うつでの退職前にすべき9つのこと 退職するまでの手続きや退職後にすべきことを解説 | キズキビジネスカレッジ  

うつでの退職前にすべき9つのこと 退職するまでの手続きや退職後にすべきことを解説

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジです。

うつでの退職をご検討中のあなたは、以下のような悩みを抱えていませんか?

  • うつでの退職前にすべきこと、しておくとよいことがわからない
  • 退職する際の手続きを詳しく知りたい
  • うつで退職した後に何から手を付けていいかわからない

うつになった理由が職場にあるときなど、退職前にすべきことは場合によって異なります。

そこで本コラムでは、うつで退職する際の主な理由を事例付きで紹介した上で、退職前後にすべきことを徹底解説いたします。

3,500人規模の職場で実際に人事を担当していた私が、退職時の具体的な手続きなどもお教えします。

うつでお仕事を辞めたいと思っている方はぜひ一度、読んでみてください。

うつでの退職前にすべき9つのこと

それでは、うつでの退職前には何をすべきなのでしょうか。

最も重要なのは、「すぐに結論を出さない」ことです。

うつにかかっているときは、思考力や判断力が鈍っています。

そのため、すぐに退職届を出すなどの思い切った行動を取りがちです。

しかし、配置転換や休職によって改善する場合も多く、すぐ結論を出すのは得策とは言えません。

これから説明する8つのことを確認した上で、ひとりで抱え込まずに周囲を頼るという姿勢を持つようにしましょう。(参考:佐藤隆『職場のメンタルヘルス実践ガイド』、川上憲人『基礎からはじめる職場のメンタルヘルス』

①まずは医師に相談する

①まずは医師に相談する

退職する前に「まずは医師に相談する」ようにしましょう。

もし、よく言われる「うつのような症状」があるにも関わらず、「自分はうつ病かもしれない」と自己判断に止めている場合は、まず心療内科を受診してみましょう。

自分の状態を正直に伝えた上で、定期通院をしながら治療法を模索することを優先してください。

心療内科へ通うことに抵抗があるという方は、ひとまず勤め先の「産業医面談」を受けてみるとよいでしょう。(参考:厚生労働省『産業医について』)

産業医とは、労働者の健康管理について助言や指導を行う医師のことです。

労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者が在籍する事業所に1人以上、3,000人超の事業所では2人以上の産業医が配置されています。

上記の条件を満たしていれば、あなたの職場にも産業医がいるはずですので、一度確認してみてください。

人によっては、「面談の結果が人事査定に影響するのではないか」と心配されるかもしれませんが、産業医は中立的な立場から診断を行いますので、ご安心ください。

もし産業医が職場の上司から説明を求められとしても、個人情報保護の観点から、共有してよいかを原則ご本人に確認することになります。

料金なども発生しませんので、産業医面談を希望するのもひとつの手段でしょう。

②家族に連絡・相談する

「家族に連絡・相談する」ことも大切です。

仮に退職するにしても、配偶者やご両親に事情を伝えずに辞めてしまうと、話すタイミングを逸して新たなストレスを抱え込んだり、口論になって関係悪化を招いたりする可能性があります。

実際に私の知人で、手続きをした後に家族へ事情を伝えたところ、家族から猛反対にあい、退職を撤回することになって、疲れやストレスを増やした人がいました。

このような事態を避けるだけでなく、大切なご家族に無用な不安や心配を掛けないためにも、退職前には必ず連絡・相談するようにしましょう。

③就労支援機関に相談する

③就労支援機関に相談する

3つ目は「就労支援機関に相談する」です。

うつ病の診断が下り、その原因があなたの仕事の進め方や体調管理の方法にある場合、就労支援機関に相談することで適切なアドバイスや指導を受けられます。

また、近年うつ病になったことがきっかけで病院を受診したところ、発達障害であることが明らかになったというケースが増えています。

就労支援機関は、こうした発達障害のある人を対象とするフォローを行っています。

中には、お勤め先とあなたの間に入って、業務量・勤務時間などの労働環境の調整をしているところもありますので、活用するとよいでしょう。

障害者総合支援法に基づいて、福祉サービスを提供している「就労移行支援事業所」などでは、日頃の定期面談から障害者手帳を取得すべきかのアドバイス、仕事に必要な専門的スキルの指導まで、最低0円からサービスを受けられますのでオススメです。

