教育NPOが社会で果たす役割
キズキで講師をしている川島先生と盛岡先生(仮名)に、教育NPOの役割や、そこで働くやりがいなどについて私、朝山がお話を伺いました。
教育NPOに興味を持ったきっかけは何ですか?
私は学校の教員を目指しているのですが、教育実習に行った際に、「学校の先生がいかに多忙であるか」「そのために、生徒一人ひとりが抱える問題に教師が対応していくことがいかに困難になっているか」を知りました。とくに、発達障害のような事情を抱える生徒さんは、学校教育の網目からは抜け落ちてしまうのではないかという印象を持ちました。「そのような生徒さんをどうケアしていけばよいのだろうか・・・」そう考えていたところ、個々の生徒さんを綿密にケアし学校教育を補完している「教育NPO」の存在を知り、大きな関心を持つようになりました。
私はアメリカで日本語教師をしていたのですが、その際に衝撃的な経験をしました。授業中、ある生徒が「椅子に座るのが嫌」と言い出して、カーペットを敷いてそのうえに座り始めたのです。それだけでも十分驚きだったのですが、そのクラスの担当教師は何も気にせず授業を続け、他の生徒も一切文句を言わなかったのです。アメリカの学校には、大きな自由があることを知りました。
それに対して日本ではどうかと考えたところ、アメリカとは異なり、画一的で自由度がかなり低いのではないかと思いました。そこで、日本でも多様な教育のかたちがあったらいいなと考えるようになり、教育NPOに興味を持ちました。
教育NPOの役割は具体的にはどのようなものだと考えますか?
学校教育には適応できない生徒さんをケアすることが挙げられると思います。発達障害などのさまざまな理由から、不登校やひきこもりになる生徒さんは一定数存在します。そのような生徒さんでも、キズキのような教育のNPOでは、自分の学習レベルや性格、希望の進路に合わせて最適な学習スタイルを選ぶことができます。また、例えば精神的な問題を抱えていても、病院やカウンセリングセンターに行くのはハードルが高いという事情があります。それに対して、キズキのような教育NPOでは、困難を抱える生徒さんが気軽に悩みを相談できる場所を提供していると思います。
教育NPOで働くことのやりがいは何だと思いますか?
生徒一人ひとりの事情に合わせて授業を組み立てられることだと思います。例えば、私は以前アスペルガー傾向のある生徒を担当したことがあります。その子は、授業をしていても「ここはテストに出ないからやりません」と頑なに主張することが多く、また、設問と関係のない細かな部分に興味が向いてしまい問題に答えようとしない場合もしばしばでした。
普通の学校教育で彼のような生徒さんに対応するのは難しいでしょう。しかし、キズキのような教育NPOでは、「彼にとって最適な学習方法はどのようなものか」と考え、実行していくことができます。
このケースでは、まず、エース講師である宮川さんに「なぜこの勉強が必要なのか」とロジカルに説明してもらい、生徒さんに勉強の必要性を理解してもらえるよう努めました。そして、メンタルケアのスペシャリストである根津さんにカウンセリングを実施してもらい、彼がストレスをためてしまわないよう配慮もしました。
学校のクラスにも、発達障害傾向やメンタルの問題を持つ生徒は存在します。学生の頃から、キズキのような教育NPOで、発達障害や精神的問題を抱えている生徒達と日々関わり、試行錯誤しながら勉強を教えていくことはとてもやりがいがありますし、教員になってから大きなアドバンテージになるとも思っています。
「学校教育ではケアしきれない部分を補い、生徒一人ひとりに最適な教育を提供していく」それが、教育NPOが社会で果たしている役割なのですね。
川島先生、盛岡先生ありがとうございました。これでインタビューを終わります。