「引きこもりの家族」への3つのお願い|ストレスで限界になる前に

「引きこもりの家族」への3つのお願い|ストレスで限界になる前に

引きこもりの方の学び直しをサポートする個別指導塾・キズキ共育塾の木原彩です。

あなたは今、ご家族の引きこもりについて悩んでいるのではないでしょうか?

また、ご家族の引きこもりを何とかしようとしているものの上手くいかず、ストレスが溜まり「もう限界…」と疲れ切っているのかもしれません。

私も、弟が引きこもりだったため、「引きこもりの家族だった経験」があります。

そのため、「引きこもり」と聞くと、当時の弟のことや自分も含めた家族のことを思い出します。

弟は、今引きこもりではありません。ですが、当時の「私は弟のために何もできていない」という無力感は忘れられません。

当時の私は、毎日次のように思っていました。

  • 「弟がつらい状況なのに、なんで私は何もできないんだろう…。私と弟は家族なのに…」
  • 「弟がつらい状態なのに、私は会社に行ったり、遊んだり、外に出ていいのだろうか?弟を1人にしていいのだろうか?」

今回は、私の経験から、引きこもり本人とご家族のために、ご家族に行ってほしいこと(お願い)を3つ、引きこもりの相談先や支援機関をお伝えします。

「息子が引きこもりになって、何年も家から出ない…」
「妹の友達はもう大学生なのに…。でももう妹がどう社会とつながっていけるのかさえわからない…」

この記事を読んで、そんな引きこもりのご家族の気持ちが少しでも楽になることを願います

お願い①家族1人ひとりが「居場所」を見つけてください

「引きこもりの家族がいること」を周囲に相談できず、ご家族が社会から孤立していませんか

「自分がもっとしっかりしていれば…」と悩み、「引きこもり本人の前で笑ったり楽しく過ごしたりしてはいけない」と思っていませんか?

「子ども(・きょうだい)が苦しんでいるのに、私が外出するなんて…。子ども(・きょうだい)が1人になってしまう」と、外出することに罪悪感を持っていませんか

引きこもりの家族がいると、ほかの家族は、引きこもり本人に寄り添う中で身を削る思いをしたり、ストレスを感じたりしがちです。

私の家族の場合、弟が引きこもっていた当時、「弟(息子)が苦しんでいるんだから、私たちも楽しく生活する資格はない」という共通の思いを暗に持っていました。

弟の引きこもりが長引くうちに、母は抑うつ状態になり、私も限界を感じて泣いてばかりいました。

そして、何よりも「そばにいるのに、何もできない」という気持ちでいっぱいでした。

父は単身赴任中でした。ですが遠くから常に弟の身を案じ、少しでも家で弟に寄り添おうと、何かと都合をつけて戻ってきてくれました。

それでも、帰ってきた父に対して、弟が「会いたくない」と言って自分の部屋から出てこない日もありました。

家族全体の雰囲気がどんどん暗くなり、私は「家で言葉を発していいの…?いいとしても、何を話せばいいのだろう?」と感じるようになりました。

そんな私たちが自分の過去や家族との葛藤と向き合えるようになったのは、たくさんの人と出会い、居場所を見つけたからです。

どうか、あなた自身の幸せも考えてください

引きこもりの本人を心配に思う気持ちは、とてもよくわかります。

ですが、引きこもりの本人を支えるためには、ご家族自身がストレスをためずに、家庭の内外で日常を楽しく過ごすことが大切なのです。

家族1人ひとりが家族・家庭に加えて別の居場所を持ち、「今日は楽しかった」と思える日々増えれば、家庭での笑顔も少しずつ増え、家族・家庭は温かい場所になります

そして、引きこもりの本人も、家族が社会とつながりを持ち楽しく過ごしている様子を見ることで、「世界には、温かい場所・安心できる場所があるんだな」と感じ、外出にポジティブなイメージを持てるようになることもあるのです。