ただし、就労移行支援を受けるためには「専門医による診断書」が必要になります。

就労移行支援の条件やサービス内容、または発達障害の詳細について興味を持たれた方は、ぜひ以下のコラムもご覧ください。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、うつ病や発達障害などの人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

新宿・横浜・大阪に校舎があり、通える範囲にお住まいであれば、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

④就業契約や雇用条件の確認

4つ目は、就業規則や雇用条件の確認です。

それらの内容と現在の労働状況が異なる(ことがうつ病につながっていると思われる)場合、労働者は雇用者に対して、約束通りにするように要求できます。

また、そのことを理由にすぐに契約を解除することも認められています(労働基準法第 15 条)。(参考:厚生労働省「知って役立つ労働法~働くときに必要な基礎知識~」

例えば、次のようなことが考えられます。

契約条件よりも労働時間が恒常的に長い

契約時に示された労働環境が、実際の労働環境と異なる

「契約通りの内容にする」以外にも、配置転換の申請や相談、短時間勤務の申請、休職といった具体的な選択肢も検討できるようになります。

⑤配置転換を申請・相談する

④配置転換を申請・相談する

退職前に、お勤め先に「配置転換を申請・相談する」ようにしましょう。

先述したように、抑うつ症状に悩んでいる人でも、職場環境への不適応などに原因がある場合は、配置転換や異動で軽快する場合があります。

まずは直属の上長や人事部の担当者に、面談のアポイントメントを取ってみてください。

人事を担当していた経験から言うと、配置転換によってミスマッチが解消されてパフォーマンスが上がるのであれば、可能な限り実現に向けて動くというのが通常の判断です。

ひとりでは抵抗があるという方は、前に挙げた産業医面談を介してでも問題ありませんので、ひとまず配置転換の相談・申請をしてみるとよいでしょう。

⑥短時間勤務を申請する

「短時間勤務を申請する」というのも、ぜひ退職前に試してみてください。

これは、特に長時間の残業が続いている人に効果的です。

というのも、うつの原因が過労によるものであった場合、回復のタイミングを逃しているだけで、業務時間を減らせば快方に向かうケースがあるからです。

ただし、短時間勤務の適用の条件は、お勤め先の就業規則によって異なります。

規則をご自身で調べるだけでなく、人事部や総務部の担当者にも尋ねてみましょう。

⑦休職・転職を検討する

⑦休職を検討する

7つ目は「休職を検討する」です。

休職には単にうつ病の治療を進めるだけでなく、退職後すみやかに転職するための準備をするという目的もあります。

休職制度は、「どの企業・団体にも必ずある」ものではありません。各企業・団体が、就業規則において独自に定める制度です。

まずは、お勤め先に休職制度があるかどうかを確認しましょう。ある場合は、休職期間や給与支給の有無などを確認しましょう。

そして、休職する際には原則として診断書が必要です。検討する際は、かかりつけ医に相談するようにしましょう。

診断書の発行までには、初診から数回の診察を経なくてはならないことも多いため、休職も視野に入れていることを医師に伝えるとよいでしょう。

この項目の冒頭でも述べましたが、かかりつけ医など周囲の人を適切に頼りつつ検討するという原則に留意することが大切です。

また、転職を検討するという選択肢もあります。

転職のメリットとしては、新たな環境で再スタートができる点があります。

職場の環境や文化がストレスとなっている場合は、「自分に合っている新たな環境」に移ることで、これまでよりも働きやすくなるでしょう。

転職についても視野に入れて考えている方は、ぜひ以下のコラムもご覧ください。

この項目の冒頭でも述べましたが、かかりつけ医など周囲の人を適切に頼りつつ検討するという原則に留意することが大切です。

⑧労災保険の申請をする

長時間の残業やハラスメントなど、うつになった明確な原因が職場にあると判断される場合は、「労災保険の申請をする」ようにしましょう。

長時間の残業やハラスメントなど、うつになった明確な原因が職場にあると判断される場合は、「労災保険の申請をする」ようにしましょう。(参考:厚生労働省『労働災害が発生したとき』、労働問題弁護士ナビ『うつ病の労災が認められにくい理由と申請手続きの手順・流れを詳しく解説』、厚生労働省『精神障害の労災補償状況』)

