パニック障害の人の仕事の困りごととは? 対処法7つを解説 | キズキビジネスカレッジ  

パニック障害の人の仕事の困りごととは? 対処法7つを解説

こんにちは。精神保健福祉士の国家資格を持ち、キズキ共育塾の講師でもある西村です。

あなたは、パニック障害の症状があり、今後の仕事に関して次のようなお悩みを抱えていませんか?

  • 仕事から離れて休養を取れば治るものなのか
  • パニック障害を発症しても仕事を続けられるのか
  • パニック障害に向いている働き方はあるのか
  • 職場環境を変えた方がいいのか
  • 今後仕事をしながら社会生活を送ることはできるのか

上記のようにお悩みのあなたに、まずお伝えしたいのは「多くのパニック障害の人が、適切な治療を受け、対処法を見出し、社会生活を営むことができる状態に回復しているので、安心してください」ということです。

この記事では、パニック障害の人に見られる困りごとの例やパニック障害への対処法、利用できる支援制度、仕事探しをするときのポイントを紹介します。

「パニック障害と仕事」についての不安を解消し、あなたが具体的な「次の行動」を見つけるための参考になれば幸いです。

パニック障害の人に見られる仕事の困りごと事例3選

ここからは具体的に、パニック障害の人が仕事で抱えやすい困難の事例を見ていきましょう。

なお、各事例は、個人の特定を避けるため、趣旨をゆがめない範囲で一部事実を変更していますので、ご承知おきください。(参考:松本桂樹『電車に乗れない人たち 最新版』)

事例①通勤時に発作に襲われて仕事に行けない

事例①通勤時に発作に襲われて仕事に行けない

1点目は、「通勤中に発作に襲われて仕事に行けない」という例です。

都心に勤務するAさんは、毎朝、満員の電車に乗って通勤していました。

Aさんは、あるとき乗客の多い通勤電車の中でパニック障害の発作を起こし、「助けを求められずに、死んでしまうのではないか」と思うほどの恐怖を感じたと言います。

それ以来、電車に乗ることに恐怖を感じるようになりました。

「電車の中でパニック発作が起きたら、看護のために電車を止めてしまうのではないか」「周りの人に迷惑を掛けるのではないか」という不安を抱えるようになったのです。

また、パニック発作が起きない場合でも、通勤時の電車で不安や恐怖を感じ、途中駅で降りて休憩を取ることがありました。

そうすると、結果的に就業時間に間に合わず、時差出勤に切り替えたり、欠勤になっていたりしました。

Aさんのように、通勤中にパニック障害の症状が出ることで予定が狂ったり、仕事に行けなかったりすることを困難に挙げる人は少なくありません。

事例②業務中の発作で仕事を任せてもらえなくなった

2つ目は、「業務中の発作で仕事を任せてもらえなくなった」Bさんの事例です。

パニック障害を発症していたBさんの職場は、休暇を取得しやすい環境でした。

そのためBさんは、「発作が起きても、事情を言わずに休んだり早退したりすれば対応できる」と思い、パニック障害のことを職場に話していませんでした。

しかしあるとき、繁忙期に緊急対応が必要な事案が発生したことで慌てたBさんは、職場でパニック発作を起こします。

「対応できる」と思っていたBさんですが、「発作を抑えて早退すること」は、できなかったのです。

事情を知らなかった同僚たちは驚き、後日、上司とBさんはパニック障害について話し合いました。

Bさんの業務内容は発作が起こると支障が出やすい分野だったこともあり、同意のもと、やむをえず異動となりました。

このように、勤め先の配慮と本人の同意に基づくものとはいえ、パニック障害が要因となり、業務内容を見直すことになるケースもあります。

事例③仕事場自体に恐怖を感じるようになった

事例③仕事場自体に恐怖を感じるようになった

最後は、「仕事場自体に恐怖を感じるようになった」Cさんの事例です。

あるとき、Cさんは同僚の前で上司から叱責を受けたことがきっかけで、パニック障害を患うようになりました。

そのときのパニック発作をたびたび思い出すことで、仕事場自体に恐怖を抱くようになったと言います。

そして、「職場に行くと、またパニック発作が起こるのではないか」という予期不安に襲われるようになり、休職することになりました。

しばらくして復職しましたが、やはり以前の仕事場(部署)には不安を覚えるということで、配置転換が行われました。

Cさんのように、仕事場自体が恐怖の対象になるという困難もあるようです。

パニック障害への対処法7選

それでは、パニック障害の人がパニック発作に対処しながら仕事を続けるには、どのような対処法があるのでしょうか?

