貧困を解決するのは教育〜塾に通っていた私だから、通えない子どもたちを支援できるのでは〜
栗原すみれ(公民連携事業)。2002年2月生まれ。兵庫県西宮市出身・在住。自身に生活困窮の経験はなく、中高生時代は塾に通っており、大学生になってからは塾講師のアルバイトも行う。大学の授業で「貧困を解決するのは教育である」と学んだことをきっかけに、キズキの公民連携事業に参加。
■担当事業:
公民館などで行う、教室型の、生活困窮家庭の中学生の学習支援(関西)
■特技:
陸上競技(中距離)をずっと続けています。これからはフルマラソンに挑戦しようとしています。
(2024年1月16日公開)
■応募の動機〜大学で「貧困を解決するのは教育である」と学ぶ〜
私自身は中高生時代に塾に通っていて、高校受験・大学受験の対策も塾で行いました。大学生になってからは、1回生のときから塾講師のアルバイトをしていました。
「生活困窮家庭の子どもの支援」には、受ける側としても行う側としても縁がなかったということです。
そんな私は、大学3回生のとき、ある授業で「貧困を改善するのは教育である」ということを学びました(※)。
そして、「家庭の経済的事情のために、塾に行けずに悩んでいた友人」のことを思い出したんです。
それらに思いを馳せるうちに、「塾に行かせてもらっていた私だからこそ、『そういう人たち』のサポートができるのではないか」と考えるようになりました。
その時点では、「行政が主催する、生活困窮家庭の子どもたちへの無償の学習支援がある」とはっきり知っていたわけではありません。
ですが、「何かあるだろう」と思い、インターネットで「学習サポート」などと検索してみたんです(笑)。
するとキズキの求人が見つかり、応募した次第です。
「ジャマイカ産のコーヒー豆は高値で取引されているのに、そのコーヒー豆の生産者であるジャマイカ人の所得水準は低い(取引価格が還元されていない)。そして、コーヒー豆の生産に関わるジャマイカ人は『それ以外の生活』を知らないため、低賃金で働き続けている。そうした状況を改善するためには、教育が必要である」。
■業務内容〜勉強を教える、相談に乗る、マッチング、保護者対応〜
私が参加している事業は、「公民館などを利用した、教室型の、生活困窮世帯の中学生の学習支援」です。
①事業概要
一つの市内で、複数の会場・曜日で行っています。
私がいる会場では、1回あたりの子どもの登録数は15人程度で、講師はその半数くらいですね。
また、私がいる会場では、講師の内訳は大学生が4割、社会人(ふだんは会社勤めなどをしている人)が6割です。他の会場では、定年退職者や、いわゆる主婦の方も珍しくないようです。
職種には、「講師(支援員)」と「コーディネーター(管理者)」の2つがあります。
最初は講師からのスタートで、本人とキズキの両方の希望が一致すると、コーディネーターになります。
現在の私は、講師兼コーディネーターです。
②講師(支援員)の仕事
講師の仕事は、次の2つです。
- 子どもたちに勉強を教えること
- 子どもたちの相談に乗ること
勉強については、よく行うことは「宿題のサポート」と「高校受験に向けたサポート」です。担当する子どもによっては、講師が単語テストを実施したりもします。
キズキは教材を用意していますが、カリキュラムはありません(=「その教材を必ず利用しなくてはならない」というわけではありません)。
柔軟に、子どもの希望、学習理解度・進度などに合わせた指導を行うことができます。
今の状況としては、「用意した教材で学ぶ子ども」よりも、「持参した学校の宿題に取り組む子ども(宿題のサポートを受ける子ども)」の方が多いです。
相談については、勉強、受験・進路、生活などの話題が多いです。
相談内容には、担当講師だけでは回答できないものや、すぐに回答できないものもあります。そんなときは、講師同士やキズキ社員に相談して、回答内容を考えています。
また、「困難な状況にある子ども」について、行政は、学習支援以外にも様々なサポートを行います。関連して、キズキが対応できない(対応するべきではない)相談を受けたときには、次のような流れでキズキ以外の支援者が対応します。
- 子どもが、担当講師に相談
- 担当講師が、キズキ内で情報を共有
- キズキが、市に情報を共有
- 市が、その相談内容に適した、キズキ以外の支援者に連絡
- その支援者が、相談内容の解決に向けて子どもや家庭とコンタクトを取る
③コーディネーター(管理者)の仕事
コーディネーターとしては、次のような業務を行います。
- 生徒と講師のマッチング(出勤後、「出席予定の子ども」と「出勤予定のある講師」のマッチングを行う)