労災とは、労働によって生じる怪我や疾病といった「労働災害」の略称です。

勤め先に経緯を説明した上で、労働災害に相当する条件を満たした場合には、所定書式を記載して労働基準監督署へ提出します。

労災と認定されれば、労災保険による治療費などの補償を受けることが可能です。

ただし、一般論として、うつ病などの精神障害による労災認定は非常に難しいと言われています。

というのも、精神障害の原因を特定することは難しく、「私生活を含む様々な要因が複合的に絡みあって発症するケース」が多いからです。

また、発病前の約6月間に、業務による極度の心理的負荷が認められるなど、原因が職場にあることを明確化するための条件設定が厳しいというのが現状です。

しかし、認定されるかどうかに関わらず、そのときの状況次第では申請することも可能です。

一度、管轄の部署に相談してみるとよいでしょう。

⑨貯金などの経済面を確認する

退職前に欠かさずしておきたいことが、「貯金などの経済面を確認する」です。

うつによる退職後、経済的な余裕がない場合は、それが不安や焦燥感につながって、うつ病を悪化させる可能性があります。

また、転職活動をする際に、なかなか条件にあった就職先が見つからず、長期戦になる場合も見越して貯金を確認することが大切です。

特に、ご家族をお持ちの方は、配偶者やご両親と一緒に、貯蓄についての話し合いを持つようにしましょう。

ただし、「貯金がなければ退職できない」というわけではありません。

また、この経済面の確認は、退職時点のみに留まりません。

退職金の支給や、後述する失業保険の給付金、人によっては労働災害に伴う給付も考慮できます。

加えて、休職中の人の中には、労災給付金とは別に、お勤め先の健康保険組合から傷病手当金の申請をすることが可能な人もいます。

これら補助は、職場の制度によって有無や条件が異なりますので、ぜひ一度お勤め先に確認してみてください。

うつで退職するまでの5つの手続き

この項目では、これまで紹介してきた退職前に試すべきことを終えて、いよいよ退職をご決断された方が行う一般的な手続きを説明いたします。

お勤め先によっては、例えば申請ルートなどが異なることもあると思いますので、具体的には人事・総務担当者への確認も行いましょう。

ただし、退職前と同様に、実際的な退職手続きに入る前にも、不安を感じることなどがあったら必ずお医者様に相談してください。

いざ退職をする段階になって、迷いが生じ、調子を崩す方も中にはいます。

周囲の助言を仰ぎながら判断した上で、慎重に手続きを進めるようにしましょう。

①職場内のストレス要因の記録

最初に行うことは、職場内でのストレス要因の記録をすることです。

職場内でのストレス要因を記録することにより、退職の必要性について、合理的に検討することができます。

  • 長時間の仕事がストレスなのか
  • 給与面で自分の成果に見合っていなくてストレスなのか
  • それとも、職場で自分の意見が通らないことや相談が上手くできないことがストレスなのか

ご自身のストレスの要因を確認しておきましょう。

これは次の項目にもあるように、上司に退職の旨を伝える際の準備にもなります。また、次に転職先の候補を探す・検討する際にも役立ちます。

自分がどのくらいストレスレベルにあるのかを厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(標準版:57項目)フィードバックプログラム」に基づいて作成されたセルフチェックもあります。よかったら参考にしてみてください。

②上司に退職の旨を伝える

②上司に退職の旨を伝える

退職の決心がついたら、最初は直属の上司にその旨を伝えましょう。

休職中の方はメールでも構いませんので、まずは面談のアポイントメントを取ってください。

一般的には、同僚のいない静かな会議室などで話し合いの場を持つことになります。

もし、うつになった原因が上司によるハラスメントなどの人間関係にあるときは、一対一での話し合いは避けた方がよいでしょう(また、そうでなくても、直接の面談以外に電話・メール・オンラインチャットツールなどを通じたやりとりも考えられます)。

