ADHDの5個の「生きづらい」への対策法〜具体的なツールを7個紹介〜
2019年11月19日

私はADHD当事者として、様々な生きづらい体験をしました。
ものをなくす、ミスが多い、睡眠障害、やるべき作業を忘れるなどなど…。
あなたもADHDの当事者であり、同様のお悩みを抱えていませんか?
ただ、特性に応じた「生きづらい」を減らすツールは、たくさんあります。
いろんなツールを使うことで、生きづらい経験も減り、周囲の理解も得られ、特性を補いながら生きることが可能になります。
今回は、ADHDによって引き起こされる日々の「生きづらい」を解決したい…そんなお悩みを持つあなたのために、ADHD当事者である私自身、そして周囲のADHD当事者の経験から導き出した、特性別・お役立ちツールを具体的にご紹介します。
紹介するツールを見ると、「そんなカンタンなものでいいの?」と思うかもしれませんが、実際に効果のあったツールですので、ぜひ試してみてください。

監修:キズキ代表 安田祐輔 (やすだ・ゆうすけ)
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病の方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2022年2月現在9校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年2月現在4校)
【著書など】
『暗闇でも走る(講談社)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』
サイト運営:キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→
目次
生きづらい原因①睡眠障害がある
ADHDの特性の一つに、睡眠障害があります。
睡眠障害になると、日々の睡眠時間がずれるなどして、日中に過剰な眠気が発生したり、寝たい時間帯に眠れなかったりして、日常生活や体調に支障が生じます。
そうした特性は、次のツールで対策できます。
対応ツール:スマートフォンの時計アプリ

スマートフォンの時計アプリを使って起床時及び就寝時に記録をつけることで、睡眠時間の記録と管理が可能となり、体調維持がしやすくなります。
iPhoneの場合、睡眠時間を記録するアプリ、「時計」が最初から入っていますので、これを利用します。
時計アプリを開いて、「ベッドタイム」をタップします。
開始をタップして、起床時間と就寝時間を設定します。
ベッドタイムを設定すると、iPhoneが就寝時間を教えてくれ、また起床時刻になるとアラームが鳴ります。
こうすることで、規則正しい睡眠ができるようになります。
さらにApple Watchのアプリ、「Auto Sleep」を併用すると、特に細かい設定をすることなく就寝と起床を自動で記録できるようになります。
Androidの場合は、「熟睡アラーム」というアプリがあります。
アラームを設定して、「おやすみボタン」をタップすると睡眠を計測します。
計測中はスマホの液晶が点いたままになって電池を消費するので、充電器に繋いでおきましょう。
睡眠系のアプリは他にもありますので、より自分に合うものを探してみることもオススメです。
生きづらい原因②体調に波がある
ADHDを持つ方は、前述の睡眠障害や併発する躁鬱などによって、体調の波が激しい傾向が珍しくありません。
そんな方は、適度な運動で体調を保つことができます。
しかし、ADHDの人は、どの程度の運動が有効か、どのくらいを過ぎると逆に体調悪化するか、頭では予測しがたい面があります。
実際に、私は、「健康のために」とジョギングをしていたのに、走りすぎて体調を落としたことがありました。
そんな人には、運動を軽いウォーキングにするとともに、次のツールの使用をオススメします。
対応ツール:スマートフォンの歩数計アプリ

スマートフォンについている歩数計アプリを使うことで、運動量の調整を通じての体調管理が可能になります。
iPhoneの場合、最初から入っているアプリ「ヘルスケア」に歩数計が含まれています。
現在の私は、この「ヘルスケア」を利用して日々の歩数をチェックして、運動量の参考としています。
Androidの場合も、「歩数計」などでアプリ検索をしてみましょう。
運動量を確認することで、自分にとっての適切な運動量が数字としてわかるようになり、「今日は運動が足りていないからもう少し動こうかな」「今日は結構動いているから、あとはゆっくりしよう」などの判断ができるようになります。
生きづらい原因③ものをなくしやすい
ADHDを持つ方は注意散漫が特性なので、ものを置いた場所を忘れやすいです。
「家や自家用車の中では置く場所を決めておく」「電車では網棚を使わず、荷物から手を離さない」という方法もありますが、今回はツールを2つ紹介します。
対応ツール①GPS発信器&アプリ「Tile」

Tileとは、スマートフォンと連携するGPS信号発信機&アプリです。
まず、購入したTileをスマホに登録します。
次に、なくしてはいけないものにTileをセットします。
そのものを「なくした」と思ったときに、スマホでTileのアプリを開いて、GPS上の地点を確認して探すボタンを押します。
すると、ものに紐づけられたTileから音が発信して見つけることが可能となります。
逆に、スマホが見当たらないときは、ものにセットしたTileのボタンを押すことで、スマホを鳴らして見つけることもできます。
この機能は、ADHDを持つ方のものをなくす現象を減らすことに大いに役立ちます。
実際に私は家の中で鍵をなくしがちなのですが、Tileを使うことで鍵の場所を発見するのに役立てています。
対応ツール②電子書籍アプリ

ものをなくしやすく、整理しづらいADHDを持つ方にとって、電子書籍はスペースを取らず大量の本を保存できるツールとして便利です。
紙の書籍のデメリットである、「読みたいときにどこにあるのかわからない(家の中にあるのかも、どこかで忘れてきたのかもわからない)」「片付けができないため、家が本で散らかる」という事態を避けられます。
電子書籍に関するデバイスとアプリは複数ありますが、私はiPad ProでKindleを利用することを選択しました。
iPad Proは画面が大きく、画像形式で保存されている本のフォントを大きく表示できるからです。
値段は高いですが、雑誌を見やすく保存するメリットには代えがたいと感じました。
電子書籍として刊行されない書籍もあるので、全ての本を電子書籍で買うことはできないのですが、「電子書籍が出る本は電子で買う」、というのは「ものをなくさない」ための一策となります。
生きづらい原因④忘れものをする
ADHDの方の「注意散漫」は、ものをなくす以外に、忘れものという形でも発露します。
ものがあふれた現代社会においては難しいかもしれませんが、ものを整理したり、容量を減らしたりすることを心がけましょう。
そのための便利なツールも、世の中に増えています。
対応ツール①大きな仕切りのついたかばん