さて、一口に「居場所」と言ってきましたが、「どんな居場所があるのか、どうやって見つけていいかわからない」と思う方もいらっしゃると思います。

居場所を見つける方法はいくつかあります。

例えば、「好きなこと」や「やっていて苦にならないこと」通して居場所を見つける方法です。

一例として、地域のスポーツ団体、趣味の団体、ボランティア団体などが挙げられます。

私の場合は、「子どもが好きだから」という理由で参加した教育系のボランティアが居場所となりました。

このボランティア活動を通じて、担当した子どもの家族の問題に直面し私に何ができるのか考える中で、私自身の家族や自分自身とも向き合えるようになりました。

また、たくさんの仲間やメンターが私と向き合ってくれたため、自分自身を受容できるようになりました。

引きこもり本人のためにも、そしてあなた自身のためにも、「居場所」を見つけてください

また、お子さんやご家族の引きこもりについて、「自分が悪い」「もっとできることがあったのでは…?」とご自身を責めている方もいらっしゃるかもしれません。

そういったお悩みを抱えている方は、ぜひ下記のコラムも読んでみてください。

お願い②引きこもり本人に「あなたは大切な存在」と伝えてください

引きこもり本人に「あなたは大切な存在だよ」と伝えてください

キズキ共育塾の生徒さんや引きこもり当時の弟と関わった経験から、「引きこもりの人の多くは、孤独感を抱えている」と感じます。

次のような悩みの結果、他人と関わることが減り、孤独感を抱えるのです。

  • 自分と他人とのささいな違いに過度に悩む
  • 自分のことを誰も理解できないと悩む
  • 自分には人と関わる価値がないと悩む

そんな孤独感を抱える引きこもり本人に対して、ご家族だからこそできることがあります。

それは、「あなたは私にとって大切な存在だよ」と明確に言葉にして伝えることです。

引きこもり本人が、「ありのままの姿」を受容し、「かけがえのない存在」だと認めてくれる存在がいると気づけると、「自分は1人じゃない」と実感できます

「自分は1人じゃない」と実感できれば、家族・家庭を安心できる居場所(足場)にして、前に進もうと思えるようになるでしょう。

引きこもりの多くは、引きこもりになる前からつらい思いをし、苦しんでいることが多いです。

私の弟は、次のようなことでストレスが強くなり、限界を感じて引きこもりになりました。

  • 進学校である高校の授業についていけなかったこと
  • 部活動での人間関係での葛藤
  • 弟の幼少期の家族の不仲による安心感の欠如

弟に当時の思いを聞き、長い間1人で苦しんでいたのだなと改めて感じます。

そして、彼は我慢し続け、引きこもるという選択をせざるをえなかったんだと思います。

弟が引きこもりになった当初、私は実家と離れた大学4年生でした。

卒論制作が忙しかったため実家に帰ることはほぼなく、弟と顔を合わせることもありませんでした。

そのため、会話をする機会は、一緒に暮らしているときに比べてとても少なかったです。

そうした状況もあり、当時の弟は「自分はひとりぼっちだ」という感覚があったそうです。

「私はあなたの味方だよ」と一言伝えるだけでも、引きこもり本人は自分を見守ってくれている存在がいることに気づき、孤独感が薄らいでいくはずです。

ですが、次のような悩みもあるかもしれません。

  • 「きっかけもなく『あなたは大切な存在だよ』とは言えない…」
  • 「明言するタイミングが見つかるまで、どう会話していいのかわからない…」

そんなときは、「おはよう」「少しずつ暖かくなってきたね」などと、毎日たわいもない挨拶などから会話をするとよいかもしれません。

次のような相手のことを思った簡単な質問でもいいと思います。

  • 「今日は何食べたい?食べられそうなものはある?」
  • 「今から買い物に行ってくるんだけど、何かほしいものはある?」

明言するタイミングが見つかるまでは、引きこもり本人に負担がない範囲の質問や会話を通して、「私はあなたに関心があるんだよ。あなたのことを思っているんだよ」という思いを伝えましょう。

下記のコラムでは、さらに詳しく引きこもりのお子さんに対して親御さんができることを解説しています。

主に高校生で引きこもりになったお子さんへの対応方法を紹介していますが、どんな年齢の方に対しても実践していただける内容となっています。

お願い③家族の引きこもりを「1人・家族」だけで悩まないでください

「家族に引きこもりがいる」と周りに言うことは、ハードルが高いかもしれません。

引きこもり本人のためを思って「周りから変な誤解をされるのはかわいそう」と思い、なかなか相談できないこともあるでしょう。

そもそも何を相談していいのかわからない方もいると思います。

ですが、どうか1人だけで、家族だけで悩まず、少しでもよいので第三者に助けを求めててください

私の弟が引きこもりのとき、私たち家族はたくさんの人に助けてもらいました

いろんな人に相談する中で、私たち家族1人ひとりは「私は1人じゃない」と実感しました。

1人じゃないことに気づけるだけでも、ストレスが軽減されたり、「もう限界かも…」と1人で思い悩むこともなくなります。

母は弟の主治医に相談をし、「我が子への接し方についての不安」を解消しました。

弟が通院できないときにも、主治医は母の不安に寄り添ってくださいました。

また、母は引きこもりの親が集って悩みや不安を共有する会合にも参加し、「自分1人で悩まなくてもいい」と実感し安心たそうです。

家族だけで悩むと、考え方が行き詰まることもよくあります。

専門家や当事者団体などに話をするだけでも気持ちが楽になることもありますし、具体的な「次の一歩」が見えてくることも多いです。

公的な相談先の例としては、「地域ひきこもり支援センター」があります(他にもありますので、お子さんやご家族に合いそうなところを探してみることをオススメします)。

また、引きこもりは病気と関連している可能性も考えられます。ご家族の引きこもりに「病気が関係するかも…?」と心当たりがある場合は、ぜひ下記のコラムもあわせてご覧ください。