不安な方は、人事担当者や、先述した就労支援機関のように、仲裁に入る第三者を付けるようにしてください。

また、場合によっては、ICレコーダーなどの録音機器も検討する必要があります。

ハラスメントなどは証拠を押さえるのが難しいため、万全を期して臨みましょう。

退職理由を聞かれたり、引き留めにあったりする可能性はありますが、通常は指定された退職届の提出を求められることになります。

人によっては後日、係長や主任の同席のもと、業務の引継ぎや有給休暇の消化スケジュールなどについて話されることになりますが、基本的には退職届を提出して受理された時点で退職が確定します。

③有給休暇を消化する

②有給休暇を消化する

退職届が受理され引継ぎが完了すれば、あとは有給休暇の消化に入るのが通常の流れです。

とはいえ、うつの症状次第では、引継ぎもままならない場合があるかと思います。

申し訳なさを感じる人もいるかもしれませんが、欠員による調整は管理職や人事担当者の仕事でもあるので、あまり気負わずにいることが大切です。

体調の回復を優先して、残りの有給休暇を消化するようにしましょう。

また、有給休暇の消化に入る前には、退職手続きのやり取りをしている人事担当者の連絡先を忘れずにメモしておいてください。

在職中は、主に業務用メールでのやり取りが中心になるかと思いますが、有給消化が始まってからは通信手段がご自宅のメールや電話でのやり取りになります。

退職後でも、後述する社会保険の切り替え手続きなど、場合によっては必要書類の発行を依頼する必要があるため、人事担当者の連絡先は控えておきましょう。

④社会保険の手続きの準備をする

③社会保険の手続きの準備をする

有給消化の時期から退職日までの間は、人事担当者とのやり取りが増え、健康保険や厚生年金といった社会保険の手続きが始まります。

基本的には人事担当者からの案内を待つことになりますが、職場によっては退職に伴う保険資格の喪失までしか説明されず、退職後の社会保険については詳しく教えてもらえない場合もあるでしょう。

そうした状況に備えて、ある程度はご自身でリサーチして準備する必要があります。

下記のいずれかになると思いますが、それぞれの保険料や給付内容を天秤に掛けて、どれが良いかを最終的に判断するのはあなたです。

  • 退職後の健康保険は国民健康保険なのか
  • 一定の条件のもとで、勤め先の健康保険を任意継続するのか
  • 家族の扶養に入るのか

退職後に国民健康保険に加入した場合の保険料など、調べられることは前もって市区町村町役場の窓口に尋ねるなど、手続きの準備を進めるようにしましょう。

ただし、お勤め先での勤務日数や労働時間によっては、「元からご家族の扶養に入っている」「既に国民健康保険に加入している」という方もいます。

そのようなケースに当てはまる方は、手続きを行う必要がない場合もあります。

⑤離職票の交付を依頼する

④離職票の交付を依頼する

退職手続きの際に依頼したいのが「離職票の交付」です。

離職票とは、雇用保険の失業給付(基本手当)を受給する際に必要な書類です。

退職者の求めに応じ、お勤め先がハローワークの所定書式に則って、作成・交付するものになります。(参考:ハローワーク『離職票とは?|ハローワーク利用案内』、ハローワーク『基本手当について-ハローワークインターネットサービス』)

退職してから10日前後までに、交付される離職票を持って、あなたの居住地を管轄するハローワークにて手続きを進めると、失業給付が受給されます。

ただし、「退職前の2年間で雇用保険の加入期間が12ヶ月以上あること」など、相当の条件を満たさない場合は受給対象になりませんので、注意が必要です。

失業給付や離職票の交付についても、前もって職場や管轄のハローワークに問い合わせて確認しておくのがよいでしょう。

うつでの退職後にすべき6つのこと

それでは、退職が無事に完了した後にすべきことには、どのようなものがあるのでしょうか?

