんだけど、家族揃って追い詰められる必要はないと思うんですよ。
親が楽しんでいたら、子どもは「オレがこんなに苦しんでるのにハーフマラソンなんか出やがって」とか言ったり思ったりするかもしれません。でも、親は親で楽しんでいいんですよ。子どもも、親には親の人生があると思っておかないといけない。気持ちのいい形でお互いを尊重するのが大事かもしれませんね。
安田:僕が知っているひきこもり支援系のNPOの方々は同じことを言っていますね。親御さんへのアドバイスとして、「親御さんは旅行に行ってください」「親御さんは勝手に遊びに行ってください」と。
山田氏:家族全体が悲壮になるのは、誰にとっても不幸やと思いますね。
もし娘さんが同じ悩みを抱えたら…?
安田:そういう意味では、失礼ですが、例えば娘さんが将来いろいろ悩まれた場合には、できるだけ見守っていこうという感じでしょうか。
山田氏:娘についても、学校に行かないとか、1年留年したとか、不登校とか、それがすごく取り返しのつかない失敗だとは思いません。学校に通ってるくらいの年齢ならね。まあまあリカバリーできるんじゃないかなと思うんです。
僕のように、学校からどんどんそれていくパターンもあるでしょうけど、学校に行かなくなった、でもまだ本当は勉強したい、友だちのところに戻りたいという、このリカバリーは絶対できます。新しい友だちもできるし。よっぽどのことがない限り、娘が不登校やひきこもりになっても、「学校行け!!」みたいな対応はしないですね。
ひきこもりや不登校のリスクについて言わないのはフェアじゃない
山田氏:ただ、「しんどいことは出てくるよ」「リスクも考えておきなさい」とは言うでしょうね。「お父さんが営業でお金稼げてるうちは、もちろん金銭的なサポートはする。でも、ひきこもりや不登校によって、自分的に大変なことは出てくるよ」と。責めるとか追い詰めるとかいうことではなくね。そういうことを言わないのは、フェアじゃない、嘘だと思う。
安田:ひきこもり支援の効果的な行動の1つに、親御さんが「うちはいま年金がこれくらいで、退職金がこれくらいで、あと3年は面倒見れるけれど、4年目以降は無理だよ」といったことを伝える、ということがあります。そういう伝え方をすると、本人も納得することがあるんですよね。
山田氏:正直、金の部分はありますもんね。でも結局、お金しんどくても、親は助けてしまうんやと思うんですけどね(笑)。リスクについてはお互い考えたいですね。
ご自身の経験から、挫折中の人を取り巻く様々な人間関係について語っていただきました。
さて、第2回となる次回のタイトルは、「モノサシは『勉強』」です。私立中学を不登校から中退し、ひきこもって暮らす中、山田氏はなぜ大学受験を目指したのか、そのときどのように勉強したかなどについてお伝えします。
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