元ひきこもり芸人 山田ルイ53世氏インタビュー【第1回】
ひきこもり・不登校の親子・家族関係――揃って追い詰められる必要はない
父親には、1回静観してほしかった
安田:山田さんが最初に学校に行かないと宣言されたとき、お父様からドロップキックを食らったという話がありましたね。あのとき、「本当はこうしてほしかった」みたいなことはありますでしょうか。
山田氏:ひきこもりに共通する思いか、自分だけの考えかはわからないのですが、「1回ちょっと時間くれへんか」というのはありましたね。「ちょっとワンクッション置いてくれよ」、「1回静観してくれよ」と。
あのときは、急に追い込みをかけてくる感じでしたから。うちの親父はそういう人間なんでしょうがないなという部分もあるんですが、「『ミナミの帝王』の萬田銀次郎でももうちょっと泳がすで」と。ハッハッハッハ!
また、急に追い込みをかけられた瞬間、自分にも親父の豹変ぶりに対する疑問が生じたんです。「私立のいい学校に行かないとなったオレにはもうその態度なんや」と。
今となっては親の気持ちもわかるんです。ある日、子どもが反抗して学校に行かなくなるということは、どうしたらいいのかわからない、親の人生にとっても大事件だったんだなと。また、「もうちょっと見守ってくれよ」と言ったところで、3ヶ月見守ってくれていたとしても、僕の場合はおそらくひきこもりのままだったとも思います(笑)。
急に追い立てられても事態は好転しない
安田:キズキ共育塾に相談に来る方々も、半分以上は、本人と保護者が一緒だったり、保護者のみだったりします。どういうアドバイスをしたらいいのかは悩みどころです。
山田氏:繰り返しですが、そんな急に追い立てられても無理やから、1回泳がせてくれよというのはありますね。「今日は学校に行くのか、明日はどうするんだ」みたいなやり方では事態は好転しないとは思います。
不登校・ひきこもりの本人も、「よし、休もう!」と思って休んでいるんじゃないと思うんですよ。その原因は、他から見たらしょうもないこだわりかもしれないんですが、そうしたことがだいぶ、だいぶ堆積した結果の「もう行けない」ですから。昨日今日が原因の話ではないので、1回様子を見てみるのが、保護者にとってもいいと思う。
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