この章では6つに分けて紹介いたします。(参考:亀田高志『改訂版 人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援』、五十嵐良雄『うつのリワークプログラム 職場復帰を支え、再休職を防ぐ!』

①治療に専念する

うつで退職された場合には、まずは「治療に専念する」ようにしてください。

仮にうつがおおむね治っていたとしても、退職前後の手続きや人間関係で消耗し、一種の燃え尽き症候群のようになる場合があります。

そのため、退職したからといって「思い切った行動」をしばらくは控え、体調を見て慎重に行動するよう心掛けましょう。

特に薬を服用している方は、気を抜いて怠薬したり、服用を中断したりすることのないよう注意してください。

医師はあなたの体調を判断して薬を処方していますので、自己判断で服用をやめるのは禁物です。

それゆえ退職後も医師との定期面談を欠かさないようにし、周囲の助力を仰ぎながら治療に専念しましょう。

医師と方針が合わないなと思ったときは、「通院そのものを止める」のではなく、「別の病院を探す(セカンドオピニオンを求める)」ようにしましょう。

②健康保険・年金の切り替え手続きをする

退職後は、できるだけ早く「健康保険・年金の切り替え手続き」をしましょう(先述の通り、退職前の保険を継続する、家族の扶養に入るという場合もあります)。

国民健康保険へ加入する場合も、国民年金へ切り替える場合も、窓口は基本的に市町村役場になります。

手続きの期間は原則、退職日の翌日から14日以内です。

その際には、年金手帳や職場で発行される退職証明書など、退職日が明記された書類を持参する必要があります。

③失業給付の受給手続きをする

③失業給付の受給手続きをする

職場から離職票が交付されたら、管轄のハローワークで「失業給付の受給手続き」をしましょう。(参考:ハローワーク『雇用保険手続きのご案内-ハローワークインターネットサービス』)

失業給付の申請自体に期限はありませんが、給付期間が1年間になりますので、できるだけ早く手続きをした方がよいでしょう。

手続きがあまりにも遅れた場合には、給付金を受給できない可能性があります。

退職事由が自己都合か会社都合かなど、条件によっては受給までに数ヶ月の待機期間が生じる点にも注意してください。

ただし、失業給付はあくまでも求職中の方に支給される手当です。

うつ病などの疾病によって求職活動ができない場合は、一定の条件のもとで受給期間を延長することができます。

そうした点についても手続きを行う際に、管轄のハローワークの担当者に尋ねておくとよいでしょう。

④就労支援機関に通所する

治療とともに退職後にオススメしたいことのひとつに、「就労支援機関への通所」があります。

先述した就労移行支援事業所など、うつによる退職後の仕事復帰や転職に向けたサービスを提供している支援機関があります。

まずは治療に専念することが先決ですが、その後に生活リズムを整えたり、通勤していたころの感覚を取り戻したりする意味でも、就労支援機関への通所は有効です。

面接の練習や就職先の紹介といった就労面でのフォローだけでなく、メンタル面でのケアや定期面談なども行っています。

興味をお持ちの方は一度、無料相談をしてみることをオススメします。

就労支援機関の詳細は、下記コラムをご覧ください。

⑤日常生活の調整

日常生活の調整ができているかを確認しておきましょう。特に就寝と起床の時間を揃えることをおすすめします(参考:安保徹『疲れない体をつくる免疫力』

睡眠のリズムが安定してくると、生活習慣もおのずと安定します。日常生活のリズムが安定するほど、心理的にも落ち着くことができます。

また安定した日常生活のリズムを調整するには、太陽と共に生活をすることで自然にリズムを戻せるため朝は太陽の光を浴びることをおすすめします。

⑥再就職・転職の計画を立てる

再就職・転職の計画を立てる上で、「うつ病から回復しているかを確認すること」が大切です。

自分自身の回復状況を見極めた上で準備ができると、「再就職・転職からのうつ病の再発・再休職」を避けやすくなるでしょう。

計画をする上で、なるべく一人だけで進めず、専門機関や主治医の方と相談することをおすすめします。

再就職・転職への不安を解消していくために大切なのは、「今後の見通しを持つこと」です。「休んでも、きちんと回復すればまた働けるんだ」とわかれば、安心材料となります。

休職から復職までのプロセスを知り、不安を払拭しましょう。復帰計画を立てることについて詳細については、以下のコラムもご覧ください。

うつ病で退職した人が受けられる経済的支援制度12選

うつ病で働けない人が受けられる経済的支援制度を紹介します。

うつ病で働けない人が直面する現実的な問題として、「生活費や治療費をどう工面すればいいのか」という悩みがあると思います。

うつ病で働けない人が受けられる経済的支援(お金を受給できる支援と、各種支払いが減免できる支援)は様々な支援があり支援を受けつつ、治療・休養に専念することで冷静に次の一歩を考えやすくなります。

