発達障害の人のコミュニケーションの困難とは?職場での対処法を解説

2020年02月07日

こんにちは、ケアストレスカウンセラー有資格者の寺田淳平です。

発達障害の方が特に悩みを抱えやすいと言われているのが、職場でのコミュニケーションの困難です

あなたも職場でのコミュニケーションに悩んではいませんか?

発達障害によるコミュニケーションの問題を解決するには、症状に合わせて原因を理解し、適切な対処法を講じていくことが大切です

そこで今回は、発達障害の人が仕事をするときに感じるコミュニケーション上の困難とその対処法を解説いたします

3,500人規模の職場で人事を担当していた私の視点から、事例を交えながら解説しますので、発達障害によるコミュニケーションの問題でお悩みの方は、ぜひ一度、読んでみてください。

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発達障害とコミュニケーション障害は違う?

発達障害とコミュニケーション障害は違う?

「コミュニケーション障害(コミュ障)」という言葉を聞いたことがありませんか?

「コミュニケーション障害」と「発達障害(に関連するコミュニケーションの困難)」は、混同されることもあります

ですが、結論から申し上げますと、両者は、厳密には異なります

「コミュニケーション障害」とは、人とコミュニケーションを取ったり、良好な対人関係を築いたりするのが苦手な状態を意味する言葉であり、「医学的な定義を持つ場合」と、「スラングであり、明確な定義がない場合」があります。(参考コラム:キズキ共育塾『コミュニケーション障害とコミュ障ってどう違うの?コミュ力を高める3つの方法』)

そして、いずれにせよ、コミュニケーション障害の傾向が見られるからと言って、発達障害とは限らないのです

後述するADHD(注意欠如・多動性障害)のように、発達障害であっても、症状の中にコミュニケーションでの障害が見られないものもあります。

一方で、発達障害の中には、コミュニケーションを取ったり、人間関係を良好に保ったりするのが難しいものが存在するのも事実です。

実際に、業務上の情報伝達などですれ違いが頻発し、同僚とのコミュニケーションに悩んで医療機関を訪ねたところ、発達障害であることが判明したというケースは多く見られます。

また、発達障害であることを明確に診断される「確定診断」がなくても、発達障害の傾向が強く見られる「グレーゾーン」の人たちも、近年話題にのぼることが増えてきました。

そのため、「発達障害とコミュニケーション障害は別物だけど、コミュニケーション障害の裏に発達障害が潜んでいる可能性はある」というのが、より正確でしょう

発達障害だからと言ってコミュニケーションに困難があると決めつけたり、反対に、コミュニケーションが苦手だから発達障害に違いないと思い込んだりしないことが大切です。

コミュニケーションに悩んで発達障害を疑っている方は、自己判断に終始せずに、専門の医療機関を受診することをオススメいたします

コミュニケーションに問題が生じやすい発達障害は「ASD」と「LD」

コミュニケーションに問題が生じやすい発達障害は「ASD」と「LD」

それでは、コミュニケーションに問題が生じやすい発達障害には、どのようなものがあるのでしょうか?(参考:厚生労働省『発達障害|病名から知る|こころの病気を知る|メンタルヘルス』)

発達障害には主に以下の3つの種類があります。

上記の症状からわかるように、コミュニケーションを最も苦手とする発達障害は「ASD」です

ASDは「社会性・コミュニケーション・想像力」の3つの能力に困難が生じる特性があります

このASDは、2013年までは、自閉症とアスペルガー症候群に分かれていましたが、アメリカ精神医学会の定める『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』にて、「自閉症スペクトラム」とまとめられて、認知されるようになりました。

一般的に、言語発達に遅れのある場合を「自閉症」、知能が非障害者と同等で言語発達の遅れがない場合を「アスペルガー症候群」として分けて考えられますが、コミュニケーションに難があるという点は共通しています。

また、ASDほどではありませんが、LDも「読む、聞く、話す、書く、計算する、推論する」のいずれかの情報伝達を苦手とするため、コミュニケーションに困難を生じやすい発達障害と言えるでしょう

一方、ADHDはミスや忘れ物が多いといった行動面での困難は見られますが、基本的に意思疎通に問題は生じないと考えられます

発達障害の人がコミュニケーションに悩む4つの原因

こうした発達障害の人がコミュニケーションを考えるときには、単に「コミュニケーションが苦手」で片づけるのではく、その原因を細かく分けて考えることが大切です

そこで、この章では、発達障害の人がコミュニケーションに悩む原因を4つ見ていきましょう。(参考:本田秀夫『自閉症スペクトラム』、宮尾益知『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』)