前提として大切なのは、できるだけ周囲の同僚、ご家族、ご友人に相談する姿勢を持つことです。

パニック障害がある場合、助けを得られないという状況自体が不安を引き起こします。

そのため、周囲の人に前もって相談することが、症状の緩和につながります。

また、薬を服用されている人は、自己判断で断薬せずに、服用を続けることが必要になります。

薬の服用がパニック障害の再発防止につながる場合も多いので、医師の診断に従うようにしましょう。

上記の点に留意して、これからご紹介する対処法をご覧ください。(参考:坪井康次『患者のための最新医学 パニック障害 正しい知識とケア』、ポール・デイヴィッド『不安神経症・パニック障害が昨日より少し良くなる本』)

対処法①医療機関や支援機関を頼る

対処法①医療機関や支援機関を頼る

1点目は、「医療機関や支援機関を頼る」です。

先ほども軽く述べましたが、病院には必ず通うようにしましょう。

その上で、かかりつけの先生に対しては、日常生活の話に加えて、仕事や職場の話もすることをオススメします。

これは、「仕事に関係する悩みや不安」について、有益なアドバイスをもらえる場合があるからです。

具体的なアドバイスがない場合でも、話をする(話を聞いてもらう)こと自体が不安の軽減にもつながります。

「ささいなことでも、かかりつけ医に相談してみる」という意識を持つようにしましょう。

また、パニック障害に限らず、障害のある人の生活や就労をサポートしている支援機関に頼るのもひとつの手段です。

例えば、精神保健福祉センターや就労移行支援事業所があります。

これらの支援機関、支援制度については、後の章の「パニック障害の人が利用できる支援機関・制度6つ」で紹介します。

対処法②パニック発作の原因探しをしない

対処法の2点目は、「パニック発作の原因探しをしない」です。

パニック障害の人の中には、発作を恐れるために、熱心に原因探しをしたり、分析したりしようとする人がいます。

しかし、パニック障害は「わけもなく突然に」強い不安に襲われることが多いです。

そのため、明確な原因が見つからず、ただ頭が疲れてしまうという結果になることもよくあるのです。

そのため、原因を探すよりも、起きる不安や恐怖にどう対処していくかを考えることが大切です。

「せめて、自分がどういう状況で不安になるのかを知っておきたい」という人は、紙にさっと書き出すだけにして、分析に徹しない方がよいでしょう。

それよりも、「症状が出たときにはどういう行動を取るのがよいか」を考えることをオススメします。

対処法③生活習慣を整える

対処法③生活習慣を整える

対処法の3点目は、「生活習慣を整える」です。

特に、就寝と起床の時間は、なるべく一定にするよう心掛けましょう。

また、残業などによって帰宅時間が遅くなることも、生活習慣が乱れる原因になるためオススメしません。

睡眠のリズムが乱れて睡眠効率が落ちると、あなたの仕事のパフォーマンスが落ちるだけでなく、日常感じるストレスも大きくなります。

パニック障害の人は、できるだけ一定の生活リズムを保つようにしてください。

対処法④タバコ・お酒・カフェインを控える

4点目は、「タバコ・お酒・カフェインを控える」です。

タバコやお酒には「抗不安作用」がありますが、いずれも作用時間は短く、すぐに気分の悪化を招くこともあります。

さらに、依存性があるため、人によってはアルコール依存症などにつながる恐れがあります。

また、コーヒー・緑茶・エナジードリンクなどに含まれるカフェインには、パニック発作を悪化させる働きがあることが知られています。

こうした嗜好品は、治療薬の効果にも悪影響をあたえる可能性がありますので、できるだけ避けるようにしましょう。

対処法⑤通勤経路や時間帯を変える

対処法⑤通勤経路や時間帯を変える

対処法の5点目は、「通勤経路や時間帯を変える」です。

先に挙げた例のように、パニック障害の人にとって、通勤事情がパニック発作を引き起こすことが少なくありません。

特に、通勤電車の人混みや、駅の混雑、遅刻・遅延などは、不安を高める可能性があります。

そのため、できるだけ混雑を避けられる通勤経路を考えたり、余裕を持って家を出たりといった工夫をしながら、あなたが楽に通勤できる経路・時間帯を選ぶようにしましょう。

なお、こちらについては、「パニック障害の人が仕事探しをするときのポイント3選」でもご紹介するように、職場の勤務制度を確認することで、「満員電車の時間帯を避ける時短勤務」などで対応できることもあります。

対処法⑥リラックス法・対応法を身につける

6点目は、「リラックス法・対応法を身につける」です。

パニック発作はいきなり襲ってくるものですので、咄嗟に対処することが難しい部分があります。

そのため、心身に不調を感じたり、不安や緊張を覚えたりした段階で、すぐにリラックス法を実践すると、発作を予防する可能性が高まります。

具体的なリラックス法として、以下のものを挙げることができます。

  • 2、3分間の深呼吸をして気を落ちつける
  • 部屋を出て外の空気を吸いに行く
  • 目を閉じて瞑想(マインドフルネス)を実践する

その上で、発作が起こったときにもできる方法も、いくつか探しておきましょう。

こちらも、例としては次のようなものがあります。

  • 発作自体で死ぬことはないと考え、心を落ち着かせる
  • あらかじめ、横になったりうずくまったりできる場所を見つけておき、そこに行って呼吸を整える

いずれにしても、病院や支援者などにも「よくある方法」を聞き、あなたに合ったものを探してみてください。

対処法⑦可能な範囲で職場に情報を開示する

対処法⑦可能な範囲で職場に情報を開示する

可能であれば、医師や、後述する支援機関とも相談しつつ、可能な範囲で職場に病状を説明しましょう。

そうすることで、別章で述べるような職場の支援制度を利用できる可能性があります。

また、職場に支援制度が整っていない場合でも、柔軟な対応を受けることができる場合もあります。

パニック障害に理解のない職場もあるため、あなた一人で職場と対応するのではなく、医師やカウンセラー、支援者などと相談した上で行っていただくと、より効果的です。

医師やカウンセラー、支援者に心当たりがない、という場合には、「相談できる支援機関の窓口」をご覧ください。

全都道府県に精神保健福祉センターなど、無料相談を受け付けている機関があります。

そういった支援機関に現状を相談し、一緒に職場への対応を考えていくことができるはずです。

パニック障害の人が利用できる支援機関・制度6つ

「パニック障への対処法7選」では、医師による治療を前提としつつ、ご自身で取り組めるような対処法についてお伝えしました。

ここでは、パニック障害の人が利用できる可能性の高い支援機関、支援制度についてお伝えします。

パニック障害を治療・改善していくためには、自分自身で対応するだけでなく、支援者と一緒に、支援制度をうまく使いながら、少しずつ仕事に取り組みやすい環境を整えていくことが重要です。