そんな一歩を踏み出せるような支援制度は以下の通りです。

  • 支援制度①傷病手当金
  • 支援制度②自立支援医療制度
  • 支援制度③労災保険(労働が原因の疾病の場合)
  • 支援制度④失業保険(失業手当、雇用保険給付)
  • 支援制度⑤障害者手帳
  • 支援制度⑥障害年金
  • 支援制度⑦特別障害者手当
  • 支援制度⑧特別障害給付金制度
  • 支援制度⑨心身障害者医療費助成制度
  • 支援制度⑩生活困窮者自立支援制度
  • 支援制度⑪生活保護
  • 支援制度⑫生活福祉資金貸付制度

それぞれの支援制度の詳細は以下のコラムをご覧ください。

うつで退職する際のよくあるQ&A3選

最後に、この章では、うつによる退職に伴ってよく寄せられる質問を、Q&A形式で紹介いたします。

退職事由の記載法から、退職後に転職活動をする際の対処など、細かな点を3つ挙げましたので、順に見ていきましょう。

Q1.うつで退職するときの退職事由はどう書くべき?

①うつで退職するときの退職事由はどう書くべき?

基本的にうつのような私傷病が原因の際は、退職事由は、「自己都合」や「療養に専念するため」という表現になります。

ただし、ハラスメントによるうつ病が決め手となった場合など、お勤め先に原因があるときには「会社都合」とするのが一般的です。

こういったときに職場とのあいだで解釈の相違があると、場合によっては労務紛争に発展する可能性があります。

そうした煩わしい事態を避けるために、「自己都合」として届け出を提出する方がいます。

しかし、先述した失業給付の受給の際に、「会社都合」かどうかで実際に給付金が支給されるまでの待機期間が変わるなど、退職後まで影響することがありますので注意が必要です。

もし判断に迷う場合は、前に述べた就労支援機関などに相談するとよいでしょう。

また、お勤め先によっては、慣例的に用いられている退職事由の表現もありますので、人事担当者に事情を伝えて相談するのもひとつの手段です。

Q2.転職時の、退職理由や休職期間の伝え方

転職活動をする際に、「うつで退職した」「うつのために休職していた」などを自発的に伝える義務はありません。

しかし、質問がそうした内容に及び、話さざるを得ない状況になった場合には、嘘はつかない方がよいでしょう。

うつになった明確な原因が職場にあるなどの場合には、「前向きな働きかけをしたにも関わらず改善されなかったため、転職を念頭に置いて退職をした」という説得力のある説明ができることもあります。

直接的にうつに関わることでもそうでなくても、「何を聞かれたら、どのように答えるか」については、ハローワークや就労支援機関など、面接や履歴書の書き方を指導してもらう際にアドバイスをもらうことで、上手な受け答えができるようになります。

Q3.うつからの復帰にどれくらいかかるのか見通しを知りたい

③うつからの復帰にどれくらいかかるのか見通しを知りたい

厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス不調によって休養した労働者の職場復帰にかかる平均日数は、「107日(約3.5ヶ月)」という結果が出ています。
(参考:厚生労働省『平成28年度労災疾病臨床研究事業費補助金研究報告書』)

しかし、これはあくまでも平均日数です。

うつからの復帰にどれくらいの時間がかかるのかは人によって異なります。

平均日数を越えたとしてもあまり気にせず、焦らないで休養に専念しましょう。

というのも、うつ病などのメンタル疾患で休職した人の再休職率は、「5年で47.1%」と約半数にのぼります。

2度目の休職では、復帰までに「平均157日」かかるなど、復職までにより時間がかかるため、焦らず慎重に治療を進めるという姿勢が重要です。

復帰にどのくらいの時間が必要か気になる方も多いかと思いますが、平均値に惑わされず、医師の診断に従いながら復職準備に入るようにしてください。

うつで退職する主な理由とは?4つの事例

はじめに、うつで退職する際の主な理由を確認してみましょう。

うつで退職する際には、退職に至った理由をある程度考えておくことが大切です。

これは単に退職願に書くべき退職事由を決めるためだけでなく、仕事復帰や転職をするときにどのような職場を選ぶべきかの指針にもなるからです。

また、先述したようにうつになった理由が職場にあるときなど、状況次第で行うべき手続きが異なってきます。

この章では代表的な下記の理由を、事例つきで4つ紹介いたします。(参考:厚生労働省『令和元年版過労死等防止対策白書』、松﨑博光『新版 マジメすぎて、苦しい人たち:私も、適応障害かもしれない…』)