まとめ:引きこもり本人も家族も「次の一歩」へ進めます

引きこもり本人も家族も「次の一歩」へ進めます

今回は、「引きこもりのご家族」に行ってほしいことを3つお伝えしました。

お伝えした内容をまとめると、次の通りです。

  • 家族1人ひとりが「居場所」を見つけてください
  • 引きこもり本人に「あなたは大切な存在だよ」と伝えてください
  • 家族の引きこもりを「1人・家族」だけで悩まないでください

ぜひ、ご自身やご家族ができることから始めてみてください。

この記事が、ご家族の引きこもりに悩まれるあなたの一助となったら幸いです。

さて、私たちキズキ共育塾は、引きこもり(経験者)の学び直しをサポートする個別指導塾であり、無料相談も行っています。

私たちは、引きこもりご本人のためにも、そしてご家族のためにも、力になりたいと思っています。

ご本人を除くご家族(保護者さま、ごきょうだいさまなど)だけでの相談も可能です。

ご相談いただければ、それぞれのご家族・ご本人に応じて、より具体的なお話ができると思います。

また、キズキ共育塾では、引きこもりや不登校経験を乗り越えた講師・職員が多く働いています。

私たちと話すことで、引きこもりの本人もご家族も少しでも楽になり、次の一歩へ進めるようになれたらなと願っています。

ぜひお気軽にご相談ください。

※文中の写真は、全てイメージです。

監修 / キズキ代表 安田祐輔

やすだ・ゆうすけ。発達障害(ASD/ADHD)によるいじめ、転校、一家離散などを経て、不登校・偏差値30から学び直して20歳で国際基督教大学(ICU)入学。卒業後は新卒で総合商社へ入社するも、発達障害の特性も関連して、うつ病になり退職。その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。経歴や年齢を問わず、「もう一度勉強したい人」のために、完全個別指導を行う。また、不登校の子どものための家庭教師「キズキ家学」、発達障害やうつ病の方々のための就労移行支援事業所「キズキビジネスカレッジ」も運営。

【新著紹介】

『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法』
(2022年9月、KADOKAWA)
Amazon
KADOKAWA公式

【略歴】

2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【メディア出演(一部)】

2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

共同監修 / キズキ相談担当 半村進

はんむら・すすむ。1982年、茨城県生まれ。東京大学文学部卒。
小学校時代から転校を繰り返し、運動ができないこと、アトピー性皮膚炎、独特の体形などから、いじめの対象になったり、学校に行きづらくなっていたことも。大学に入学してようやく安心できるかと思ったが、病気やメンタルの不調もあり、5年半ほど引きこもり生活を送る。30歳で「初めてのアルバイト」としてキズキ共育塾の講師となり、英語・世界史・国語などを担当。現在はキズキの社員として、不登校・引きこもり・中退・発達障害・社会人などの学び直し・進路・生活改善などについて、総計1,000名以上からの相談を実施。

【執筆記事・インタビューなど(一部)】

日本経済新聞 / 朝日新聞EduA / テレビ東京 / 不登校新聞 / 通信制高校ナビ

サイト運営 / キズキ

「もう一度学び直したい方」の勉強とメンタルを完全個別指導でサポートする学習塾。多様な生徒さんに対応(不登校・中退・引きこもりの当事者・経験者、通信制高校生・定時制高校生、勉強にブランクがある方、社会人、主婦・主夫、発達特性がある方など)。授業内容は、小学生レベルから難関大学受験レベルまで、希望や学力などに応じて柔軟に設定可能。トップページはこちら。2023年7月現在、全国に10校とオンライン校(全国対応)がある。

/Q&Aよくある質問

引きこもりの家族のためにできることを知りたいです。

一般論として、次のようなことができます。
  1. ご家族1人ひとりが「居場所」を見つける
  2. 引きこもり本人に「あなたは大切な存在だよ」と伝える
  3. 1人だけ・家族だけで悩まないようにする(サポート団体などを利用する)
詳細はこちらをご覧ください。

引きこもりの家族のことを相談するのはハードルが高いです。

家族だけで悩むと、考え方が行き詰まることもよくあります。専門家や当事者団体などは、様々な知見を持っています。話をするだけでも気持ちが楽になることもありますし、具体的な「次の一歩」が見えてくることもよくあります。ぜひ、ためらわずにご相談ください。詳細はこちらをご覧ください。
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