「支援に頼るのはよくないのではないか…」と考え、利用をためらわれる人も少なくないです。

ですが、支援機関、支援制度は、パニック障害などの症状があり困っている人のために用意されている制度です。

制度を使い、不安や怖れの少ない生活、また仕事環境に近づいていっていただけたらと思います。

この記事でご紹介するのは、代表的な支援機関・制度になります。

他にもありますので、もっと知りたい方は、各自治体の相談窓口などに確認してみることをオススメします。

支援①就労移行支援事業所

支援①就労移行支援事業所

パニック障害に関連して退職や転職を考えられている場合、就労移行支援への相談・利用を考えられるとよいでしょう。

「就労移行支援」とは、一般企業での就職や仕事で独立することを目指す障害者の人の、本人に合った職場への就職・定着を目的として行われる、障害福祉サービスの1つです。

就労移行支援事業所では、体調管理の方法、職場でのコミュニケーションの基礎スキル、就職に必要な専門スキルなどを学ぶことができます。

さらには、実際の就職活動でのアドバイス、就職後の職場定着支援も含む、総合的な就労支援を受けることが可能です。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)もそのひとつで、最低0円の自己負担でご利用いただけます。

キズキビジネスカレッジ(KBC)では、以下のようなさまざまなプログラムを行っています。

  • 会計・ファイナンス
  • 英語
  • Webマーケティング
  • Webライティング
  • Excel/Word/PowerPoint基礎
  • ビジネス企画

多くの就労移行支援事業所で無料相談を行っていますので、パニック障害の症状からくるあなたの仕事のお悩みを相談し、支援者につながっていただければと思います。

就労移行支援事業所の詳細については、コラム「就労移行支援とは?サービス内容から就労継続支援との違いまで解説」をご覧ください。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、うつ病や発達障害などの人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

新宿・横浜・大阪に校舎があり、通える範囲にお住まいであれば、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

支援②精神保健福祉センター

医療機関以外に、パニック障害などの心の症状について相談できる窓口として代表的なものは「精神保健福祉センター」があります。

地域によって呼称が少し違うことがありますが(精神保健センターなど)、全都道府県にそれぞれ1か所以上設置されている公的機関で地域住民の精神医療情報を把握しています。

心の病気の予防、医療機関の紹介ほか、さまざまな相談にのってくれます。

精神科医、精神保健福祉士(精神科ソーシャルワーカー)、臨床心理士など、心の健康の専門家が対応します。

電話相談や面接相談は無料です(ただし、診察には費用がかかる場合もあります)。

各地域の精神保健福祉センターについては、厚生労働省の「全国の精神保健福祉センター」にてご覧ください。

最寄りの精神保健福祉センターが遠い場合は、「保健所」でも地域の精神医療情報を把握していますので、利用するとよいでしょう。

各地の保健所では、心の病気に関する電話相談を受け付けているところもあります。

支援③臨床心理士・公認心理師(カウンセリング)

支援③臨床心理士・公認心理師(カウンセリング)

パニック障害の改善には、臨床心理士・公認心理師によるカウンセリングも有効です。

「臨床心理士」とは、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”です。

医師による治療と並行してカウンセリングを受けることで、症状はより快方に向かっていくでしょう。

お近くの臨床心理士を探す際には、「一般社団法人 日本臨床心理士会」のウェブサイトが参考になると思います(無料電話相談も行っています)。

また、近年はオンラインカウンセリングも一般的になってきたため、自宅から受けたい人は一度検討してみるのもオススメです。具体的には「cotree(コトリー)」などがあります。

支援④その他の支援団体

公的機関や医療機関以外にも、パニック障害について相談できるところがあります。

例えば、「パニック障害 相談 NPO」「パニック障害 ピアサポート」などと検索すると、様々な団体が表示されると思います。

通いやすそうだったり、内容に興味がありそうだったりするところがあれば、問い合わせてみることをオススメします。

ただし、繰り返しになりますが、病院・医者での治療を続け、その上で支援団体を頼る、ということをオススメします。

制度⑤自立支援医療(精神通院医療)など、公的な制度

制度⑤自立支援医療(精神通院医療)など、公的な制度

自立支援医療(精神通院医療)は、パニック障害など、通院による精神医療を続ける必要がある人の通院医療費の自己負担を軽減するための公費負担医療制度です。(参考:厚生労働省 ※PDF「自立支援医療(精神通院医療)について」)