理由①長時間の残業

理由①長時間の残業

理由の1つ目は「長時間の残業」です。

2015年の大手広告会社電通社員の過労自殺事件以来、過労によるうつや自殺が一層問題視されるようになりました。

こうした状況を受けて、2016年4月、国は長時間労働が行われている事業場への監督指導の対象を、従来の月100時間の時間外労働から月80時間へと拡大しました。

さらに、過労死を発生させた事業場には、うつなどの疾患の原因究明や再発防止策の徹底指導を命じるなど、取り組みを強化しています。

とはいえ、長時間の残業による精神障害の発病は後を絶ちません。

過労死など、仕事がもとで発生した精神障害による「労働災害(負傷・疾病・障害・死亡)」の民間企業での認定件数は、2017年の506件をピークに依然横ばい傾向が続いています。
(出典:厚生労働省『令和元年版過労死等防止対策白書』)

過労死など、仕事がもとで発生した精神障害による「労働災害(負傷・疾病・障害・死亡)」の民間企業での認定件数は、2017年の506件をピークに依然横ばい傾向が続いています。

しかし、上述したデータはあくまでも労働災害として「公に」認められたものだけです。

長時間の残業など、過労が原因でうつ病にかかった人の総数はこれよりも遥かに多いと考えられ、過労死に至る前に、自分の身を守るために退職する人も多数いるとされています。

実際、私の以前の職場でも、長時間残業が原因でうつ病にかかり、休職の末に退職へ至った方が少なからずいました。

過労が原因でうつ病になる場合、課される業務量が単純に多いということもあります。

その場合、先述したように、時間外労働が一定時間を超えると事業場としての対処が必要になるため、上司による調整が入ることが多いと思われます。

ですが、中にはそうした調整で上司の手を煩わせることを避けるあまり、「家に仕事を持ち帰って自主的に勤怠を付けない」という、適切でない対応をする人もいます。

こうした事例では、実際にはサービス残業をしていて疲労が蓄積しているにも関わらず、本人としては「家でやっているのだから、それほど疲れは溜まっていないはずだ」と勘違いして、過労状態になることがあります。

そのため、数値やシステム上に表れる労働時間以外でも、消耗する要因がないかを考えることが大切です。

理由②職場環境が合わない

理由②職場環境が合わない

理由の2点目は「職場環境が合わない」というものです。

これは、新卒の会社員や転職して間もない若手の人、異動したばかりの中堅の人などによく見られる理由です。

就職前の職場イメージとの間でミスマッチが起こったり、思ったような業務を任されなかったりすることが、うつ症状を招く原因になります。

ただし、上記のようなケースは、「適応障害」の可能性も考えられます。

適応障害とは、職場環境の変化に対する不適応といったストレス因子が原因で、日常生活や対人関係に支障が出る疾患です。

世界保健機関の診断ガイドライン(ICD-10)によれば、「ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」と定義されます。

適応障害は、明確なストレス因子があるという点でうつ病とは区別されますが、実際にはうつ病と誤診されることが多いと言われる疾患です。

職場環境への不適応によって抑うつ症状が起こった場合、もしそれが診断によって適応障害であることがわかれば、配置転換や他部署への異動などで解消するケースがほとんどです。