前提としてお伝えしておきたいのは、これらの原因は基本的に、発達障害の症状に由来しているということです。

発達障害は、脳の機能に偏りが生じる、脳の構造上の特性ですので、コミュニケーションを困難にしている原因そのものを解消することはできません。

本人の努力だけでは、どうにもならない面があるのも事実です。

そのため、原因を理解するのは、「その原因にピンポイントで合う対処法を考えるため」「同僚や支援者の方に、具体的にどうしてほしいかを伝えるため」ということを意識しながら、以下の各項をお読みください。

なお、以下の4つの原因は、主に①~③がASD、④がLDの症状を念頭に置いて書かれている点にご留意ください。


原因①:身振りや表情を読み取れない

身振りや表情を読み取れない

原因の1つ目は「身振りや表情を読み取れない」です。

コミュニケーションには、言葉のやり取りからなる「言語的コミュニケーション」と、身振り、表情や声のトーンからなる「非言語的コミュニケーション」があります。(参考:宇都宮大学 中村真『3.表情とコミュニケーション』)

このうち、非言語的コミュニケーションが占める割合は「90%」以上と言われており、特に親密度が増すほど、非言語的コミュニケーションの割合は大きくなると考えられています

例えば、笑いながら「変なことを言うなよ」と言った場合、相手は怒っているのではなく、むしろ打ち解けた調子でコミュニケーションを求めているということが、非障害者の方には感じられるかと思います。

このように、相手の表情などで意味合いは変わってくるのです。

しかし、ASDの人は身振りや表情から、発言者の意図を判断しづらい特性を持っています

そのため、発言を文字通りに受け取り、「変なことは言っていません」といった返答をすることが多いです

こうしたやり取りの積み重ねにより、ASDの人は「コミュニケーションがうまくできない」と思われるのですが、その原因は「身振りや表情を読み取れない」ことにあります。


原因②:さじ加減がわからない

さじ加減がわからない

2つ目の原因は「さじ加減がわからない」です。

お仕事をされている方は、「適当に」や「ちょっと」といった曖昧表現を使われることは日常茶飯事でしょう。

しかし、先述の例のように、ASDの人は言葉を文字通りに受け取るため、「適当」と言われても、果たしてどの程度が「適当」なのかがわからずに固まったり、状況を考慮せずに「過剰に丁寧」「過剰に雑」な処理をしたりする傾向があります

こうした「さじ加減がわからない」ことが原因で、意思疎通がうまく図れない場合があります。


原因③:関係性を理解しづらい

関係性を理解しづらい

3つ目の原因は「関係性を理解しづらい」です。

仕事の場では、上司と部下など、職責に応じた上下関係があり、それに合わせて言葉遣いを変えるのが基本です。

しかし、ASDの人は、対人関係や社会関係などの曖昧なものを理解しづらいため、たとえ上司であっても、同じ環境にいるというだけで、友達のように接することがあります

また、無礼に感じて腹を立てたり、不快に思って注意する人がいても、ASDの人はそもそもの関係性を認識するのが苦手なため、指摘を理解することが難しいと言われています。

このように、コミュニケーションに失敗する理由のひとつとして、「関係性を理解しづらい」という特性が挙げられます。


原因④:情報伝達の手段が合わない

情報伝達の手段が合わない

原因の最後は「情報伝達の手段が合わない」です。

これは主に、LDの人がコミュニケーションで悩む原因です。

LDの人は自身が苦手とする情報伝達の手段を取られると、発達障害の特性上、その内容をうまく認識することができません

例えば、聞くことに困難をおぼえる人に、口頭で込み入った指示をしても、内容をきちんと理解することは難しいでしょう。

そして、後でその指示内容を問われて対応できなかったときなどに、「コミュニケーションが取れない」と思われるのです。

このように、LDの人は、「情報伝達の手段が合わない」という点が、コミュニケーションがうまくいかない原因になります。

発達障害によるコミュニケーション問題の事例3選

この章では具体的に、職場で見られる発達障害の人のコミュニケーションの事例を見ていきましょう。(参考:太田晴久『職場の発達障害 自閉スペクトラム症編』、星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち〈職場編〉』)

①と②がASD、③がLDの人に該当しやすいコミュニケーションの事例になっています。

前の項目で説明した、コミュニケーションがうまくいかない原因と併せて確認してみてください。

なお、プライバシー保護のために、主旨をゆがめない程度に細部を変更してありますので、ご了承ください。


事例①:極端な処理をした人の事例

極端な処理をした人の事例

1つ目は仕事で「極端な処理をした」Aさんの事例です。

AさんはASDの傾向があり、障害者枠で雇用された事務職の方です

周囲の同僚から、障害特性について配慮を得ていましたが、あるとき、コンビを組んで仕事をしているBさんが、会議があることを忘れていたため、慌ててAさんに資料の印刷を頼みました。