この制度を利用することで、医療費の自己負担額を3割から1割に軽減できます。

さらに、世帯収入や治療費によっては、1か月あたりの自己負担額にも上限が設けられます。

窓口は、お住まいの市区町村の障害者福祉を担当している課です。

気になる場合は問い合わせてみましょう(窓口がわからない場合は、総合窓口や代表電話に問い合わせてみましょう)。

通院にかかる費用を少しでも減らすことで、生活への負担が減り、「パニック障害と付き合いながらどう仕事をしていくか」という対処に動きやすくなるのではないでしょうか。

必ず利用できるとは言いませんが、「通院による治療を続ける必要がある状態の人」が対象者となっており、パニック障害の場合、利用対象者となることが多いです。

なお、「精神通院にかかる医療費」は1割になりますが、入院やカウンセリングなどは自立支援医療制度の対象ではないためご注意ください。

他にも、公的な制度には、障害者手帳による税金の減免、障害年金や生活保護による収入補填などがあります。

自治体に加えて前述した支援団体にも相談することで、「あなた」が利用できるサービスがわかると思いますので、積極的に確認してみることをオススメします。

なお、税金の減免や収入の補填は、次項「制度⑥休職、時差出勤、短時間勤務など、職場の制度」と組み合わせて利用できることもあります。

制度⑥休職、時差出勤、短時間勤務など、職場の制度

お勤め先によりますが、体調の悪い人や家庭の事情がある人向けに、休職、時差出勤や短時間勤務など、様々な勤務制度があります。

企業によって制度は少しずつ異なるので、パニック障害のある人は、まずは人事部門に勤務制度を確認し、使えるものはフル活用するとよいでしょう。

実際に利用しなくても、そういった制度が使えると知っているだけで安心できるはずです。

また、所属長の承認を得やすくするためにも、前章で述べたとおり、できるだけ前もって相談しておくとよいでしょう。

事前相談によって手続きがスムーズに進み、制度を利用するハードルが下がるかと思います。

参考として、休職制度を利用して治療に取り組む場合の流れの例には、下記のようなものがあります(途中で治療が終わって仕事に復帰することももちろんあります)。(参考:福田真也『働く人のこころのケア・ガイドブック 会社を休むときのQ&A』)

年次有給休暇の範囲で休む
  • 有給休暇の範囲で休暇を取得する(給与は満額支給される)。
病気休暇など会社の定める病気休暇制度を使う
  • お勤め先に「病気治療のための休暇制度(病気休暇制度)」がある場合、それを利用する。法的な制度ではないため、職場の就業規則によっては、制度自体が存在しない場合もある。また、給与の有無及び支給割合も職場によって異なる。
休職する
  • いわゆる「休職」に入る。有給休暇とは異なり、給与は支払われなくなるが、健康保険に加入していて条件を満たせば、正規、非正規を問わず1年6か月の間、健康保険組合から傷病手当金をもらえる。
休職期間を超えて、会社に在籍しつつ治療する
  • 傷病手当金の範囲を超えて休むと、会社からも健康保険組合からも、収入はなくなる。大企業などの場合は、少額の給付金が支給されることはある。