しかし、勤め先がそうした対応を行わないことで退職を決断し、症状が軽快してから転職活動を始めるというのが典型的な例として挙げられます。

なお、適応障害については別のコラムに詳細にまとめてありますので、興味のある方は併せてご参照ください。

理由③ハラスメントなどの人間関係

理由③ハラスメントなどの人間関係

「ハラスメントなどの人間関係」がうつの要因となり、退職理由になることも多いです。

ハラスメントとは、嫌がらせやいじめなど、相手を傷つけたり精神的苦痛を与えたりする行為を言います。

代表的なものとして、地位や権力を行使して圧力をかけるパワーハラスメントや、性的な嫌がらせをするセクシャルハラスメントなどがあります。

こうしたハラスメントは、先に挙げた労働災害認定事案の中で、精神障害に至った具体的出来事として常に上位に挙がるものです。

特に女性の場合は、以下のアンケート調査からも分かる通り、セクシャルハラスメントが2位、全般的なハラスメントが3位となっており、足しあわせると1位の「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」を大きく上回ることから、仕事でうつになった原因として筆頭に挙がるものとなっています。(参考:厚生労働省『令和元年版過労死等防止対策白書』)

特に女性の場合は、以下のアンケート調査からも分かる通り、セクシャルハラスメントが2位、全般的なハラスメントが3位となっており、足しあわせると1位の「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」を大きく上回ることから、仕事でうつになった原因として筆頭に挙がるものとなっています。

また、「昇進や昇格を交換条件に関係を迫る」といった、管理職権限の濫用によるパワーハラスメントとセクシャルハラスメントが複合した「対価型セクシャルハラスメント」などの事例もあります。(参考:厚生労働省『職場におけるセクシャルハラスメントの種類は』)

ハラスメントには上述した明らかなものもありますが、その状況は様々なため、判断に迷って悩みを抱え込んでしまうことでうつ病になり、退職に至る人も少なくありません。

また、ハラスメントではなくても、「方針が合わない上司」「悪口の多い環境」「仲はよいもののそのぶん飲み会などの業務外での付き合いが多い」など、自分とどうしても合わない人間関係がうつを招く可能性もあります。

理由④私生活上の出来事や生活環境の変化

理由④私生活上の出来事や生活環境の変化

最後に挙げられる理由は「私生活上の出来事や生活環境の変化」です。

具体的な事例としては、近親者が亡くなったことによるショック、引っ越しによるストレス、離婚など、うつを発症する原因は様々です。

上述のようにストレス因子が明らかな場合は、適応障害であることが多いです。

しかし、中には「明確な原因がないのに気が塞ぐ」という典型的なうつの症状を呈して休職や退職をする方もいます。

また、「冬季性うつ」という言葉でも知られるように、冬になると日照時間が減ることで気が塞ぎがちになって、うつ症状を悪化させてやむを得ず退職するというパターンもあります。(参考: Royal College of Psychiatrists『季節性感情障害(SAD)』)

まとめ:うつを治すためにも退職前後の手続きはきちんと進めましょう

まとめ:うつを治すためにも退職前後の手続きはきちんと進めましょう

ここまでうつによる退職前後にすべきことを事例とともに解説してきましたが、活用できそうな知識はあったでしょうか?

大切なのは、早急に決断を下さずに「まずは休養を取ること」、ひとりで抱え込まずに「医師や家族など周囲を適切に頼ること」です。

退職前後には、勤め先との調整以外にも、社会保険の切り替え手続きなど、関係機関とのやり取りが増えるため、ひとりで全てを片付けるには難しい場合もあります。

とはいえ、手続きをせずに放置しておくと、新たな不安材料を抱え込むことにもなります。

うつの治療に専念するためにも、助力を得ながら退職前後の手続きはきちんと進めましょう。

このコラムがうつによる退職で悩んでいる人の助けになれば幸いです。

よくある質問(1)

うつでの退職前にするべきことはありますか?

一般論として、次の8点が挙げられます。「まずは医師に相談する」「家族に連絡・相談する」「就労支援機関に相談する」「配置転換を申請・相談する」「短時間勤務を申請する」「休職を検討する」「労災保険の申請をする」「貯金などの経済面を確認する」。詳細はこちらをご覧ください

よくある質問(2)

うつでの退職後にするべきことはありますか?

一般論として、次の4点が考えられます。「治療に専念する」「健康保険・年金の切り替え手続きをする」「失業給付の受給手続きをする」「就労支援機関に通所する」。詳細はこちらをご覧ください。

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

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翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

執筆寺田淳平

てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→

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