用事や仕事で使う全てのものを収納できて、中できちんと分別できる仕切りが存在するかばんを使いましょう。(参考『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』借金玉/著)
「必要なものは絶対にこのかばんに入れる」というルールを守ることで、忘れものが減ります(また、前項の「ものをなくす」にも対応できます)。
自分の荷物に適したサイズの仕切りのあるかばんが見つからないようであれば、ある程度大きなかばんを買って、荷物を小分け・分類できるサイズの袋を別に用意して、大きなかばんの中にまとめて入れるようにしましょう(実際に私はそうしています)。
対応ツール②フォルダに収納できて紙が落ちないバインダー

ADHDを持つ方は書類をなくしやすいので、かばんの中に、特に「書類を保持するためのバインダー」があると有効です。
用途(プライベート、仕事、仕事の中でもお客さん別など)ごとにバインダーを分けると整理しやすくなり、かばんの中でも探しやすくなり、紛失を防止可能です。
私はキングジムのコンパックというバインダーを使って書類を分類してなくさないようにしています(上記画像のファイル。画像はキングジムウェブサイトから引用)。
コンパックの特徴は、書類をフォルダに入れて挟み込めるということです。
この特徴により、紙だけを挟み込むバインダーよりもきれいに収納でき、また紙だけで挟むよりも紛失の可能性を低くします。
生きづらい原因⑤やるべき作業を忘れる
やるべき作業の順位づけができず、重要な作業を忘れるのも、ADHDの特性です。
具体的には、些細なこと(重要ではない作業)にこだわり、重要な作業を忘れてしまうといったことがあります。
対応ツール:紙のふせん(ポストイット)

紙のふせん(ポストイットなど)で「やることリスト(ToDoリスト)」を作成することで、物事に優先順位をつけて忘れずに作業することが可能です。
ToDoリストのアプリと比べて、紙のふせんのメリットは、アプリを立ち上げずに目をやるだけで確認できることと、自分にわかりやすい書き方で自由に書けることです。
よって、ここでは紙のふせんによるやることリストの作成をお勧めします(あなたに合ったアプリを見つけられたり、アプリじゃなくてもPCのワードやエクセルで管理できたりするようであれば、そちらでも大丈夫です)。
【紙のふせんによるやることリスト作成方法】
①業務を切り分けて、ふせんに一つずつメモします(例:来週末の社内会議Aの資料作成、月末提出の終了した案件Bの報告書作成、明日提出の案件Cの見積作成、不要書類Dのシュレッダー、来週頭提出の案件Eの見積作成)。
②重要度や緊急度が高いものから、上から順番に一番目につくところに張りつけます。
- (1)明日提出の案件Cの見積作成
- (2)来週頭提出の案件Eの見積作成
- (3)来週末の社内会議Aの資料作成
- (4)月末提出の終了した案件Bの報告書作成
- (5)不要書類Dのシュレッダー
③途中でやることが増えた場合には、新たにふせんを作成し、重要度に応じて途中に配置します。
④個別の業務が終了次第、それに相当するふせんを廃棄します。
生きづらい原因⑥聴覚過敏
ADHDを持つ方の一部には、聴覚過敏を持ち合わせる人がいます。
特定の音に過剰に反応したり、多くの人にとって気にならない音を耐えられない程大きく感じたりします。
対応ツール:ノイズキャンセリングイヤホン

聴覚過敏の方は、雑音を遮断するノイズキャンセリングイヤホンの利用がオススメです。
ノイズキャンセリングイヤホンとは、文字どおり、周囲の雑音を遮断してくれるイヤホン(ヘッドホン)のことです。
製品によって遮断具合が異なるので、家電量販店でいろんな製品を試してみて、自分に合うものを購入しましょう。
ただ、ノイズキャンセリングの性質上、突発的な音は対応しがたい部分があります。
まとめ

いかがでしたでしょうか?
ADHD当事者の方々の悩みは様々で、生きづらさにフィットするツールもまちまちです。
今回紹介したツール以外にも、あなたに合うものを探してみましょう。
各ツールの使用後にはフィードバックを行い、あなたに合っていたか、他にもないかなどを、同じような悩みを持つ人たちとも話したりしながら検討してみることで、よりよいツールが見つかるはずです。
もしあなたに合うツールがまだなくても、いろんな人と話すうちに、きっと見つかったり、いろんなメーカーに要望を出せるようになったりすると思います。
この記事が、あなたのADHDによる生きづらさのお役に立ったなら幸いです。
さて、この記事の運営元であるキズキビジネスカレッジ(KBC)は、うつや発達障害の方のための、就労移行支援事業所です。
就労移行支援事業とは、一般企業での就職や、仕事で独立する事を目指す障害者の方の、本人に適した職場への就職・定着を目的として行われる、障害福祉サービスの1つです。
ADHDであることが診断書から明らかな場合などは、国の補償で最低0円から就労支援を受けられることもあります。
キズキビジネスカレッジ(KBC)の特徴は、会計・ファイナンス、マーケティング、プログラミング、ビジネス英語などの高度で専門的なスキルを学べる講座やプログラムを用意していることです。
少しでも気になる方は、【キズキビジネスカレッジ(KBC)の概要】をご覧の上、お気軽にお問い合わせください(ご相談は無料です)。
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