こうした制度の利用によって、短期的には「時短勤務による収入減」「人事考課・査定への影響」などの仕事上のデメリットがある(かもしれない)ことは否定しません。

ですが長期的に考えた場合、「健康」には、そうした短期のデメリットを上回るメリットがあるのではないでしょうか。

また、前項のように、収入や支払いを補填する公的な仕組みも存在します。

詳しい人や周りの人などにも相談しつつ、積極的な利用をご検討ください。

パニック障害の特性に向いている仕事・向いていないとされる
仕事

パニック障害の特性に向いている仕事・向いていないとされる仕事

パニック障害のある人からよく聞かれる質問に、「どういった仕事が向いているでしょうか」というものがあります。

以下、一般論としてオススメの仕事、オススメしない仕事をお伝えします。

ただしあくまで一般論です。

「実際のあなた」の仕事を考えるときには、下記も参考にしつつ、パニック障害・あなたのこと・職業事情などに詳しい人に相談するようにしましょう。

パニック障害の人は、症状や特性に鑑みて、以下の3つの特徴がある仕事を選ぶとよいでしょう。

  • 業務内容が定型的な仕事
  • 自分のペースでできる仕事
  • 在宅でできる仕事

「定型的な仕事」という観点では、事務職や経理職が向いています。

「自分のペースでできる仕事」という意味では、研究職や開発職もよいでしょう。

また、「在宅勤務が可能」という点では、各種フリーランスの仕事もオススメです。

具体的には、エンジニアなど、顧客や取引先とのやりとりが文字(メール・チャットなど)のみで済むものですと、働きやすいのではないかと思われます。

実際、パニック障害やうつ病がきっかけでフリーランスの仕事に転向する人は珍しくありません。

反対に、一般的にパニック障害の特性に向いていないとされる仕事の特徴として、以下を挙げることができます。

  • 異動の多い仕事
  • 勤務地が頻繁に変わる仕事
  • 勤務時間が固定されている仕事
  • 発作が重大事故に繋がる可能性のある仕事

「異動」や「転勤」などで通勤経路が変わると、生活習慣が変化したり、環境変化に伴うストレスを抱えやすくなるため、パニック発作につながると考えられます。

例えば、同じ銀行員でも、一般職なら先述した「定型的な仕事」という点でオススメできますが、総合職になると非定型業務や転勤が多くなるのであまりオススメできない、ということになります。