その際に、会議に参加する人数を伝えた上で、「でも、余裕を持って多めに刷っておいてください」と付け加えました

Bさんは、印刷に不備があった際のために、参加者に加えて5部ほど刷ってもらうことを意図していました。

しかし、印刷物を回収するときになってAさんに尋ねると、参加人数の2倍以上の書類が刷られており、複合機もまだ稼働中だったそうです

Aさんは「余裕を持って多めに」という指示のさじ加減がわからず、また、Bさんも慌てて曖昧な指示をしたために起こった、コミュニケーションのすれ違いでした。


事例②:取引先を怒らせた人の事例

取引先を怒らせた人の事例

2つ目の事例は「取引先を怒らせた」Cさんの事例です。

Cさんは確定診断までは至らないものの、ASD傾向の「グレーゾーン」の症状を持つ人です

新卒で採用されたCさんは、学生時代からコミュニケーションを取ることが苦手だったため、あまり人と関わらない内勤の仕事に就きました。

しかし、それでも取引先の人とやり取りをする機会は、ある程度生じます。

あるとき、仕事を請け負っている取引先の人が、Cさんの会社を訪れたため、先輩のDさんと一緒に応対をしました。

普段からDさんがメールでやり取りしているのを見ていたこともあり、取引先の人も全く知らない人ということではありませんでした

知人とはいえ当然、敬語の使用が求められる場面です。

しかし、Cさんは取引先の人に対して、全く敬語を使わずに、いきなり友達であるかのように話しかけました

はじめは相手も面食らっていただけですが、態度があまりにもぶしつけだったため、時間が経つにつれて、先輩のDさんの目から見ても、明らかに不快そうな表情を浮かべるようになりました。

しかし、Cさんは相手が声を荒げたり、直接的な注意をしなかったため、最後まで友達に話すような態度を続けて、取引先との関係を悪化させることになりました


事例③:会議の内容を理解できなかった人の事例

会議の内容を理解できなかった人の事例

最後にご紹介するのは、発達障害が原因で「会議の内容を理解できなかった」Eさんの事例です。

Eさんには軽度のLDがあり、ゆっくりとした会話なら聞き取れるものの、早いスピードで言葉がやりとりされると内容を追えなくなる「聞く」ことの障害を持っていました

とはいえ、普段はそれほど困難を感じることはなく、会議などの場でも資料を読み込んだり、前もって議題を聞いたりすることで、カバーできていました。

しかし、その日の会議は事前の資料配布もなく、当日配られた書類も数値やデータの羅列のみで、パワーポイントなどの投影もありませんでした

さらに、議論が紛糾して話が長引いたこともあり、Eさんは途中で内容を追うことができなくなりました

そして意見を求められた際に、全く的外れな発言をして、場を白けさせました。

コミュニケーションが苦手な発達障害の人ができる対処法4選

それでは、コミュニケーションが苦手な発達障害の人が職場でできる対処法には、どのようなものがあるのでしょうか?

この章では、実践しやすいものを4つ挙げています。(参考:對馬 陽一郎『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が会社の人間関係で困らないための本』、木津谷岳『これからの発達障害者「雇用」』)

発達障害の人が仕事をする上で大切なのは、できる限り、周りの人に理解や協力を求めることです

ここで言う周りの人とは、単に職場の上司や同僚だけでなく、後述する支援機関や医師、ご家族なども指します。

発達障害の人は仕事で困難を抱えていても、本人には自覚が薄い場合もありますので、周囲の援助が特に大切です。

また、コミュニケーションはひとりで成り立つものではなく、常に相手を必要とします。

そのため、あなたの心掛けだけで改善することばかりではありませんので、ここに挙げた対処法をもとに、ぜひ周囲の人に理解や協力をお願いするようにしてみてください


対処法①:具体的な指示をもらう

具体的な指示をもらう

まず実践していただきたいのが、「具体的な指示をもらう」という対処法です。

以前の項目で、ASDの人がコミュニケーションに失敗する原因を解説しましたが、それらの大部分は「曖昧な表現を理解できない」点にあります

そのため、日頃から周囲の人に「具体的な指示」をお願いすることで、これらの問題はある程度の解決が見込めます

指示をもらうときには、「この書類を何部印刷して、何階のA会議室のホワイトボードの前の机に置いておいてください」といった、具体的すぎるくらいの指示をもらうようにしましょう。