- 欠席が続く子どもの家庭への連絡
- 保護者対応(保護者から問い合わせがあった場合、その対応を行う。必要に応じて、担当講師やキズキ社員との調整を行う)
■この仕事のやりがい〜柔軟な対応、コーディネーターの仕事、アルバイトであること〜
この仕事の私にとってのやりがいを、3つ紹介します。
1つは、「指導の自由度が高いため、柔軟な対応ができる」ということです。
一般的な塾では、「決まったカリキュラム」があることが珍しくありません。そうしたカリキュラムは、塾にとっても生徒にとっても、メリットはあると思います。
ですが、カリキュラムがあるがゆえに、勉強についても相談についても、それを外れた対応をすることが難しい場合もあります。
この事業では、決まったカリキュラムがないため、「子どもが困っていること」に柔軟に対応できます。
2つめは、「コーディネーターとしての仕事」です。
講師として勤務を続けていた私は、あるときキズキ社員から「栗原先生、コーディネーターになりませんか?」と声をかけられました。
私の会場では、私が参加し始めたときのコーディネーターは社会人の方が務めていました。
コーディネーターは社会人が担当するもの…と思っていたので、「大学生でなれるんや。私がやっていいんや」と嬉しい驚きを覚えて、受けることにしました。
コーディネーターになってからは、自分が担当する子どものことだけではなく、会場に来る子ども全員のことを見るようになりました。
視野が広がり、やりがいもすごく大きくなりましたね。
3つめは、「給料をもらえること」です。これは、単純にいいことだと思います(笑)。
「こうした支援は、たぶん無給のボランティアだろうな。でも給料目当てじゃないから、無給でもいいか」と思ってはいましたが、嬉しい誤算でしたね。
■キズキのよいところ〜マニュアル、相談体制〜
働き始めてわかった、キズキのよいところを2つお伝えします。
1つめは、「真に必要なマニュアルがあること」です。
私は、塾講師の経験こそありましたが、「支援の仕事」という意味では全く未経験からのスタートでした。
現在も活動を続けられているのは、初心者から始められるマニュアルが整っているからだと思います。
その上で、「悪い意味での、変に細かいマニュアル」はありません。
「やるべきこと」と「やってはいけないこと」が明確に定まっていますが、科目やカリキュラムが一律に決まっているわけではありません。
そのために、前章でも述べたように、一人ひとりの子どもが必要とするサポートを柔軟に行うことができるのです(※事業によって、「行うこと」の詳細は異なります)。
いろんな事情のある様々な子どもたちに、画一的ではない支援ができるという状況は、とてもいいことだと思います。
2つめは、「相談のしやすさ」です。
わからないことがあったり、対応に悩んだりしたときには、講師同士やキズキ社員に相談しやすい体制・雰囲気があります。
仕事の悩みを一人で抱え込まず、チームとして解決に向かうことができます。
■自分自身の変化・成長〜この事業のおかげで、就職活動の方向性が決まった〜
私は2024年3月に大学を卒業し、就職します。
就職活動の方針は、この事業に参加したことで、「学校や公教育をもっとよくするための仕事をしたい」「塾に通える子どもと通えない子どもの格差をなくしたい」と、はっきり固まりました。
そして実際に、そういうことに取り組める会社への就職が決まりました。
エントリーシートや面接での「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」でも、この事業でのことを伝えました(もちろん、守秘義務の範囲内で)。
結構珍しい活動ということで興味を持ってもらえましたし、「なぜ自分がこう思っているのか」と説明するための裏付けにもなりました。
大学受験の時点の私は、教育・心理・福祉などの分野には、興味がありませんでした。
そんな私が、教育関係の仕事を目指し、内定をもらえるまでになったのです。
この活動に参加することで、子どもたちだけではなく、私自身の将来も変わったのだと思います。
■応募を考えている方へ〜迷ったらぜひご応募ください!〜
特に教育・福祉・心理系の知識や経験がないと、応募を迷うこともあると思います。
私自身、応募したはいいものの、「自分ができるんかな」「どういう子どもがおるんやろ」という不安はありました。
ですが初めてみたら、「誠実に向き合えばOK」ということがわかりました。
このページをご覧のあなたも、ご興味があるなら、ぜひご応募いただきたいです!