また、「勤務時間」については、発作が起こって遅刻せざるを得なくなるケースを考えると、それが固定されている仕事も向いていないかもしれません。

そのほか、症状が出てコントロールが効かなくなった場合のことを考えると、「大事故に繋がるような業務」として、作業車や大型車の運転なども避けた方がよいでしょう。

パニック障害の人が仕事探しをするときのポイント3選

最後に、パニック障害の人が仕事探しをするときのポイントをお伝えします。

転職などを考えているようでしたら、ぜひ参考にしてください。

仕事を続けるコツに関する項目でも述べたとおり、大切なのは、ご家族、ご友人、支援機関を適切に頼ることです。

その点に留意しながら、以下のポイントに気を配るようにすると、あなたが働きやすい職場見つかるかと思います。

ポイント①勤務時間が柔軟な職場を選ぶ

ポイント①勤務時間が柔軟な職場を選ぶ

1点目は、「勤務時間が柔軟な職場を選ぶ」ことです。

パニック障害は突然、症状が出ることが多いため、通勤を筆頭に、スケジュールどおりに行動できない場面があるかと思います。

そういったときのために、時差出勤や時短勤務など、勤務時間が柔軟な職場を選んでおくと安心です。

職場探しのときには、以下の2点に注目してみるとよいでしょう。

  • メンタルヘルスに関する研修制度が充実しているかどうか
  • 福利厚生制度が整備されているかどうか

メンタルヘルスに関する研修制度や、福利厚生制度の整備に力を入れている職場であれば、精神疾患があっても配慮を受けやすいはずです。

上記の2点を意識しながら、勤務時間の融通が利きやすい職場を選ぶようにしましょう。

ポイント②雇用枠の変更を検討する

2点目は、「雇用枠の変更を検討する」です。

働き方を病気や障害という観点で考えたとき、求人(雇用枠)には、「障害者枠」と「一般枠」の2種類があるのです。

「障害者枠」というのは、文字どおり、(ある一定の)病気や障害がある人のための雇用制度で、職場や業務内容について、病気・障害に対する配慮がなされます。

「一般枠」というのは、「障害者枠」ではない雇用のことです。

あなたが現在、一般枠で就労しているのなら、障害者枠へ雇用枠を変更することで、業務量や業務内容など、パニック障害に配慮した働き方が提案されるようになります。

残業が発生しない(または少ない)、定型業務が多いなど、症状が悪化しないように配慮を受けられることで、無理なく働き続けられる可能性が高くなるでしょう。

しかし、一般枠と比較すると、給与やその後のキャリアにおける選択肢など、待遇にある程度の差が生じる可能性もあります。

また、障害者枠で就労する場合、一般的には障害者手帳が必要になる点にもご注意ください。

雇用枠や障害者手帳取得の検討については、前に述べた支援機関などに相談するのがオススメです。

関連して、障害を開示して働く「オープン就労」と非開示にして働く「クローズ就労」、それぞれのメリットとデメリットなどを知りたい人は、以下のコラムをご覧ください。

ポイント③就労移行支援、就労定着支援を受ける

ポイント③就労移行支援、就労定着支援を受ける

最後のポイントは、先ほども紹介しましたが「就労移行支援、就労定着支援を受ける」です。

障害者職業総合センターが発表した統計結果によると、パニック障害を含む精神疾患のある人の就職後1年時点の職場定着率は49.3%となっています。

つまり、約半数の人が就職から1年以内に離職している、ということです。

そのため「職場定着」をどうするかが重要であり、これには就労移行支援事業所などで行われる「定着支援」が有効なのです。

同調査によれば、「定着支援」を受けた人たちの1年後の職場定着率が66.4%に対し、受けなかった人たちの職場定着率は42.8%と、20%以上もの差が出ています。(出典:障害者職業総合センター※PDF「障害者の就職状況等に関する調査研究」)