対処法②:自分専用のマニュアルを作る

自分専用のマニュアルを作る

2つ目の対処法は「自分専用のマニュアルを作る」です。

多くの場合、社内のマニュアルは、その業務を行う人全員にわかるように書かれているものの、多少は作成者の感覚やさじ加減が反映されています

また、業務内容によっては、「頃合いを見計らって」や「〇〇さんの手が空いたときに」といった、曖昧な指示が入り込んでいることもあるでしょう。

しかし、先述したように、ASDの人はこのような曖昧さが苦手です

そのため、業務の処理中に混乱したり、極端な対応を取ったりしないためにも、あなたの特性に沿ったマニュアルが必要です

業務処理中のコミュニケーションのすれ違いを生まないためにも、まずは自分専用のマニュアルを作り、それから同僚の人に「これで問題ないか」を確認してもらうとよいでしょう。


対処法③:文字や図での説明を求める

文字や図での説明を求める

3番目の対処法は、「文字や図での説明を求める」です。

これは主に、LDの人向けの仕事術になります

先述したように、LDの人は、打ちあわせなどで、苦手な情報伝達手段で説明されると、話についていけなくなる傾向があります。

これは、受け手側のLDの人だけで対処できるものではありませんので、日頃から自分が把握しやすい文字や図などの媒体で、説明をお願いするようにしましょう

また中には、ASDの人でも、LDの人と同様に、文字や音声情報だと理解しづらい傾向を持つ人がいます。

そうした人にとっても、「図を用いた説明を求める」といった対処法は有効です。

なお、受け手側としてLDの人ができることに、ICレコーダーなどの「電子機器を取り入れる」というものがあります

最近では、文字を読むのが苦手な「書字障害」の人向けに、文書の自動読み上げをする機器などもありますので、こういった科学技術を仕事の場に活かすのもよいでしょう。


対処法④:支援機関にアドバイスをもらう

支援機関にアドバイスをもらう

最後にオススメしたい対処法として、「支援機関にアドバイスをもらう」というものがあります。

現在、公的なものから民間のものまで、発達障害の人の就労を助ける専門機関はたくさんあります。(参考:東京都『東京都発達障害者福祉センター(TOSCA)』、厚生労働省『精神保健福祉センターと保健所』、東京都福祉保健局『よくある相談事例|東京都立精神保健福祉センター』)

中には、あなたと職場の間に入って、コミュニケーションを助けたり、働きやすい方法を模索する手伝いをする支援機関もあります

一例を挙げると、国の法律に基づいて設置されている「就労移行支援事業所」では、仕事に役立つ技能の講習から、日常生活を含むコミュニケーションのアドバイス、定期面談による心のケアまで、様々な福祉サービスを、最低0円から提供しています。

また、発達障害についての相談に特化している「発達障害者支援センター」や、臨床心理士が対応をする「精神保健福祉センター」など、その人の悩みや状態に応じて、多様な支援機関が存在します。

基本的には、都道府県が設置しているものになりますので、どの支援センターに行ったらいいかわからないという方は、一度、お住まいの地域の役所に問い合わせてみるとよいでしょう

なお、先述した「就労移行支援事業所」については、詳しい情報をコラム「就労移行支援とは?サービス内容から就労継続支援との違いまで解説」にまとめてありますので、興味のある方は併せてご参照ください。

まとめ:発達障害でコミュニケーションが難しくても工夫次第で対処は可能!

発達障害でコミュニケーションが難しくても工夫次第で対処は可能!

発達障害の人が悩むコミュニケーションの原因から、職場で実際に見られる事例、対処法までを徹底解説してきましたが、役立てられそうな情報はあったでしょうか?

繰り返しになりますが、発達障害を持つ人が働く上では、周囲の人の助けが必要不可欠です

ひとりでは成り立たないコミュニケーションの問題は、その最たる例でしょう。

ぜひ、このコラムで紹介してきた情報をもとに、職場の同僚や上司、支援者の方に、協力をみてください。

発達障害によるコミュニケーションの困難に悩む人の助けになれば幸いです。

私たちキズキビジネスカレッジは、うつや発達障害の方のための、就労移行支援事業所です。

就労移行支援事業とは、一般企業での就職や、仕事で独立する事を目指す障害者の方の、本人に適した職場への就職・定着を目的として行われる、障害福祉サービスの1つです。

ADHDであることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。

キズキビジネスカレッジの特徴は、会計・ファイナンス、マーケティング、プログラミング、ビジネス英語などの高度で専門的なスキルを学べる講座やプログラムを用意していることです。

少しでも気になる方は、【キズキビジネスカレッジの概要】をご覧の上、お気軽にお問い合わせください(ご相談は無料です)。

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