就労移行支援事業所で、就職先の紹介などの職場探しだけでなく、その後の職場定着をサポートを受けることで、より長く働き続けることができるかと思います。

就労移行支援については、下記のコラムをご覧ください。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、うつ病や発達障害などの人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

新宿・横浜・大阪に校舎があり、通える範囲にお住まいであれば、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

パニック障害の概要・症状・治療法

この章では、改めてパニック障害の概要・症状・治療法について紹介します。すでにご存知かもしれませんが、これまでに紹介した内容の理解も深まると思いますので、ぜひご覧ください。(参考:厚生労働省「パニック障害・不安障害」、福西勇夫『ウルトラ図解 不安障害・パニック』)

①パニック障害の概要

①パニック障害の概要

パニック障害とは、理由のない突発的な強い不安・恐怖とともに、動悸や発汗、呼吸困難といった「パニック発作」などが生じる精神疾患で、不安障害のひとつに数えられます。

発症には、身体的、心理的、および社会的要因が混在しているため、原因はまだ十分に解明されていません。

近年では神経伝達物質を介する脳機能の異常が原因ではないか、という節が有力になってきています。

発症後の経過としては、病状が安定している「寛解(かんかい)」の状態と、病状が悪化する「増悪(ぞうあく)」の状態を繰り返す「慢性経過」が一般的です。

患者の年齢分布は18歳~60歳と幅広く、アメリカで行われた大規模な調査(National Comorbidity Survey)によると、パニック障害は女性に多く、その数は男性の2.5倍という結果が出ています。

また、パニック障害患者の50~65%は、生涯のいつの時点かに「うつ病」を併発するとされています。

②パニック障害の3つの症状

パニック障害の症状は、主に「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」の3つに分けることができます。

まず、「パニック発作」の症状は次のとおりです。

  • 強い不安感
  • 強い恐怖感
  • 激しい動悸
  • 呼吸困難
  • 発汗
  • 手足の震え
  • 胸や腹部の痛み

パニック発作では、上記の症状が「理由もなく突然に襲ってくる」点に特徴があります。

次に、「予期不安」とは、「パニック発作がまた起こるかもしれない」と予想することで生じる不安です。

予期不安が強くなると、パニック発作を起こすかもしれない場所や状況を避ける「回避行動」を取るようになります。

最後に、「広場恐怖」とは、パニック発作が起こったときに「逃れられない場所」や「助けを得られない状況」を過度に恐れて避ける症状のことです。

広場恐怖は、人によって「必ず生じる」というものではありません。

③パニック障害の治療法

③パニック障害の治療法

パニック障害の治療法は、薬物療法と精神療法に分けられます。

パニック障害では、不安がさらなる不安を引き起こして悪循環を招くことが多いです。

そのため、「抗うつ薬」と「抗不安薬」を用いた薬物療法によって、パニック発作を抑えることが先決です。

とりわけ、「SSRI」という抗うつ薬は副作用が少なく、有効性も高いとされているため、SSRIを基本として、抗不安薬を併用するのが一般的とされています。

精神療法は、こうした薬の服用と並行して行われます。

精神療法には、パニック発作や広場恐怖のきっかけになる認知(思考やイメージ)の癖を修正する「認知行動療法」や、不安を感じる状況に身を置いて徐々に慣らしていく「暴露療法(エクスポージャー)」などがあります。

パニック障害を改善するためには、休養だけではなく治療が必要

パニック障害を改善するためには、休養だけではなく治療が必要

パニック障害は、残念ながら「ただ休養を取っていれば治る」というものではありません。

原則的には専門医による治療が必要になります。

また、「完治」については、薬の服用がなくとも症状が出なくなれば「完治」と言えるかもしれませんが、パニック障害は再発する可能性があります。

何をもって「完全に治った」と診断するかは、専門家の間でも意見が分かれるところです。

休養を取って症状がなくなったとしても、焦燥感や不安を感じやすい環境(例えば人混みや満員電車など)に長時間いることで、パニック発作がぶり返すことがあるため、日頃の再発予防が必要になります。

いずれにせよ、診断や治療については自己判断をせずに、必ずかかりつけの先生の診断を仰ぐようにしましょう。

もし、「医師の診断にどうしても納得できない」「処方された薬を服用することに抵抗がある」という場合は、セカンドオピニオンを求めて別の病院を受診するのもひとつの手段です。

ただし、一般論として、セカンドオピニオンでも治療の方針があまり変わらないようなら、多少納得できない面があったとしても、元の方針に従うことをオススメします。

また、代替医療や民間療法ではなく、「病院」の治療を受けるようにしましょう。

まとめ:パニック障害の仕事に関する悩みは、周囲の人へ相談することが大切です

パニック障害の仕事に関する悩みは、周囲の人へ相談することが大切です

パニック障害の人の仕事の困難から、対処法、利用できる支援、職場探しのポイントまでを解説しました。

あなたが実践できそうなことはありましたか?

パニック障害は、不安をできるだけ軽減するよう、公的な医療制度や支援機関、家族や友人、同僚など、周囲に助けを求めることが特に大切になります。

情報共有をして、パニック発作に襲われたときなどに助けてもらえる人を少しでも多くすることが安心につながるはずです。

ぜひ、一人で抱え込まずに、周りの人や専門家に相談するようにしましょう。

このコラムが、パニック障害で仕事に悩んでいるあなたの助けになれば幸いです。

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

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翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

執筆西村二架

にしむら・にか。精神保健福祉士。
1992年生まれ。関西学院大学文学部卒業後に京都医健専門学校で学び、2019年に国家資格・精神保健福祉士資格を取得。2018年8月から、キズキ共育塾(不登校・中退・発達障害・社会人などのための個別指導塾)で講師として勤務。現在は主任講師として国語・数学・英語・小論文・面接の学習支援およびメンタル支援を担当。また、うつや発達障害の方々のための就労移行支援事業所キズキビジネスカレッジでも英語などを教える。2023年現在、TOEIC890点を所持。

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→

よくある質問(1)

パニック障害の自分が利用できる支援機関・制度を知りたいです。

代表的なものとして、次の6点が挙げられます。「就労移行支援事業所」「精神保健福祉センター」「臨床心理士・公認心理師(カウンセリング)」「ピアサポート団体」「自立支援医療(精神通院医療)などの公的制度」「休職、時差出勤、短時間勤務など、職場の制度」。詳細はこちらをご覧ください。

よくある質問(2)

パニック障害の自分が仕事探しをするときの注意点を知りたいです。

一般論としては、次の3点が考えられます。「勤務時間が柔軟な職場を選ぶ」「雇用枠の変更を検討する」「就労移行支援、就労定着支援を受ける」。詳細はこちらをご覧ください。

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